鈴木一之の「シクリカル投資日記」

非鉄市況が急伸、中国がインフラ投資を再開

09月11日
【2012年9月11日(火)】

週明けの月曜日もロンドンの非鉄市況は急騰しました。アルミニウムは週末をはさんで6日間の続伸です。この間の上昇率は+10%となりました。


亜鉛、鉛、アルミ合金も一斉に続伸しており、その上これまでは動きがとれなかった銅、ニッケルもついに上昇を開始しました。先週木曜日のECBによる無制限・国債買い入れに続いて、先週末には中国も景気対策として1兆元のインフラ投資を再開すると伝えられました。景気対策としての財政出動に踏み切れる余裕のある国は、今や中国だけに限られてしまった感があります。不景気からの脱出としては、金融政策よりも財政政策の方がはるかに効果があるという点を如実に示しています。これによって非鉄セクターはおろか、あらゆる素材型産業の動きが俄然よくなりました。

アルミ市況の上昇に想うこと

09月08日

【2012年9月8日(土)】

現地9月7日(金)の朝、米国・労働省より8月の雇用統計が発表されました。それによれば、8月の非農業部門の雇用者数の増加は前月比で+96,000人、失業率は8.1%に低下しました。雇用者数の増加は前月の改定値(+141,000人)からダウンしましたが、23カ月連続でプラスを続けています。失業率は今年に入って8.1〜8.3%の狭いレンジにとどまっています。今月は飲食サービス、医療分野での雇用増加が目立ちました。


全米の失業者のトータル数は1250万人で、うち27週以上職に就いていない長期失業者は500万人。失業者全体の40%にのぼっています。5月のこの比率は42.8%でしたので、3カ月間で-2.8ポイント低下しました。各クラスごとの失業率は、成人男性が7.6%、成人女性が7.3%、若年層が24.6%、白人が7.2%、黒人が14.1%、ヒスパニックが10.2%、アジア系が5.9%でした。

共和党に続いて民主党も党大会を開催し、大統領選挙の号砲が高らかに打ち鳴らされた今週、雇用統計はまずまずの数字となりました。悪くはないが必ずしもよくもない、というレベルです。しかし洪水、ハリケーン、旱魃、異常高温にさらされ続けているアメリカ国民の実感としてはもっとよくなってほしいというところであることは間違いありません。

今週の大きな変化の一つとして、国際商品市況の非鉄市況の変化が挙げられます。中でもアルミニウムとアルミ合金、それに鉛市況が顕著な上昇を開始しました。アルミは月曜から木曜まで4日続伸となり、目立って動きがよくなっています。亜鉛も久しぶりに強さを見せました。


これらの非鉄品目は、最近の原油高、穀物高にもほとんど反応することなく、「リスク・オン」の号令にもピクリとも動かずに、今年3月から一貫して下落基調を続けてきました。それが今、突如として動き出しています。これらの品目は主に自動車、自動車部品に多用されており、自動車生産台数の回復にリンクする傾向があります。その一方で、銅やニッケルなどのインフラ投資に密接に関わる非鉄市況はまだ動きは見られません。中国のなかば「意図的な」景気足踏み状態に影響されているものと見られます。

アルミ市況が底値から反転上昇しただけでは、それですぐに「景気が底入れした」とは言い切れません。しかし国際商品市況の反転は、景気底入れの十分条件ではなくても、必要条件にはなり得ます。少なくとも、いずれ近いうちに非鉄セクターの株価が上昇しそうだとの連想につながりますし、非鉄セクターの株価が上昇するならそれ以外の景気敏感株の上昇も視野に入れることができます。

ただし現状では、鋼材市況や海運市況、半導体市況は歴史的にかなり悲惨な状態のままにあります。こちらはすぐに市況(および株価)が上昇に転じるとは考えにくい状況です。景気と株価の関係は「ゼロかイチか」の2進法ではありません。もっとまだら模様の、絵具で言えばにじみがかったもの、季節で言えば夏から秋に変わる局面のあいまいな天候のようなものではないかと思います。

文章で表すとこのような曖昧なものになってしまいますが、アルミ市況の上昇反転からうかがえることは、ごく限定された範囲で(これまで徹底的に売り込まれてきた)景気連動銘柄にも徐々に日の当たる局面が出てきた、ということではないかという点です。インフラ関連の品目である銅やニッケルに関しては、供給能力が増している銅銅よりも、当面はニッケル市況の動きが注目に値します(まだ明確な動きは出ておりません)。

以上

素材市況は弱い、これでは株価も反転はむずかしそう

08月03日
【今週の素材市況と株価の動き】

以前として基調は弱い値動きが続いています。世間の耳目はロンドン五輪の熱戦に吸い寄せられて、ニュースフローが途絶えてしまった感もありますが、世界経済の営みはなくなってしまったわけではなく、毎日たえず動いており、そして目下のところそれは必ずしも芳しいものではないというわけです。

◎原油
週半ばから再び下落の方向。WTI先物で87ドル台に。

◎非鉄
再び急落。ニッケルが3日続落し、2011年10月の直近安値を下回る15,475ドル/トンに。スズも同様。LMEインデックスは完全に下抜け。

◎海運
BDIが下げ止まらず。7月9日以来の18日続落。下げが加速しつつある。

◎鋼材
冷延ステンレス鋼板が28万円/トンから27.5万円に下落。炭素鋼も6月14日以来の値下がり。建設用鋼材は低位安定。


株式市場は先週末の「ドラギ発言」で週末をはさんで4日続伸となりました。その後は再び軟化して週末の日経平均は8500円台での着地となったわけです。週末は再び海運、鉄鋼、非鉄など素材セクターが売られ直しているようです。

商船三井(9104)は1日で-5%近い値下がりとなって年初来安値を更新しました。鉄鋼の東京製鉄(5423)も連日の安値更新です。

シャープ、パナソニックの大リストラ策の発表、ソニーの今年第1回目の業績下方修正など、エレクトニクス企業を巡る業績悪化の話題はたくさん伝えられていますが、どんなに大規模なリストラ策を断行しても、まずは素材セクターの株価が上昇に転じてこない限り、これらハイテク企業の業績回復、株価の回復はむずかしいのではないか、と考えてしまいます。

以上



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