目次
訳者まえがき                          1
謝辞                          7

パート1 勝者になるための準備
 はじめに――くそったれマーケットを攻略するときが来た!                          11
 第1章 内なる愚か者――自分のタイプを見極める                          25
 第2章 現実を直視する――自分のトレーディング能力を見極める                          37
 第3章 自分は自分でしかない――自分独自のトレーディングスタイルを見つける             61

パート2 マインド・ゲーム
 第4章 敵を知る――“連中”の考えていることを知る                          93
 第5章 7つの大罪と恐怖心――自分の心理的なアキレス腱を知る                          125

パート3 勝つ気でプレーする
 第6章 トレンドを友にする――正しい銘柄選択法                          147
 第7章 地獄からの耳より情報――5つの悪い銘柄選択法                          175
 第8章 トレードのプランを立ててプランどおりにトレードする――エントリーし、ホールドし、エグジットする方法                          191
 第9章 安全メット着用ゾーン――すべてのトレードでストップを設定する                 205
 第10章 ショートは手短に――変動するマーケットに柔軟に対応する                     235
 第11章 資金を守る――健全なマネー・マネジメントのための6つのカギ                   267
 第12章 勝者であり続ける――ゲームの鉄則                          279
 第13章 ワーオッ!を追い求める――自分の夢を実現するためにトレードする               283

用語の解説                                                    297

訳者まえがき

 著者マイケル・パーネス(通称ワックシー)は、対象読者を主に初心者のトレーダーと投資家においているが、著者自身はあくまでトレーダーであって、断じて投資家ではないし、投資家になることは「最も恐ろしい運命だ」とまで書いている。
 長期投資と短期トレードの優劣はさておき、投資が基本的に企業の長期的な成長を共有することによって利益を得ることであり、トレードが短期的な値動きを利用して儲けることだとすれば、手数料・保証金の低下やブロードバンドの普及と相まって、良くも悪くも、時代の振り子が短期トレードに振り始めていることは確かだろう。
 不正会計、不正表示などの一連の企業不正による破綻。出口の見えない景気の低迷悪化。企業の情報に信頼感が持てず、政府の経済政策に期待感が持てず、景気の先行きが不透明なら、長期投資から振り子が遠ざかるのも無理からぬことだろう。
 一方、著者も書いているが、短期トレードはといえば、太平洋の反対側でも白い目で見られがちなようで、株もじっくり保有するならともかく、短期売買や信用取引はいかがなものかという世間一般の風潮は、こちら側とさほど変わらぬようだ。
 そんな右肩上がりの時代の発想から転換できないでいる方、短期トレードや空売りに対する抵抗感を払拭したい方、あるいはマンネリから脱却するためのインスピレーションを得たい方にとっても、映画化が検討されている著者の半生におけるエピソードを交えながら語られる本書は、絶好の“読むサプリメント”になるに違いない。
 著者は、Level 蕎霾鵑妊沺璽吋奪肇瓠璽ーの動きをにらみながら、ダイレクト・アクセス・ブローカー経由でマーケットに直接参加するというトレーディング環境を舞台に、映画の脚本家でもある著者ならではのタッチでマーケットのくそったれプレーヤーたちの正体や思惑を生き生きと描き出し、興味をそそるさまざまな「プレー」をひもときながら、短期トレードを楽しみながら成功させる秘訣を分かりやすく伝授してくれている。

 「カチンゴー!」という、著者が本書で連発している、そしてCNBC出演のおりにも発していたので、おそらくは日常的に連発している言葉について説明しておきたい。
 この言葉は、巻末の「用語の解説」にもあるとおり、「いいトレードでごっそり儲けること」の意味で使われている。むろん「ガチンコ!」とはいっさい関係ない。
 ちなみに「ka-chingo!」の語源は、カシャーンというレジの音で一般に「大金」というような意味で使われている「kaching」と、大当たり!を意味する「bingo!」の合成語だと推察されるが、著者のオリジナルに近い言葉なのかもしれない。

 最後に、本書の翻訳出版に陰に陽にかかわってくださったすべての方々に感謝申し上げます。

 2002年10月
                        古河みつる


はじめに――くそったれマーケットを攻略するときが来た!
It's Time to Rule the Freakin' Markets!

 1999年1月、僕はオンライン・トレードを始めた。正確には覚えてないが、資金は3万3000ドルぐらいだったと思う。ブローカーのアドバイスを真に受け、6カ月間で手持ち資金のほぼ80%を失った僕の手元に残っていたのは、それだけだったのだ。その損で傷ついた僕は復讐心に燃えていた。自分のお金を取り戻したかった。そして、自分自身の力で実際に取り戻そうと決めた。どんなことがあろうとも。だれの力も借りずに。
 僕は何が株価を動かしているのかを学ぶことに熱中した。自分で銘柄を選んでトレードすることを始めた。マーケットを動かす集団心理について熱心に考えた。そして徐々に、何度も何度も繰り返される強力なマーケットトレンドを、人々の心理がどのように動かしているかを学んでいった。儲けたり、過ちを犯したり、その過ちから学んだりしながら、このゲームにどんどん熟達していった。そうなんだ。本当だ。株式市場は“ゲーム”なのだ。
 1年余りフルタイムでトレーディングに専念していたら、僕のささやかな口座は数百万ドルにまで成長していた。リターン(収益率)にしたら、とんでもないパーセンテージになる。それからインターネット・バブルがはじけ、マーケットが新しい方向を模索しているときでも、僕はコンスタントにお金を儲け続けた。
 どでかいカチンゴー(儲け)だ。
 そんなことがなぜ可能だったのか? どんな秘訣があるのか? 相場が下落したときでも儲け分が簡単に餌食にならないように守りながら、掃除機みたいに利益を吸い上げ続けるという株式市場での成功は、どうすれば実現できるのか?  トレーディングに“聖杯”はない。マーケットにおける成功を瞬時にかつ永遠に実現するための唯一の秘訣や“システム”は存在しない。とはいえ、トレーディングにおける成功と失敗を大きく分ける単純な原則はいくつか存在する。それら原則に従い、オープンなマインドを保ち、経験から学ぶことができれば、マーケットにおけるチャンスを最大限に生かすことに役立つ、キメ細かい判断力を備えた、もっと知的で、有能で、堅実なトレーダーになれるだろう。あなたのゴールは、マーケットを自分のために働かせることを阻む悪い習慣から抜け出すことだ。本書を開いたことで、あなたはトレーディング能力と経済力をともに向上させる、大きな第一歩を踏み出そうとしているのだ。

 ■ ■ ■

 あなたはおそらくこう考えているだろう――「君はうまくいって喜ばしいかぎりだが、自分はそんなにうまくいかないだろうね。なにしろ遺伝子的に損するようにプログラムされてるクチだからな。投資という投資でことごとく損をしてきた。友人に自分が売るものを買い、買うものを売るように勧めていたら、みんな本当に儲かるようになったぐらいだ。それに、マーケットで成功するにはウォール街のインサイダーであるか、思いっきり強運じゃなきゃあ。自分たちのようなゴミ投資家にとっては、ギャンブルでしかないね。ラッキーな人もいるよ。近所の十代の女の子みたいに。その娘は強い上げ相場のときにインターネット株をやって、赤いミアータ(マツダのロードスターの米国名)を手に入れた。だけど、自分にはそんなことは起こらない。なぜならインサイダーでもないし、運が強いほうでもないからね」。
 そういう方に申し上げたい。僕もトレードで損をしたことがある。株式市場で儲けようという最初の試みは、見るも無残に失敗した。位置について、用意……がっくん……の、すってんころりんだ。僕は正真正銘のミスター・ルーザー(負け犬)だった。金儲けの方法だけでなく、下げ相場で儲けを守る方法など、僕には学ばなければならないことがたくさんあった。それから僕は学んだ。マーケットを自分のために働かせる方法、ウォール街のプロたちを彼ら自身のリングの上で負かす方法、そして究極的には、「くそったれマーケットを攻略する」方法を! 僕は、鍛錬を積んだ体重100ポンドの格闘家が体重移動を巧みに利用して300ポンドの獣を倒す、格闘技の世界に例えて考えるのが好きだ。マーケットは1万ポンドの獣だが、本物の獣に比べればはるかに御しやすい。
 運の強さについていえば、マーケットはカジノとは違うので、運はマーケットにおける成功とは関係ない。知識、自制心、忍耐力がテストされる、現実主義者が勝ち、ギャンブラーが負けるゲームだ。成功するために必要なのは、トレーダーとして勝者になるという願望と意志、そして学び続けるというオープンなマインドと規律だ。
 僕がミスター・ルーザーからトレーダーとして成功するまでの話は、たくさんの人たちにアメリカン・ドリームがまだ十分に生きていることを確信させた。マーケットで成功するには、特別な人間である必要はない。むろん僕も特別な人間ではなかった。僕は映画制作者兼脚本家であって、ハーバードMBAでも、ウォール街のエリートでもない。
 ゼロからヒーローへ僕がたどった道のりについて話させてもらおう。
 ニューヨークはクイーンズ育ち。わが家の暮らしはいつもカツカツの状態だった。継父はタクシーを運転し、セールスをやり、(才能はあまりなかったが)スタンドアップ・コメディをやっていた。子供たちがもらうクリスマスプレゼントが“借用書”だけだったのも一度だけではなかった。十代のころにはナイフを突きつけられたことだってあるし、しばらくはホームレス、つまりストリートで暮らしていたことさえある。
 そんな人生と僕自身による金銭上の“実験”から、お金を管理“しない”方法と金持ちになるのを“避ける”方法を早々と学んだ。12歳のとき、僕は競馬場に足繁く通っていた。賭元のファーニーという奴は、僕をカモにしてかなり稼いでいたが、僕は筋金入りのルーザーだった。高校時代も競馬場によく出かけ、いつも大穴を狙っていたが、大きく勝つことはなぜかなかった。19歳のとき、ペニー株(低位株)をかなり買ったこともある。約2500ドルだったが、結局すべて失った。
 とはいえ、金儲けの方法についても少しばかり学んだ。十代のとき、中華料理の出前、タクシーの運転手、ガードマンなど、ありとあらゆるバイトをやった。またコミックブックを売るビジネスも始め、それが大成功した。ニューヨーク市内のホテルで催されるすべての大規模なコミックブック展示会にブースを出し、そのビジネスを通じて市場心理を実地で学び始めた。
 だが、その知識を株式市場に応用することはできなかった。なぜなら、株式も基本的には同じゲームであることをまだ認識していなかったからだ。その認識があったとしてもさほど影響はなかっただろう。当時はまだオンライン・トレーディングが存在していなかった。従来型のブローカー経由が唯一の投資方法だったのだ。
 二十代の初めのころ、また投資を試みた。今回の相手は「ちゃんとした」ブローカーだった。薦められた株をあれやこれや買い、どうなるか見ていた。自分の投資に対して何のコントロールをすることもなく、ゆっくりと価値が下がっていくのを傍観しているだけだった。またしても持ち金をすべて失ってしまった。またもや口車に乗せられてしまった自分にほとほと愛想をつかし、株式市場のことは忘れようと決意した。
 やがて、劇作家と映画の脚本家になるという人生の夢を追い求める決心をした。子供時代の貧民街での暮らしはシナリオのいいネタになるし、伝えたいことはたくさんあった。マンハッタンに移り、バーテンダーになった。それが、ニューヨークにおける売れない芸術家のお決まりのパターンだったからだ。ニューヨークの至る所で、かなりの年月にわたってドリンクを調合し、アフターアワーズ・クラブ(午前4時に開き、正午に閉まる酒場)で用心棒を務め、脚本を書き、貧しさに必死に耐えていた。しばらくの間ホームレスをやったこともある。ついに家賃が払えなくなったときだ。何カ月も友人たちの家のカウチを渡り歩いた。自分はもう、ひとかどの人間になることなど絶対にないだろうと感じていた。もう頑張るのはやめたいと思ったが、自分の中のストリート・キッドがあきらめなかった。
 約10年前のことだが、まだバーテンダーをやっていたころ、ニューヨークタイムズの記事を読んだ。古いベースボールカードが人気で、強打者マイク・シュミットのルーキーカードに500ドルという値がついたという記事だった。ベースボールカード市場は盛況で、昨今の株式市場のようだった。なんたる奇跡か、母は僕の古いコレクションを捨てないでいてくれた。おかげで僕は自分のカードを売ってかなりの小銭を手にすることができた。
 だが、それだけでは満足しなかった。僕は好奇心の強い、徹底的にやるタイプの人間だ。このホットなマーケットがどのように成り立ち、どうしたらビジネスにできるのかを解明したかった。弟にも出資してもらって、ベースボールカードとスポーツの記念品を売るビジネスを始めた。わが社の得意は、70年代の古いワックスパックされた未開封のカードだった。それで僕はワックスマンと呼ばれ、後に“ワックシー”と呼ばれるようになり、状況の変化に応じてモノの値段が高くなるという仕組みをさらに学んでいった。状況というのはカードの物理的な条件のようなものだけではなく、その選手がその年に野球殿堂入りしたとか、サイヤング賞の候補になったとか、記録を破りそうだとかいったようなことだ。
 やがてそのビジネスは僕の本業になり、ワックスマン社は8年ほどで米国最大のベースボールカード・ディーラーのひとつになった。人生はとてつもなくバラ色に見えた。
 いやな経験もかなりしたが、それでも気分は最高潮だった。それで、もう一度株式市場で投資してみようと思い立ったのだ。
 幸か不幸か(幸運でなく不運であったことは後に分かるが)、株式ブローカーの知り合いがいた。約15万ドルの蓄えを株式市場で投資することを決めた。友人のブローカーがどの株を買えばいいか教えてくれ、僕はそのとおりに買った。これほど簡単なことがあるだろうか? 僕は投資家なのに、売り時に関するプランをまったく持たずに株を買っていた。一部はペニー株だった。最初はみんな値上がりしたので「やった!」と思った。だが現実問題、それらはろくでもない株ばかりだったのだ。クズはしょせんクズにすぎない。僕の持ち株はどれも徐々にズルズルと値下がりしていった。
 それはかなり落ち込ませる出来事だった。おまけに、今こそ先へ進むべき時だと判断し、ベースボールカードのビジネスから撤退し始めたころだった。脚本書きと映画制作に戻るべき時だった。蓄えと株の儲けで食べて行こうと計画していたのだ。
 物事は計画どおりには進まなかった。
 そのようにして月々の家賃が約550ドルのマンハッタンにある薄汚い小さなアパートで暮らすようになったのは、さほど昔のことではない。ニューヨークのアパートの家賃について少しでも知識をお持ちなら、それ以下のレベルはもうホームレスしかないことはお分かりなはずだ。泣きっ面に蜂とはこのことか。新聞によるとダウとナスダックが連日新高値をつけ始めていた。そこで自問した。僕以外はみんな金持ちになっているのに、僕の株だけがなぜ上がらないのだろうか、と。
 そして1998年10月の劇的な暴落相場がやってきた。暴落前でも僕の株は確かに大幅に下げてはいたが、それでも少しは価値があった。暴落後は、完全に身ぐるみをはがされてしまった。ひとつの会社は消滅した。別の会社は上場廃止になった。ひとつの本当に胸くそ悪い株が、1株30ドルから4ドルに下がった。残りの株はただ下がり続けた。今に至っても、それらの怪しげな小型株は値を戻していない。僕のブローカーはといえば、彼はもう僕の友人ではないとだけ申し上げておこう。
 6カ月足らずの間に投資額のほぼ80%を失った。暴落後は自分のしていたことがあまりに無意味に思え、しばらく手を出す気にならなかった。CNBCを見るのもやめた。立派な髪形のジョー・カーナンを遠ざけ、僕のお気に入りの、お色気たっぷりマニー・ハニーちゃんのマリア・バルティロモを封印したぐらいだ。僕にできることは、部屋の隅で小さくなって、自分の傷をなめていることぐらいだった。
 その小さな暗い洞穴から抜け出すのに数週間かかった。日の光のもとへ歩み出て目を凝らして見ると、市場が盛り返しているのが分かった。ナスダックが新高値をつけていたのだ。
 当時、手元に残っていたのは全投資額15万ドル中の約3万3000ドルだけだった。僕の株は取引口座の中にまるで戦いのあとの遺体のように横たわっていた。僕はお金を失ったあとにだれもが感じる思いを胸に抱いていた。自分はルーザーで、もう再び何をやっても成功することは絶対にないだろうと。自分は人間として根本的に失格だと感じていたのだ。
 だが同時に僕は、自分のお金はだれかが奪ったのだということに気付きだした。僕が生まれ育った所では、お金を奪われたら奪い返すというのが習わしだった。怒りがめらめらと燃え上がってきた。自分に言い聞かせた。お金を取り戻す方法を見つけよう、と。
 というわけで、本を読んだり、いくつかの無料の情報サービスに申し込んだりしながら、なぜこんなひどい目に遭ったのか、どうしたらお金を取り戻せるかを考え始めた。
 手持ちのろくでもない株の一部を数千ドルで売り払い、オンライン・ブローカーに口座を開いた。最初にしたことは、アメリカ・オンライン(AOL)のコール・オプションを4枚買うことだった。毎日のように値上がりをしているハイフライヤー(上げ足の速い銘柄)だったからだ。AOL株が上がり続ければ、僕のオプションも儲かることになる。その直後のある日、AOLが10〜15ポイント上がったことを知った。AOLを押し上げている要因が何かは正確には分からなかったが、自分が儲かっていることは分かった。そのまったく同じことが翌日にも起こった。カチンゴーだ! それはかなり頻繁に起こっていた種類の、AOLの典型的な上げパターンだった。僕はこの値上がりがなぜ起きているのか見つけ出す必要があると思った。
 少し自信がついてきたときに、インターネット会社のデータ・ブロードキャスティングがCBS MarketWatchを別会社としてスピンオフするという記事を読んだ。これは親会社のデータ・ブロードキャスティングにとって大きな価値があるに違いないと踏んだ。それから別のインターネット会社Deliaも一部事業iTurfをスピンオフすることを知った。そこで昔の取引口座に残っていた怪しげな株を全部売り払い、それら2つの親会社の株を購入した。購入してから数週間後、倍以上に値上がりしていた。僕は有頂天になった。
 このとき僕は「自分はもう一人前だ!」「ブローカーは社会に災いをもたらす存在だ!」と考え始めた。ひとつ目のほうについては、僕にはまだまだ未熟な点がたくさんあることが分かったが、少なくとも2つ目の点については正しかった。だが重要なことは、マーケットがどのように機能しているのかを真剣に考え始めたことだ。僕はメカに強いほうではないし、コンピューターや配管やチェーンソーのような技術的なことを理解するのは得意ではない。だが、物事がどのぐらいの確率で起こりそうかについては鼻が利く。その確率こそがトレーディングのすべてなのだ。
 ほかにも一部事業を別会社としてスピンオフしそうなインターネット会社を見つけるために徹底的に調査を開始した。何社か見つけ、その株でプレーした。ポジションを取り、手仕舞いする絶好のタイミングを見つけ出し、(自分にできる範囲内で)完璧なプレーをすることに努めた。
 また、もしこの特定のプレーでほぼ一貫してうまくいくなら、ほかにも一貫してうまくいく方法があるに違いないと考え始めた。もちろん、常に100%うまくいくものなどマーケットにも人生にもないが、いつも機敏に対処し、間違ったときの損失を最小限に抑えれば、すべてのことについて正しくなくても大金を稼ぐことができる。このように考えてみよう。60%の確率でしか正しい判断ができなかったとしても、思惑どおりにいった場合の収益が15%で、思惑どおりいかなかった場合の損失を7%に限定していれば、あなたは必ず儲かる。だが現実にはそれよりはるかに高い頻度で――約80%の確率で――正しいということが可能であり、多数のプレーで思惑どおりにいった場合の収益が15%よりはるかに大きいことを僕は発見した。強気相場では、スイング・トレードで10%から400%、場合によってはそれ以上になることもあった。弱気相場では、5%から100%、オプションではそれ以上になった。
 そのように、自分で調査し、自分で決めることによって株で儲けられるようになった。4月初めには、3万3000ドルを元手に数十万ドル稼ぎ、「僕はくそったれマーケットを攻略している!」「自分が損するわけがない!」という、向かうところ敵なしという気分になり始めていた。あなたも、1日、1時間、あるいは数分間ぐらいは、そんな気分になったことがあるのではないだろうか? もちろん、毎日上がり続けているような相場では、だれもが天才だ。そのときがまさにそうだった。人々は下がることなど絶対にないと考え始めていた。それこそが、相場が天井に近づいていた何よりの証拠だったのだ。
 案の定、向かうところ敵なしの時期が終わり、4月の調整相場がやってきた。ところで、調整は実際にはマーケットにとって望ましい、健全なものだ。もしマーケットが何カ月も上がりっぱなしで戻すことがなければ、とても不安定になり、やがて一気に暴落し、ティッカーテープでたき火をするような事態になるだろう。それより、しばらく上がり続けたら、少し戻して次の上昇への準備をする。調整は健全なマーケットにとって当然の局面なのだから、僕たちはその局面を予期し、その局面を有利に活用する必要がある。それに、人生のすべてが毎日良いことばかりだったら、良いとはどういうことかが本当には分からなくなるのではないだろうか?
 だが1999年4月、僕はまだ下げ相場で儲ける方法を学んでいなかった。僕がマーケットに戻ってきたのは絶好のタイミングだった。1月はまだ底近くで、本格的に上げ始めたところだったのだ。そして調整がきたとき、僕は儲けのほとんどを吐き出してしまった。強気相場ではうまくいく戦略であっても、下落局面ではうまくいかなくなる。世界一の銘柄を保有していたとしても、調整相場がくればほかの有象無象の銘柄と一緒に値下がりしてしまうものなのだ。
 おかしなことだが、調整相場が来ることを僕は確信していた。3月から4月初めに企業業績が発表されると、インターネット株が大量に安値で売却されると読んでいた。だから、このときに相場が調整局面に入るだろうと見ていたのだ。だが、どうしたらいいのか分からなかった。手持ちの株を保有したまま、それらが値下がりしていくのを傍観していた。まったく情けない気持ちだった。株のショート(空売り)――借りた株を高値で売り、下がったときに買って返すこと――をまったくしなかったのだ。なぜなら、怖かったからだ。ショートによって、家、子供、それに子犬まで、何から何まで失うことがあると聞いていた。マーケットがどんな状態でも儲けるために必要な基本的なツールのひとつを、僕はまだ持っていなかったのだ。
 そのとき僕は、調整相場、そして投資家が最も恐れる弱気相場でも儲ける方法を見つけようと思った。小さなトレードから始め、ショートを自分で学んだ。また、トレードが自分の思惑どおりにいかないときに発生する損失を堅実に限定することを始めた。そしてマーケットの動きに関してできるかぎりのことを学び続けた。CNBCを見て、企業をリサーチし、ニュース、経済データ、マーケットのテクニカルデータに対してトレーダーがどうしてそのように反応したのかを理解するためにパターンを見つけようとした。ほかのトレーダーたちと意見交換をし、それでよく徹夜をした。マーケットが再び上がり始めたとき、僕はその局面を利用してどっさり儲けた。3カ月後、1999年7月の調整相場が来たとき、以前よりも準備が整っていたので、下降局面で実際にショートして儲けることができた。それ以来弱気相場でもうまく儲けることができている。2000年と2001年のテクノロジー株の大暴落も素晴らしいトレーディングの機会になった。
 今では、マーケットがどんな状態でも儲け、利益を守ることができる。良いときも悪いときも儲けたい、あるいは少なくとも持っているものを守りたいなら、あなたもこのテクニックの利用法を学ぶことが必要だ。

 ■ ■ ■

 本書を開いたことで、あなたはすでに儲けられるトレーダーになる第一歩を踏み出している。自分の状況を改善するためのあらゆる“探求の旅”と同様、出発点に立てば目的の半分を達成したようなものだ。残りの半分は、以下の各章に書いてある。これら各章で、自分の戦略を見直し、自分に合ったスタイルを見つけ、マーケットの心理を理解し、お金を失うような決定を自分にさせる心理的なアキレス腱を克服することによって、より良いトレーダーや投資家になる方法を示す。銘柄選択の良い方法と悪い方法、最初から最後までうまくプレーする方法、マーケットが弱気に転じたときに儲ける方法を示す。トレーディングの最も重要な一側面であるマネー・マネジメントのテクニック、そして大損したときに立ち直る方法も学ぶことになる。最後に、株式トレードと経済的な成功はそれ自体が目的ではなく、自分の人生を真に豊かにするほかの目的のための手段でなければならないことを示す。人生においてやることはすべて、経済的なことであるかないかにかかわらず、自分の夢を実現するためにやるべきであるというのが僕の持論だ。
 本書は、初心者のトレーダーや投資家だけでなく、多少の経験があっても自分のやり方をじっくり考え直してみたい読者を対象に書かれている。株式トレードの経験をお持ちなら、すでに耳にされたことのある原則や情報を本書で目にするだろう。僕はあらゆるレベルのトレーダーや投資家とお付き合いしているが、経験豊富な方でさえ特定の共通の過ちを犯し続けるのを見てきた。基本的な原則を明確に示し、何度も繰り返し強調することがたくさんの人々のためになってきた。もっと良い方法を知っていても、いざとなるとやるべきでないことをやってしまうというのが人間だ。あなた自身の心理的な癖を分析することが極めて重要なのはそのためだ。トレードや投資で成功するには、基本的なルールをしっかりと頭にたたき込み、それらに忠実に従わなければならない。
 俳優のポール・ニューマンはかつて、「今日自分があるのは、自分に与えられた才能という贈り物を受け入れたからだ」と語った。あなたに受け入れる準備があるなら、マーケットには信じられないぐらいあなたへの贈り物が存在する。あなたが油断をしていればマーケットは数日であなたを丸裸にすることもできるし、もしそうなっても「ごめん」と謝ってくれはしない。あなたはすでにマーケットで大金を失っているかもしれない。自分のトレーディング能力を向上したいと思い本書を開いたのかもしれない。本書では、株式市場がもたらしてくれる目玉が飛び出すような利益を手に入れるための知的、心理的、感情的な準備をする方法を示す。ウォール街のプロたち、チャットルームで相場を操ろうとする人たち、パニックに陥りやすい昔ながらの投資家たちとの戦いの中で僕や多くの人たちが遭遇した落とし穴を避けながら、トレードで成功する方法をお教えする。手持ちの資金が3000ドルでも300万ドルでも構わない。勝つためのプレーのやり方をお教えしよう。
 トレーディングは難しい仕事だ。規律、忍耐、柔軟性、オープンなマインド、そして毎日学ぼうという決意が必要だ。だが、いつでも安全で信頼性の高い方法でトレードするという規律を貫ける人には、大きな報いがある。僕にとって、トレーディングにおける最大の報いは、数年前なら高いブローカー手数料によってマーケットから閉め出されていた、少額の投資資金しか持たない人たちを助けることから得られた。マーケットはまだ真に公平なプレイング・フィールドとはいえないが、最近までマーケットのプロや大口投資家に独占されていた利益を、小口資金のトレーダーが獲得するチャンスが今はあるのだ。
 では皆さん、“反対側”で会いましょう!


第1章 内なる愚か者――自分のタイプを見極める
The Knucklehead Within

 本章の内容
■だれもが自滅的な行為をしてしまう理由
■よく見られる自滅的でリスクの大きい行為
■自分の内なる愚か者を認識しなければならない理由
■自分の内なる愚か者をコントロールして、トレーダーとして成功する方法

 あなたの内なる愚か者はお金を失いたがっている

 精神医学者のジグムント・フロイトは「だれもが深層に死に対する願望を秘めている」と語っている。それは株式トレードでも同じだ。深層ではだれもが経済的な死を願っている。勝者と敗者の違いは、それをいかにうまくコントロールしているかにある。
 フロイトは偉大な株式トレーダーになれただろうか? 確信は持てないが、なれたのではないかと思う。マーケットのあらゆることが、人間性と心理の観点から見ることによって、その意味がはるかに明らかになってくる(異常な心理、ある種の集団妄想または精神病がかかわっていると考えたくなる日もあるが、実際はそれよりずっとシンプルだ)。ウォール街のだれもが「マーケットは欲望と恐怖という2つのもので動かされていて、実際にトレーダーの私利私欲の力がマーケットを大きくコントロールしている」と言う。
 だが投資家とトレーダーのやることすべてが私利私欲のためだというわけではない。ニュービーや素人のトレーダーの場合、特にそうだ。自分のためになることではなく自分を傷つけるようなことをするために、自分の努力を無為にするような方法を無意識に求めるという奇妙な癖が人間にはあるのだ。その癖とは、僕が“内なる愚か者”と呼ぶ、経済的な自殺願望だ。そいつが僕らに愚かなことをさせ、あとでなぜそんなことをしたのかと後悔させるのだ。こういう考え方は、なかなか受け入れられないかもしれない。あなたはこう考えるだろう。「かなりイカレた人間ならともかく、何だって経済的に自滅しようとするだろうか? だれもが自分の利益だけを考えているマーケットのような場所で、何だって自滅的な行為をするだろうか? おい、バットマン、このなぞなぞを解いてくれ。経済的な自殺願望は、進化論的にいってどういう意味があるのだ?」と。

 トレード用語
 「ニュービー」は経験の浅い新米トレーダー。

 その理論的な説明は心理学の本におまかせしよう。僕があなたにお教えできるのは、経済的な死に対する願望というものが現実に存在することだ。しかもマーケットのだれもがその願望に対する免疫力を備えていないことだ。僕はトレーダーたちがその犠牲になるのを毎日見ている。その深層の動機はおそらく一人一人違うだろうし、あなたの動機を見つけるのはあなたのセラピストの仕事だ。あなたにとって重要なことは、あなたの内なる愚か者を認識し、そいつがあなたのお金を失わせるのを防ぐことだ。

 よくある自滅的なトレード行動

 僕の言っている意味を分かってもらうためにいくつか例を示そう。ほとんどのトレーダーが自分には免疫力があると勘違いしている、極めてよく見られる自滅的な行為だ。もし僕がその行為を目撃するたびに1ドルもらっていたとしたら、本書に無料のお食事券を付けて皆さんにスシをご馳走できるぐらい貯まったことだろう。

 1.マーケットに無防備に飛び込むニュービー

 強気相場になると、どのくらいの人たちがオンライン取引口座を開設するだろうか? うわさにつられて、どのくらいの人たちが特定の株を買いに走るだろうか? 何十万もの人たちだ。彼らの多くは株式トレードや投資の経験がまったくない。多くは株主やマーケットプレーヤーになること、あるいは単にカチンゴーに目がくらみ、準備ができていようといまいと、こらえ切れずに飛び込んでしまうのだ。
 見る前に跳んでしまうのは新米トレーダーたちだけではない。ベテラントレーダーたちでさえ、逃すにはあまりに惜しい状況に遭遇すると、不合理な衝動に駆り立てられることがある。それに、結果がどうなろうとも、飛び込んでしまったほうが簡単で楽しいように思えることがある。準備不足の状態で飛び込むことはカジノ向けのメンタリティーなので、まるでカジノのようになってしまう。競馬場、カード、あるいはルーレットでギャンブルするのと何も変わらない。衝動的にギャンブルすることを自滅的な行為だと思わない人は少ないだろうが、僕らの社会では株式市場はギャンブルではないと信じられているので、衝動的に株に金をつぎ込んでもギャンブルとは別物だと思われているのだ。実際は別物ではない。あなたの内なる愚か者が力を発揮しているときなのだ。
 こうした内なる愚か者をコントロールする方法は、トレードにおける規律とスキルを学び、実践することだ。独自の精神的な美しさを備えた格闘技の一形式と考えよう。以降の各章では、その学習のお手伝いをする。日々学び続け、ひとつひとつのトレードにおいて知的な意思決定を行うために持てる知識を活用するのがあなたの仕事だ。それがカチンゴーへの道だ!

 2.ウォール街のアドバイスにありがたく従う投資家

 ブローカーやアナリストたちの投資アドバイスのままに従うことは、考えられるなかで経済的に最も自滅的な行為だ。ところで、僕はそれを一度ならず二度やってしまい、二回とも大損している! お金を“確かなところ”に、あるいは確かだと“信じたい”ところに委ねておきさえすればうまくいくだろうと人は考えがちだ。それは、貴重品を貸金庫に入れるようなものだと。「つまるところ、長期的に見れば相場は絶対に値上がりするのでは?」「それに株を買うことが最高の投資方法なのでは?」「うまく投資したことでたくさんの人がお金持ちになったのでは?」「それがアメリカ式なのでは?」と。
 あなたが認識しなければならないことは、マーケットは貸金庫とはまったく違うということだ。株式ブローカーも同じだ。まず、マーケットに安全というものはない。次に、ブローカーの利益とあなたの利益は合致せず、現実には完全に相反していることが多いということだ。なぜならブローカーはあなたが株を買うときに支払う手数料によって給料を得ているのだ。あなたが投資で儲けようが損しようが関係ない。ブローカーの主たる仕事は株式取引を行わせることだ。ブローカーをむやみに信じることは、マクドナルドに健康に良いメニューを期待するようなものだ。ブローカーは売らなければならないものを推奨する。それがあなたにとって良いかどうかは関係ない。だからブローカーはみんなくそったれだ!
 テレビに出ているような株式アナリストはさらにタチが悪い。あの連中は勤めている会社の顧客企業の株を宣伝して給料をもらっている本当のセールスパーソンだ。アナリストはみんなくそったれだ! ミューチュアルファンド・マネジャーたちは、タイミングの良し悪しに関係なくファンドのお金を投資しなければならず、ファンドで利益が出ようが出まいが運用管理費を徴収しなければならない。第6章では、ファンドを四半期ごとに勝者のように見せるためにファンドマネジャーたちが行う“体裁繕い”の操作についてお話しする。
 あなたの内なる愚か者は、あなたが他人の判断を信じて傍観しているのが大好きだ。自分で勉強するよりはるかに簡単だし、なんといっても連中はプロフェッショナルなのだ!
 だが、連中のお金がリスクを負っていることは絶対になく、あなたがやろうとやるまいとあなたの取引から利益を得ているのだ。
 この見当違いの信頼は、あなたが自分自身の経済的未来の責任を負い、ウォール街のゲームでウォール街の連中を負かす方法を学ぶ決心をすれば克服できる。そういういわゆるプロたちを思いきり出し抜くのはとてつもなく爽快なことだ!

 3.分散化しない小口投資家

 あなたの内なる愚か者があなたの鼻先にちらつかせるもうひとつの誘惑は、手持ち資金をすべて、途方もなくうまくいくとあなたが“願っている”(この言葉には常にご用心!)ひとつかふたつの株に集中的に投資することだ。その理由は「資金をたくさんの株に分散してなぜカチンゴーを減らすのか?」ということだ。資金が非常に少ない(5000ドル未満)投資家たちも、すべての卵をひとつのカゴに盛りたいという誘惑に駆られるかもしれない。なぜなら、少額の投資では取引手数料が利益をかなり食ってしまうからだ(あなたのトレーディング能力を現実的に評価する方法については第2章を参照)。
 分散化が必要なのは、分散化によってひとつの株またはひとつのセクターで稼いだ利益が減るとしても、その株またはそのセクターが大暴落したときに被る損失が軽くて済むからだ。すべてのお金を1カ所につぎ込むのはリスクがとても高い。まさにあなたの内なる愚か者がやりたがることだ。なぜなら、たまたまうまくいったときには、でっかいカチンゴーが得られるからだ。あなたの内なる愚か者は、儲けた場合のことだけを考えて、損した場合を考えないのだ。
 繰り返そう。あなたの内なる愚か者をコントロールするには、学習と規律が求められる。以降の各章で、これら両方についてたくさん学ぶことなる。

 4.小さな損失を受け入れられない完全主義者のデイトレーダー

 自分はトレーディングが得意だと考え、その考えが邪魔になり、結局悪いトレーダーになってしまう人たちがいる。トレーディングがうまくなりたいと考える人たちは(そう考えない人はいないだろうが)、すべてのトレードで儲けなければならないと考えがちだ。上がると思った株が思惑に反して下がり始め、そのトレードが計画どおりにいかないことがはっきりした場合、値が戻るまで保持していたいと考え、やがては戻ると自らを納得させる。ひとつのトレードで1セントだって失いたくないのだ。そしてほとんどの場合、煎じ詰めれば、そのトレードがうまくいかなったことを認めたくないというのが真実なのだ。
 そんなことは道理に合わないし、頑迷以外の何物でもない。考えてみれば、すべてのトレードで儲けることができると考えること自体、なんと傲慢なことではないだろうか?
 どんどん下がり続ける、どんどん評価損が拡大している株を持ち続けることが、経済的に自滅的な行為だという理由はいくつかある。まず、その株が永久にブレイクイーブンまで回復しないという可能性も現実にあること。次に、なんとか回復したとしても、敗者を持ち続けることであなたの資金が塩漬けになってしまい、何日も、何週間も、何カ月も絶好のトレードのチャンスを逃してしまうことだ。それで得られるものといえば、トレードの目的であるカチンゴーを得ることではなく、損得なしのゼロの状態に戻ることだけなのだ。3つ目に、意地になって持ち続けることは、ピントのはずれた、計画性のないトレーディングと規律の欠如の例であり、そんなトレーダーはやがて全資金を失うことになるということだ。
 「だがちょっと待った!」あなたの内なる愚か者は言う。「今すぐ損を確定するのはバカげている。なぜなら株は売るとすぐに値を戻すものだからだ。一種のマーフィーの法則が働いて戻るのだ!」と。
 もちろんその可能性もある。だが問題はその可能性の高さだ。その株が反発する前にさらに一段安になる可能性も同程度にある。もし一段安になる前に手放していて、その株が反発すると信じるだけの十分な根拠があるなら、それも結構だ。もっと安い価格でまた買うことによって幾ばくかのカチンゴーを稼ぐことができるからだ。
 だが、あなたが売った途端に株価が上がり始めることがあったとしても、悪いトレードに執着する習慣をつけてしまうと、もっと、もっと、多くの値上がりしないケースに遭遇することになると認識する必要がある。敗者を持ち続けるのは、成功する見込みのない戦術だ。
 すべてのトレーダーは、小さな損を受け入れる用意がなければならない。小さな損を受け入れることができない、あるいは規律を守ることができないなら、あなたはトレードをすべきではない。

 5.自信過剰とパニックの間で揺れ動く感情的なトレーダー

 ミスター・ルーザーの話を覚えているだろうか? 手持ちの株が上がると自信過剰になり(俺はマーケットと一心同体だ!)、さらに買い増してしまう。株価が下がるとパニックに陥り売ってしまい、自己嫌悪で落ち込む(俺って最低!)。安値で買って高値で売る代わりに、ミスター・ルーザーは高値で買って安値で売る。それは、お金を失う絶対確実な方法だ。
 感情的なトレーダーはマーケットがどのように機能し、マーケットに何を期待し、マーケットで欲するものをどのようにして手に入れるかを理解することが必要だ。それから自分の感情的な内なる愚か者を黙らせ、自分自身の判断に耳を傾けることができるようにスキルと規律を身につけることが必要だ。

 6.調子の悪い日でもトレードしようとする無分別なトレーダー

 時にはトレードすべきでない日もある。あなたの側に問題がある日もある。体調が悪かったり、気分がイライラしていたり、風邪をひいていたり、感情的な苦痛や不愉快な思いをしたばかりだったり、世間に腹を立てているなら、その日はお休みにしたほうがいい。もしも身体的な痛みがあるなら、集中力が不足して正しい行動ができないだろうから、トレードすべきではない。注意が散漫になり、ヘマをしでかすだけだ。もしも感情的な苦痛があるなら、注意力が大幅に低下しているはずだ。悲嘆に暮れ、罪悪感にさいなまれ、あるいは自己嫌悪に陥っている――。そんな感情的な状態の人は無意識に勝ちたいと思わなくなっている。無意識に自分自身を傷つけたり、ひどい目に遭わせたりしたくなるのだ。
 毎日トレードする必要はない。調子の悪い日には、自分自身に優しくなろう。散歩をしたり、熱いお風呂に入ったりしよう。トレードはまた別の日にしよう。

 あなたはどのパターンに当てはまるだろうか?

 以上は、トレーダーたちが繰り返し犯し続けているよくある過ちの一部にすぎない。きっといくつかはあなたも思い当たるだろう。あなたはどのタイプだろうか? これら以外に、どんなリスキーで、お金を失うような行動をあなた自身は繰り返しているだろうか? これら過ちとその他の似たような行為は、第5章で説明する「7つの大罪と恐怖心」によって引き起こされることが多い。あなたの肩の上にいる赤い小さな悪魔のように、あなたの内なる愚か者は、トレーディングにおけるこれらの罪を犯すようにあなたをそそのかすのだ。あなたの内なる愚か者は、不必要で道理に合わないリスクを取るようにあなたにささやきかける。それらリスクを取ることが道理にかなうかのようにあなたを丸め込むのだ。
 今こそ、自分の内なる愚か者の好みのスタイルを見極めるときだ。あなたを油断させるために、スタイルを巧みに変えることがしばしばある。あなたの仕事は、自分の内なる愚か者が働いているのを認識することを学ぶことだ。そいつの影響を認識できれば、そいつのパワーに注意し、コントロールすることができるようになる。
 僕自身、無意識にトレードをサボタージュするやり方を見つけたり、同じ過ちを繰り返し犯すのを避ける方法を見つけたりするまで、しばらく時間がかかった。最初にトレードを始めたときは感情的になってしまい、好機を逸するのがいつも怖くて、値上がりを追いかけ、高値で買い、それからパニックになって売って大損していた。僕はこのパターンを投資資金がすべてなくなるまで繰り返した。それから、プランを立ててトレードすること、すべてのトレードでエントリー・ポイントとエグジット・ポイントをあらかじめ設定しておくことを学ぶことによって、この負けパターンから脱出することがようやくできるようになった。
 知的に売買を行う方法を学んだあと、僕の最大の弱点は分散化をしていないことだと発見した。ひとつの有望な銘柄に入れ込んで、資金を集中的につぎ込みすぎてリスクを高めていたのだ。第5章では、このことをの「大食の罪」と呼んでいる。「ひとつのトレードに狂う」と呼んでもいい。この種の悪いトレードは、僕から一財産を奪い去った。1回目は、あらゆるトレンド・プレーの中で最高のものになるだろう思っていたひとつのIPOスピンオフ銘柄で口座をいっぱいにしたときだ。そのとき僕が気づかなかったことは、マーケットが下げに転じ始めていて、目先のトレンドが弱くなっていたことだった(トレンド・プレーの仕組みと方法については第6章を参照)。損失のパーセンテージとしては暴落とまでいかなかったが、ひとつの銘柄に大量の資金が塩漬けにされていたので、その前3カ月間の利益がすべて消えてしまった。
 2回目に「大食」にトレーディングを支配されたとき、僕は少しばっかり賢くなっていた。資金のほとんどをひとつの銘柄につぎ込むのではなく、たくさんの銘柄につぎ込んでいたのだ。ただし、ひとつのセクター内の。そのセクター、バイオテックは、超ホットで、多数の大型株や小型株が1日に15〜40%値上がりし、好材料が流れたときは1日に数百%値上がりすることさえあった。だからこれら小さな優良馬で僕の厩舎をいっぱいにした。僕のポートフォリオの半分以上を占めていたのだ。
 それからしばらくしてバイオテックが大量の試験管と実験用の白衣を派手に散乱させながら暴落した。トラブルに陥ることが予測できていたにもかかわらず、ポジションが大きすぎて、大きな損失を避けるだけの速さで売り逃げることができなかった(投資額が多いことが問題になるとは思わなかった……ですよね? 投資額が非常に大きいことにまつわる特別な問題については第2章を参照)。僕は、自力で運命から逃れることができない、図体の大きい、動きの鈍い獣のようにわなにはまってしまったのだ。
 それ以来、自分の内なる愚か者の大食癖に目を光らせておくことを学んだ。どんな銘柄でも、セクターでも、一点集中タイプのプレーへと極端に走ろうとする誘惑には、きっぱりとノーと言うことを学んだ。マーケットが自分の思惑どおりになるのを期待するのではなく、常にマーケットに機敏に反応することを学んだ。
 僕のそれ以外の大きな弱点も感情的なものだ。特に、感情的に調子の悪い日だ。だが、今では毎日トレードする必要がないことを知っているので、イライラしているときや、何となくトレードする気分になれないときは、燃え尽きたからとか、ほかに考えることがたくさんあるからとかいう理由に関係なく、僕はほかのことをやることにしている。今日はトレーディング日和でないと認識するには、自分自身に対する気配りと、そういう日には手を出さないという規律が必要だ。本当だ。休むことは実にいい結果を生む。ただし、トレードする日は、勝つ気でプレーしなければならない!

 トレーディングを改善するための第一歩を踏み出そう

 あなたのトレーディングの妨げになっている自滅パターンをどうすればコントロールできるのか? たった今からでもできることが2つある。

 ステップ1
 第一に、自分自身のことで気がついている、リスクの高いトレードの主なタイプを見つけてみよう。格好をつけずに本音でやること。これは言い訳ではなく、愛のムチだ。それらを書き出し、重要な順に番号をつけてみよう。

 ステップ2
 第二に、最も重要なことだが、自分自身の限界を見極め、その範囲内で行動することを決意すること。それが、トレーディング、スポーツ、政治、その他何においても、勝者が勝者になる道だ。あなたの内なる愚か者は常にあなたと一緒にいる。自分の短所を直視せずに否定しようとすると、あなたを敗者にする死角と弱点を持つことになる。自分自身の限界を認め、その範囲内で行動することによって、あなたの内なる愚か者があなたをいつもハメようとしているわなを避けながら、最も効果的にトレードする方法を学ぶことができるだろう。

 ゲームの鉄則
 自分の内なる愚か者をコントロールしよう

 ゲームの鉄則
 調子の悪い日には手を出すな

 ゲームの鉄則
 勝つ気でプレーしよう!


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