日本語版への序文

 ウォーレン・バフェットは、アメリカにおける伝説的な投資家であり経営者である。彼は学生時代に貯めた一万ドルを元手に、およそ四五年をかけてバークシャー・ハサウェイ社株の形で個人資産を数百万倍にまで高めた。また、並外れた個人資産をバフェット自身が形成する一方で、バークシャーの株主や彼の投資原理に従った何千人もの人々が、今や百万ドル以上の資産家となっている。 過去二〇余年にわたり、バフェットは彼の投資原理をバークシャーの株主に向けて年次報告書のなかで述べてきている。本書は、それをテーマ別にまとめた集大成であり、ある意味では賢明なる投資、そして賢明なる経営を学ぶ上での決定版的な入門書といえる。バフェットに関する書籍はこれまでに数多く出版されているが、アメリカで大きな成功を収めてきた彼の投資および経営哲学がバフェット自身の言葉で綴られている本は、現在では本書のみである。 会計方式やコーポレート・ガバナンス(経営統治)、投資慣習において、日米で多少の異なる点もあるが、投資における重要な原理や株式投資の将来性が両国にとって共通の関心事であることを思えば、それらは大きな問題にはならない。さらに世界の投資環境は急速に変化が進んでおり、その結果として世界中の企業はますますグローバル・スタンダード化し、特に日米における近似性は顕著である。 企業環境における日米の収斂を表す好例としては、現在日本が取り組んでいる企業構造上の抜本的な改革と規制緩和を挙げることができる。商法の改正によって、日本でも持ち株会社が林立する時代が訪れるだろう。その結果、生産調整やレイオフ、工場閉鎖などの状況対応型のリストラ策に走る企業文化は生彩を失うこととなろう。そうした消極策に代わって企業の分離新設や活発なるM&A市場の発展など、日本の企業社会は将来を見越した積極的な企業文化を構築していくこととなろう。 投資環境においても日米の収斂が見られる。それは日本のベンチャー企業にとっての直接的金融手段の増加である。ナスダックの日本上陸や、二一世紀に向けて日本の企業地図上に新たなビジネスを組み込もうとする国の政策によって、ベンチャー企業にとっての直接金融への道がさらに強固なものとなる。東京証券取引所が新設した「マザーズ」やナスダック・ジャパンによって、将来性の高いベンチャー企業への市場を通じた直接投資の道が開かれる。過去には想像もできなかったことであろう。 日米の企業・投資環境がこのような形で収斂していく現在、バフェットが投資家や経営者に語ってきたさまざまな教えは、日本の読者たちにとってまさにタイムリーな情報である。持ち株の流動化や投資媒体の多様化によって企業構造の柔軟化が進むなかで、日本の投資家や経営者にとっては、そうした環境において並外れた成功を収めてきた人物の話に耳を傾けるべきときであろう。本書は投資と経営に興味を持つすべての日本人にとって、非常に価値ある一冊なのである。

 二〇〇〇年一月   ローレンス・カニンガム/カルドゾ・ロースクール/ニューヨーク

Benjamin N. Cardozo School od Law

55 Fifth Avenue

New York,New York 10003



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