目次



監修者まえがき               1
謝辞                       3
はじめに                5
第1章 チャートの基本           10
第2章 パラボリック・タイム/プライス・システム          14
第3章 ボラティリティ             28
  ボラティリティ・システム           30
第4章 ディレクショナル・ムーブメント(方向性指数)           42
  ディレクショナル・ムーブメント・システム              57
第5章 モメンタムの概念               64
  トレンド・バランス・ポイント・システム             65
第6章 RSI(相対力指数)             78
第7章 リアクション・トレンド・システム             88
第8章 スイング・インデックス               108
  スイング・インデックス・システム           118
第9章 CSI(銘柄選択指数)                 132
第10章 資金管理                 138
 おわりに              139

用語・略語解説              141


 はじめに


 本書で取り上げた概念、方法、そしてシステムは、長年にわたるマーケットの調 査、研究成果であり、テクニカルに徹したこのやり方で非常に信頼のおける結果を得 ることができた。本書の目的は、読書の楽しみを提供することではなく、実際のト レードにおいて役立つ概念や手段、指数を読者に身につけてもらうことにある。
 今回紹介するテクニックは、筆者のこれまでの著作とは重複しておらず、すべてオ リジナルの内容になっている。また、取り上げた題材は、初心者からシステムにも詳 しい経験豊富なプロまで、すべてのトレーダーを対象にしている。この取り組みは筆 者にとっても大きなチャレンジだった。初心者は内容を完全に理解するため何度も読 み返すことになる半面、コンピューター世代の達人にとっては簡単すぎるということ にもなりかねないからである。それでも、多くのトレーダーにとっては比較的理解し やすい構成になっていると自負している。
 プログラム機能付き電卓は比較的安価で手に入るため、テクニカル・トレーダーに とって必須のアイテムになりつつある。そこで、本書で取り上げたすべてのシステム や指数も、市販のほとんどのプログラム機能付き電卓で計算できるようになってい る。もしうまくプログラムできないときは、電卓業者に問い合わせれば、たいていは プログラムを書けるスタッフが手助けしてくれるはずである。
 プログラム機能付き電卓を使えば、これらのシステムは非常に簡単に利用すること ができる。なにしろ最新価格のデータを入力してボタンを押せば、1秒とたたずに答 えがディスプレイに表示されたり、印刷されたりするのである。
 また、これらの電卓の多くが、プログラムやデータを磁気カードに保存できるよう になっており、カードを変えるだけで、数秒とかからずにシステム変更もできる。
 本文中のシステムはHP−41CV、アップルII(および+、E)、IBMパソコン用にプログ ラムしてある。また、本書で取り上げたソフトウエア(ニュー・コンセプト・ソフト ウエア・パッケージ)のパンフレットは下記から取り寄せることもできる。
 Trend Research, Ltd.
 P.O.Box 128
 McLeansville, N.C. 27301
 Tel (919)698-0500

 全体の構成

 本書は10章に分かれている。各章は前後の章と関係なく単独でも理解できるように なっているが、第1章だけは本書全体にかかわる基本的な考えや定義について述べて いるので、最初に読んでほしい。そのあとは、例えばディレクショナル・ムーブメン ト(方向性指数)に興味がある読者なら、第2章、第3章を飛ばして、第6章に進む ということもできるようになっている。
 ただし、実際にこれらのシステムを使いトレードを行う前に、第9章と第10章は必 ず読んでおいてほしい。これらの章もほかと同様、独立して読めるようになっている。

 ワークシート

 本書で取り上げたそれぞれの指数やシステムにつき、日々の作業を単純化するデイ リーワークシートが添付してある。チャート分析法のひとつである相対力指数(RSI) を除き、すべての指数とシステムはデイリーワークシートを使うだけでも理解できる ようになっている。そのため、チャートをわざわざ作成する必要はないが、チャート で視覚的に捕らえることが、トレーダーの理解を深める場合も実際には多い。
 各章の終わりには、指数やシステムのデイリーワークシート使用例を載せてある。 もし本文を読んでも内容が理解できないときは、この使用例をたどることでしっかり と把握できるようになるだろう。
 また、巻末には、付録として白紙の各種ワークシートを載せてあり、コピーして引 き続き日々のデータを記入できるようになっている。

 チャートの購読

 本書で取り上げたシステムを理解するために、チャートを作成する必要はないが、 多くのテクニカル・トレーダーは良質のチャートサービスを購読している。
 筆者の場合はコモディティー・パースペクティブというチャートサービスを好んで 利用している。同社のチャートは商品も通貨も13インチ×10インチ(約33cm×25cm) のシートにひとつずつ印刷されており、最後の価格バーのあとには翌週の値を更新す るための十分なスペースも取っているからである。チャートは毎週月曜日の朝に、直 前の金曜日までの最新データが届くようになっている。
 コモディティー・パースペクティブ・チャートのサンプルは、第6章RSIのなかに載 せてある。この種のチャートは下記で取り扱っている(コモディティー・パースペク ティブはナイトリッダーに買収、再編され、現在はCommodity Research Bureauの Futures Perspectiveの一部になっている)。

 パラメータ・レンジ(無限にあるシステム)

 複数のトレーダーに最高のテクニカル・システムを紹介すると、同じシステムを使 用したトレーダーの出した注文がまったく同じポイントに集中して、予想外の結果に つながる恐れがある。だが、この問題は、パラメータに可能なかぎりレンジ(幅)を 持たせることで減らすことができる。トレーダーは一定のレンジのなかから独自のパ ラメータや定数を選択し、それをシステムに適用すれば、結果に差はほとんど生じない。

 例えば、あるシステムでは、新高値からポイントPまでのうち30%押したら、買い トレードが終わることを示すとする。この場合の定数は0.30で、ポイントPから最高 値までの距離を垂直に測り、その30%を最高値から引くと、ストップ・プライス(仕 切りの逆指値)が決定する。
 では、なぜこのシステムの考案者は30%が絶対に最適な距離だと決めたのだろう?
 もしこの定数を特定の商品、あるいは株式を使い、わずか8回のトレード結果で決 定しようとすると、定数を若干変えて、トレードが1回不調だっただけでも全体の成 績はかなり下がることになる。しかし、これがもし20種類の商品を使い、400回のト レードの末に決定されたのであれば、定数を29%や31%に変えても、結果にほとんど 影響しないことは読者にも想像がつくだろう。変動幅は28.4%、あるいは31.6%に広 げても違いはわずかだが、これが27%や33%になると全体の成績が少しずつ下がり始 め、20%や40%までいくと、利益は大幅に減ることになる。そして、この結果をグラ フにすると“釣鐘曲線”(ベルカーブ)と似た形になる。


         レンジの最低値である28%をポイントA、最高
定数の      値である32%をポイントBとした場合、28〜32
レンジ      %の間で選んだ定数を使ってトレードを行えば、
         結果はほぼ同じになる。

 “釣鐘曲線”との相似は、本書で取り上げたシステムのなかで定数のレンジが適用 できるものすべてに共通している。


第1章 チャートの基本
BASIC


 基本用語

 図1.1のバー(棒足)が1日の取引結果を表していることは、大部分のトレーダーが 知っていると思う。
 バーの一番上は該当する株や商品の1日の高値を、一番下は安値を表している。ま た、バーの左側の突起は始値、右側の突起は終値を表している。
 本文で頻繁に使われているLOPはローポイント、、HIPはハイポイントの略で、LOPは 前後のバーの安値が両方とも高い状態をいう。反対にHIPは、前後のバーの高値が両方 とも安い状態をいう。

図1.1                 図1.2

図1.3                 図1.4

 もうひとつ、よく出てくるのがシグニフィカント・ポイント(SIP)で、これは必ず 高SIPあるいは低SIPという使い方をする。高SIPは買いトレードにおける最高値(天 井)を、低SIPは売りトレードの最安値(底)指す。
 シグニフィカント・クローズ(SIC)はトレード期間中の最も有利な終値を指す。買 いトレードのSICはその期間中、最も高い終値である高SICを、売りトレードでは最も 安い終値である低SICを意味する。
 ストップ&リバース(SAR)は、上昇なら買いトレードを手仕舞いし、売りトレード に転換し、売りトレードならば、その逆になるポイントのことである。
 こうしたバーチャートの基本形は本文中に繰り返し使われている。

 テクニカル・トレーディング計画に欠けているもの

 テクニカル・トレーディング計画は通常2つの部分から成っている。
 1.テクニカル・トレーディング・システム
 2.資本管理のテクニック

 テクニカル・トレーディング・システムの多くは、トレンドフォロー・システム で、トレンドがあれば、これが最も利益率の高い方法だということに筆者も異存はな い。ただ、この方式はマーケットが方向性を失い、揉み合いになると必ずある程度の 損失を出すという一面もある。
 トレンドフォローに対し、保ち合いの状態向きのシステムは、揉み合いやトレンド のないマーケットにおいて利益を出すことはできるが、この方法は頻繁にトレードを 行い、小さな利益を積み重ねていくため、手数料の割合が大きくなることは否めな い。また、市場がトレンドモードに変わると、アンチ・トレンド系のシステムは利益 が上がらなくなることが多い。
 筆者は長年テクニカル・トレーディングの方法を分析し、開発してきたが、いまだ にすべてのマーケットで一貫して利益を出すことのできる、あるひとつのシステムに 出合ったことはない。そして、そのようなシステムがないということは、トレードし ようとしている商品がトレンドモードにあるかどうかを判定する基準だということに なる。これについては第4章のディレクショナル・ムーブメントのなかで詳しく説明 している。
 そのほかにも考慮すべき点がいくつかある。トレンドのなかで、たいてい最も利益 が出るのはトレンドの変動が大きいとき、つまりマーケットでの動きが非常に早いと きで、これについては第3章のボラティリティ・インデックスのなかで説明している。  また、実際のトレードにおいては、証拠金、手数料についても考える必要がある。

 以上4つの要素を適切な配分で組み合わせたものが、第9章で取り上げたCSI(銘柄選択指数)になる。CSIの基準による最高の商品は、
 1.ディレクショナル・ムーブメント(方向性)の値が高く
 2.ボラティリティが高く
 3.ボラティリティやディレクショナル・ムーブメントの値に比べて、証拠金の額 が適当で
 4.手数料も適当であるもの

 といえる。
 これまで述べてきたことをまとめると、テクニカル・トレーディング計画に欠けて いるのは、どの商品をいつトレードしたらよいかを判定し、決定する方法だというこ とになる。そして、これに対する本書の答えがCSIなのである。
 ディレクショナル・ムーブメントやボラティリティ、モメンタムといった複雑な概 念に進む前に、比較的簡単だが市場に動きがあれば利益を出すことのできるシステム を紹介したい。このシステムはマーケットの動きが中程度(2〜3週間継続する)の とき、筆者の知るかぎり最も利益率が高く、気に入っている。システムの名前をパラ ボリック・タイム/プライス・システムという。


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