3.うねり、移動平均、乖離率

 図1−1をご覧ください。日足終値の折れ線グラフです。横軸は立会日番号で、60日おきに垂直な点線で目盛り線を引いてあります。株価(日足終値)の動きに60日波動のうねりがあるいとすれば、一般的にはこのような曲線(折れ線)で表わすことがきると思います。山から谷ヘ、谷から山へが60日おきに繰り返すうねりです。ただし、トレンドが両肩揃いで、平均株価が500円、値幅(山と谷の差)が200円の場合です。このような株価のうねりの場合、その移動平均線はどうなるでしょうか。

 図1−2をご覧ください。太い実線は、図1−1と同じ日足終値の折れ線グラフです。細い点線(点がつながっている曲線)は30日移動平均線、小破線(短い線がつながっている曲線)は60日移動平均線、大破線(やや長い線がつながっている曲線、この図の場合は水平な直線)は120日移動平均線、一点破線(やや長い線と点が交互につながっている曲線)は180日移動平均線です。

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 移動平均線の描き始めの位置は、移動日数分だけ右側にずれています。これは、株価の移動平均線の描き方が、このように決められているためです。また、詳しい数学的な説明は省略しますが、移動平均線の山と谷の位置は株価の折れ線より少し右側にずれています。しかし波動日数は、株価と同じ60日です。したがって、株価の波に比ベ、移動平均線の波は運行します。

 移動平均線の山と谷の値幅は、移動日数が増えるに従って小さくなり、移動日数が波動日数のちょうど偶数倍になると波が消えてしまいます。そして、移動日数が株価の波動日数の偶数倍を越えると、再び波が表れてきます。

 図1−3をご覧ください。移動平均からの乖離値幅(株価と移動平均の差)の折れ線です。移動平均線の移動日数と線の種類との対応は、図1−2と同じです(以下回じ)。乖離値幅の動きは、移動日数が120日の場合、元の株価の動きと一致します。移動日数が30日の場合は値幅が少し小さくなり、60日の場合は少し大きくなります。移動日数が120日を越えると、再び値幅が上下にずれてきます。しかしどの移動日数の場合でも、0円の高さを基準にすると、山の高さと谷の深さは同じ値です。

 山と谷の位置は、移動日数が120日の場合、元の株価の動きと一致します。しかし、波動日数の偶数倍以外の移動日数では、少し左側にずれています。そのため、波動日数の偶数倍以外の移動日数の場合、乖離値幅の波は株価の波より先行します。

 図1−4は、移動平均からの乖離率(%)の折れ線です。値は違いますが、相対的には図1−3と同じです。

 図2−1をご覧ください。太い実線が株価の動きです。トレンドか直線的な右肩上がりの直線(太い点線)で、その上に図1−1の値幅が同じ60日波動が重なった場合です。細い線は移動平均線で、移動日数が増えるに従って波が小さくなり、120日でトレンドの直線と平行な直線になります。移動日数が120日を越えると、再び波が現れてきます。

 図2−2は、移動平均からの乖離値幅の折れ線です。図1−2と図2−1で示した株価の折れ線と移動平均線は、違った形をしていました。しかし、図1−3と図2−2の乖離値幅の折れ線は、似た形をしています。ただし、0円を基準とした場合、図1−3では山の高さと谷の深さが同じてしたが、図2−2では、山の高さは谷の深さより大きくなっています。

 図2−3は、移動平均からの乖離率の折れ線です。立会日番号が大きくなるに従い、波が小さくなっています。しかし、この図を見るとき注意しなけれぱならないことがあります。

 一般に、株価が低い場合の値動きの幅は、株価が高い場合の値動きの幅より小さい

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ことが多いと思います。とすると、乖離率が次のように計算されていることを考えなければなりません。

   乖離率(%)=100×(日足終値一移動平均)/移動平均

 つまり、右辺の括弧内の日足終値と移動平均の差が同じでも、移動平均の値が大きくなれば、乖離率の値は小さくなります。

 図2−1の太い実線で示した株価の折れ線は、分かりやすくするため、太い点線で示した右肩上がりの直線と、連続する同じ大きさの波を合成したものです。図2−1のような場合の株価の波は、立会日番号が増えるに従い、実際には、次第に大きくなることが多いと思います。とすると、図2−3の波は、立会日番号が大きくなっても、あまり小さくならないのではないでしょしうか。もしかしたら、波の大きさはほとんど変わらないかもしれません。

 図3−1をご覧ください。図2−1とは逆に、トレンドが右肩下がりの直線で、その上に図1−1の値幅が同じの60日波動が重なった場合です。移動平均線の性質は、図2−1と左右の関係は同じですが、上下の関係は逆になっています。図3−2と図3一3の乖離値幅や乖離率の性質も同様です。

 図4−1をご覧ください。トレンドが放物線(ものを投げたときのものが飛ぶ姿)で、その上に図1−1の同じ値幅の60日波動が重なった場合です。太い実線で示した株価の動きは、典型的な三尊型をしています。

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 三尊型ができる理由は、案外こんなところにあるのかもしれません。放物線の上下を逆にすれば、逆三尊型になりますし、放物線の左右の幅を変えれば他の天井型や底型ができます。筆者は単なる個人投資家にすぎず、罫線屋やチャーティストになる気はありません。移動平均や乖離率にあまり深入りすると、本来の目的を見失う恐れがあるので、この辺でやめておきます。図4−2や図4−3もしっくり見てみてください。

 うねりと移動平均線の関係、トレンドが加わったときの変化、乖離値幅や乖離率の性質等をある程度理解しておくことは、チャートを見る上で必要と思います。グランビルの法則でいうゴールデンクロスやデッドクロスの性質、乖離率が売買指標のひとつとして使われる理由等が分かりやすくなります。

 筆者は、「過剰反応効果」アノマリーのひとつの指標として、乖離率を利用できそうに思い、ヒヤヒヤしながらささやかな現物売買(10銘柄)で実験してみました。手数料や税金を払うといっそうささやかになりましたが、10戦10勝という信じられない成績が得られました。当り外れの確率が5分5分とすれば、1/1024の確率の現象です。それでも約0.1%の確率で起こります。今のところ、ラッキーだったのだ、と思うことにしています。