p%天底利用リズム取り

          その3

         1〜10%天底の性質(2)

 株式市場が低迷したままです。首相も蔵相も掛け声ばかりで,いつまでたっても「女の腕捲くり」のように実効(実行?)が伴わず,とうとう連休明けしてしまいました。いつになったら株式相場に五月晴れが訪れるのやら。

 最近の市場は,裁定取引主導のようです。そのためか,PKOも手伝ってか,日経225採用銘柄と不採用銘柄の株価の動きが違うといわれます。個人投資家は,日経225を敬して遠ざかるほうが無難ともいわれているようです。

 銀行,電力,ガス銘柄を除くと,1995年5月1日現在,日経225採用銘柄(以下,日経225と略)ば212銘柄です。ただし,2銘柄(「5721志村化」と「5901洋カン」)は東証の貸借銘柄ではありません。また,日経225不採用のFAI信用銘柄(以下,非225と略)は529銘柄です。今回は,これらの日経225と非225の違いが,p%天底にどのように影響しているか,過去に遡って調ぺてみることにします。ただし,日経225銘柄の中身は途中で変化していますが,現在の銘柄のままで検討します。

 検討したデータは,1988年l月から1995年4月までの7年4カ月の日足終値です。また,検討する天底率は,今回は「ウネリ取り」の参考にもなるようにと思い,0.8,1,3,5,7,10,15および20%の8段階にしました。

 大量データの性質の全体像を把握するには,分布を調べるのが一番です。前回(本誌3月号)書きましたように,累積相対度数分布図を使って比較してみます。

 図1をご覧ください。8段階の天底率ごとに図を描いた,日経225と非225に発生した暦年ごとの天底数の累積相対度数分布図です。横軸は天底数,縦軸は累積相対度数(%)です。ただし,1955年は4月までのため,天底数を3倍し,12カ月分に調整してあります。なお,一定面積いっぱいに図を描くため,横軸の目盛りが図ごとに違うことに注意してください。

 暦年は線の形で区別し,日経225は太線で,非225は細線で区別してあります。小さな図の中に16本の線を描いているため分かりにくいと思います。しかし,じっくり見ていただけぱ,大要は掴んでいただけると思います。

 どの天底率でも,天底の発生数は,暦年によって,したがって時期によって,かなり大きく動いています。同時期の日経225と非225の差は,暦年間の差の大きさと比べると,それほど大きくありません。とすると,日経225と非225の天底数の差は,あまり気にすることもなさそうです。

 天底率10%以上になると,1995年では,天底数ゼロの比率が高いのが目立ちます。これば,まだ4カ月の統計に過ぎないためです。年末には,多分,他の暦年とほぼ同様になると思います。

 図2をご覧ください。直前の天井から底までの立会日数の累積相対度数分布図です。天底率が小さいと,日数は短く,どの暦年の日経225も非225も,ほぼ似たような分布をしています。天底率が大きくなると,暦年間の差が大きくなります。天底率が10と15%の場合,1995年てば,日経225と非225の差が大きくなっています。

 図3をご覧ください。直前の底から天井までの立会日数の累積相対度数分布図です。天底率が大きいところでは,虫眼鏡でも使ってじっくり眺めると,暦年ごとの差とバブルやPKOとの関係がありそうな気がします。

 図4をご覧ください。天井から底までの下降率の累積相対度数分布図です。どの線も,当然ですが,天底率より小さい相対度数はゼロです。暦年間の差に比ベ,日経225と非225の差は大きくありません

 図5をご覧ください。底から天井までの上昇率の累積相対度数分布図です。どの線も,天底率より小さい相対度数はゼロです。天底率5〜10%で,阪神大震災直後の一時的な活況の影響がでているようです。

 図1〜5を見ると,p%天底の性質は,検討した範囲では,時期によりかなり動きます。個人投資家は日経225を敬して遠ざかるはうが無難という警告は,p%天底の面からは,慎重に銘柄を選択するほうが無難ということになるかもしれません。

 図6と7をご覧ください。日経225と非225の差をあまり気にすることもなさそうなので,FAI信用銘柄739社について,天底率が7%の天底数と他の統計量(集団の性質全体を表わす数値)との関係を調べてみました。データは,直近1年間(1994年:5月〜1995年4月)だけを使いました。

 横軸はすべて,直近1年間に出現した銘柄ごとの天底数すなわち底数と天井数の合計です。ただし,出現した天底数が1以下の銘柄を含んでいません。縦軸は,いろいろな値を銘柄ごとおよび天底ごとにに求め,それらの合計を対応する底数または天井数で割った平均値です。「速度」は,次のように求めた値です。

          下降速度=下降率/立会日数

          上昇速度=上昇率/立会日数

 小さな白丸は,l銘柄を表わします。横軸は小数点以下の値がない整数(自然数)ですが,縦軸は小数点以下がある値(実数)です。そのため,横軸の値が同じで縦軸の値が少しずつ違う銘柄が多い部分は,縦方向に黒く塗りつぶされています。

 左上の”n”は,図に描いた銘柄数です。直近1年間に出現した天底数が1以下の12銘柄を含まないため,727銘柄になっています。また”r”は,(ピアソンの積率)相関係数という値で,横軸と縦軸のデータ全体の直線的な関係の程度を表わします。

 rは,-1から1の範囲の値を取り,-1に近いときは点が左上から右下ヘ,+lに近いときは左下から右上ヘ,全体として並びます。この傾向は,rが-1または1に近ずけぱ近ずくほど強くなります。また,rが0に近ずげぱ近ずくほど,横軸と縦軸のデータは互いに無関係に点がぱらつきます。

 先を急ぐため,図を多くし,説明をきわめて簡単にしました。しかし,時間を掛けてじっくり眺めていただけぱ,生き残り作戦を立てるための資料として利用できると思います。

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