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■□■マーク・モビアス(Dr. Mark Mobius)博士からの特別寄稿 『マレーシア』 編■□■


特別寄稿『BRICsとは?』編 |  特別寄稿『マレーシア』編 |  特別寄稿『ブラジル』編

マーク・モビアス博士からマレーシアのマスコミ(ビズウィーク誌)とのインタビュー記事(2006年12月23日付)を提供していただきました。氏は、この記事のなかで自身の近況、マレーシア市場、運営するファンドの投資方針について語っています。「新興市場投資のインディ・ジョーンズ」の異名をとるモビアス博士が、どのような投資哲学で巨大ファンドを運用し、変動の激しい新興市場投資の世界で長期的に好成績を維持し続けているか、再確認していただければと思います。

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マーク・モビアス、マレーシアを語る

〜テンプルトン社の新興市場部門の総責任者、マレーシア株投資の利点を指摘〜

 マーク・モビアス博士が「新興市場ファンドの王」と呼ばれる理由は、想像に難くない。年200日以上、世界中の新興市場を飛び回り、アジア、東欧、ロシア、アフリカ、南米をまたにかけて割安企業を発掘し続けているからだ。 氏のこうした地域での銘柄選択能力に強い衝撃を受けた投資家は少なくないだろう。おそらく氏の活躍が新興市場という、ある種の危険に満ちた投資分野の魅力を世に知らしめたのではないだろうか。

 実際のところ氏はこう指摘する。「新興市場への投資には、アインシュタインや、ましてやウォーレン・バフェットのような頭脳よりも必要なものがある。それは強靭な神経だ」。新興市場は現在までに3度の大崩壊を経験している。氏はこうした市場の好不況の荒波に敢然と立ち向かい、30年にわたって生き残ってきたのである。なぜモビアス博士は新興市場への投資を続けるのだろうか?それは、ひとえに氏の投資哲学による信念があるのだ。いわく「米国よりも他の国のほうに、はるかに経済成長の可能性がある」。

 スキンヘッドをトレードマークとするモビアスは、現在「テンプルトン・エマージング・マーケット」の代表を勤めている。積極的なボトムアップアプローチのバリュー投資マネジャーで知られる氏は「叩かれている国(市場)」を探している。そして氏にとって投資で最も重要なことは、経営の透明性、投資家保護、そして優れた企業統治である。縁故資本主義は禁句だ。資産没収の可能性や株価減額の危険性がある国を完全に敬遠する。

 運用成績をみると、12月19日現在、テンプルトン新興市場ファンドが月4.57%の純リターンを上げている。会計年度で15.17%、1年ベースで17.09%のリターンだ。テンプルトン新興市場投資信託会社(TEMIT、ロンドン証券取引所に上場する投信で、モビアス博士が運用責任者)には、1株当り338.55ペニーの純資産価値がある(2006年1月6日は311.39ペニーだった)。この信託の合計純資産は18億1500万英ポンド(約418億9162万円)にのぼる。

電話インタビューで、テンプルトンの巨匠にマレーシア市場への見解、投資方針、新興市場特有の割安株について聞いた。 (マレーシア・ビズウィーク誌より)


■近況

――ファンドの規模と何カ国に投資しているのかお聞かせください。

世界30カ国以上です。現在、我々の新興市場グループで330億米ドル(約3兆9167億円)を運用しています。

――しばらくマスコミに大きく取り上げられることがありませんが、最近の動きは?

割安株を探して世界中を飛び回っています。ファンドの投資機会です。私の目的は投資家に利益を還元することにあります。

――投資家として、最も厳しい時期はいつでしたか?

とても一言では語りつくせません。厳しい時期は数え切れないほどありました。素晴らしい時期も多少ありましたが・・・。1993年の市場崩壊、1997年、1998年の再崩壊が最も厳しかったと思います。ITバブルの崩壊が続きましたが、実際のところ、それによる損失はさほど大きくありませんでした。我々の投資はIT関係とは程遠いところにありますから。

――投資活動をしていて、最も気分がいいのはどんなことですか?割安株を選び出すというゲーム感覚でしょうか?それとも利益を得たときの達成感でしょうか?

割安株を探し出す作業が、この仕事の最大の魅力でしょう。利益を得たときの達成感というのは大してありません。よい仕事を続けられなければクビになってしまうわけですから。


■マレーシアについて

――マレーシア市場に対する見解を教えて下さい。かつてと比べてどのように変わったのでしょうか?

良い方向へ発展しています。マレーシアの状況は私たちにとって好ましいですね。新政権も評価しています。新政府が公共支出に注意深いのも好ましいことです。単に一大プロジェクトの導入で浪費をしなくなっただけではなく、より適正評価というものを重視するようになりました。マレーシアの外国為替制度には満足しています。実際にタイでも起こったことですが、マレーシアはいくらかの外貨を得られたでしょう。

――基本的に、マレーシアの利点は何だとお思いですか?

タイに比べて、マレーシアは外国為替市場を支配しようとしません。このことが大きな優位性となっています。 農業についても、マレーシアはうまくやっています。このことも大きな優位性です。また、シンガポールに近いということもマレーシアに優位に働いています。

――マレーシア政府の景気刺激政策には賛成ですか? 例えば、第9次マレーシア計画(9MP)については?

9MPは非常に優れた計画だと思います。マレーシアは、シンガポールとの相乗効果を引き出すよう政策を立てるべきです。シンガポールとの対立に終始するよりも、同国との友好関係を築き上げていくべきなのです。それが実現すれば、我々としてもマレーシアの今後に安心できます。両国の協力体制が長期にわたって実現されることを望んでいます。

※9MP=マレーシア政府による2006年から2010年までの5年間における中期国家経済開発計画。教育改革 や経済的不平等の是正、市民生活の質の改善などを施策とした経済開発の基本指針である。

――マレーシアにシンガポールと同レベルの魅力をお感じなのですか?

我々のマレーシアへの投資は、シンガポールとほぼ同程度です。シンガポール市場も非常に好調なため、同国への投資規模は比較的大きい。しかし、投資環境について言えば、私はシンガポールと同じ目線でマレーシアを見ています。

――テンプルトン新興市場ファンド年次報告書(2006年4月現在)によると、マクシス・コミュニケーションズ(Maxis Communications Bhd)、サイム・ダービー(Sime Darby Bhd)、タンジョン(Tanjong plc.)などマレーシア株に1.5%の比重を置いていますね。他に新しい株に目を付けているのですか?

今何を保有しているかは言えません。まだ買っているわけですから。ただし、我々は大農園とサービス業に興味を持っているとだけ言っておきましょう。引き続きマレーシア株には注目しており、さらに投資を増やしています。

――なぜサイム・ダービー株に投資したのでしょうか?

当初我々がサイム・ダービー株を購入したとき、配当利回りが非常に良く、株価収益率(PER)が低く、リストラを推進しているように見えたからです。

――現在はどうですか? 相乗効果を生む企業合併によって、つまりサイム・ダービー社が世界有数の農園企業になる見込みがあるからこそ同社を評価しているのではないでしょうか?

我々がサイム・ダービーを評価する理由はいくつかあります。まず、合併は産業に好影響を与えると期待しています。また同社が秘めている将来性も理由のひとつです。同社は、Bakunダムの所有者となるでしょう。

――テンプルトンは、マクシス・コミュニケーションズ株の5.3%を取得しています。まだ同社を評価していますか?

常にマクシス社を評価しています。なぜなら同社はインドとインドネシアでも経営を展開しているからです。誰もが認めるように今やインド市場はかなりの好況をみせています。またマクシス社はインドネシアでの経営も非常に好調です。

――どういった投資期間を考えているのですか?

最低5年を視野に入れた投資です。我々は価値のみを重視し、価値のある株を捜し求めています。マレーシアの投資環境は良好という感触です。そして、いくつか特定の産業に注目しています。

――マレーシア政府はどういった点を改善していくべきだと思いますか?

政府は国民に資本規制や外資への政策を変更するつもりがないことを説明し、国民を安心させる必要があると思います。また、経済を浄化し、民間企業に株を売却し、民営化を進める必要もあるでしょう。経済の自由化を進め、経済を強制的に一方向に動かそうとするような政策は打ち出さないことです。


■投資方針

――あなたの投資戦略には「ボトムアップ型」バリュー重視戦略、長期戦略が採用されています。そして、その上で長期収益、資産価値、潜在的キャッシュフローに対するご自身の評価と市場株価を比較されていると思います。それでは企業経営についてはいかがでしょうか? どのように評価されているのですか?

経営管理と企業統治は最重要事項でしょう。少数株主の権利を守り、プロとして経営に携わるような経営者でなければ、その企業は株主に良い結果をもたらさないと思います。

――投資先の国を決定するときの主な基準は何でしょうか? リスクと報酬の均衡をどのように考えていますか?

リスクも報酬も考慮しなければなりません。株価が非常に安くて、少数株主に偽りなく絶好の機会がある場合、政治的に高いリスクがあっても投資することがあり得ます。我々はこのように、リスクと報酬の両面から捉え、判断を下しているのです。

――新興市場と先進国市場を比較すると、PERとPBRの観点で、明らかに前者が安いです。しかし、だからといって特定の国が安価でかつ良質な投資機会を有しているとは言えませんよね。他の要因として、どういったことをお考えになりますか?

新興市場が常に先進国市場より安価というわけではありません。仮に安価だとすれば、他に考えるべき要因は先ほど述べた通りです。つまり、企業統治と少数株主がどのように扱われているかに注目します。

――再度金融危機が発生する恐れはあるのでしょうか? 市場改革の導入によるものだとしたら再発を避けるため、アジア諸国は何に気をつけるべきでしょうか?

金融危機は再発し得るものです。そして再度発生するでしょう。それが人間と国家の摂理です。アジア諸国は、過小評価や過大評価されている通貨、高インフレ率や高失業率などの、溢れるばかりの経済のゆがみに注目すべきです。


テンプルトン・ドラゴン・ファンド


(出所:Yahoo Japan)

モビアスが管理するテンプルトン新興市場投資信託会社(Templeton Emerging Markets Investment Trust)の情報は  >>こちら


モビアス博士の来日講演
第5回ご愛顧特別感謝祭 投資戦略フェア2007
多数のご来場ありがとうございました。

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