タートルズって???




最強のトレンド・フォロー手法

タートルズ・メソッドの戦略と戦術   VOL.2

大きなトレンドは絶対に見逃さない



アメリカの投資顧問業の上位を席巻するタートルズの具体的手法とはどんなものなかのか?
投資の初心者でもできるものだろうか?
ワンランク上の投資家になるためにはタートルズからどんなことを学べばいいのだろうか?
今回はタートルズの奥義ともいうべき「売買ルール」とその「シグナルの出現」をみてみる。
長尾慎太郎=文


(本文)

 ちまたには多くのトレード手法がある。テクニカルによるものだけでもその分類の方法がいろいろある。例えば、中長期売買と短期売買、トレンドフォロー(順張り)とカウント・トレンド(逆張り)、また片張りとサヤ取りといった分け方もできるだろう。ここでは、私たち一般の投資家、トレーダーにとって、規律正しく実行するには心理的に多少の努力を必要とするものの、その分、技術的には極めてやさしいトレード手法である中長期の時間枠を使ったトレンドフォロー手法のひとつ、タートルズ・メソッドを具体的に紹介する(なお、ここで紹介するタートルズ・メソッドは、パンローリングから発行されているラッセル・サンズが著した『タートルズの秘密』に基づいている。ラッセル・サンズが著書で述べているように、タートルズ・メソッドの細かい部分に関しては、実際の応用の方法がタートルズたちによって少しずつ異なるものであることは事前にお断りしておく)。



タートルズの基本売買ルール

 さて、前回はタートルズの由来について簡単な説明を行ったが、今回からは具体的な手法について見ていくことにしたい。前回少し触れたように、タートルズ・メソッドの最も基本となる売買ルールは、20日/10日のチャネルブレイクアウトである。その詳細は以下のとおりで、極めてシンプルなものである。コンピューターが使える人なら、エクセルやロータス123といったスプレッドシートを用いて簡単に売買シグナルのチェックや検証ができるし、もちろん手書きの場帳を使っていても、毎日売買シグナルを確認するのはさほど難しいことではない。ただ、さすがに銘柄数が多くなってくると煩雑になってくるので、やはりコンピューターはあったほうがよい。もっとも『インターネットトレーダー』誌の読者ならすでにコンピューターはお持ちのことと思うのでそんな心配はいらないかもしれない。

 《建玉ルール》
1.マーケットが過去20日間の最高値を取ったら、新規に買う。
2.マーケットが過去20日間の最安値を取ったら、新規に売る。

 《仕切ルール》
3.マーケットが自分の建玉に逆行して過去10日間の最安値を取ったら、買い玉を仕切る。
4.マーケットが自分の建玉に逆行して過去10日間の最高値を取ったら、売り玉を仕切る。

(ここでの時間枠に関しては、建玉ルールの20日間が4週間、同様に仕切りルールの10日間が2週間、という表現をされることもあるし、あるいは新規建玉のためのパラメーターに10週間から13週間を用いてもよい。しかし4週間以下の場合は、すべてブレイクアウトと認識してはいけないとされている。したがって、ここでは20日/10日のブレイクアウトを基本として話をすすめていく)。

 ここで早速、2000年の1年間のチャート上で、この基本ルールの出現の様子をいくつか見ていくことにする。

●ソニー(6758)
2月3日:新規買い
 3月6日:仕切り、利益
3月10日:新規売り
 3月29日:仕切り、利益
4月17日:新規売り
 6月5日:仕切り、利益
7月7日:新規買い
 7月24日:仕切り、損失
8月24日:新規買い
 9月27日:仕切り、利益
9月28日:新規売り
 10月25日:仕切り、利益
10月27日:新規売り
 11月28日:仕切り、利益
12月12日:新規買い
 12月18日:仕切り、損失
12月21日:新規売り
 12月29日:売り継続中、値洗い損
 上下動が交錯するなかで、なかなかよく値動きをとらえている。

●セガ(7964)
2月22日:新規売り
 6月5日:仕切り、利益
6月6日:新規買い
 6月19日:仕切り、損失
7月6日:新規売り
 11月27日:仕切り、利益
11月28日:新規買い
 12月20日:仕切り、利益
 全体として下げトレンドにある動きにうまく乗っていると言える。幸運にも上げ下げ両方の値動きをとらえられている。

●日本航空(9201)
2月8日:新規売り
 3月24日:仕切り、利益
3月28日:新規買い
 5月24日:仕切り、利益
5月31日:新規売り
 6月13日:仕切り、損失
6月16日:新規買い
 8月10日:仕切り、利益
8月10日:新規売り
 9月20日:仕切り、損失
9月25日:新規買い
 10月18日:仕切り、利益
11月7日:新規買い
 11月27日:仕切り、利益
12月11日:新規買い
 12月29日:買い継続中、値洗い益
 全体として上げトレンドにある動きにのなかで、途中の大きな下げにもうまく対応して、流れに乗っている。

●白金
1月19日:新規買い
 2月22日:仕切り、利益
4月25日:新規売り
 5月1日:仕切り、損失
5月1日:新規買い
 8月4日:仕切り、利益
9月1日:新規買い
 9月21日:仕切り、利益
9月22日:新規売り
 10月13日:仕切り、損失
11月1日:新規買い
 12月28日:買い継続中、値洗い益
 全体として上げトレンドにある動きにうまく乗っている。

●ガソリン
1月5日:新規売り
 1月18日:仕切り、損失
1月18日:新規買い
 1月27日:仕切り、損失
1月27日:新規売り
 2月17日:仕切り、損失
2月23日:新規売り
 3月8日:仕切り、損失
3月8日:新規買い
 6月6日:仕切り、利益
6月27日:新規買い
 9月11日:仕切り、利益
10月11日:新規買い
 10月27日:仕切り、損失
11月7日:新規売り
 11月28日:仕切り、利益
11月30日:新規売り
 12月28日:仕切り、利益
 全体として上げトレンドにある動きにのなかで、当初の保ち合いの値動きではちゃぶつくものの、その後の大きな上げにはうまく乗っている。まさにトレンドフォロー手法の本領発揮といったところ!



相関性のない銘柄を分散投資して はじめて威力を発揮する


 さて、このことから、次のようなことが分かる。

1.シグナルは値動きからは常に遅れて発生する。
2.仕切りのパラメーターが建玉のパラメーターより短いことによって、損切り、あるいは早めの利益確保が図られており、同時に、売り買いどちらかの建玉も常に持つというリスクを避け、自然に適宜休みが入れられる結果となっている。
3.大きなトレンドが発生したときは利益になるが、保ち合いのときにはそれがダマシとなって損失に終わる。

 つまり、これはトレンドフォロー手法一般に当てはまることだが、20日/10日チャネルブレイクアウトとは、いつか現れるであろう大きなトレンドに乗るべく、せっせと網を張り続ける手法といえる。
そして、かかるコスト(手数料や税金など)に対し、ボラティリティが十分な大きさを持つマーケットでは、その努力は十分報われる可能性があるということだ。
 そしてここで大切なことは、網の張り方には巧拙があるということである。トレンドフォロー手法を用いて利益を上げるためには、それを上手に扱うための戦術が必要なのである。そのためにまず大前提となるのはトレードする銘柄の分散である。大きなトレンドがいつ発生するのか、どのマーケットで発生するのかについては誰にも分からない。私たちにできることはといえば、それが実際に発生したときに備えて、値動きに追随してポジションを取ち続けることだけである。
 そうすると自然に勝率は低くなるし、もし数少ない大きなトレンドをつかみ損ねれば、それ以外のトレードで発生した損失を埋めて利益を上げることが非常に難しくなる。しかがって、大きなトレンドには必ず乗っていなければいけないし、できる限り多くの、互いに相関性のないマーケットでトレードする必要がある。理想的には40銘柄以上をトレードすると良いが、そうでなくてもせめて10銘柄ぐらいはポートフォリオに組み込みたいところである。そうすることで、年間を通せば必ずいずれかのマーケットで大きなトレンドに乗ることができ、かつ、全体としての損益増減曲線を滑らかにすることができるのである。
 タートルズ・メソッドに限らず、銘柄分散ができなければトレンドフォロー手法は、その能力の半分を失ったと考えてもよい。それほどまでにこれは重要・不可欠なことなのである。ここでくれぐれも強調しておきたい。




長期的に損益の明暗を分ける
マネーマネジメント


 ところで、一般に、トレードや投資において重要なことは、次の3つであると言われている。

1.有効な売買戦略を持つこと。
2.適切なマネーマネジメントを行うこと。
3.計画を確実に実行するためにメンタルマネジメントを行うこと。

 さて、これら3つのうち実際どれが一番大切かという疑問は、トレードにある程度習熟してくると当然起こってくる問題である。よく2のマネーマネジメントが一番大切であるとか、いや3のメンタルマネジメントが何と言っても重要だ、というような議論も聞く。しかし、正解は、どれが欠けてもいけないが、やはり1の売買戦略が一番重要であるというのが筆者の個人的な考えである。
 もし、有効な売買戦略を持たなければ、いくらマネーマネジメントやメンタルマネジメントに長けていても、長期的に利益を出していくのは難しいからである。しかし、ここで大切なのは、それが必ずしも高度に複雑な売買戦略が必要であるということを意味するものではないということだ。むしろ売買戦略はシンプルな方が良いし、トレードにおいて長期的に損益の明暗を分けるのはマネーマネジメントの方である。したがって、もし読者がトレードの研究に時間や労力を費やす気があるのならば、ぜひマネーマネジメントの巧拙を深く追求することをお勧めしたい。アセット・アロケーション、レバレッジ、ベッティグ、ロスカットなどに対して考察する労は必ず報われることと思う。
 さて、タートルズ・メソッドには幸いなことにマネーマネジメントに関する規定もいくつか定められている。これらは基本ルールの20日/10日のチャネルブレイクアウト・ルールに優るとも劣らぬ重要な事項であり、トレンドフォロー手法一般に共通して使うことができるルールでもある。それらは以下のとおりである。

1. レバレッジと損切を規定するNの概念
2. それの派生としてのノコギリ戦術
3. P/Lフィルター


長尾慎太郎(ながお・しんたろう)
東京大学卒(専門は原子力工学)。シティバンクでマネージド・フューチャーズ(商品ファンド)と金スワップの業務に従事した後、現在はCTA(商品投資顧問)のトレーダーとして資金運用を行う。


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