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FAI投資法(バックナンバー)

序章 FAIクラブの誕生


[1] 1,000万円を5年で7億円にした
 この人、ある宗教団体に入り、その団体の資金運用の方法を学んだ。それまで20 年近く株式投資をしてきたが、まったく成果がなかった。ところが、新しく学んだ方法を実践し、手がけた銘柄数は60ほど、ひとつも損をせずに、しかも地道な現物投資の繰り返しで、この驚異的な数字を達成したのである。
 この投資方法だが、1958年〜60年頃、大阪にいたマックというユダヤ人とこの宗教団体の資金運用をしていた数人が、日本の株式市場を3年がかりで徹底的に分析して開発したのが始まりといわれている。
 このあたりの話はかなり曖昧で、ハッキリしたことはわからないし、また、どうでもいいことである。しかし、この宗教団体では、大勢の人が株式の運用をして成果を上げている。
 記録では、16年間に売買をした138人中、1億円を達成した人が71人、その中で10 億円を達成した人が11人というのは、まさに驚異である。(当初の資金には個人差があったが、最低は100万円、多い人でも2,000万円程度だったらしい)
 このことについてはきちんと記録が残っているのだが、現実に見たわけでもなく、ユダヤ人云々の部分と同様だが、この方式を引き継いだFAIの中で同じような団体活動(連載の中で、いずれ書く)をした結果、真実と確信できる成果があったので、数字として紹介した。
 話をもとに戻す。この138人だが、宗教団体の中での活動とはいえ、長期間地味な努力を持続して、大きく資産を増やすという結果を出したのは、たいへんなことである。これは、売買法がきちんと確立されており、詳細部分まで明確だからである。
初心者でも実践可能
30項目のルールによって規定された売買法が脇道にそれるのを防いでくれる
銘柄選択を重視するが、その方法が普遍的

 この驚異の投資法を、連載形式で説明していきたい。

[2] 金を持つにも準備と心構えが必要
 売買メンバーの1億円達成者71名以外は脱落者である。2名の方が亡くなられているようなので、実際の脱落者は65人である。1億円達成の数字は驚くべきものだが、脱落者も非常に多いわけである。
 FAI方式の売買は、それほど辛く苦しいものなのだろうか。否!売買のルール、とくに銘柄選定のルールがきちんと確立されており、誰でも簡単に実行できる売買法である。個人的な能力が必要ないと思われやすいが、実はそうではない。自然に個人的な能力が身につく、ムダのない筋道が最初から示されているのである。
 また、団体で、なおかつ明確な目的(投資で成果を上げる)と方法(30項目のルールによって細部まで規定)があるのだから、脱落は考えにくい。ところが、65人が脱落したのである。
 脱落の内容は、ふたつに分かれる。ひとつは精神的なものである。
 売買を続けるうちに、資金が確実に増えていく。(失敗の少ない売買をすれば、資金の増加は驚異的な数字となる。年間20%の売買を続ければ、10年後に6.2倍。年間30%の売買なら、10年後には13.8倍である。複利のすごさである。)高度な売買技術が身についた実感が少ないのに資金の増え方が多いせいだろうか、ノイローゼになる人が多かったという。内容としては、「親戚から借金を申し込まれないか。断れば関係がギクシャクする。」「子供が誘拐されないだろうか」「強盗に入られないだろうか」等々。
 この話を聞いて「俺は大丈夫」と思われるかもしれないが、実際に自分が億の金を持ったことを想像してもらいたい。年齢が高いほど、また守るべきものが多いほど、順調に増える投資資金が逆に不安となって現れ、次第に増幅していく可能性は高い。(宗教団体なのでいなかったらしいが、「金なんて株で簡単に稼げる」と思えば、遊びが派手になって潰れるパターンもあり得る。兜町の脱落組の99%は、このタイプなのである。)
 さて、宗教団体での脱落者のもうひとつは、売買そのものである。
 きちんとした売買をすれば、自分の意志に関係なく売買を手控えざるを得ないときがある。相場が相手である以上、当然だ。実際にFAIでも、89年から現在まで注目銘柄を選定していない。過去の順調な相場でも、注目すべき銘柄が相場環境から、どうしても少なくなることはあっただろう。そういうときに、物足りなさからよけいな売買に手を出して自滅していったということである。

 金を儲けるまえに、金を持てる器量をつくる
 自分の決めたことを徹底的に継続して守る

 陳腐な精神論かもしれないが、大切なことである。

[3] FAIクラブの誕生
 大阪の宗教団体での売買法がFAIの前身であり、正式にはP投資法という。このP投資法を引き継いだのが現在のFAIである。その経緯について述べる。
 まずK氏という人がいる。この人は、以前中小企業を経営していたが、小豆相場で失敗して倒産。そのとき、林輝太郎が相談に乗ったが、すでに手遅れの状態だった。その後、ビルの清掃会社に勤務していたが、勤務先のビルに入っていた宗教団体で相場の資料整理をしているS氏に出会い、再び相場の道へ戻った。P投資法を学んだK氏の成果は素晴らしいものであった。相場の世界で返り咲いたK氏は、林輝太郎に報告をし、久しぶりに会いに来たのである。このとき、K氏の話を聞いたS氏は、「林先生の本はすべて読んでいる。会いたいので一緒にいく。」と、二人で東京に来たのである。
 P投資法を本物と認め興味を持った林輝太郎は、両氏の説明を何度も聞き、下手な改良をせずにそのまま引き継いだ。かねてより質の高い投資クラブをつくる構想を持っていた林輝太郎は、細部までルールがしっかりしていて実行しやすいP投資法を通じて、会員相互の努力と協力によって売買技術を向上させながら資産を増やすためのクラブを創設したのである。

<FAIクラブの概要>

1.全員が平等
 日本古来の家元制度のように、封建的に上層部が下部から搾取するような制度はとんでもない。メンバー全員が平等で、個人の売買技術の向上のために相互扶助をする。
2.金銭の貸し借りをしない
 株の世界では金がすべてなのに、トラブルになってはじめて金の話になる。金銭以外でもメンバー間の貸し借りを禁じている。クラブの運営費用を平等に負担する以外、余分な金銭の関係は一切ない。
3.メンバー相互の信頼関係
 メンバー同士、自分の売買について話をするが、プライバシーを他言するようなことはしない。この信頼関係がしっかりしているから、質の高い研究活動が生まれるのである。
4.月に1回の銘柄選定委員会
 月に1回、銘柄選定のためのミーティングを行う。出席者は、メンバーの有志。複数の人が意見をぶつけ合って議論する結果、独りよがりになりがちな相場に対する意見が修正され、投資法に沿った良い銘柄が選定される。
 FAIとは「Free and Aquired Investors」である。意味は「自由にして努力した投資家」。
 発足時50人いたメンバーは減っている(死亡、挫折、その他の理由での退会)が、 10数年たった現在でも、発足当時とまったく変わらない活動を続けており、投資成果を上げ、技術の向上という目的を果たしている。
 ルールについては、対象銘柄を東証1部に限定した以外は、大阪のP投資法とほとんど変わらない。ただし、宗教団体独特の精神論的な部分は無視し、技術論に的を絞っている。
 株式市場の天井圏から現在まで、長い間銘柄を選定していない。きっちりと下げ相場を避けているわけだが、これは、ルールの確かさと、複数で議論する効果の証明である。
 銘柄選定委員会は、下げ相場の間も月1回のミーティングを開いている。

この連載は「FAI株式投資法」(相場ライブラリーNo.018)より要点をまとめて補足説明を加えたものです
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