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渡辺幹夫のエトセトラ(運用にまつわるあれこれ)

「ファンドマネージャーの株式運用戦略」「ファンドマネージャーの知恵」著者
渡辺幹夫のコーナー

新しい順に載せてあります
当コーナーの内容は筆者が個人的に考えていることであり、筆者の所属する会社の見解とは全く関係がありません。
当コーナーでヒントを得て行う株式投資は、全て投資家の自己責任でお願いします。


ファンドマネージャーの株式運用戦略


DVD やさしいバリュー株投資


DVD 株式運用戦略セミナー
低位バリュー株投資・アノマリー・行動ファイナンス




最終回
自分自身に適した投資戦略は必ず見つかるはず

2007.10.19

 今回は最終回です。投資戦略ということについて、考えるところを書いてみたいと思います。

 株式投資は、成功するか失敗するかのいずれかです。これは当たり前の話ですが、さらに掘り下げて考えてみた場合、失敗するパターンはおおむね決まっている一方、成功する要因や手法はさまざまであるといえます。

 まず、株式投資で失敗するパターンを考えてみましょう。これはレバレッジのかけ過ぎ、1銘柄へ集中投資のし過ぎ等に起因し、しかるべき損切りがきちんと実施できていないケースがほとんどでしょう。これは、さまざまに存在する投資戦略においておおむね共通していることであり、逆にいえば、この点にさえ注意していれば大きな失敗となる可能性は低いということだと思います。
 これとは対照的に、株式運用手法における正解は1つではなく、いくつもあると思います。短期売買や長期投資、デイトレやうねり取り、バリュー株投資やグロース株投資等、あらゆる手法が存在しますが、要は筋道が正しくて上手にできれば成功するということです。

 株式運用は、常に将来という未体験ゾーンへの挑戦です。欲と不安と恐怖に振り回される非常にメンタルな世界であり、自分にしっくりくる方法でないと成功は難しいと思います。しかしながら情熱を持って模索し続けさえすれば、自分自身に適した投資戦略は必ず見つかるはずです。

 当コーナーではこれまで、折に触れ、低位バリュー株分散投資戦略について説明してきました。私が最後に申し上げたいのは、この投資戦略が自分に合っている、自分の持ち味が出せる、実行できると思ったら、ぜひチャレンジしてほしいということです。当戦略は現在、私が考える最も合理的な投資戦略であり、実際、私もこの方法で長期投資を実践しています。



 さて私儀、
 このたび、ある運用会社に転職する運びとなりました。これに関連し、1998年から続いたこのコーナーをひとまず手仕舞いさせていただくこととしました。長年にわたるご愛顧、ありがとうございました。本日、2007年10月19日は、1987年10月19日のブラックマンデーからちょうど20周年に当たります。このなんともいえないめぐり合わせの日に、ひとまず筆を置かせていただくこととします。

 私自身は引き続き、低位バリュー株投資戦略による長期投資を続けていきます。当投資戦略は、ここから花開くことになると期待していますが、さあどうなるか???今後の相場展開が非常に楽しみです。
 みなさん、また会う日まで。Good Luck!!!



 

信用期日売りに伴う低位バリュー銘柄の一時的な需給悪

2007.9.14

 サブプライムショック後、米国株はかなり値を戻したのですが、日本株はまだまだといったところです。下にあるのはNYダウと日経平均の相対チャートです。直近のNYダウの高値を100として推移を示しています。これを見ると、NYダウは直近の高値から3%程度下に位置している一方、日経平均は13%も下であり、日本株の弱さが目立ちます。逆に言えば、サブプライムショックの「お膝元」である米国の株式市場では、一時的なショックは大きかったものの相当回復しているのが現状だと思います。
 今後の2番底の可能性は否定できない、むしろ2番底が発生する可能性が高いのかもしれませんが、こと米国株式市場においては、すでに最悪期は脱しているとの評価になっているようです。いかがでしょうか?

 日本株については、円高による企業業績に対するネガティブインパクトという懸念等が背景にあるのでしょうが、現在の株価水準を考えれば、この手の悪材料はすでに相当織り込み済みとの見方も可能だと思われます。逆に言えば、仮にNYダウが新高値になった場合に日本株の動きはどうなるのでしょうか?

 このような状況の中、低位バリュー株についてはなかなか下げ止まらない銘柄が多い状況です。この背景としては、今年の3月にかけて信用買い残が増加している、あるいは高水準だった銘柄が多く、その期日に伴う売りが需給の足を引っ張っている部分が大きいようです。

 高値買いしてその後手仕舞いのチャンスがなく、ここにきて期日で手仕舞いを余儀なくされている売りが高水準となっている。一方で日々の下落から、一時的に買いの手は引っ込む…この一時的な需給悪の影響が大きいようです。しかしこの手の売りは反対売買が終わりさえすればスケジュール的に終了する類のものなので、ここ1〜2週間で需給関係はかなり改善すると考えます。

 以上のことを踏まえ、低位バリュー株の銘柄スクリーニングを再度実施してみました。条件は以下の通り、毎度おなじみのものです。
母集団 : 東証1部銘柄
株価 : 250円以下【2007年9月13日現在】
PBR : 1倍以下
配当利回り : 1.5%以上
除く建設セクター

 

No. コード 会社名 株価 PBR 配当
利回り
1 1882 東亜道路工業 167 0.69 1.8
2 1884 日本道路 189 0.36 1.6
3 1895 大成ロテック 184 0.38 1.6
4 1896 大林道路 183 0.38 1.6
5 1916 日成ビルド工業 123 0.8 1.6
6 1972 三晃金属工業 195 0.83 1.5
7 2056 日本配合飼料 173 0.97 1.7
8 2533 オエノンホールディン 242 0.91 2.9
9 2536 メルシャン 240 0.66 2.1
10 3109 シキボウ 130 0.59 2.3
11 3204 トーア紡コーポレーシ 102 0.94 2.0
12 3432 三協・立山ホールディ 156 0.70 3.2
13 3526 芦森工業 211 0.63 2.4
14 3529 アツギ 139 0.66 2.2
15 3551 ダイニック 245 0.80 2.5
16 3577 東海染工 137 0.66 2.2
17 3877 中越パルプ工業 235 0.53 2.6
18 3946 トーモク 238 0.67 2.5
19 4404 ミヨシ油脂 182 0.71 1.7
20 5142 アキレス 173 0.82 1.7
21 5269 日本コンクリート工業 232 0.53 2.2
22 5391 エーアンドエーマテリ 128 0.94 2.0
23 5612 日本鋳鉄管 188 0.68 2.1
24 5701 日本軽金属 239 0.94 2.1
25 5805 昭和電線ホールディン 158 0.79 1.9
26 5815 沖電線 227 0.80 1.8
27 5998 アドバネクス 171 0.61 2.1
28 6138 ダイジェット工業 237 0.91 2.5
29 6218 エンシュウ 188 0.94 2.7
30 6317 北川鉄工所 207 0.86 2.4
31 6358 酒井重工業 237 0.62 2.1
32 6461 日本ピストンリング 200 0.68 2.5
33 6621 高岳製作所 173 0.97 2.3
34 6704 岩崎通信機 141 0.79 1.8
35 7840 フランスベッドホール 172 0.99 2.9
36 7987 ナカバヤシ 219 0.67 2.7
37 7993 サンウエーブ工業 227 0.32 1.5
38 8007 高島 169 0.82 2.4
39 8025 ツカモトコーポレーシ 156 0.61 1.9
40 8042 日本マタイ 211 0.53 2.4
41 8091 ニチモウ 194 0.42 2.6
42 8349 東北銀行 195 0.78 2.6
43 8415 紀陽ホールディングス 156 0.84 1.9
44 8542 トマト銀行 239 0.85 2.1
45 8543 みなと銀行 236 0.98 2.1
46 8562 福島銀行 99 0.87 2.5
47 8567 クレディア 250 0.42 2.0
48 8568 シンキ 149 0.39 4.2
49 8617 光世証券 150 0.76 2.7
50 9305 ヤマタネ 133 0.78 1.9
51 9312 ケイヒン 198 0.92 2.8
52 9351 東洋埠頭 224 0.85 2.2
53 9763 丸紅建材リース 197 0.79 3.1

  
  
  

低位高配当利回り銘柄スクリーニング

2007.08.13


 株式市場では、不安定な動きが続いている。米国の信用力が低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題に対する不安、それに伴うファンド等の動きが背景にあるのはご存じの通りだが、筆者は以下の点から、一連の騒動(サブプライムローン自体ではなく、株式・為替市場における騒動、すなわち相場下落->ファンドの手仕舞い売り->相場下落の悪連鎖)については、おおむね収束のメドがつきつつある状況だと考えている。

  1. 日米欧の中央銀行は、市場に潤沢な資金供給を続けて金融不安の沈静化に全力を挙げる方向であり、実際、その線に沿って動いている。今後についても、市場の動向を見極めながら政策対応を柔軟に判断する方針である。
    ->「市場の安定が必須」という点で日米欧の足並みが揃っている。ここは重要なポイントだと考える。彼らができる範囲で、流動性の供給を含めた金融緩和を市場が安定するまでとことん行うのではないか?
  2. 少なくとも日本においては、今回のサブプライムショックが実体経済に与える影響は限定的と考えるのが現状では妥当。
  3. 今回のサブプライムショックは、ファンド等が右往左往したことで市場を大きく下落させたが、かかるファンドの持ち高調整は時間の問題で終了する類のもの。

 以上のことから、ここからの株式市場の下落余地は限定的もしくは一時的と判断し、低位バリュー株の銘柄スクリーニングをしてみた。条件は以下の通り、毎度おなじみのもの

母集団 : 東証1部銘柄
株価 : 300円以下【2007年8月10日現在】
PBR : 1倍以下
配当利回り : 1.5%以上
除く建設セクター
No. コード 会社名 株価 PBR 配当
利回り
自己資本
比率
1 1884 日本道路 196 0.37 1.53 37.92
2 1895 大成ロテック 196 0.41 1.53 40.31
3 1896 大林道路 194 0.40 1.55 29.18
4 2004 昭和産業 267 0.94 2.25 34.79
5 2108 日本甜菜製糖 270 0.69 1.85 62.95
6 2533 オエノンホールディン 245 0.92 2.86 29.91
7 3106 クラボウ 266 0.70 1.88 46.50
8 3109 シキボウ 152 0.69 1.97 27.84
9 3432 三協・立山ホールディ 168 0.76 2.98 24.51
10 3501 住江織物 269 0.71 1.86 37.82
11 3526 芦森工業 224 0.67 2.23 58.95
12 3529 アツギ 161 0.76 1.86 78.82
13 3551 ダイニック 258 0.84 2.33 26.70
14 3577 東海染工 157 0.76 1.91 34.89
15 3877 中越パルプ工業 232 0.53 2.59 33.25
16 3946 トーモク 234 0.65 2.56 29.01
17 4229 群栄化学工業 286 0.64 2.10 73.17
18 4404 ミヨシ油脂 192 0.75 1.56 38.32
19 4461 第一工業製薬 277 0.72 2.53 33.41
20 4989 イハラケミカル工業 294 0.54 1.70 68.62
21 5142 アキレス 186 0.88 1.61 47.52
22 5204 石塚硝子 279 0.48 2.15 29.20
23 5210 日本山村硝子 284 0.58 2.11 59.99
24 5232 住友大阪セメント 294 0.87 1.70 43.86
25 5269 日本コンクリート工業 258 0.59 1.94 43.01
26 5408 中山製鋼所 292 0.56 2.05 30.29
27 5612 日本鋳鉄管 202 0.73 1.98 38.36
28 5805 昭和電線ホールディン 160 0.80 1.88 28.19
29 5809 タツタ電線 268 0.70 2.61 74.48
30 5815 沖電線 226 0.80 1.77 67.49
31 5958 三洋工業 276 0.74 2.72 46.36
32 5998 アドバネクス 175 0.63 2.00 41.04
33 6138 ダイジェット工業 259 1.00 2.32 49.07
34 6306 日工 287 0.48 2.09 68.84
35 6317 北川鉄工所 233 0.97 2.15 42.94
36 6358 酒井重工業 277 0.72 1.81 56.81
37 6461 日本ピストンリング 214 0.73 2.34 33.31
38 6621 高岳製作所 177 0.99 2.26 32.54
39 6675 田村大興ホールディン 291 0.71 3.09 47.32
40 6704 岩崎通信機 155 0.87 1.61 55.06
41 6924 岩崎電気 276 0.71 1.81 38.70
42 7244 市光工業 285 0.95 2.11 26.80
43 7260 富士機工 294 0.91 1.70 22.93
44 7971 東リ 280 0.69 2.50 34.77
45 7987 ナカバヤシ 226 0.70 2.65 44.77
46 8025 ツカモトコーポレーシ 185 0.72 1.62 24.05
47 8038 東都水産 268 0.87 1.87 34.56
48 8042 日本マタイ 234 0.59 2.14 31.83
49 8091 ニチモウ 209 0.45 2.39 28.66
50 8095 イワキ 300 0.60 2.00 37.59
51 8201 さが美 273 0.51 3.66 46.38
52 8617 光世証券 165 0.83 2.42 79.56
53 9351 東洋埠頭 232 0.88 2.16 44.27
54 9534 北海道ガス 289 0.71 2.08 27.77
55 9763 丸紅建材リース 203 0.81 2.96 25.98

 さて…流動性供給というと、個人的には1987年のブラックマンデーを思い出す。当時の日本は本来利上げを行うタイミングであったが、ブラックマンデーの後遺症を当局が懸念しすぎたあまり、また米国との関係もあり、然るべき時期に金融引き締めができなかった。このことがバブルの一因となったのは有名な話だが、ブラックマンデー以降の国内の金融緩和状態放置と同じようなことが、今回のサブプライムローン騒動以降に再現される可能性は少ないのだろうか?筆者はどうも、かかる間違いが再度発生するのではないかと期待(?)してしまうのであるが、これは考え過ぎだろうか?



 
 

書評:『株でゼロから30億円稼いだ私の投資法』

2007.07.31

 自宅の本棚の整理をしていたら、遠藤四郎氏が書いた『株でゼロから30億円稼いだ私の投資法』(エール出版)が出てきた。みなさんはこの本をご存じだろうか?初版は1997年6月15日。当時は一部でかなり話題になった本である。低位株投資に興味がある向きには、一読の価値ある本と思われる。当コーナーでお勧めしている低位バリュー株投資戦略と重なる部分が大きいからだ。現在同著は絶版だが、Amazon.comで検索すれば古本を購入することができる。

 遠藤氏の投資法は、一言で言えば低位株の個別銘柄への集中投資。値上がりしたら売って別の低位株を、また集中買いする。これを繰り返し、所有する株数を増やしていくという方法。徹底的に所有する株数にこだわる。
 銘柄分散は、運用資産1億円を達成する過程においてはしていない。少なくとも、個別リスク回避のための「意図した銘柄分散」は行っていない(ただし、運用資産1億円達成後は、複数銘柄に投資している)。

 以下、遠藤氏の運用パフォーマンスを確認するため、著書の前書きを抜粋引用する。

 社会人として、某大手銀行の銀行マンをスタート台にして、今日までおよそ35年が経過した。その間私は、株式投資というものに興味を持ち、サラリーマン、自由業の傍ら、「所有」の意識を重点にして約30年間に渡り、株式の売買を行ってきた。
 その間の株式投資における実績を申し上げると、初めて投資をしたときの投入資金は15万円、ボーナス資金の追加投入など総額で約500万円、これを軍資金として、現在の私の所有株式総数は約1,200万株、純資産30億円である。平成元年バブル景気最盛時、すなわち日経平均38,915円をつけたその翌年には、一時80億円超の時価を記録した。今日その時価総額は約半分弱になっているが、この金額は、私が今天命を知る年齢を過ぎ、今後の人生を20数年と考えると、1年で1億円、1ヵ月に1,000万円使っても、使いきれない金額である。

 次に遠藤氏の運用スタイルを確認するため、著書の前書きを抜粋し引用する(一部筆者が加筆)。

  1. 現在赤字会社であること、長期投資に徹すること
  2. 発行株は少ないほうがよい
  3. あくまでも低位株を狙うこと
  4. 一株当たりの実質株主資本が時価を上回るものであること【要はPBR1倍以下】

 遠藤氏は、運用資産1,000万円達成後、5年かけて1億円を達成している。それまでの足取りは、以下の通り。

  1. 日本化学を20万株80円で買って200円超で売り、1,600万円を4,000万円に(購入後半年、250%)。
  2. 住友石炭を25万株160円で買って300円で売り、7,500万円に(購入後1〜2年、88%)
  3. 伊藤万を30万株250円で買い340円で売り、1億円を達成(購入後半年、36%)

 このようにして運用資産1億円達成後、昭和56年から57年にかけ、一時的な株価下落から時価1億円を5,000万円に減らす(銘柄はオオトリを50万株、郷鉄工を30万株)その後は3年間持ちこたえた結果、株価は買値の3倍になり売却、資産は3億円に増えた。

 同著で説明されている遠藤氏の投資手法は、当コーナーでお勧めしている低位バリュー株投資戦略と重なる部分が多い。逆に大きく異なるところは、以下の4点である。

  1. 意図した銘柄分散をしない
  2. 株主資本比率を勘案しない
  3. 配当を勘案しない
  4. 投資対象を、東証1部に限定しない
    (ただし運用資産1,000万円達成後、5年間かけて1億円を達成する過程では、投資対象は東証1部銘柄。その後一時的に運用資産を半減させることになるのは、大証2部銘柄)

 低位バリュー株投資戦略よりも個別リスクを大きく取って「勝負」しているのが特徴である。このようなやり方による成功事例もあるということを紹介させていただく。




 

低PER株はバリュー株か?

2007.07.16

 「バリュー株の定義がよくわからない。バリュー株とは低PER株のことか?」と尋ねられることがしばしばあります。今回はここのところを整理してみたいと思います。結論から言うと、以下の通りです。

  1. バリューはグロースの逆の概念であり、分類する基準はPERではなくPBRである(狭義のバリュー株)。低PER銘柄は、「グロース−バリュー」の銘柄分類とは独立した、別の考え方である。
  2. 資産運用のオーソドックスな分類では上記の通りだが、一部ではEPS等の「利益」をキーとして割安なものをバリュー株とする考え方も台頭している(広義のバリュー株)。

 以下に詳しく説明します。

 「グロース−バリュー」の分類は、株式運用の実務、具体的には年金資金の株式運用実務において、グローバルに取り入れられている基準(運用スタイル)のひとつです。バリューはグロースの逆の概念であり、分類する基準はPBRです(PERではありません)。これがオーソドックスかつ古典的な考え方です。私はこれを、「狭義のバリュー株」の概念と整理しています。

 PBR、PER、ROEには、以下の関係が成立しています。この関係式はとても重要なので、ぜひ覚えておいてください。

 PBR=PER×ROE

 この計算式を見ると明らかなのですが、PBRがキーになり、「低PBR銘柄=バリュー株」「高PBR銘柄=グロース株」と大きく2つに分類されます。これが基本的な考え方です。ちなみに、日本株のスタイル・インデックスの草分け的存在である、“Russell/NRIインデックス”におけるバリュー/グロースの区分も、PBRによって行われています。
 そして、ここが重要です。この計算式を見ると、PERを軸として「低PBR銘柄=バリュー株」「高PBR銘柄=グロース株」と分類されるわけですから、PERはバリュー/グロースを分類する基準から独立していることがわかります。低PER 銘柄は、「グロース−バリュー」の銘柄分類の流儀とは別の考え方なのです。つまり低PER銘柄には、グロース株とバリュー株が共に存在するということになります。

 資産運用のオーソドックスな分類では以上の通りですが、一部ではEPS等の「利益」をキーとして割安なものをバリュー株とする考え方も出てきています。私は現状、この考え方を「広義のバリュー株」と分類・認識しています。「狭義のバリュー株」の応用分野という位置づけをしており、また比較的新しく出てきた分野だと考えています。なお「広義のバリュー株」という考え方は、現状では年金資金の株式運用等、運用の実務で市民権を得られている概念ではありません。
 ちなみに低PERのグロース株投資の手法は、運用の世界ではGARP(Growth At Reasonable Price)と呼ばれます。GARP戦略を用いた投資信託も、広く運用・販売されていますよね。

 「広義のバリュー株」という考え方については、これに基づいて、今後有益な分析ができる可能性も多々あると思われます。が、「狭義のバリュー株」の考え方と混同するとうまくありませんし、しばしば議論が止まってしまいますので、私はこのように両者を分類しています。



 

昨今の低位バリュー株の動きと株価指数「TOPIXスモール」

2007.06.19

1.昨今の低位バリュー株について

 今回のレポートは、相当に感覚的なものです。筆者は低位バリュー株の最近の動きについて、ここから上昇トレンドが待っているように思えてなりません。強気材料が目立つのです。以下に筆者の考えるところを列記します。

  1. 低位バリュー株については、月足では「趨勢的な上昇トレンドにある銘柄が多いもののまちまち」といえますが、日足ベースでいえば、「株価は5月21日前後に目先底入れした」との判断が妥当と考えます。
  2. 東証一部の人気オールドエコノミー大型株はすでに相場になっており、ここからは地味な低位バリュー銘柄に、気が波及する局面と考えるのが、やはり自然と考えます。
  3. 足元では、一部に大きく人気化している低位株も散見されます。このような投機人気についても、一巡してしまうというよりは広く波及していくと考えるのがやはり妥当と考えます。
  4. これまで低位バリュー株のパフォーマンスの足を引っ張っていた新興市場も、一応は下げ止まりの形になっています。
  5. 景気循環面を考えれば、国内景気が踊り場を脱却し右肩上がりを回復といった報道が今後、時間の問題でなされると考えるのが妥当と思われます。
  6. 出たばかりの四季報夏号で2009年までの業績を見ましたが、低位バリュー株については「え?こんなに伸びる見通し?東洋経済の担当者は相当強気だな」という銘柄が多い印象を得ています。配当についても、増配が見込まれているケースが多いようです。この強気見通しは、セルサイドアナリストがカバーしていないケースが多い低位バリュー株の評価について、徐々に市場のコンセンサスになっていくように思われます。

2.株価指数「TOPIXスモール」について

 2007年1月の当コーナーで、日経平均、TOPIX、JASDAQ、東証一部単純平均の相対チャートを示しました。そして当コーナーで解説している低位バリュー株のパフォーマンスは、どちらかといえば東証一部単純平均株価のほうに近いと説明しました。これ以外に「TOPIXスモール」といわれる、低位バリュー株のパフォーマンスを相対的に強く反映している指数があるので、ここに紹介します。

 「TOPIXスモール」は、「TOPIXの算出対象から、TOPIX500と上場間もない企業を抜いた指数」です。東証一部において、時価総額上位500銘柄を除いたTOPIXといったイメージです。また東証一部単純平均が平均株価であるのに対し、この指数はTOPIXと同様、時価総額の推移である点も注目です。つまり時価総額ベースの指数の中では、この「TOPIXスモール」がもっとも低位バリュー株の株価趨勢に近いものであると考えられるということです。



 
 
 

動き出すインフラファンド10兆円市場

2007.05.28

 2007年05月25日、日経金融新聞の一面トップには、「動き出すインフラファンド10兆円市場、『官から民』」へという記事が掲載されており、大いに目を引いた(この文章を読んでいて日経金融新聞を読んでいる方はどの程度いるのでしょうね?)。
 この記事の内容は以下の通り。

 道路や空港、港など社会資本事業に投資する「インフラファンド」が、日本でも本格的に動き出した。日本では三菱商事が年度内にファンドを新設して参入する。株式や債券に代わる安定的な投資先として年金基金など機関投資家が注目。2006年度末の世界の資産残高は市場推定で8兆円前後と、前の年度に比べ約2倍に増えた。民営化が進むインフラの担い手として定着し始めたが、過熱感を警戒する声も出てきた。

 すでに広く知られている通り、この手の投資はこれまで公共投資として扱われ、昨今は公共投資縮小のあおりを受け、インフラの維持・更新は必須ながら、費用は今後どうなるのかと懸念されていた分野である。引き続き記事を引用する。

○インフラファンドは社会資本の建設や維持、運営する会社や事業権に資金を投じ、通行料や使用料などで収益をあげる仕組み。投資先は成熟した社会資本が中心で、投資資産の寿命が30〜40年と長いことが多い。
○三菱商事が狙うのは、今後続々と民間に任されるようになると見られる国内の社会資本の運営事業。高度成長期に作られた道路や港が本格的な補修の時期を迎えるが、国や自治体の懐に余裕はない。
○今後のインフラ維持には、民間資金活用が不可欠」(金融事業本部)というわけだ。
○国土交通省の推計では、道路や港湾など社会資本の維持コストは2030年度には10兆円を超え、現在の2倍程度に増加する。国や自治体の財政に余裕はなく、民間資金の活用なしに社会資本の維持は難しくなる。

 そして「海外ではインフラファンドの運用残高が急増している。昨年度8兆円規模だった残高は、2007年度には10兆円規模に増えるのが確実視されている」とのことであり、外資の主なインフラファンドの設立金融機関として、この分野に強いマッコーリーグループの他に、ゴールマンサックス、クレディスイス、モルガンスタンレー等おなじみの投資銀行グループの面々が掲載されている。

 さて、すでにご案内の通り、私は建築投資循環と設備投資循環が複合する「黄金サイクル」により、2010〜2012年にかけての景気・株式相場の上昇を見込んでいる。建設の公共部門についてはこれまで、莫大な更新需要が存在することがわかっている一方、公共投資の削減の中で資金をどうするかが課題になっていた。しかし当記事に書かれている展開になるとすれば、資金面でのメドがつくことになると思われ、今後に期待できる。

 最近の株式市場では、グローバル展開により首尾よく成長できている企業が物色される展開になっているが、そろそろ循環物色のお鉢が、内需型の低位バリュー銘柄に回ってきてもおかしくないと考えているのであるが、いかがだろうか?

 この記事といい、先般、5月22日日経朝刊の「日本橋・兜町に新金融街、金融相構想―容積率緩和など、骨太方針に明記目指す」といい、どうも足元で、内需型の低位バリュー銘柄にフォローな報道が相次いでいると思うのであるが、さあ、どうなるか?

 ちなみに、インフラファンドの起源は90年代のオーストラリアで、現在のオーストラリア証券取引所には212本のインフラファンドが上場し、時価総額は4兆円であるという。同じような状況が日本で再現されない理由は特段見当たらないと思うのであるが、いかがか?「小さな政府」を目指す日本の国策とも整合的であると思うのであるが…。
 
 
 
 

低位高配当利回り銘柄スクリーニング

2007.05.07

 足元での東京株式市場東証一部優位、新興市場劣位の二極化相場が続いている。当コーナーで紹介している低位バリュー株も、概して新興市場の下落の影響を受けている。新興市場がさえない理由として、ライブドア事件以来の会計不信が根強くあるという。実際、監査法人の見解によって下方修正を余儀なくされている企業も多々見受けられる。一部の下方修正銘柄が新興市場全体の足を引っ張り、市場のセンチメントを悪くし、まともな銘柄まで連帯責任を取らされるがごとく下落、その影響が低位バリュー株にも波及しているのがこれまでの流れだ。

 しかし筆者は、この状況にも早晩変化があるのではないかと考えている。新興市場の下落の主たる理由が会計不信とそれに伴う業績不振ということであれば、5月から6月にかけて3月決算期企業の決算発表が実施される中で、スケジュール的に「悪材料出尽くし」となる…こう考える野が妥当ではないか?3月決算発表以降は、「ダメなものはダメ、良いものは良い」という展開となり、新興市場が全体として「連帯責任」を取らされる展開になるとは考えづらいと思うのだが、いかがだろうか?

 新興市場のセンチメント好転に伴い、これまで影響を受けてきた低位バリュー株についても、ここから上昇が期待できると思われる。現状の株価水準は、ファンダメンタルズが悪くないのに売り込まれてきた銘柄に対する投資チャンスであり、ここからの株価下落はあっても限定的と思われる。今回は、この考え方をベースにした銘柄スクリーニングを行った。条件は以下の通り。

 母集団 : 東証1部銘柄
 株価 : 350円以下(2007.5.2現在)
 PBR : 1倍以下
 配当利回り : 1%以上

No. コード 会社名 株価 PBR 配当
利回り
自己資本
比率
1 1884 日本道路 223 0.40 1.35 40.25
2 1895 大成ロテック 215 0.45 1.40 38.71
3 1896 大林道路 221 0.46 1.36 28.38
4 1954 日本工営 342 0.68 2.19 52.07
5 1978 アタカ大機 334 0.88 1.80 46.85
6 2004 昭和産業 282 0.99 2.13 36.25
7 2056 日本配合飼料 170 0.99 1.76 24.54
8 2108 日本甜菜製糖 348 0.88 1.44 59.49
9 2536 メルシャン 311 0.86 1.61 50.94
10 3106 クラボウ 327 0.84 1.53 45.68
11 3109 シキボウ 168 0.78 1.79 27.17
12 3526 芦森工業 261 0.77 1.92 59.69
13 3529 アツギ 200 0.99 1.00 73.98
14 3551 ダイニック 288 0.96 2.08 26.22
15 3577 東海染工 167 0.68 1.80 40.17
16 3877 中越パルプ工業 251 0.54 2.39 34.01
17 3946 トーモク 263 0.72 2.28 30.00
18 4027 テイカ 317 0.71 1.58 57.51
19 4031 片倉チッカリン 343 0.67 2.33 48.63
20 4092 日本化学工業 348 0.86 1.72 45.34
21 4229 群栄化学工業 327 0.70 1.83 75.01
22 4404 ミヨシ油脂 235 0.92 2.13 38.32
23 4461 第一工業製薬 313 0.79 2.24 37.73
24 4538 扶桑薬品工業 338 0.96 1.78 46.41
25 4989 イハラケミカル工業 350 0.64 1.43 68.62
26 4996 クミアイ化学工業 242 0.55 1.24 70.33
27 5142 アキレス 206 0.99 2.43 46.50
28 5204 石塚硝子 331 0.57 1.81 29.20
29 5210 日本山村硝子 337 0.70 1.93 58.98
30 5269 日本コンクリート工業 314 0.74 1.27 44.58
31 5363 TYK 319 0.60 0.63 60.31
32 5602 栗本鉄工所 340 0.50 1.18 40.68
33 5612 日本鋳鉄管 217 0.77 1.84 38.92
34 5805 昭和電線ホールディン 163 0.92 1.23 27.59
35 5815 沖電線 282 0.99 1.42 67.49
36 5915 駒井鉄工 291 0.32 1.72 51.59
37 5958 三洋工業 290 0.79 2.07 47.07
38 5981 東京製綱 217 0.79 1.15 42.34
39 5998 アドバネクス 212 0.79 1.65 40.12
40 6358 酒井重工業 266 0.66 1.88 59.43
41 6373 大同工業 313 0.93 1.28 28.58
42 6461 日本ピストンリング 252 0.90 1.98 34.75
43 6801 東光 318 0.82 0.63 55.75
44 6924 岩崎電気 272 0.70 1.84 38.78
45 7102 日本車両製造 316 0.81 1.58 40.46
46 7244 市光工業 333 0.99 1.80 32.66
47 7263 愛知機械工業 288 0.50 0.69 57.21
48 7305 新家工業 334 0.91 1.80 42.62
49 7723 愛知時計電機 336 0.88 2.08 45.77
50 7769 リズム時計工業 178 0.70 1.12 78.70
51 7971 東リ 309 0.76 2.27 35.09
52 7987 ナカバヤシ 231 0.68 2.60 43.66
53 7993 サンウエーブ工業 323 0.46 0.77 43.39
54 8025 ツカモトコーポレーシ 184 0.61 1.63 25.36
55 8029 ルック 270 0.57 0.93 55.33
56 8042 日本マタイ 253 0.63 1.98 31.83
57 8091 ニチモウ 228 0.48 2.19 29.58
58 8095 イワキ 273 0.54 2.20 37.59
59 8181 東天紅 288 0.70 0.69 71.95
60 8201 さが美 310 0.58 3.23 46.38
61 8617 光世証券 195 0.98 2.05 79.56
62 9070 トナミ運輸 343 0.71 1.75 38.68
63 9074 日本石油輸送 326 0.64 1.84 59.35
64 9351 東洋埠頭 252 0.93 1.98 44.61
65 9470 学習研究社 323 0.79 1.24 53.16
66 9534 北海道ガス 305 0.76 1.97 27.23


投資指針
 : これらの銘柄に分散投資



 

石原東京都知事再選に絡んだ経済効果シナリオ

2007.04.23

 今回は少々「俗っぽい」相場シナリオの話である点を、お許しいただきたい。このたび石原都知事が再選を果たしたが、氏の公約の中には株式市場にとってポジティブなものが2つある。ひとつは東京オリンピック誘致で、もうひとつは日本におけるカジノ解禁である。今回はこの公約が株式市場与えるインパクトについて考えてみたい。

1.東京オリンピック誘致

 『SPA』(扶桑社)2006年4日24日号の「 [2016東京オリンピック計画]7つの大問題」という特集記事が目を引いた。この記事の冒頭部分には、次のように書かれている。

 他候補に大差をつけて3戦を果たした石原知事。これで公約だった東京オリンピックの招致活動に弾みがつくのは間違いない。だが、本当に大丈夫か?臨海部は液状化対策の不備が指摘されているし、五輪名目の大開発にも疑問の声が上がっている。そこで、2016東京オリンピック計画にまつわる7つの大問題を検証する。

 もともとは五輪を口実に都の負の遺産を国の税金を使って整理しようとする石原知事の強引さと税金の無駄遣いを強調しようとする趣旨の特集だが、投資家としては、この記事をそう受け取るだけでは足りないだろう。「五輪にからんだ公共投資・経済効果」という点から見ると、株式市場にポジティブインパクトをもたらすものであることがわかってくる。それは、この記事の見出し部分「カネのかからない五輪どころか、総額8兆円規模の大規模開発が始まる?」からもうかがえる。
 同特集では、この総額8兆円規模の大規模開発の内訳についても記載されているので、以下に引用する。

オリンピック関連開発の投資計画
首都高中央環状品川線 4,000億円
首都高中央環状新宿線 2,500億円
圏央道 3,900億円
外郭環状道路 1兆3500億円
「外環の2」地上部街路 6,000億円
3環状道路の関連道路 700億円
高速道路「多摩・新宿線」 2兆2,000億円
羽田ー築地間トンネル道路 1兆円
環状2号線など臨海部の広域道路 7,245億円
会場アクセス用地下鉄などの整備 2,450億円
主要3施設建設 5,000億円
主要3施設の用地買取 7,000億円
競技施設の建設 900億円
メイン会場付近の運河埋め立てなど 220億円
総  額 8兆5,415億円

 同特集においてジャーナリストの須田信一郎氏は、次のようにコメントしている。

 「臨海副都心は95年以降、塩漬け状態となっています。そこで石原知事は当初、カジノ構想をぶち上げたんですが、頓挫した。しかし五輪に立候補すれば、少なくともIOC総会で開催地が決定する09年までの2年間は国の金を使って都の整備ができます。道路整備だって東京の渋滞解消というよりも、五輪のためといったほうが実施しやすい。ほかのインフラ整備や、羽田空港の拡幅・国際空港化といった都が抱える課題も、五輪を言い訳に進めることができるんです」「そうしたインフラ整備は普通、20年から30年かけてやるものですが、五輪というゴール=期限が区切られていれば一気に進められます」

 またジャーナリストの上杉隆氏によれば、「08年の北京五輪の次の次にまたアジアで開催する可能性は相当低いと思います。それよりも、この2年間で国のカネを使って、できるだけ臨海開発やインフラ整備をすることが狙いです」とのことである。両者とも、五輪誘致に成功するしないにかかわらず、2009年にかけて一定額の大規模開発が実施されると予測している点で共通している。

 以上の数値の正確性については、出所が経済誌でないこともあり、ある程度割り引いて考える必要があろう。しかしながら大規模開発のシナリオについては、一定の説得性があるものと考える。

2.日本でのカジノ解禁

 以下、2007年4月17日付、メリルリンチ日本証券レポート「今度こそ実現性が高い日本でのカジノ解禁」からの抜粋。

 我々は2004年12月3日に「日本でも解禁期待されるカジノ」とのレポートを出したが、カジノは実現しなかった。しかし、カジノ法案は今年7月の参院選後に具体化し、2008年の通常国会に提出される可能性が高いと考える。マカオのカジノの急成長やシンガポールのカジノ解禁などにより観光客獲得のための国際競争が激しくなってきているうえ、疲弊した地方経済の復興、人口高齢化に伴う税収確保のために、日本はカジノを必要としている。日本で当初認可されるカジノは2-3箇所であるため、東京の湾岸地域や沖縄の普天間米軍基地跡地などが有望だろう。投資金額数千億円の大規模なレジャー施設になる見込みである。
 日本のカジノ関連株として挙げられるパチンコやパチスロ・メーカーの足下の業績は、射幸性是正のための規制改正を控えて厳しい。日本企業はカジノ運営のノウハウが乏しいので、カジノ受注のためには海外企業との連携が鍵になろう。2008年にカジノ法案が成立しても、カジノ建設やディーラー育成に3年程度要するため、実際のカジノ開設は2011年以降になろう。カジノ法案が具体化すれば、カジノ関連や不動産・建設株が物色されようが、カジノの収益貢献度を見極める必要があろう。

3.筆者の見解

  1. 以上2点について、実施についてはともに不透明な部分が多いが、特にオリンピックについては、建設・不動産を中心とした内需セクターに一定のポジティブインパクトを与える材料と認識する。2003年以降の景気循環の「黄金サイクル」(特に建設投資循環)の強化に寄与する材料と考える。
  2. 東京オリンピック関連開発の投資計画の内容からは、道路株に対しポジティブインパクトが大きいように思える。

 東京では、マンダリンオリエンタル、リッツカールトン、ペニンシュラといった超高級ホテルが建設されている。1964年の東京オリンピックの際に、ホテルニューオータニ、ホテルオークラ等が建造された状況と符合的であるというのは、筆者の考えすぎだろうか?


 

年金関係の株式運用に関連する強気報道2点の分析

2007.04.08

 新年度に入り、年金資金関係の株式運用に関連する強気要因報道が2つ登場した。今回はこれらに対して少々コメントを行いたい。


(1)「国内株強気一色…信託銀行」

 年金運用専門の隔週刊紙「年金情報」(格付け投資情報センター)2007年4月2日号に、以下のような、かなりセンセーショナルな見出しの記事が登場した。

国内株 強気一色 同時株安も「健全調整」 ─信託銀行─

 強気一色の国内株式――。年金運用のメーンプレイヤーである信託銀行は2007年度も国内株式への配分計画を高めに維持する。顧客の年金基金が運用リスクを引き下げる中「いずれはバランス型の許容リスクも変わるかもしれない」(信託銀関係者)としつつも、各社は依然強気の構えだ。世界同時株安に対しても「健全な調整が働いた」との姿勢、前向きな評価が目立っている。

 以上の記事に加え、「年金情報」の同じページには「信託銀行の資産配分計画」というグラフが掲載され、三菱UFJ、三井アセット、住友、みずほ、りそなの各国内大手信託銀行による過去10年間の資産配分計画について、単純平均推移が示されている。このグラフによれば、2007年度の日本株組み入れ比率は2006年度とほぼ同様の39.6%であり、前年度に続いて過去10年で最高水準である。そして2007年度の企業業績は10%増益、2007年度末の日経平均水準は18,500〜19,000円が大手信託銀行のコンセンサスであるという。

 さて、本件について考察を加えたい。3点指摘できる。

  1. 結論から言えば、この状況は国内株に強気であるが、4月以降株式を買っていくということではない。一言で言えば「現状追認」である。すでに強気を反映したポジションになっているわけだ。昨年来の相場上昇で、時価評価ベースで高水準となっている日本株の組み入れ比率について今年度も維持していくという趣旨を反映したアロケーション比率である。
  2. しかしながら、株式需給面でポジティブインパクトを全くもたらさないというわけではない。今後株式相場が下落し、株価の時価評価が下がることで信託銀行の株式組み入れ比率が低下することがあれば、高水準の時価を維持するべく追加組み入れをすることになろう。つまり年金資金は現状、相場が下がった場合のクッション効果をもたらすと認識するべきである。
  3. 今後の年金資金は、上がったら売る、下がったら買うという逆張り型のスタンスを継続させていく可能性が高いと考える。

(2)10兆円ルーキー登場――市町村共済、大型株買いへ

 次に4月6日の日経金融新聞「スクランブル」の記事。以下、抜粋して引用する。

 株式市場に「10兆円投資家」が乗り込む。その名は全国市町村職員共済組合連合会。年金給付などに充てる長期給付積立金の運用方針を大幅に見直し、4月以降、日本株に3千億円規模の資金を新たに配分するとみられている。単独の投資家としては異例の買い増しとなり、株式相場の需給面でプラスになるのは確実だ。主力大型株を中心に、相場全体の下支え役となる可能性も指摘されている。
 市町村共済連は全国約1,820の市町村などで働く職員107万5千人が加入し、傘下に53の地域別構成組合を持つ。これまで各構成組合が個別に担っていた年金給付事務を4月から市町村共済連に集約し、長期給付積立金も一括して積極運用に乗り出す。運用規模は9兆9千億円と、共済年金の中では加入者の多い公立学校共済組合(7七兆8千億円)などを大きく上回り、9兆円規模の国家公務員共済組合連合会も超える。

 日経金融新聞は「株式市場の需給が一段と引き締まる中で、市町村共済連が「買いの伏兵」として参戦すれば、主力大型株中心に相場が底堅く推移するシナリオは十分に成り立つ」とコメントしている。しかしながら筆者は、以下のことを勘案すれば、3,000億円規模の株式購入程度では需給面のポジティブインパクトは一時的かつ限定的と考えている。

  1. ここのところ、1日3兆円程度の売買代金の日が続いている。月間の概算売買代金は60兆円台となるが、この1ヵ月分の額に対して3,000億円は0.5%に過ぎず、需給面のインパクトが非常に大きいというわけではない。
  2. 仮にこの買付が終わった場合、それに取って代わる買い主体の登場が確定しているわけではなく、需給のポジティブインパクトが長く継続していくわけではない。
  3. 日経金融新聞によれば、今年の信託銀行の月間売越額は日経平均株価が18,300円台まで強含んだ2月は3,752億円、連鎖株安が起きた3月も2,738億円だったという。これは需給面のネガティブインパクトであるが、本件はこれと同程度規模のポジティブインパクトが発生するということに過ぎない。

最後に

 当コーナーをご覧の方はすでに理解されていると思うが、筆者は日本株に対し2010〜12年にかけての上昇という強気の見方を継続している。誤解のないように確認しておくが、この見方が変わったわけでは決してない。ただし、今回コメントした内容については、センセーショナルな見出しほどにはインパクトがあるものではないと考えている。



 

円キャリートレードが外為市場にもたらすインパクトについての考察

2007.03.15

 ここのところ、為替が円高にぶれるたびに、企業収益の悪化懸念から国内の株式市場が値を消す展開が続いている。そして、円キャリートレードのアンワインドが円高方向へ為替を大きく動かしているという説明がしばしば聞かれる。
 円キャリートレードについては実態が明らかでないこともあり、為替が円高に進むとすぐに「犯人視」される傾向があるが、実際にところはどうなのだろうか?この点については、2007年3月14日の日経新聞の記事が参考になると思われるので、これを取り上げて考えてみたい。ただし筆者は、この部門の専門家ではないので、あくまで外野としての意見であることをお許しいただきたい。

 日経新聞2007年3月14日の記事によれば、1日の取引高が70兆円とされる世界の外国為替市場の中で、円キャリートレードの総額は約20兆円規模だという。根拠となる推計値は、ドイツ銀行グループが17.7兆円〜23.6兆円、シティグループが10〜20兆円規模、財務省の渡辺博史財務官は数十兆円規模で、このことから、約20兆円規模という推定値が出てきたようだ。個人的には「たった20兆円だけ?」という印象であるが──。

 さて、以上の推定値が正しいことを前提にすれば、円キャリートレードが為替市場にもたらすインパクトは、それほど大きくはないというのが筆者の考え方である。この点については、為替市場と株式市場を比較して考えるとわかりやすい。円キャリートレードの総額約20兆円は、株式市場の時価総額、外為市場1日の取引高70兆円は東証他3市場の売買代金に相当すると考えることができよう。実際の値はといえば、東証一部だけを取り上げた場合でも時価総額で約560兆円、1日当たり売買代金で3兆円弱といったところである。
 (1)円キャリートレードの総額約20兆円に対し、株式市場の時価総額は約560兆円と、株式市場のほうが約28倍も大きい。一方で(2)外為市場一日の取引高70兆円に対し、東証の一日当たり売買代金は3兆円弱であり、為替市場のほうが23.3倍も大きい。より小さい時価総額に対し、より大きな市場が与えられている──これが円キャリートレード・為替市場の組み合わせである。仮に株式の時価総額のうち頻繁に売買される部分が10%だとしても、円キャリートレードのほうがなお、時価総額対市場の点ではるかに有利である。相対的には、円キャリートレードの解消のほうが、株式よりもはるかにマーケットインパクトが小さいことが想像できる。

 また本件について何人かにヒアリングしたり報道されている内容を読んで感じるのは、セルサイド、マスコミ筋に円キャリートレードの影響力の強さを強調する向きが多い一方、実際に運用を行っている側(いわゆるバイサイド)は、影響を軽視する傾向があることだ。この点については、概してセルサイド、マスコミ筋が「大騒ぎ好き」であることと符号的であるが、バイサイド側の見方のほうが的を射ているように思われる。


結論:日経記事の推定値が正しいことを前提にすれば、円キャリートレード解消に対する懸念は、多くの場合過大であるという判断をしたい。どうやら株式市場は、円キャリートレードの亡霊に一喜一憂し過ぎであるようだ。


 

昨今の4月高アノマリーの変調について

2007.02.26

 ここ3年間ばかり、4月高アノマリーが不発に終わっています。
 これまで(特に1990年代)の4月高アノマリーは、年度初めの4月に機関投資家の買い姿勢が積極化する影響が大きかったわけです。しかしこの点について、以下の2つの要因に足元で変化がみられます。今回はこの部分にスポットを当て、考えてみます。


@年金ファンドの株式売り越し傾向
 昨年(2006年)は一服気味であったとはいえ、株式は2003年4月に大底を打って以来、趨勢的に上昇しているのはご存じの通りです。この株価上昇に伴い年金ファンドでは、ここ4年ほど国内株式の組み入れ比率が時価ベースで自動的に上昇する状況が発生しています。そして、ファンド全体のアセット・アロケーション(資産配分)を従前通り維持するため、時価が増えた分の株式を売却せざるを得なくなるということにつながります。たとえば、ファンド全体の株式の比率を35%と計画した一方、時価の上昇で45%なんて状況が発生すれば、必然的に超過分の10%を売ることになります。2003年以降は、この調整が年度初めの4月を皮切りに発生するケースが多かったというわけです。現状は多くの運用機関が国内株について強気であり、その相場観をアセット・アロケーションに反映させていますが、それをも上回って時価比率が上昇している状況が発生しているわけです。

 以上のことに加え、国内の低金利状態から年金の運用目標が2%台と低い中、為替が安定もしくは円安傾向にあるため(少なくとも円高傾向ではないため)、4%代後半の利回りが確実に(?)期待できる米国債に年金が資金をシフトしており、日本株の追加組み入れをあまりしていないという事情もあるようです。


A公的資金ファンドの株式売却
 90年代に「PKO」ということで話題を呼んだ公的資金ファンド(ただし実際はPKOなど存在せずマスコミと個人が踊らされただけで「大蔵省の勝ち」という見方もあります)。郵貯・簡保の株式運用の公的資金ファンドは趨勢的に株を売却しており、昨年の4月新年度明けにも相当売ったというのが市場の見方です。これらは郵政民営化に絡んでいるのかいないのか、足元で株式資産を圧縮する動きがあるようです。



今後どうなるか?


@年金ファンドの株式の売り越しについて
 株式市場全体としては──ファンド時価の上昇という部分だけをとらえれば──上昇すればするほど売り越しの要因となります。ただし、年金ファンドは基本的には毎年年金の掛け金流入超ファンドなので、市場全体が一昨年のような大幅上昇でなければ今年以降の4月に買い越しに転じる可能性はあります。


A公的資金の株式売却について
 こちらのほうが市場に対する影響は大きいと思ってます。「足元で株式資産を圧縮する動き」と書きましたが、これは今年以降に変化する可能性があります。郵政民営化で発足した「日本郵政株式会社」の初代社長に、元三井住友銀行頭取の西川善文氏が就任しました。資産運用業界は現在、来期以降の西川氏の舵取りに非常に注目しています。というのは、投信の郵貯販売積極論者である西川氏は、公的資金(日本郵政株式会社の資金と認識するべきか?)の株式運用についても積極的との見解が一部で伝えられているからです。西川氏が関係する公的資金の運用方針の新計画は、2007年4月以降にスタートするといいます。さてどうなりますか?


ただし、年金、公的資金等の機関投資家動向は4月高アノマリーの一要因に過ぎないと考えます。機関投資家が本格登場する前の戦後から1985年ごろにかけても、4月高アノマリーは観察されているからです。さあ今年はどうなるか?


 
 

東証一部の3つの株価指標をあらためて考える

2007.01.11

 明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。


 東証一部の株価指標として代表的なものに、日経平均・TOPIX・東証一部単純平均株価があります。同じ東証一部の指標とはいえ、計算方法や計算する母集団により、示す内容は異なります。特に昨年1年間の各指標のパフォーマンスは、指標間の乖離(かいり)が顕著でした。年初の話題として、今回はこの点について考えてみます。

 最初に、各指標の計算方法を確認します。

1.日経平均株価
 日経平均株価は、東証第一部上場銘柄のうち取引が活発で流動性の高い225銘柄を選定し、ダウ平均株価の算出方法を基にした計算方法で修正平均を算出する。原則的には各銘柄の株価を足して銘柄数で割った単純平均だが、新株の発行などの理由により連続性が損なわれないように、除数は調整される。
(出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

2.TOPIX(東証株価指数)
 TOPIX(東証株価指数)は、東証第一部上場株の時価総額の合計を終値ベースで評価し、基準日である1968年1月4日の時価総額(当初数値は8兆6020億5695万1154円。2006年6月16日現在の数値は約488兆7363億2300万円)を100として、新規上場・上場廃止・増減資・企業分割などにより修正され、指数化したものである。
(出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)


3.東証一部単純平均株価
 東証一部単純平均株価は、東証一部銘柄の株価合計をその銘柄数で除したもので、算出式は以下の通り。
単純平均株価=対象銘柄の株価合計/対象銘柄数(1715銘柄)
(出典:東証HP)


 各指標の特徴について、筆者は以下のように考えます。

  1. 日経平均株価は225銘柄の株価を足して銘柄数で割った単純平均であるため、除数調整後の値嵩株の影響を受けやすい。ちなみに日経平均の変動に関して寄与率が高い銘柄は、アドバンテスト、ファナック、京セラ、東京エレクトロン、ファストリテーリングなど。
  2. TOPIX(東証株価指数)は、東証第一部上場株の時価総額の合計の指数であるため、時価総額の大きな銘柄群の影響を受けやすい。具体的にはトヨタ、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行、NTTなど。
  3. 日経平均とTOPIXを比較した「NT倍率」は、それなりに大きく(両者で鞘とりが可能なくらい)変動する。ただし東証一部単純平均株価と比較した場合には、日経平均とTOPIXの乖離は問題にならないほど小さい。
  4. 東証一部単純平均株価は、計算方法こそ日経平均と同様に単純平均ではあるが、母集団が異なることに起因し、パフォーマンスが大きく異なることがよくある(昨年はまさにそれに該当した)。母集団数は日経平均が225、単純平均株価が1715と、大きく異なる。また日経平均の母集団は時価総額の大きい値嵩株の比率が多い一方、単純平均株価は相対的に中小型株、低位株の比率が高い。以上のことから、当コーナーで解説している低位バリュー株のパフォーマンスは、どちらかといえば東証一部単純平均株価のほうに近い。ここ何年か好調に推移した低位バリュー株のパフォーマンスが昨年についてはさえなかった状況が、東証一部単純平均株価に反映されている。
  5. 昨年は、東証一部単純平均株価は、日経平均・TOPIXよりはむしろ、日経JASDAQ平均に近いパフォーマンスであった。背景には、東証一部の225非採用銘柄は相対的に中小型株、低位株の比率が高く、これら銘柄群のパフォーマンスがJASDAQ銘柄に代表される新興市場のパフォーマンスの影響を受けたことがある。

今後の注目点:

 
 
 

低位高配当利回り銘柄スクリーニング(2006.11.29)

2006.12.01

 以下は、前回の当コーナー「昨今の株式市場動向…80年代の「01」相場に似た展開か?」で書いた当面の行動指針ですが、早くもこれを実行して良い時期を迎えつつあると思います。

 (2010年前後に向けて?)長期的には、低位バリュー株にぶらさがる一手か。サラリーマン&OLにとって、冬のボーナス支給が低位バリュー株追加組み入れの良いタイミングとなるか?そろそろ、来年3月末に権利が発生する配当を視野においてもよい時期の到来か?

 足元での東京株式市場の株価がさえない背景として、これまでの利上げ継続に伴う米国景気拡大の鈍化に起因する、先行きの国内景気鈍化懸念がいわれだしていることがありました。80年代にはやった言い方をすれば、「米国がくしゃみをすれば、日本が風邪をひく」といったあたりでしょうか。

 現状の株価水準は、ファンダメンタルズが悪くないのに売り込まれてきた銘柄に対する投資チャンスであると考えます。また以下の理由から、ここからの株価下落はあっても限定的と思われます。

  1. 「2006年後半から2007年前半にかけて国内景気は踊り場を向かえる」ということが従前から国内のシンクタンク等でメインシナリオとしていわれており、ここでの景気回復の一服は特段サプライズというわけではない。
  2. すでに当コーナーで報告のとおり、日本経済は建設投資循環と設備投資循環がともに右肩上がりの局面を迎えており、景気の調整はあっても一時的かつ浅いものであると認識するのが妥当。
  3. 「株式市場の動向は半年から1年景気に先行する」との経験則に基づけば、2007年後半に国内景気の拡大が再開するとの前提によって株式市場全体は近々底入れするタイミングを迎えつつあるとの判断が可能。
  4. 二極化相場は内外の景気鈍化懸念が原因であり、97年のようなデフレ・金融不安を背景とした悪質なものではない。逆に言うと、循環的に景気が踊り場を脱却すればノーマルな相場に戻る可能性が高いと考えるのが妥当。
  5. 低位バリュー株のバリュエーションは、依然として割安な銘柄が多い。
  6. アノマリーで考えた場合、「悪夢」となることが多い9月・10月は過ぎ、逆に「上昇の季節」である1月を迎える。

 当コーナーで言及している低位バリュー銘柄についても、ここからの下げ余地は限定的と考え、銘柄スクリーニングを行って51銘柄をピックアップしました。条件は以下の通りです。

 母集団 : 東証・大証1部銘柄
 株価 : 300円以下(2006.11.29現在)
 PBR : 1倍以下
 配当利回り : 1%以上
 除く建設株(道路株は含む)

投資指針 : これら銘柄への分散投資

コード 会社名 市場 決算月 株価 PBR 配当
利回り
自己資本
比率
1 1884 日本道路 東証一部 200703 221 0.4 1.36 40.25
2 1895 大成ロテック 東証一部 200703 209 0.44 1.44 38.71
3 1896 大林道路 東証一部 200703 214 0.45 1.4 28.38
4 2004 昭和産業 東証一部 200703 280 0.98 2.14 36.25
5 3106 クラボウ 東証一部 200703 266 0.69 1.88 45.68
6 3109 シキボウ 東証一部 200703 189 0.88 1.59 27.17
7 3526 芦森工業 東証一部 200703 247 0.73 2.02 59.69
8 3529 アツギ 東証一部 200703 170 0.84 1.18 73.98
9 3551 ダイニック 東証一部 200703 277 0.93 2.17 26.22
10 3577 東海染工 東証一部 200703 195 0.78 1.54 40.39
11 3864 三菱製紙 東証一部 200703 191 0.9 1.57 22
12 3877 中越パルプ工業 東証一部 200703 228 0.49 2.63 34.01
13 3946 トーモク 東証一部 200703 253 0.69 2.37 30
14 4404 ミヨシ油脂 東証一部 200612 217 0.82 2.3 39.11
15 4461 第一工業製薬 東証一部 200703 296 0.75 2.36 37.73
16 4615 神東塗料 大証一部 200703 216 0.61 2.31 34.25
17 4996 クミアイ化学工業 東証一部 200610 232 0.52 1.29 72.12
18 5142 アキレス 東証一部 200703 194 0.93 1.55 46.5
19 5204 石塚硝子 東証一部 200703 297 0.53 1.68 28.57
20 5269 日本コンクリート工業 東証一部 200703 296 0.7 1.35 44.58
21 5357 ヨータイ 大証一部 200703 293 0.48 2.73 59.41
22 5602 栗本鉄工所 東証一部 200703 269 0.39 1.49 40.68
23 5612 日本鋳鉄管 東証一部 200703 251 0.89 1.59 38.92
24 5805 昭和電線ホールディン 東証一部 200703 158 0.78 1.27 27.59
25 5915 駒井鉄工 東証一部 200703 280 0.31 1.79 51.59
26 5916 ハルテック 東証一部 200703 174 0.47 1.15 54.75
27 5931 川田工業 東証一部 200703 233 0.44 2.15 22.85
28 5958 三洋工業 東証一部 200703 260 0.71 2.31 47.07
29 5981 東京製綱 東証一部 200703 210 0.76 1.19 42.34
30 5998 アドバネクス 東証一部 200703 238 0.89 1.47 40.12
31 6306 日工 東証一部 200703 300 0.49 2 74.18
32 6358 酒井重工業 東証一部 200703 242 0.6 2.07 59.43
33 6461 日本ピストンリング 東証一部 200703 246 0.88 2.03 34.75
34 6704 岩崎通信機 東証一部 200703 173 0.91 1.45 54.81
35 6801 東光 東証一部 200703 275 0.71 1.09 55.75
36 6924 岩崎電気 東証一部 200703 261 0.67 1.92 38.78
37 7102 日本車両製造 東証一部 200703 280 0.72 1.79 40.46
38 7260 富士機工 東証一部 200703 294 0.85 1.7 27.36
39 7305 新家工業 東証一部 200703 248 0.67 2.42 42.62
40 7769 リズム時計工業 東証一部 200703 186 0.73 1.08 78.7
41 7987 ナカバヤシ 東証一部 200703 242 0.71 2.48 43.66
42 8025 ツカモトコーポレーシ 東証一部 200703 183 0.59 1.64 25.36
43 8027 ルシアン 大証一部 200703 185 0.92 2.16 46.84
44 8042 日本マタイ 東証一部 200702 258 0.73 1.94 28.58
45 8091 ニチモウ 東証一部 200703 243 0.51 2.06 29.58
46 8095 イワキ 東証一部 200611 278 0.55 2.16 37.21
47 8245 丸栄 東証一部 200702 208 0.55 1.44 32.76
48 8617 光世証券 東証一部 200703 179 0.91 2.23 77.72
49 9070 トナミ運輸 東証一部 200703 267 0.55 2.25 38.68
50 9351 東洋埠頭 東証一部 200703 233 0.86 2.15 44.61
51 9470 学習研究社 東証一部 200703 271 0.67 1.48 53.16

 
 
 
 

昨今の株式市場動向・・・80年代の「01」相場に似た展開か?

2006.11.20

以下は、当コーナー「なにやらどこかで見た光景…80年代の再現?」(2006.07.03付)で書いた今後の株式市場のシナリオであり、足元ではこのシナリオに近い展開となっています。

現在の株式市場と今後の展開について、以下の通り考えます。

1.86年前後の「01」相場に似た展開か?

 東京市場では、株価のさえない展開が続いています。日経平均はそこそこ高い位置をキープしているもの、新興市場はボロボロの状態です。当コーナーで言及している低位バリュー銘柄も、おそらくは中小型株という「銘柄のくくり」から、新興市場の株価推移のネガティブな影響を受けていると思われます。この展開を「二極化相場」と表現する人が多いのですが、97年以降の陰惨な二極化相場よりも、86年前後に発生した「01相場」のイメージに近いのではないでしょうか?
 ちなみに「01相場」とは、86年前後に業種の中の優良・代表銘柄の象徴である株式コード末尾2桁が「01」である銘柄に人気が集中した相場のことを指します。例えば株式の4桁コードでみると、5001日石は買われても5007コスモ石油は買われない、あるいは9101日本郵船は買われても9107川崎汽船は買われない、そんな相場が一時的に発生したものです。86年前後に発生した円高不況における金余りという環境の中、ファンダメンタルズに安定感のある銘柄に資金が集中した結果発生したものです(なお当時の物色の中心が、不動産・建設・金融等の内需株であった点は、現在とは異なります)。
 当時とは異なるにせよ、「キーワードは安定感」という点では現在発生している相場も共通しています。ライブドアショックを端とした会計不信問題や足元の業績推移について、安定感のある銘柄群に物色対象が移っている状況です。97年以降の二極化相場は、拓銀、三洋証券、山一證券、日債銀、長銀などの破綻に代表されるように、景気下向き・デフレ懸念の中で発生しました。一方で86年前後の「01相場」では、円高不況とはいえ景気は全体として上向きを維持していました。このように、ファンダメンタルズを考えれば、97年以降と現状とでは似ても似つかないように思われます。

2.今後の展開

 問題は、今後どうなるのかということです。結論から言えば、このたびの相場展開は相場全体の循環物色の中の“ワンシーン”であり、もうしばらくは現状のFlight to Quality(質への投資)現象が続く可能性も否定できませんが、そのあとには低位株の出番がやってくると考えます。80年代も円高不況から平成景気に移行するにしたがい、物色対象が「01」銘柄から徐々に広がって最終的には低位株の強烈な水準訂正相場が発生しました。今回の相場では、80年代の大相場における極端な状況の再現までは想定しないにせよ、最終的にはこれに準じた展開が発生するものと、現段階では考えます。

行動指針:

 
 
 

景気循環論の名著…ゴールデンサイクル

2006.07.26

 株式市場分析を行う上で、筆者は景気循環論を重視する。先般(2005.10.29)当コーナーで、「建設投資循環の底打ちに伴う強気見通し」を書いていることからもうかがえると思われるが、長期的な株式市場の方向性を予測する上で景気循環に基づくアプローチは有効性が高いと考えている。

 景気循環論分析の第一人者である嶋中雄二氏はこのたび、ゴールデンサイクル(東洋経済新報社)という本を出版した。筆者は早速読んでみたが、景気循環の節目のポイントにおいて「満を持して」出版したイメージであり、非常に参考になる内容だった。景気循環論に関心がある向きは、是非ご一読をお勧めする次第である。以下、同著の中で印象深かった点についてコメントしてみたい。

1. 複合循環の命題

 2003年には、建設投資循環とともに設備投資循環も底打ちしている状況である。このことは筆者も従前から認識しており、両循環が共に上向きであることから、このたびの景気上昇は息が長いものになると考えている(ちなみに「いざなぎ景気」「平成景気」の際も、両循環は共に上向きに推移していた)。設備投資循環は約10年間でワンクール。このことはすなわち、おおむね5年の上昇に対して5年の調整が対応するというのがオーソドックスで教科書的な解釈と思われる。この理屈に従えば、2003年に上昇に転じた設備投資循環は、5年後の2008年に天井打ちするという解釈も成立することになる。

 しかしながら嶋中氏は、以下の2点から、設備投資循環は2006年から2010年にかけ本格化すると指摘している。

  1. 景気循環は、期間の異なる2つ以上のサイクルがあった場合、より長いサイクルの局面がより短いサイクルの局面の強さや長さに影響を与えるという関係がある。この考え方からすれば、長期循環(建設投資循環)の上昇局面では、中期循環(設備投資循環)の上昇局面も力強く、長期化しやすいと考えるのが妥当。
    ※複合循環のこと。実際、80年代の平成景気における「両循環上向き局面」では、設備投資の上昇は8年の長きに渡っている。
  2. A戦後日本経済には、西暦における各10年(ディケード)の前半の5年間に比べ、後半の5年間のほうが景気の拡張期間が長いという規則的なパターンが存在する(さらにいえば、日本の設備投資循環の上昇局面は、西暦の各10年の後半において発生している)。
    ※設備投資循環(ジュグラー・サイクル)と「前半・後半の法則」と嶋中氏は呼ぶ。
筆者の見解
 おそらくは嶋中氏の指摘通りだろうと考える。


2.コンドラチェフ・サイクル

 コンドラチェフ・サイクルはこれまでおよそ55年周期の超長期循環と呼ばれ、存在自体は認識されていても再現性の検証が難しく、株式運用への展開も多くの場合、難しいとされてきた。このような中、コンドラチェフ・サイクルに関する嶋中氏の主張のポイントは以下の通り。

  1. コンドラチェフサイクルは、「公定歩合の循環」と位置づけることが可能。
  2. 同循環は1975年にピークアウトし下向きで推移したあと、2002年もしくは2005年に底入れしている状況。
  3. 歴史に残るバブルは大抵50〜60年周期のコンドラチェフ・サイクルの下降局面で発生している。以上は篠原三代平氏が、「大型バブルは長期波動の属性であり、コンドラチェフ現象である」と喝破されたとおりである。
筆者の見解
 上記3をそのまま受け取ると、以下の疑問点が発生する。実際のところはどうか。回答は歴史を待たなければならないのだろうが……。

 行動指針:(2010年前後に向け?)長期的には低位バリュー株にぶらさがる一手か。


 

なにやらどこかで見た光景…80年代の再現?

2006.07.03

 『Always 3丁目の夕日』という映画がヒットしている。「もはや戦後ではない」で知られている経済白書は昭和31年だが、この映画はその少しあと、昭和33年の古き良き昭和の時代をベースにしている。いつか見た昔の光景が懐かしい、好印象の映画である。翻って今回の株式市場の下落を想うに、「前代未聞の…」というより「なにやらどこかで見た光景…」、1980年代に何回も見られた調整局面の再現のようで、筆者にはある意味懐かしく(?)映った。

 さて株式市場は、ようやく「コツンときた」ように思われる。そろそろ良い時期が到来したと考え、このタイミングで、今回の下げを総括した「所感」を述べさせていただく。

1.信用買い残の整理の進捗

 信用買い残は、7月の期日到来を目前に5兆円割れの水準にまで減少した。当面、時間の経過とともに整理はさらに進み、需給面の悪材料ではなくなる。これが「コツンときた」と認識できそうと考える最大のポイントである。1999年のITバブルの水準を上回る高水準の信用買い残の期日接近と追い証がらみの売りで、今回の相場下落の80%近くを説明することができる。当コーナーで再三コメントしている通りである。今回の下げについて、ライブドアショック、日銀の量的緩和終了、米国・新興国の株式相場下落等を「犯人扱い」する向きは多い。しかしこれは、いずれかの段階で逆回転することになる買い残の山を揺り動かした「きっかけ」と受け止めるべきだろう。

 さて日興シティグループ証券の日本株ストラテジスト藤田勉氏は、6月21日付けの日経ネットHP「時節往来」の中で、下記の日米欧の株価の推移(2004年末=100)を用いて、次のようにコメントしている。

「昨年主要国で最も大きく上昇した日本株が、今年は最も大きく下落している。つまり、過度の上昇しすぎた反動で株価が調整していると考えるのが妥当であろう」

出所:S&P/Citigroup Global Equity Indices、 6/21付け日経ネットHP「時節往来」

 

 「今回の下げはそんな単純なものか?」と受け止める向きもあるかもしれないが、この見方は意外と本質を突いている。筆者の考えは、藤田氏の意見の延長線上にある。昨年に大幅上げがあったからこそ投資家が過剰に強気になり、そのことが高水準の信用買い残の発生をもたらした。前述の通り、それが逆回転(投げ)したことが相場下落の要因として大きい。
 つまり今回の下落の主要因は需給関係の崩れ、それに伴う市場のセンチメントの悪化と整理するべきと考える。逆に言えば、今回の下げをファンダメンタルズの変化に結び付けようすると、大局を見誤る可能性がある。「世界的な金利上昇局面から投機資金が逃げている」なんてコメントが聞こえてくるが、相場下落に伴うセンチメント悪化が、小さな出来事を針小棒大に言わせている感が強い。次々と投機資金が市場から逃げ出してるようなことはなく、ざっくり、100ある投機資金(ファンド)のうち、ほんの数%が手仕舞いした、そんなイメージではないか。逆に言えば、このようなファンドの手仕舞いが終わった暁には相場はどうなるのだろうか?

 ベンジャミン・グレアム師が「Mr.Market」と呼ぶように、株式市場の変動要因の中で、市場のセンチメントに起因する部分は非常に大きい。市場のセンチメントが悪化すると投資家は疑心暗鬼となる。例えば今なら、米国の景気失速リスクから日本株は買えないなどとと言い出す人が多い。しかし日本株が底打ちをして上昇を続ければ、このような意見はなくならないにせよ市場の片隅に追いやられ、単なるリスク要因といった扱いとなり、それで終わるものだ。

 そもそも上昇相場とは、常になんらかのリスクを抱えながら発生するものである。80年代を考えても、85年から87年当たりにかけては、ドル暴落リスク、ブラックマンデーが大恐慌につながるリスク(チャートは1929年にそっくりといわれた)などが言われ続けたが、結局株式市場は上昇した。一方で1989年にかけてはセンチメントが好転し楽観ムードが高まり、国内では公定歩合が1年に3回も引き上げられる悪環境下で相場上昇が発生した。要はセンチメント次第、相場とはこういう面もある。

2.なにやらどこかで見た光景

 今回の相場下落を一言で言えば、80年代にいつか見た光景で、「ああ、またか」といったレベル。今回は、日経平均でみると4月高値から20%程度の下落。一方で、低位株については1月高値銘柄が多く、30〜40%を中心とした下落率。これも当コーナーですでに案内したことであるが、今回クラスの相場下落は80年代の上昇相場においても、1年に一度程度は発生していた。言ってみれば年に一度の台風みたいなものであり、これは宿命的に避けることができない、想定して受け入れるしかない類の出来事である。もっとも経験則では、「相場における台風」は5月以降秋口かけて来ることが多く、1月にいきなり来るということだけは想定外だった。

 このような相場台風により、信用で投げなければならなくなった人が仕方なく売って程なくして底打ち、その後は新高値更新という光景も、水戸黄門に印籠シーンが必ずあるのと同じくらい、80年代には定番だったように記憶しているが、いかがだろうか?

行動指針:

  
  
  
  

波高き相場の終焉近しか

2006.05.22

 前回の当コーナーで、株式市場の見通しについて「天気晴朗なれど波高し」とした。足元の市場では、その中の「一時急落シナリオ」に近いもの(一時ちょい急落ぐらいか)が発生している。直近の下げについては円高や米株安などで説明されるケースが多いようだが、主たる要因が需給関係の悪化であることは明白だ。1月のライブドア・ショックをきっかけに、取り残された高水準の信用買い残が需給悪化要因となり、期日が近づくにつれ需給悪化度合いは高まり、そのことが市場のセンチメント悪化につながっていると考えるべきだろう。現状で、仮に株式市場のセンチメントが良いのであれば、「米国株が安いのであれば、物色対象がテクノロジーではなく内需に移るだけ」「円高は基本的には日本株にはポジティブ。業績悪化を一時的に懸念したあとは、金利低下バイアスを含めた円高メリットを織り込みにいく」といったように、1980年代の株式市場の展開が引き合いに出されポジティブな説明がされることになると思うのであるが、いかがだろうか。

 繰り返すが、今回の下げはファンダメンタルズの悪化をほとんど伴っていない、センチメント悪化に起因する調整局面である。半バブル状態にあってバリュエーション調整を余儀なくされたマザーズ市場や他の小型株市場は別として、日経平均の4月7日の高値からの下落率は8%程度にとどまっており、80年代の上昇相場に見られた短期的な調整局面と同じだと認識してよい。一方で1)騰落レシオ(25日)が60%台に突入するなど、経験則からは、調整一巡が示唆されている、2)信用買い残のピークである1月第3週から4ヵ月目を迎え、今後1ヵ月程度をメドに高値づかみの買い残が整理される過程を迎える…ことから、ここからの下げ余地は限定的と考え、低位バリュー銘柄のスクリーニングを行った。

 条件は以下の通り。

母集団:東証1部銘柄
株価:350円以下
PBR:1倍以下
株主資本比率:20%以上
無配銘柄を除く
No. コード 会社名 市場 決算月 株価 PBR 配当
利回り
自己資本
比率
1 1867 植木組 東証一部 200603 293 0.67 1.71 31.78
2 1882 東亜道路工業 東証一部 200603 320 0.74 2.5 26.88
3 1884 日本道路 東証一部 200603 291 0.53 1.03 40.25
4 1888 若築建設 東証一部 200603 249 0.84 1.2 28.06
5 1895 大成ロテック 東証一部 200703 255 0.53 1.18 38.71
6 1896 大林道路 東証一部 200703 278 0.58 1.08 28.38
7 2108 日本甜菜製糖 東証一部 200703 349 0.88 1.43 59.49
8 2288 丸大食品 東証一部 200603 277 0.57 1.08 52.89
9 2536 メルシャン 東証一部 200612 330 0.93 1.52 54.12
10 3526 芦森工業 東証一部 200703 332 0.98 1.51 59.69
11 3529 アツギ 東証一部 200603 196 0.8 1.02 75.23
12 3577 東海染工 東証一部 200603 217 0.89 1.38 41.77
13 3877 中越パルプ工業 東証一部 200703 292 0.63 2.05 34.01
14 3882 紀州製紙 東証一部 200603 262 0.65 1.15 54.17
15 3946 トーモク 東証一部 200703 303 0.82 1.98 30
16 4404 ミヨシ油脂 東証一部 200612 259 0.98 1.93 39.11
17 4996 クミアイ化学工業 東証一部 200610 293 0.66 1.02 72.12
18 5269 日本コンクリート工業 東証一部 200603 294 0.81 1.02 39.7
19 5363 TYK 東証一部 200603 305 0.62 0.66 61.57
20 5805 昭和電線ホールディン 東証一部 200603 188 0.92 0.8 27.59
21 5916 ハルテック 東証一部 200603 223 0.45 0.9 59.83
22 5931 川田工業 東証一部 200603 295 0.55 1.69 25.15
23 5958 三洋工業 東証一部 200703 319 0.87 1.88 47.07
24 6358 酒井重工業 東証一部 200603 314 0.81 1.59 56.92
25 7102 日本車両製造 東証一部 200603 299 0.79 1.67 41.67
26 7305 新家工業 東証一部 200603 306 0.93 1.96 40.01
27 7769 リズム時計工業 東証一部 200603 221 0.92 0.9 80.17
28 7987 ナカバヤシ 東証一部 200703 333 0.98 1.8 43.66
29 8042 日本マタイ 東証一部 200702 321 0.9 1.56 28.58
30 8091 ニチモウ 東証一部 200603 277 0.66 1.81 28.31
31 8095 イワキ 東証一部 200611 350 0.69 1.71 37.21
32 8181 東天紅 東証一部 200702 314 0.76 0.64 70.96
33 8245 丸栄 東証一部 200702 265 0.7 1.13 32.76
34 9070 トナミ運輸 東証一部 200703 347 0.72 1.73 38.68
35 9351 東洋埠頭 東証一部 200703 265 0.98 1.89 44.61
36 9534 北海道ガス 東証一部 200703 330 0.82 1.82 27.23


投資指針:

 これら銘柄の押し目買い分散投資。今後1ヵ月程度をメドに、高値づかみの買い残が整理される過程の押し目を拾いたい。
 なお、信用取引による押し目買いはお勧めしない。わざわざ一時的な急落で吹き飛ばされるリスクを取りにいく必要はない。信用取引は、順張りで行うべき手法である。Good Luck!



 

天気晴朗なれど波高し

2006.05.03

 昨今の株式市場は、「ミニ二極化相場」的な状況を呈している。キャノン、ホンダ、トヨタ、村田あたりが緩やかな上昇トレンドになっている。評論家的な後講釈をすれば、「ライブドア・ショック以降の質への逃避(Flight to Quality)が発生していますね」といったところか。確かにこれらの銘柄は業績が好調である一方で株価バリュエーションは決して高くなく、風向きが回ってくれば事後的に説明がつく銘柄群ではある。もっとも相場上昇の持続性、上昇率を勘案すれば、個人投資家が現状からリスクを取って報われるのかどうかについてははなはだ疑問が残り、個人的には魅力を感じない。一方で当コーナーで継続的にコメントしている低位バリュー銘柄については、ミニ二極化相場的な展開なため足元ではぱっとしない。しかしながら調整は8合目前後のイメージ、時間の問題で底打ちするだろうと考えている。このように筆者は相場を楽観視しており、「最終的にはどっちみち上がる」という相場観に変更はない。

 しかしながら「天気晴朗なれど波高し」………一時的な相場の急落シナリオも、あり得ないことではない。今回はこの点を説明したい。

 図は1985年以降2005年末にかけての、株式の3市場信用買い残・売り残をヒストリカルに示したもの(メリルリンチ日本証券「日本株投資戦略マンスリー」からの抜粋)。その後に掲示されているグラフ(2000年から2006年4月末にかけての株式の3市場信用買い残・売り残)は、それ以降の期間について、当グラフを補完するために当方で作成したものである。両グラフを見ると、信用買い残は2005年末には2000年のITバブルの時の水準を越え、6.58兆円にまで膨れ上がっている。これが2006年1月第3週には7兆円越えとなり、目先のピークをつけたことがわかる。買い残のほとんどは、「キャノン、ホンダ、トヨタ、村田」的な銘柄以外のものだろう。結果的に高値で「取り残されている」建て玉がほとんどだと推定される。多くは、期日が6ヵ月の建て玉だろうと思われる。

 以上を前提にすると、この高水準の取り残された信用買い残が、今後どのようなかたちで決着をつけさせられるかということが問題になる。以前当コーナーでも説明したが、高水準の信用買い残は、21週目(約5ヵ月目)ぐらいから見切売りが加速するケースが多い。ちなみに1月第三週の21週目は、6月第三週がそれに相当する。

 今後の相場展開として、以下の3つが想定できる。

  1. 「高値整理シナリオ」………ハッピーなシナリオである。GW明け以降、株価上昇のトレンドが復活し、買い残の回転が利いて首尾良く利食い、もしくはクロス商いによって乗換えが進むというシナリオ。
  2. 「一時急落シナリオ」………ネガティブなシナリオ。外部環境が好転せず、高水準の信用買い残自体が懸念され、一時的にせよ「我先に投げ売り」状態が発生する。
  3. 「中庸シナリオ」………以上1と2の中間シナリオ。

 どのシナリオになるかはわからないし、また私は評論家でも「当て屋」でもないので、大胆予測をする気にもなれない。経験則から言えば、信用買い残が個別銘柄ベースではなく相場全体に大きなネガティブインパクトをもたらすケースは、非常に稀であると言ってよい。しかしながら一方で、今回の高水準な買い残を見ると、なんとなく「買い残を抱えた子羊」が抱えるリスクに対し悪い予感がしないでもない。

 しかしながら言えることは、台風一過後は「晴朗な天気」が待っている可能性が非常に高いということだ。株式市場を取り巻くファンダメンタルズは良好である。重要なことは、万一「一時急落シナリオ」が発生しても、吹っ飛ばされる側にいないようにすることだろう。Good Luck!



 

2002年以降、バリュー系ファクターが復活

2006.03.10

 拙著『ファンドマネージャーの株式運用戦略』(同友館)の第3章「投資尺度を評価する」内にある図表40「ファクター別累積リターン」のグラフについて、データを更新してリニューアルした。まずは実際のグラフを見てほしい。

当「ファクター別累積リターングラフ」は、東証一部銘柄を母集団とし

  1. 低PBR
  2. 低位株
  3. 予想ROE
  4. 3ヵ月リターンリバーサル
  5. 予想低PER

に関し、各ファクターについて高位から低位まで5分位し、第1グループと第5グループの翌月の月次パフォーマンス差を測定し累積、1985/6を100としてグラフ化したもの。調査期間は1985年6月から2005年11月の20年5ヵ月。
 要は、「低PBR」であれば、東証一部全銘柄をPBRが低い順に並べで5等分し、PBRの最も低いグループと最も高いグループの月次パフォーマンス差を計算、その累積データをグラフ化しているものだ。
 このグラフをどう受け止めるかについては、読者各々のセンスに任せたい。とりあえず筆者の考えは、以下の通り。

  1. 2002年を境に、バリュー系投資尺度の有効性は明確に復活。この状況は、何事もなければ今後とも継続すると捉えるのが妥当。
  2. 各尺度のうち、「低位株」のファクターリターンがぶっちぎり、抜群に良い。
  3. 一方でバリュー系投資尺度の中でも「低PBR」、「3ヵ月リターンリバーサル」は良い状況が続いたものの、2005年3月に目先的にピークアウト。ただしこの状況には明確な背景がないことから一時的であり、早晩好パフォーマンスが復活する可能性が高い。
  4. 「低PER」の高パフォーマンスについては、以下の2点から「出来過ぎ」の感が強く、今後の再現性については非常に懐疑的。
  1. 企業業績は2002年以降、4年連続の増益基調をたどっているが、唯一好調な業績を各ファクターの中で反映しているのがPER。以上からPERが高パフォーマンスであったのはPER効果というべきものではなく、EPSが増加基調をたどったことに起因すると考えるべき。
  2. 1980年以降、4年連続増益のケースはこの時だけ。かかる増益基調は、企業の血のにじむようなリストラと景気底打ちの相乗作用により例外的に達成された側面が強く、逆に言えば今後の再現性については未知数。

投資指針:

低位バリュー株(低PBR株)の分散投資。押し目買い吹き値売りを継続。株式投資は今後数年間、このやり方がベストであると考える。



 

80年代の上昇相場における押し目の検証

2006.2.28

 このたびの下げは、TOPIXで1,713(2月7日)から1,572(2月20日)と、下落率は8.2%に達した。一時的にせよ、ヒヤッとした向きも多いのではないか?

 そもそも上昇相場における押し目というものは、どの程度を想定すれば良いのだろうか?今回は、この素朴な疑問について考えてみたい。ここでは、80年代の上昇相場を検証してみる。景気循環的に現在と似ているから取り上げるという側面が一つある。しかし同時に、90年代が趨勢的な下げ相場であったため、2003年以降の上げ相場を分析するとなると、必然的に80年代までさかのぼらなければならないという部分もある。

 図は、「1980年代後半の日経平均の推移」である(メリルリンチ日本証券「日本株投資戦略マンスリー」からの抜粋)。期間は、1984年1月から1989年12月まで。
 図でわかる通り、この時期の日経平均は、一時的な調整局面はあるにせよ趨勢的に上昇している。85年のプラザ合意、円高不況、87年のブラックマンデー、平成景気、90年のバブルを経ての上げ相場であることは、既にご存じの通りである。

 このチャートを見て、みなさんはどのように考えるか。筆者はラフに、以下のように受け止める。

  1. ひとたび上昇波動になると、50%がらみ上昇する。
  2. ひとたび調整局面になると、横ばいで推移するか、15〜20%がらみ下落する。
  3. 下げ率には差はあれど、年に一度程度の調整局面は避けられないのが現実。

 当然のことながら投資家としては、上記「2.」「3.」への対応が重要である。株式投資をしている以上、この程度の調整は必然的かつ順番でやってくるものと認識し、このような局面で「吹っ飛ばされない」ような建て玉手法を目指すべきである。以上について最もシンプルなのは、信用取引を行わないという対応方法だろう。

メリルリンチ日本証券「日本株投資戦略マンスリー」からの抜粋


 さて次に、インデックスが10%下落する意味・インパクトについて考えてみよう。「TOPIXや日経平均の10%下落なんて、そんなに大したことはないのでは?」と考える向きもあろう。しかしインデックスのレベルではそうであっても、これが個別銘柄レベルの話になると、状況は相当変わってくる。

 ディフェンシブ・ストック(Defensive Stock)と呼ばれるが、電力株・食品株・薬品株のように、市場全体の下落時でもそれほど株価が下がらない業種も、インデックスの構成銘柄には含まれる。また市場全体の下落といっても、中には逆行高する銘柄もある。このような銘柄を含みながらのインデックスの10%下げは、一方で低位株等のボラティリティが高い銘柄に関しては20〜30%近く下落するものが少なくないことを意味する。実際、このたびのインデックスベースで8%がらみの調整局面でも、低位株の20%を超える下落は数多く発生している。現実にポジションを持っている立場からすれば、相当に苦しい状況にあることは間違いない。さらにこれが信用取引の「2階建て」状態であれば、果たして調整局面で建て玉を維持しきれるのかどうかとの懸念から、相当に不安な日々を送ることになるのではないか?

 「3割高下に向かえ」という相場格言がある。逆にいえば、3割程度の下落は良くあるのでそのことを十分認識し、かつそれを有効利用せよ(逆向かいせよ)ということである。示唆するものは深い、と筆者は考える。



 

相場はデフォルメされた世界

2006.01.26

 ある元アナリストに、「相場は大勢底打ちしたようだが、株式投資はしないのか?貴君のキャリアが活きると思われるが」と問うたところ、意外にもちっともその気にならないという。担当業種銘柄の株価変動が、自分が行ってきた利益予想を遥かに超えて発生することがあっていささか手に負えず、喪失感すら感じているという。筆者にとっては株価のボラティリティこそが収益の源泉であり、これがないと退屈そのものと思ってしまうが、どうやら生真面目かつ常識人(?)の元アナリスト氏の受け止め方は、筆者とはいささか異なるようだ。

 さて、以下の事例をどう考えるか?

  1. みずほFGの株価は、2年8ヵ月で16.6倍の上昇(2003年4月の58,300円に対し、2005年12月の株価は966,000円)。
  2. 住友金属の株価は、3年1ヵ月で13.7倍の上昇(2002年11月の36円に対し2005年12月の株価は493円)。
  3. 富士通の株価は、3年3ヵ月で94%の下落(2000年1月の5,030円に対し、2003年4月には300円)。

 各銘柄とも、株価の大幅変動の背景には相応の材料があったのはもちろんである。しかし株価が乱高下しやすい中小型株ならばともかく、このような時価総額の大きい日本を代表するような銘柄の株価騰落率が2〜3年間で簡単に10倍を超える状況は、社会通念上、明らかに常軌を逸しているように思われるが、いかがか?この状況を投資家は、どう考え受け止めたらよいのだろうか?

 「相場はデフォルメされた世界」と割りきって対応するべき……これが以上に対する回答である。そして次のように認識すれば、現実に即している。
 『株式市場では過剰反応から、株価バリュエーションはしばしば常軌を逸してデフォルメされる。これが現実。古今東西、相場とはそういうもんだ』

 相場のデフォルメを作り出すのは需給。デフォルメ需給を作り出すのは歪んだ(行き過ぎた)投資家心理に起因する過剰反応。株式市場では、誰もが良いと思う銘柄は過大評価され、だれもがイマイチと思う銘柄は過少評価される。これもまたデフォルメ。そしてこれを取りにいこうというのが、バリュー株投資戦略の趣旨の一つである。現実として存在するデフォルメをどう利用するかという視点を、投資家は持つべきだ。


 

新たな株式需要の息吹か?
銀行・郵便局経由の株式投信窓販

2005.12.26

 筆者は当コーナーで、最近日本の株式市場について長期的な上昇相場を想定するようになり、その最大の理由のひとつは、景気循環が株式市場にとり長期的にフォローであると書いた(10月29日付、「建設投資循環の底打ちに伴う強気見通し」参照)。これに加えて株式市場には、銀行・郵便局経由の株式投信窓販という新たな株式需要の息吹が芽生えつつあると思われ、このことも筆者を強気にしている。今回は、この点について解説したい。

 少し前の情報で恐縮だが、共同通信社の報道によれば、投資信託協会が発表した9月の投信概況によると、銀行窓口で販売した株式投信の純資産残高は、前月に比べ1兆4,741億円増加して30兆4,015億円となり、1998年末の解禁以来初めて30兆円の大台を突破したという。ちなみに証券会社分を含めた株式投信の純資産残高は、合計で56兆93億円となった。さらに10月には、一部郵便局でも投信の窓口販売が始まり、10月13日時点で純資産残高が計52億6,300万円と、好調に滑り出したという。

 銀行は投信の窓販を強化している。日経の日曜版には毎週のように、銀行による証券営業経験者を対象にした投信営業要員の中途採用広告が掲載され、この分野での求人ニーズが非常に強いことがよくわかる。そして足元では、銀行や郵便局などに株式投資に無関心である「寝たきり預金」が多く存在している現状において、預貯金を解約して投信を購入するように積極的に勧める部隊が強化されつつあり、実際に成果も上がりつつある。主に年配の方が多いのだろうが、農耕民族型タイプのリスクを好まない「寝たきり預金」の保有者は常に一定して存在し、金額的には莫大なものになる。また保守的な富裕層にとって、銀行の信用力・影響力は引き続き絶大である。銀行の担当者が誘導すれば、ごく一部ではあるにせよ株式投信に流れていく。「株式アレルギー」「証券会社アレルギー」を持った資金が、「銀行が言うなら」ということでシフトしていく。今後はこれに加え、郵便局の資金についても同様の現象が活発化していくのだろう。

 これまでは決して株式投資には回らなかった類の資金が、株式市場に新規投入される。しかもこれらは、一度市場に入るとすぐには出ていかない性格の資金である。これらの資金は、自主性が高いわけではない。隣近所や周りの人が投信を買っているなら私も少しやろう、といった類の資金である。失礼な見方だが、ワンテンポ遅れて市場に入ってくるこのような資金は、当コーナーの読者のような(?)早々と市場参加している投資家に対して心置きなく高値を買ってくれる「援軍」にもなると期待される。いずれにせよ、今後どの程度の資金が投入されるのか、来年以降が楽しみである。

 一年間、大変お世話になりました。来年もよろしくお願いします。


 

低位高配当利回り銘柄スクリーニング

2005.11.28

 東京市場では、日経平均の上昇が続いている。ただし一時的にせよ、相場の物色対象が変化している状況は、一応は認識しておいたほうが良い。これまでは内需株・低位株主導の相場が続いていたが、足元ではこれら銘柄は一服し、変わってテクノロジー関連株が上昇している。背景には、大幅上昇した内需株・低位株の株価に過熱感が出てきていること、米国株式(特にNASDAQ)が上昇に転じたことなどがあろう。つまり東京市場では循環物色が続いているわけであるが、相場の流れが内需株からテクノロジー関連株とうまい具合にバトンタッチされたことを反映し、日経平均は趨勢的な上昇が続いているというわけである。一方で日経平均と比較して、ソニー・東京エレクトロン・アドバンテスト等の値嵩テクノロジー株の上昇の影響を受けづらいTOPIXについては、高値圏でもみ合っている状況である。

 さて当コーナーで注目している低位バリュー銘柄は、上記要因から、さえない動きとなっている銘柄も多い。先般当コーナーで紹介した「東証一部におけるPBR1倍割れ銘柄数の比率推移」についても、10月末時点では20%近くまで減少したあと、足元では25%近くまで上昇したと推定される。ただしこの状況は、これまでの大幅上昇に対する一時的な調整局面と筆者は認識している。ファンダメンタルズ・株式需給等の面で大きな変化があったわけではない。以上のことから、低位バリュー銘柄の下げ余地は限定的と考え、銘柄スクリーニングを行った。

条件は以下の通り。

 <表1>
母集団 東証・大証1部銘柄
株価 350円以下(2005.11.25現在)
PBR 1.1倍以下
配当利回り 0.9%以上


 <表2>
母集団 東証・大証1部銘柄
株価 300円以下(2005.11.25現在)
配当利回り 0.9%以上
株主資本比率 20%以上

(PBRは勘案せず、あくまで株価と配当利回りだけにこだわった)

 表1で「PBR、1.1倍以下」「配当利回り、0.9%以上」とやや中途半端な条件にしたのは、低位バリュー銘柄が全体の相場の底上げで投資対象が減少傾向にある中、以下の2点の考えによる。

  1. 株価が1割前後下落すれば「PBR1倍以下」「配当利回り1%以上」の条件に収まる銘柄をカバーしたい。
  2. 「絶対的な」バリュー銘柄でなくても、「相対的な」バリュー銘柄であれば高パフォーマンスを期待することが可能である。

投資指針:これら銘柄の押し目買い分散投資 

表 1
No. コード 会社名 市場 株価 PBR 配当
利回り
自己資本
比率
1 1867 植木組 東証一部 293 0.67 1.71 31.78
2 1884 日本道路 東証一部 294 0.55 1.7 40.06
3 1888 若築建設 東証一部 277 0.94 1.08 28.06
4 1895 大成ロテック 東証一部 267 0.56 1.12 40.37
5 1896 大林道路 東証一部 290 0.59 1.03 30.13
6 2108 日本甜菜製糖 東証一部 313 0.87 1.6 58.18
7 2217 モロゾフ 東証一部 346 1.09 1.16 60.14
8 3107 ダイワボウ 東証一部 232 1.09 1.29 33.08
9 3526 芦森工業 東証一部 325 1.04 1.54 62.39
10 3577 東海染工 東証一部 248 1.02 1.21 41.77
11 3877 中越パルプ工業 東証一部 297 0.67 2.02 32.94
12 3882 紀州製紙 東証一部 310 0.77 0.97 54.17
13 3946 トーモク 東証一部 313 0.95 1.92 28.16
14 4092 日本化学工業 東証一部 328 0.87 1.83 42.9
15 4201 日本合成化学工業 東証一部 335 0.8 1.49 36.01
16 4406 新日本理化 大証一部 311 0.89 1.61 41.17
17 4615 神東塗料 大証一部 271 0.79 1.85 32.21
18 4996 クミアイ化学工業 東証一部 304 0.71 0.99 72.4
19 5602 栗本鉄工所 東証一部 330 0.5 1.21 40.67
20 5612 日本鋳鉄管 東証一部 251 0.87 1.59 42.49
21 5916 ハルテック 東証一部 235 0.47 1.28 59.83
22 5931 川田工業 東証一部 309 0.58 1.62 25.15
23 5958 三洋工業 東証一部 325 0.96 1.54 46.69
24 7102 日本車両製造 東証一部 298 0.78 1.68 41.67
25 7305 新家工業 東証一部 312 0.95 1.6 40.01
26 7769 リズム時計工業 東証一部 226 0.95 1.33 80.17
27 7987 ナカバヤシ 東証一部 334 1.03 1.8 40.73
28 8042 日本マタイ 東証一部 308 0.79 1.62 30.46
29 8091 ニチモウ 東証一部 315 0.76 1.59 28.31
30 9070 トナミ運輸 東証一部 347 0.65 1.73 41.04
31 9470 学習研究社 東証一部 302 0.67 0.99 27.75


 

表 2
No. コード 会社名 市場 株価 配当
利回り
自己資本
比率
1 1301 極洋 東証一部 292 1.71 25.16
2 1867 植木組 東証一部 293 1.71 31.78
3 1884 日本道路 東証一部 294 1.7 40.06
4 1888 若築建設 東証一部 277 1.08 28.06
5 1895 大成ロテック 東証一部 267 1.12 40.37
6 1896 大林道路 東証一部 290 1.03 30.13
7 2052 協同飼料 東証一部 207 0.97 25.99
8 2056 日本配合飼料 東証一部 218 1.38 21.83
9 2211 不二家 東証一部 286 1.05 34.54
10 3101 東洋紡 東証一部 298 1.68 21.01
11 3107 ダイワボウ 東証一部 232 1.29 33.08
12 3110 日東紡 東証一部 282 1.06 38.14
13 3408 サカイオーベックス 東証一部 258 0.97 37.12
14 3432 三協・立山ホールディ 東証一部 284 1.76 25.81
15 3577 東海染工 東証一部 248 1.21 41.77
16 3877 中越パルプ工業 東証一部 297 2.02 32.94
17 4404 ミヨシ油脂 東証一部 283 1.77 36.5
18 5142 アキレス 東証一部 242 1.24 45.19
19 5196 鬼怒川ゴム工業 東証一部 269 1.12 20.03
20 5302 日本カーボン 東証一部 278 1.08 38.11
21 5476 日本高周波鋼業 東証一部 263 0.95 43.67
22 5479 日本金属工業 東証一部 245 2.04 22.74
23 5491 日本金属 東証一部 278 1.8 22.83
24 5612 日本鋳鉄管 東証一部 251 1.59 42.49
25 5701 日本軽金属 東証一部 300 1.33 22.39
26 5916 ハルテック 東証一部 235 1.28 59.83
27 6317 北川鉄工所 東証一部 294 1.02 39.44
28 6374 TCM 東証一部 288 1.39 24.06
29 6621 高岳製作所 東証一部 272 0.92 30.73
30 6796 クラリオン 東証一部 213 0.94 22.36
31 7102 日本車両製造 東証一部 298 1.68 41.67
32 7721 トキメック 東証一部 286 1.05 28.79
33 7769 リズム時計工業 東証一部 226 1.33 80.17
34 7897 ホクシン 東証一部 258 0.97 30.74
35 8007 高島 東証一部 287 1.39 20.08
36 8061 西華産業 東証一部 282 1.77 30.01
37 8090 昭光通商 東証一部 233 1.29 21.18
38 8571 ニッシン 東証一部 192 1.56 29.08
39 9132 第一中央汽船 東証一部 259 1.93 32.58
40 9351 東洋埠頭 東証一部 286 1.75 47.03
41 9536 西部ガス 東証一部 262 1.91 22.09
42 4615 神東塗料 大証一部 271 1.85 32.21
43 5603 虹技 大証一部 297 1.01 24.33
44 8027 ルシアン 大証一部 275 1.09 41.04

 
 
 

「PBR1倍割れ銘柄」の水準訂正が順調に進行中

2005.11.05

 株式市場ではここのところ、資産デフレの終焉に代表される「経済の正常化」を織り込む相場展開が続いている。また以上に起因して、(教科書的に言えば)株価が解散価値以下に放置された状態にあるところの「PBR1倍割れ銘柄」の水準訂正もまた、順当に進んでいる。今回はこの点について考えてみたい。

 拙著『ファンドマネージャーの株式運用戦略』(同友館)の第3章『投資尺度を評価する』内にある、図表37「東証一部におけるPBR1倍割れ銘柄数の比率推移」データを更新してみた。まずはグラフを見てほしい。

 グラフは、1975年6月から2005年6月の30年間について、東証一部に占めるPBR1倍割銘柄の比率の推移を示したもの。同比率は、起点の1975年から1996年ぐらいまでは比較的安定的に推移している。この期間、すなわち2極化相場以前の「正常なマーケット」における当比率の平均値は5%前後。ちなみに1989年、バブル崩壊前の低位株の水準訂正相場(にっかつ等のごく一部の銘柄を除き、低位株のほとんどが1,000円を目指したというものすごい相場)においては、同比率がゼロ%となった時もあった。

 PBR1倍割銘柄比率が大幅に増加する転機となったのは、1997年。二極化相場における「負け組」低位バリュー株のいわゆる「97暴落」である。これ以降も同比率は上昇傾向となり、2003年にかけ60%超えの水準となる局面もあった。東証一部銘柄の60%の株価が解散価値を下回っているという状況は、あまりに売り込まれて常軌を逸していたと、今となっては認識できる。

 この状況は2003年を境に転換し、現在に至っている。足元では低PBR銘柄が低位を中心に株価上昇しているため、同比率は順調に低下傾向となっている(10月末時点では、20%近くまで減少していると推定される)。

 現在の相場について、筆者は以下の通り認識する。

  1. 現在は、1997年以降のいわゆる「二極化相場」で売り込まれた低位バリュー銘柄の趨勢(すうせい)的な株価の戻り局面にある。この状況は、何事もなければ当分の間継続する。
  2. 株式市場は、二極化相場が発生する以前の状態に正常化していく。
  3. 以上から、東証一部に占めるPBR1倍割れ銘柄の比率は趨勢的に減少し、中長期的に現状の株価の戻り局面(=PBRの上昇局面、すなわち低位バリュー銘柄の株価の水準訂正)が継続する可能性が高い。

    ⇒順当に考えれば、最終的には同比率は5%前後を目指す展開と認識するのが妥当。

投資指針:中長期的投資スタンスとして、同比率の減少傾向を享受できるような低位バリュー株(低PBR株)の押し目買い吹き値売り。


 

建設投資循環の底打ちに伴う強気見通し

2005.10.29

 筆者は最近、日本の株式市場について長期的な上昇相場を想定するようになった。この背景はいくつかあるが、最大の理由のひとつは景気循環が株式市場にとって長期的にフォローであると考えることだ。UFJ総合研究所投資調査部長の嶋中雄二氏によれば、日本経済における建設投資循環(いわゆるクズネッツ・サイクル)は、2002年に底打ちし上昇に転じているという。このことが長期的に強気である一因である。これは投資家にとって重要な知識なので、今回はこの建設投資循環について考えてみたい。

 日本経済には20年周期の建設投資循環が存在する。日本の場合、建設投資循環らしきものが発生した起点(ボトム)は1962年前後と認識される。これには、1960年末に池田勇人内閣により決定された「所得倍増計画」の影響が大きいと思われる。ちなみにこれ以前は第二次世界大戦の影響から、建設投資循環らしきものは認識されない。大戦後の復興が進む中「所得倍増計画」も手伝い、ビルや高速道路等の大型建築物の建設ラッシュになったのがこの頃というわけである。特に首都圏では東京五輪(1964年)に向け、首都高速、ホテルオークラ、ホテルニューオータニといった様々な大型建造物が建設された。

 建設投資循環を視野に、この後の日本経済の流れをざっくりと追ってみよう。東京五輪(1964年)を間に挟んだ60年代の高度経済成長期、70年の大阪万博、72年の田中角栄内閣の「列島改造」ブームまでの約10年間、建設投資は猛烈な勢いで増え続けた。その後、73年第一次オイルショックを迎える中で約10年間の調整局面を迎えた後、83年ごろからの再び建設投資が盛り上がって平成景気につながり92年ごろにピークを迎えた。その後は再度約10年間にわたる調整局面となり、2002年を迎えたという流れとなる。バブル崩壊後の90年代の調整を経て、工場立地件数、建築着工床面積とも2002年に大底を打った。工場立地件数の増大は建築着工床面積の拡大につながり、後者は有効求人倍率の上昇につながる。

 以上から嶋中氏は、03年からの10年間は20年周期で訪れる建設投資循環に起因し、長期的な景気拡大局面になると見ており、それを支えるのは、工場の国内回帰、地価の下げ止まりだという。また公共投資については減少の一途をたどり地方経済を冷え込ませたが、環境大国や観光立国を目指す日本は都市部の温暖化防止や景観を改善するインフラ整備が必要となることに起因し、ここにきて底入れした可能性があると考えている。

 またUBS証券アナリストの沖野氏によれば、東京23区では、耐震基準が強化された1981年の改正建築基準法以前に建てられた築24年以上のオフィスビルの床面積は全体の約40%に上る。特に昭和40年代の建設ブームに完成した築35年前後のオフィスビルは建て替えを決断すべき時期に入っているという。

 建設投資循環が右肩上がりの時期は、より短い景気循環である設備投資循環も趨勢的に右肩上がりになる(仮に調整局面を迎えても、相対的に軽微に終わる)傾向がある。そして両循環がそろって右肩上がりになっている局面は、株式市場が上昇しやすいと認識したほうが得策だ。また今後株式の投資戦略を練る上では、内需銘柄(というよりハイテク銘柄以外)を中心に、強気にバイアスをかけた戦略が奏功するものと考える。


参考文献:
エコノミスト(毎日新聞社)2005 10/18号
2005年10月24日付UBS証券アナリスト沖野登史彦氏レポート「スーパーゼネコン4社の目標株価を引き上げ」



 

バリュー株投資家への福音か?米巨大買収ファンドの日本上陸

2005.09.17

 東京株式市場は、堅調な展開が続いている。日本株には本来、9月、10月に下落しやすいアノマリーの存在が認められるのであるが(当アノマリーの詳細な背景等は、別途違う時に説明します)、足元ではそういった様子は微塵もうかがえない。オイルマネーと思しき外人買いを背景とした、「重厚長大+金融株」を中心とする強気相場が展開されている。国内機関投資家のファンドマネージャーのパフォーマンスは二極化している模様で、彼らのうち後追い的な投資行動に終始している向きも、いよいよ万年オーバーウエイトを続けてきたテクノロジー株に見切りをつけ、「重厚長大+金融株」の組み入れを徐々に増やしていると聞く。これまでの機関投資家御用達銘柄であるソニー等のテクノロジー株に代表される銘柄はその地位を徐々に失い、三菱商事、新日鐵、みずほFGなどに取って代わられているようである。
 このような中、当コーナーで継続的にお勧めしてきた低位バリュー銘柄のパフォーマンスも好調に推移しているのはご存じの通りである。実は小生、9月、10月と東京証券取引所の東証アカデミーというところで講座を持ち(既に申し込みは終了)、相場の初心者・中級者向けに低位バリュー銘柄の分散投資戦略を説いていく予定である。当セミナーには9月と10月の2回でのべ300人から400人の投資家が出席する予定であり、低位バリュー銘柄の需給改善にも微力ながら寄与できることを期待している(文末の注1、2を参照願います)。

 さて本題。どうやら米国の強力なM&Aファンドが、日本に進出してくる模様である。このことは「黒船到来」をイメージさせる一方、低PBR銘柄の株式需給に対する、強烈な援軍となるように思われるので要注目である。以下、新聞記事を2つほど紹介する(要点のみ、下線は筆者)。

2005/07/14、日経金融新聞
「買えない企業はない」――80億ドル級相次ぎ登場

 米買収ファンドが巨大化している。投資収益に飢える投資家のマネーを吸い上げ、ウォール街という舞台装置を駆使して、巨大企業を飲み込んでいく。かつてない勢いで市場を席けんする買収ファンド。
 7月初め、米買収ファンド大手ブラックストーン・グループが顧客に断りの連絡を入れ始めた。「上限は125億ドル(1兆4千億円)で打ち切りたい」。4年ぶりの新ファンド募集に前回の2倍を超える14億ドルの申し込みが殺到。人気が出すぎて一部を門前払いする事態が起きている。
 資産が10億ドルを超えるファンドは10年前は7本だった。それが今や50本。今年は80億ドル級の「メガ・ファンド」も続々登場した。ブラックストーンが初の100億ドルを実現すれば年間で総額1,200億ドルが買収ファンドに流れ込む計算だ。その資金がこの先、4〜5倍のレバレッジをかけて企業買収に突き進む。時価総額世界最大のエクソンモービル(3,800億ドル)を丸ごと買え、日本のトヨタ自動車3社分という買収力だ。資金の出し手は富裕な個人や年金基金。過去5年、運用難に苦しんだ機関投資家が耐え切れなくなり、せきを切ったように押し寄せている。
 存在感を増す買収ファンドは、ウォール街にとってドル箱になった。ブラックストーン4億ドル、コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)2億ドル――。買収ファンドがウォール街に年間いくら落とすかの試算だ。案件を動かせばそれだけ自身のもうけが膨らむ。モルガン・スタンレーの投資銀行マンは常時20社超の買収候補先をカバンに忍ばせ、買収ファンドに日参している。KKRの創業者ヘンリー・クラビス氏は3月の講演で「エンロンなど不正を起こしたのは上場企業。買収ファンド傘下の企業は統治が効き、不祥事はない」とまで言い放った。投資家、ウォール街、企業。それぞれの事情と思惑がからみ合う。買収ファンドが、空前の規模に膨らんでいく。
2005/09/14、 日本経済新聞
米大手買収ファンド、KKR、日本進出――来春までに投資拠点

 米大手買収ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)は2006年春までに東京と香港に拠点を設け、日本や中国で投資を始める方針を決めた。世界最大級の投資規模を持つKKRの進出で、ファンドによる日本企業のM&A(合併・買収)が加速しそうだ。今後の半年間、日本のM&Aや再生業務の経験を持つ専門家を数人採用し、投資チームをつくる。日本への投資額は未定。当面は米国や欧州向けに設定したファンドのなかから資金を回すとみられる。KKRは1976年に設立され、89年のRJRナビスコへの敵対買収で脚光を浴びた。現在までの総投資は130件超、1,570億ドル(17兆2,700億円)。最近では他ファンドと組み米玩具専門店トイザラスなどを買収している。日本企業を対象にした買収ファンドは全体で2兆円を超す規模に膨らんだもよう。

 以上2つの記事について、筆者の見解は次の通りである。

  1. 買収ファンドの規模はKKRだけで2兆円超え。これが「4〜5倍のレバレッジをかけて企業買収に突き進む」となると、実質の買い余力は8兆円〜10兆円が推定される。現在の東証時価総額は約400兆円である中、KKR以外にも日本進出を検討している買収ファンドが存在することを勘案すれば、日本の株式市場に与えるインパクトは相当に大きいものと推定される。
  2. このような買収ファンドの主たるターゲットは、株価が割安に放置されている企業であり、端的にはPBR1倍割れに代表されるバリュー銘柄と考えるのが妥当(加えて、「キャッシュ・リッチ企業であればなお可」となることはいうまでもない)。
  3. 以上から係る買収ファンドがバリュー銘柄の需給ポジティブインパクトを与えるのは明らか。バリュー株の株価上昇を後押しする可能性が高い。買収される側はたまらないが、バリュー株投資家にとっては福音といえる。

注1 このセミナーに近い趣旨の中上級者向けセミナーが10月23日(日)にあるので、関心があり都合がつく方は出席していただければ幸いです。詳しくはパンローリングHPをご覧ください。

注2 東証アカデミーセミナーは今回、非常に限られた範囲の集客で満員になってしまった経緯があります(同アカデミーの初級者コースである「コアコース」において、皆勤賞だった方々を対象に集客した)。「再度低位バリュー銘柄セミナーを」というリクエストを東証アカデミー宛にしていただければ、実現する可能性は多々あります。みなさんから東証アカデミーに希望を出してもらえればうれしく思います)。 → 東証アカデミーHP



 
 

「高値から22週目」アノマリーを利用した仕手株の空売り戦略
(沖電線のケース)

2005.07.03

 今回紹介するのは、いささか意地の悪い投機戦略だ。敗色濃厚となり、疲労困憊、憔悴の色濃い買い方が崩壊する過程を空売りで取りにいくという、思いっきり他人の不幸に便乗した手法である。一応合理的であり理にかなった、中上級者向け投機戦略なので、「不謹慎な」というご批判はどうかご勘弁いただきたい。

 さて、拙著「ファンドマネージャーの株式運用戦略」の中で、アノマリーを利用した仕手株の空売り戦略を説明している。筆者は「高値から22週目の法則」と呼んでいるが、ひとたび天井打ちした仕手株は、高値から22週目前後に2段下げ(もしくは3段下げ)となるケースが多い。背景には、この時期に近々6ヵ月期日が到来して「待ったなし」となる、信用買い残の整理売り(ギブアップ売り)が殺到する傾向がある。これを利用しない手はないというのが、当戦略の趣旨である。拙著では1980年代の東洋鋼鈑、極洋、1990年代の住友石炭、チノー、大紀アルミの例を元に説明している。しかしながら当戦略は、2000年代に入っても色褪せず健在である。直近で当アノマリーに該当した例として、沖電線(5815)のケースを紹介したい。

 下の図をご覧いただきたい。同社株は値上がりを始める前の過去1年は、おおむね200円から250円前後で推移していた。これが2004年12月に突如として仕手化し、12月24日には830円の高値を示現するに至った。しかしその後は、22週目あたりから信用買い残の顕著な現象を伴って株価が下落している状況が見て取れる。信用の投げが2段下げを助長させているといえる。これを取りにいこうというわけだ。

 当戦略を実行する上では、株価が大幅上昇した銘柄が一度大幅安したあたりで着目する(したがって「大幅上昇した銘柄○○○が崩れた」という情報に日頃から耳を傾けておく必要がある)。そして、空売りのタイミングを図る。1〜2ヵ月株価が調整した後で再び新高値を取りにいく仕手株はあるが、3〜4ヵ月経過してしまうと、その時点から直ちに巻き返しが図られるケースはそう多くない。以上を踏まえ、高値から22週目の少し前(2〜3週前)の値動きを注視し、「信用の投げが2段下げ(あるいは3段下げ)を発生させる」可能性が相当に高いと判断された場合に建て玉を行うわけである。沖電線(5815)のケースでどのような成果が上がったかについては、図をご覧いただければ一目瞭然である。高値から21週目の株価は540円前後であるが、この4週間後は株価が400円割れしている状況である。

  注意事項:

 
 
 

3ヵ月の調整最終局面を迎えつつある
低位バリュー銘柄投資戦略

2005.05.27

 今年は、4月高アノマリーが不発に終わった。このアノマリーは、「(アノマリーを左右するような一大事がなければ)4月は高くなる経験則がある」というものであった。

 ここ数ヵ月、日米の株価は非常に連動性が高い状況である。今年については、米国株が(1)原油高、(2)FRBによる金利の連続利上げ、(3)IBMやサムソンの業績不振、(4)かの「GMショック」等、悪材料が連続したことに起因し下落したことが4月高アノマリーを不発に終わらせた背景にあると解釈している。なお、ちなみに先般ご案内の通り、過去13年間で4月が下落したのは1998年と2000年だけである。特に下落率が3.3%と高かった2000年については、かの「ITバブル崩壊」が影響を与えた。

 このような中、当コーナーで再三紹介している低位バリュー銘柄の株価については、3月中旬に目先天井をつけて足元で調整中のものが多い。筆者は、これらの銘柄は国内のデフレ・不良債権問題の終焉、2003・2004年度の東証一部企業経常利益の連続2桁増加等により、すでに歴史的な大底をつけて上昇に転じていると認識している。つまりこれら銘柄については、一定の下落があれば押し目買いスタンスと考えているわけであるが、以下の理由からそろそろそのタイミング近しと思っている。

  1. 懸案の米国株式は、すでに底入れしている可能性が高い(下記日米比較チャートを参照のこと)。
  2. 低位バリュー銘柄の株価は調整からすでに2ヵ月強が過ぎており、日柄的に相場の「大回り6ヵ月、小回り3ヵ月」の後者の転換点を迎えつつある可能性が高い。
  3. 足元で信託銀行が買い越しに転じている。5月27日の日経朝刊によれば、三菱信託・住友信託等の大手信託の今年の株式相場見通しは日経平均で11,000円から14,000円(!)である一方、現在はこのレンジの下限に近づいているので買いを入れている状況という。彼らの相場観が当たるかどうかは不明だが、日経平均で11,000円近辺は一定の買いが断続的に入ることが想定されるため、ここを下抜けるには追加的な(現状想定されていない)悪材料が必要と考えるのが妥当。


(出所:NIKKEI NET マネー&マーケットHP)

 以上から、ここからの下値は限定的と判断、銘柄スクリーニングを行ってみた(5月27日現在)。
 条件は以下の通り。

No. コード 会社名 株価
(円)
PBR
(倍)
配当利回り
(%)
株主資本比率
(%)
1 1780 ヤマウラ 273 0.65 1.83 54.78
2 1867 植木組 279 0.63 1.79 31.78
3 1884 日本道路 243 0.46 2.06 40.06
4 1888 若築建設 218 0.86 1.38 24.15
5 1895 大成ロテック 219 0.46 1.37 40.37
6 2108 日本甜菜製糖 236 0.65 2.12 58.18
7 2217 モロゾフ 241 0.76 1.66 60.14
8 2536 メルシャン 299 0.90 1.67 53.22
9 3106 クラボウ 258 0.80 1.94 42.74
10 3107 ダイワボウ 165 0.78 1.82 33.08
11 3110 日東紡 221 0.88 1.36 38.14
12 3526 芦森工業 261 0.84 1.92 62.39
13 3577 東海染工 228 0.94 1.32 41.77
14 3877 中越パルプ工業 281 0.64 2.14 32.94
15 3882 紀州製紙 194 0.48 1.55 54.17
16 3946 トーモク 286 0.87 2.10 28.16
17 4201 日本合成化学工業 288 0.68 1.74 36.01
18 5142 アキレス 195 0.99 1.54 45.19
19 5204 石塚硝子 283 0.54 1.77 26.73
20 5210 日本山村硝子 287 0.68 2.26 57.84
21 5232 住友大阪セメント 261 0.90 1.53 40.22
22 5407 日新製鋼 257 0.92 1.95 40.53
23 5602 栗本鉄工所 299 0.45 1.34 40.67
24 5612 日本鋳鉄管 234 0.81 1.71 42.49
25 5809 タツタ電線 225 0.66 1.33 83.50
26 5916 ハルテック 226 0.46 1.33 59.83
27 5931 川田工業 268 0.50 1.87 25.15
28 5958 三洋工業 283 0.84 1.77 46.69
29 5981 東京製綱 190 0.76 1.32 40.61
30 6313 共立 284 0.75 1.76 45.16
31 6358 酒井重工業 268 0.69 1.87 60.02
32 6390 加藤製作所 276 0.62 1.81 44.19
33 7011 三菱重工業 274 0.71 1.46 34.19
34 7102 日本車両製造 255 0.67 1.96 41.67
35 7122 近畿車両 273 0.87 1.83 52.78
36 7244 市光工業 264 0.89 2.27 30.19
37 7305 新家工業 263 0.80 1.90 40.01
38 7769 リズム時計工業 216 0.90 1.39 80.17
39 7971 東リ 283 0.78 1.77 31.96
40 7987 ナカバヤシ 299 0.92 1.67 40.73


運用指針:上記銘柄の分散投資・押し目買い。


 実はここ数年の日本株は、5月以降の買いでは好パフォーマンスが得づらい状況が続いている。今後は趨勢的な下落相場こそ想定されないものの、ボックス相場という可能性は十分考えられる。しかしこの場合でも、安いところを拾っておけば売りチャンスは十分あり、報われるであろうと考える。

 さて、以上のシナリオにおけるリスク(ここからの更なる一段安リスク)は、米国株式が再度下落に転じて、3兆円という高水準の信用買い残が投げさせられる可能性だろう。このリスクが高いと考える向きは、いうまでもなく、まだ買いを入れるタイミングではないということになる。どう判断するかはあなた自身だが、以上のリスクに備えてタイミング分散するというやりかたもある。Good Luck!
 
 

日本株の4月高アノマリー(2005年版)

2004.03.11

 筆者は1998年以降、毎年この時期になると4月高のアノマリー(ここでは株価の季節性)を紹介している。「いささかワンパターン」と思われるかもしれないが、当アノマリーが1998年時点で有効であったことに加え、それ以降も概ね機能している証左と考えていただきたい。

 今回示すデータは、1993年以降のTOPIXにおける、4月の陽線回数を調査したものだ。さすがに1990年から1992年にかけての常軌を逸した大暴落ではアノマリーも何もあったものではないため、それ以降について分析している。結果は当期間(過去12年間)において、陽線回数が10回、率にして83%と非常に高いものであった。注目すべきは、この状況が、すう勢的な下落相場の中で発生しているということだ。1993年3月のTOPIXが1,431であるのに対して、2004年3月のTOPIXは1,179、つまり、全体株価が約17%下落する中で、月足陽線の発生率は80%超という事実である。これは驚くべき成績といえるのではないだろうか?

バブル崩壊以降の
4月のTOPIXの推移
TOPIXの値 前月比
3月末 4月末
1993年 1431 1620 189
1994年 1563 1603 40
1995年 1307 1331 24
1996年 1636 1712 76
1997年 1373 1441 68
1998年 1251 1222 -29
1999年 1267 1337 70
2000年 1705 1648 -57
2001年 1277 1366 89
2002年 1060 1082 22
2003年 788 796 8
2004年 1179 1186 7

 アノマリーの発生は、3月と4月をまたいでの、企業の決算月に絡んだ株式需給の変化に起因する部分が大きい。国内の株式市場では、例年3月は売り物がかさんで需給悪状態となるが、4月は3月とは逆に買いニーズが発生し、需給が様変わりに好転するパターンが繰り返されている。この点は拙著「ファンドマネージャーの株式運用戦略」で詳しく書いているが、機関投資家および金融機関等の売買行動による影響の部分が大きい。
 機関投資家&金融機関は本決算月である3月にかけ、ポジション調整や益出しなどの売りを先行させるのが常であるし、昨今ではこの時期、持ち合い解消の売りも高水準となる(ただし厳密に言えば、持ち合い解消売りが最もかさむのが2月、その次が8月であることが多い。それぞれ、本決算月、中間決算月のひと月前だから)。しかしながら4月になると、決算に絡んだ売りが一巡する一方、機関投資家は4月スタートの新規ファンドの運用を開始する。持ち合い解消に伴う売り圧力についても、決算月が終われば一段落する。

 また、4月高のアノマリーの背景には、同時期に米国株式市場が上昇しやすいこともあるようだ。日経新聞によれば、米国株には、2月中旬から5月にかけて上昇しやすい季節性があるという。米国では、確定申告によって各家庭に払いすぎた税金が戻るが、還付金の一部が株式投資に回ることにより、この時期のアノマリーにつながるということだ。

 次に、より長い期間の統計を紹介する。こちらでも同様に、4月高アノマリーの存在を概ね確認することができた。図は、戦後に東証の取引が再開されて以降の、日経平均月足アノマリー分析表である。1949年5月から2004年12月までの期間について、日経平均の上昇が多く発生している順に並べている。戦後、東証の取引再開以後の日経平均は200ポイント以下である。ちなみに、同期間の平均の上昇月発生確率は57.53%となっている。データから、機関投資家がまだ誕生していない時代を含めても4月高アノマリーは存在していた、と考えてよさそうだ(1月の上昇発生率も相当に高いが…)。1月については今後、前年12月で節税目的の損出し売りが出ることで買いニーズの高まる可能性、つまり、1月高アノマリーが発生する可能性がある。こちらについても、注意深く見ていきたいものである。

標本数 上昇した
月数
上昇率
1月 55 42 76.36%
4月 55 39 70.91%
6月 56 36 64.29%
3月 55 33 60.00%
12月 56 32 57.14%
11月 56 31 55.36%
8月 56 31 55.36%
2月 55 30 54.55%
10月 56 30 53.57%
7月 56 29 51.79%
5月 56 27 48.21%
9月 56 24 42.86%
平均上昇月発生率 57.53%

 さて、今年の動きを考えてみよう。ここ数年と比較すると、3月、4月の株式需給動向に若干変化があるように思われる。具体的には3月の売りニーズ、4月の買いニーズとも若干後退し、このことが今年のアノマリーに影響を与える可能性がある。

 まず3月の売りニーズについては、期末に係るいくつかの売りニーズのうち金融機関の持ち合い解消売りと金融法人、事業法人の益出し売りについては、例年ほど多くはないと思われる。前者については、すでに解消売りがピークアウトし減少傾向にあるし、後者についても足元の景気がそこそこが良いことから本業が概ね好調なため、ここ数年ほど益出しを必要とする状況ではないと推定される。一方で4月の買いニーズであるが、信託銀行の売買動向が売り越し基調となっている状況が気になる。背景には、信託銀行が運用している年金等の顧客の株離れがあると推定されるが、これがどの段階で買い越しに転じるかは不透明だ。
このように3月の売りニーズ、4月の買いニーズとも若干後退している状況を勘案すれば、3月のスタート台が高くなることもあり、4月にかけての上昇は相対的になだらなかなもの、あるいは前倒し的なものになる可能性がある。

 ただし、アノマリー信奉者は以下のように反論するだろう

  1. 上記の話は株式需給の氷山の一角に過ぎず、4月高のアノマリーを崩すほどのものではない。
  2. 3月の売りニーズの減少はともかく、4月も信託銀行の売り越しが続くかどうかは、現状ではなんともいえないはずであり、納得がいかない。
  3. 百歩譲って信託銀行の売り越しが続いたとしても、売りが継続するのはトヨタ、ソニー、キヤノン、ドコモなど、年金・公的資金の機関投資家の御用達銘柄であるところの時価総額上位銘柄に限定され、時価総額の小さい中・小型株、低位株が影響を受けるものではない。
  4. 東証取引再開以降、つまり機関投資家が存在していない時代を含めての分析でも当アノマリーは観察されている。
  5. そもそもアノマリーを利用する株式投資は、過去の相場における季節性(価格変動の偏り傾向)の再現性に賭けるものである。以上から「今年はこうだから……」と考えるのは「当て屋」に堕した発想に過ぎず、アノマリー利用の精神に反するものである。

 筆者は現状、アノマリー信奉者の立場を取る。特に上記「5」の下線部分の考え方を支持する。アノマリーに影響を与える要因は存在するものの、その影響度合いについては事前に測り得るものではなく、推定するだけムダだと考える。


行動指針:5月ゴールデンウイーク明けに売ることを前提に、買い場探し。銘柄は投資家自身の判断に委ねることになるが、機関投資家の持ちが少ない銘柄のほうが無難かもしれないと考えている。


 

低位高配当利回り銘柄の今後の買い手

2005.2.7

 ある人から、「あなたが当コーナーで継続して奨めている低位高配当利回り銘柄は、最近好パフォーマンスとなっている。一体どのような投資主体が買っているのか、また今後は誰が買ってくれるのか」と尋ねられた。今回はこの点について考えてみたい。

 流動性の問題から、これらの銘柄が年金や公的資金等の機関投資家、あるいは海外の機関投資家(いわゆる外人投資家)の買い対象となっていないのは明らかである。買いの主体は、個人投資家と投信と考えられる。

 個人投資家の直近の資産運用環境を考えてみよう。国内債券については依然として金利水準が低いため、ほとんど投資リターンが期待できない。しかし円高懸念が強く、ドル資産への新規投資をしづらいのが現状。そして中国株については、現状ではまったくの期待はずれであり、本当に不思議なくらい下げが続いている(にもかかわらず、相も変わらず「中国株で儲けよう」という趣旨の本の出版が相次いでおり、けっこう売れているらしい。書いている本人は本当に儲けているのだろうか?いささか疑問である)。

 以上のような環境下、不良債権処理の進展など、すでにバブル崩壊後の最悪期を脱した国内株式に、消去法でお金が回ってくるのは不思議なことではない。一部の首尾良い個人投資家が低位高配当利回り銘柄に着眼し、独自の相場観で先回り投資しているわけである。また投信を買う主な投資家は個人である。結局のところ、投資信託という器を通して彼らの資金が日本株に入っているわけである。

 次に、投信の買いニーズについて考えてみたい。2月4日の日経新聞に、野村アセットマネジメントの一面広告が載っていた。2005年2月25日に「好配当優良株投信3」を設定するという。同社は昨年11月26日にも国内外の高配当利回り株などを運用対象にする「世界好配当株投信」を設定、当初設定額が681億円と昨年設定の追加型投資信託で最大になったが、その後の資産の伸びも好調で、2005年1月末の時点で1,500億円を集めたという。高配当利回り指向の高まりがうかがえる。
 また同じく日経新聞によれば、日興コーディアル証券は投資信託など資産運用商品の品揃え強化を急いでいる。高配当利回り株で運用する「毎月分配型」投信を1〜2月にかけて品揃えしていくという。
 以上の野村・日興のケースは、特に低位高配当利回り銘柄に限定した運用ではないが、投資対象の一部として、低位高配当利回銘柄が選別されるのは明らかである。今後の低位高配当利回り銘柄に対する資金流入を占う上では、このような高配当利回り株で運用する投信の新規設定状況、あるいは追加設定状況について注目したほうがよい。そして現在のような、継続して新規設定あるいは追加設定がなされている状況であれば、低位高配当利回り銘柄は当面、下げても一時的かつ限定的と考えてよいと思われる。追加的な買いニーズがあるからだ。

 証券系の投信運用会社では、以前から高配当利回り投信を設定しているが、銀行・生保系および外資系の投信会社はこれまで、わずかしか設定していなかった。これらの投信運用会社は多くのアナリストを配しているが、どちらかといえばグロース系銘柄についての調査力を売り物にし運用しているケースが多かったのである。しかし証券系投信会社の配当利回り投信が今後とも好評を博するのであれば、ワンテンポ遅れて銀行・生保系および外資系の投信会社が高配当利回り投信の設定に走る可能性もある。このあたりについては、今後の状況が注目される。

 2005年以降は日本郵政公社による投資信託の取扱いも開始されるというから、販売チャンネルの拡大が予想される。当面は主要な郵便局での取扱いに限られるが、取扱局は増加していくとのことである。当局は「投資家の皆様が投資信託に親しんでいただく機会が益々増えていくことを期待しております」とのコメントを出している。
 郵便局で販売される投資信託の中で、インカムゲインが利回りに寄与するために毎年何がしかの配当が発生する可能性が高い投信は、これまで定額貯金で運用していた資金においても一定のニーズが推測できるものであり、低位高配当利回り銘柄の今後の新たな買い手として期待したいものである。

 投信を買う主な投資家は個人である。結局のところ、投資信託という器を通して彼らの資金が日本株に足元で入っている。この状況は今後も当面は続く可能性が高いと現状では考えている。


当面の運用指針

低位高配当利回り銘柄については、

  1. 前述したように、足元の需給が良い
  2. 3月末にかけ配当取りを指向する買いニーズが発生する可能性がある
  3. これまでの日本株において4月高のアノマリーが存在することを勘案すれば、当面は原則、強気で対処すればよい

と思われる。

ただし、高配当利回り銘柄は、株価上昇により配当利回りが低くなる宿命にある。この点は十分に認識していただきたい。

 
 

低位高配当利回り銘柄スクリーニング(2005.1.14)

2005.01.14

 当コーナーではこれまで何度かに渡り、低位バリュー銘柄のスクリーニングを行ってきた。2004年はこれらの銘柄の年足が総じて陽線になり、大底打ちを印象づけた。現在低位株となっている銘柄は、バブル崩壊の影響で大暴落したあとの1997年にいわゆる「低位株の大虐殺相場」が発生し、信用リスクの高い銘柄はもちろん、必ずしもクオリティが低くない銘柄まで連帯責任を取らされるかのごとく再度大暴落した経緯がある。それ以降大半の銘柄の株価は下げ止まり、数年に渡り地味な底練りを続けた。暴落の影響でこれら銘柄の株価バリュエーションは歴史的に割安な水準に位置し、一時は配当利回りで3%近い銘柄がごろごろしているほどだった。
 このおいしい状況を何とか利用しようと考え、安い水準を「ドブさらい」のように購入して上昇するまでは高い配当利回りを享受することを継続してお勧めし、そういう観点からスクリーニングを行ってきた。
 これらの銘柄の株価については、国内GDPが趨勢的にプラス成長を見込める等、将来的に日本経済が正常化した暁には相当な水準訂正が期待できると思われた。果たして、銀行不良債権問題の進展に代表されようが、懸案の日本経済は足元で徐々に復興が進んでいる。つれて、低位株にも雪解けの季節が訪れつつある。

 一般投資家の株式に対する過剰なリスク警戒も、徐々に薄れつつあると思われる。もうじき決算期末の3月を迎える中、「配当を取りたいが、良い銘柄を教えてほしい」などというニーズが各方面から聞こえてくる。上記のとおり低位株は既に相応の水準訂正をしているが、現時点で相対的に投資妙味が高い銘柄を2通りの切り口でスクリーニングしてみた。

 表1は、昨年11月4日「低位株が1〜3月に上昇しやすいアノマリー」にて紹介した条件に準じたものである。具体的には:

 母集団 : 東証・大証1部銘柄
 株価 : 300円以下(2005.1.14現在)
 PBR : 1倍以下
 PER : 20倍以下
 配当利回り : 1%以上
 時価総額 : 400億円以下

という内容のである。つまり、「PER・PBRの両面から割安」という観点を重視している。配当利回りで2%近いものも散見される。


 表2では、PER・PBRは勘案せず、あくまで株価と配当利回りだけにこだわった。具体的には:

 母集団 : 東証・大証1部銘柄(2005.1.14現在)
 株価 : 300円以下
 PBR : 勘案せず
 PER : 勘案せず
 配当利回り : 1.5%以上
 株主資本比率: 20%以上

 という条件である。

 バリュエーション面から見ると魅力のある銘柄が減少してきた感は否めないが、それでも株式相場全体の上昇余地はまだあると思われ(俗な言い方をすれば、「ようやく相場になってきた」と感じている)、配当とキャピタルゲインの両にらみで期待できるのではないかと考えている。

 なお今回も、信用リスク回避のため「有配銘柄」であることが重要と考えた。ただし有配でも倒産するケースはゼロではないので、この点は十分注意していただきたい。

表1(PBR : 1倍以下、PER : 20倍以下)
No. コード 会社名 市場 決算月 株価 時価
総額
PBR PER 配当
利回り
1 8041 大阪魚市場 大証一部 200503 288 16 0.89倍 10.00倍 2.60%
2 5986 モリテック スチール 大証一部 200503 272 6 0.62倍 12.30倍 2.57%
3 4615 神東塗料 大証一部 200503 215 7 0.62倍 9.50倍 2.33%
4 3877 中越パルプ工業 東証一部 200503 271 32 0.63倍 16.60倍 2.21%
5 3946 トーモク 東証一部 200503 279 27 0.89倍 16.90倍 2.15%
6 8095 イワキ 東証一部 200411 291 7 0.61倍 19.10倍 2.15%
7 9074 日本石油輸送 東証一部 200503 282 9 0.61倍 14.90倍 2.13%
8 9534 北海道ガス 東証一部 200503 283 18 0.69倍 15.90倍 2.12%
9 3107 ダイワボウ 東証一部 200503 157 21 0.77倍 14.30倍 1.91%
10 5358 イソライト工業 大証一部 200503 209 5 0.92倍 9.90倍 1.91%
11 1816 安藤建設 東証一部 200503 263 22 0.81倍 17.30倍 1.90%
12 7305 新家工業 東証一部 200503 267 16 0.87倍 17.00倍 1.87%
13 8025 ツカモトコーポレーシ 東証一部 200503 216 6 0.95倍 16.10倍 1.85%
14 5481 山陽特殊製鋼 東証一部 200503 220 37 0.60倍 17.50倍 1.82%
15 9066 日新 東証一部 200503 274 28 0.91倍 13.90倍 1.82%
16 8042 日本マタイ 東証一部 200502 286 11 0.74倍 13.20倍 1.75%
17 5234 デイ・シイ 東証一部 200503 295 9 0.50倍 17.60倍 1.69%
18 8091 ニチモウ 東証一部 200503 297 11 0.72倍 14.10倍 1.68%
19 5981 東京製綱 東証一部 200503 197 32 0.82倍 15.30倍 1.27%
20 8027 ルシアン 大証一部 200503 158 5 0.94倍 12.20倍 1.27%
21 3501 住江織物 東証一部 200505 218 17 0.76倍 15.20倍 1.15%
22 9675 常磐興産 東証一部 200503 176 13 0.91倍 17.00倍 1.14%
23 7971 東リ 東証一部 200503 273 18 0.78倍 14.60倍 1.10%

  

表2(PBR・PERを勘案せず)
No. コード 会社名 市場 決算月 株価 PBR PER 配当
利回り
株主資本
比率
1 5357 ヨータイ 大証一部 200503 267 0.49倍 27.30倍 2.62% 63.12%
2 5986 モリテック スチール 大証一部 200503 272 0.62倍 12.30倍 2.57% 62.09%
3 8024 シルバーオックス 東証一部 200503 241 0.84倍 39.10倍 2.49% 28.84%
4 9312 ケイヒン 東証一部 200503 239 1.37倍 23.10倍 2.34% 23.28%
5 9536 西部ガス 東証一部 200503 214 1.44倍 22.70倍 2.34% 20.71%
6 4615 神東塗料 大証一部 200503 215 0.62倍 9.50倍 2.33% 31.34%
7 2004 昭和産業 東証一部 200503 259 1.04倍 21.30倍 2.32% 31.11%
8 5210 日本山村硝子 東証一部 200503 260 0.63倍 22.50倍 2.31% 54.70%
9 9304 渋沢倉庫 東証一部 200503 266 0.61倍 26.00倍 2.26% 34.79%
10 8043 スターゼン 東証一部 200503 268 1.19倍 16.20倍 2.24% 25.78%
11 4404 ミヨシ油脂 東証一部 200412 226 1.00倍 24.20倍 2.21% 34.68%
12 3877 中越パルプ工業 東証一部 200503 271 0.63倍 16.60倍 2.21% 31.77%
13 1884 日本道路 東証一部 200503 233 0.43倍 28.40倍 2.15% 40.26%
14 8095 イワキ 東証一部 200411 291 0.61倍 19.10倍 2.15% 34.68%
15 3946 トーモク 東証一部 200503 279 0.89倍 16.90倍 2.15% 28.98%
16 9074 日本石油輸送 東証一部 200503 282 0.61倍 14.90倍 2.13% 63.41%
17 9534 北海道ガス 東証一部 200503 283 0.69倍 15.90倍 2.12% 24.56%
18 8061 西華産業 東証一部 200503 240 1.23倍 24.00倍 2.08% 27.11%
19 5407 日新製鋼 東証一部 200503 241 0.96倍 12.00倍 2.07% 39.14%
20 2108 日本甜菜製糖 東証一部 200503 244 0.69倍 24.30倍 2.05% 60.37%
21 2536 メルシャン 東証一部 200412 253 0.80倍 21.60倍 1.98% 47.97%
22 1882 東亜道路工業 東証一部 200503 254 0.64倍 20.40倍 1.97% 24.29%
23 2201 森永製菓 東証一部 200503 256 1.29倍 16.90倍 1.95% 37.95%
24 5771 三菱伸銅 東証一部 200503 258 1.17倍 16.30倍 1.94% 26.81%
25 3107 ダイワボウ 東証一部 200503 157 0.77倍 14.30倍 1.91% 31.57%
26 5358 イソライト工業 大証一部 200503 209 0.92倍 9.90倍 1.91% 32.09%
27 7243 シロキ工業 東証一部 200503 266 1.03倍 16.90倍 1.88% 30.48%
28 7102 日本車両製造 東証一部 200503 268 0.73倍 39.40倍 1.87% 41.71%
29 7305 新家工業 東証一部 200503 267 0.87倍 17.00倍 1.87% 39.75%
30 6138 ダイジェット工業 東証一部 200503 267 1.30倍 16.70倍 1.87% 38.69%
31 1780 ヤマウラ 東証一部 200509 275 0.65倍 36.30倍 1.82% 54.78%
32 5481 山陽特殊製鋼 東証一部 200503 220 0.60倍 17.50倍 1.82% 52.13%
33 7995 日本バルカー工業 東証一部 200503 275 1.44倍 17.20倍 1.82% 45.91%
34 9066 日新 東証一部 200503 274 0.91倍 13.90倍 1.82% 31.44%
35 3526 芦森工業 東証一部 200503 281 0.91倍 25.40倍 1.78% 64.79%
36 5958 三洋工業 東証一部 200503 281 0.86倍 20.60倍 1.78% 47.59%
37 4213 三菱樹脂 東証一部 200503 284 1.26倍 15.30倍 1.76% 29.85%
38 8042 日本マタイ 東証一部 200502 286 0.74倍 13.20倍 1.75% 35.51%
39 2533 オエノンホールディン 東証一部 200412 287 1.41倍 26.70倍 1.74% 20.34%
40 2056 日本配合飼料 東証一部 200503 173 1.21倍 22.60倍 1.73% 20.70%
41 6504 富士電機ホールディン 東証一部 200503 294 1.14倍 27.40倍 1.70% 21.12%
42 6461 日本ピストンリング 東証一部 200503 235 1.03倍 17.90倍 1.70% 31.42%
43 5234 デイ・シイ 東証一部 200503 295 0.50倍 17.60倍 1.69% 39.15%
44 8091 ニチモウ 東証一部 200503 297 0.72倍 14.10倍 1.68% 25.73%
45 4046 ダイソー 東証一部 200503 299 1.39倍 33.80倍 1.67% 40.31%
46 5612 日本鋳鉄管 東証一部 200503 239 0.85倍 22.50倍 1.67% 44.69%
47 5204 石塚硝子 東証一部 200503 241 0.48倍 27.30倍 1.66% 25.04%
48 3106 クラボウ 東証一部 200503 248 0.77倍 24.50倍 1.61% 43.42%
49 5631 日本製鋼所 東証一部 200503 189 1.29倍 28.10倍 1.59% 30.30%
50 5232 住友大阪セメント 東証一部 200503 252 0.92倍 23.40倍 1.59% 38.20%
51 5142 アキレス 東証一部 200503 200 1.04倍 48.90倍 1.50% 42.84%

 
 

上昇相場では玉を寝かすべき……
〜ある信託銀行のケース〜

2005.01.05

あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。

 上昇相場における株式投資戦略として、(1)買いから入り短期トレーディングを行う、(2)頻繁な売買は行わず、建て玉を保有しつづける…以上のどちらが有利かと尋ねられた。いささかぜいたく?な悩みのようにも思えるが、このようなハッピーな状況は今後発生しないとも限らない(足元で既に発生している可能性もある)。当テーマを考える上で、過去に筆者が強いインパクトを受けた事例があるので紹介したい。筆者がこれまで株式運用の実務を行う中で、趨勢的に上昇トレンドだったのは1980年代後半だけであり、当事例はこの時にさかのぼることになる。

 1986年の話である。筆者はある信託銀行に中途入社し、日本株のファンドマネージャーとなった。採用されてほどなく、数百億円規模の株式ファンドの運用を任された。27才の時だった。当時の株式市場では超強気相場が展開されていた。「円高、金利低下、原油安のトリプルメリット」が叫ばれ、それまであまり動かなかった電力・ガス、建設・不動産・電鉄、そして銀行株などの内需関連の超大型株が総じて大きく値上がりを続けていた。1986年はまた、いわゆる「特金・ファントラ」による機関投資家の株式運用本格化元年というべき年でもあった。当時は「カネ余り」と言われた時期で、特金・ファントラの残高は、1986年末には20兆4,300億円、87年末には29兆9,800億円と急拡大していった。当時私が配属された職場でも、となりの席のファンドマネージャーが東急や東京ガスなどを100万株単位で買い、設定されたファンドに次々に組み入れていた。それでもファンドの増加に対して株式の組み入れが間に合わない、などとコボしていた。「なるほど株が上がるわけだ」と驚かされた。

 さて当時この信託銀行には、二つの運用部門が存在していた。ひとつは件のファントラ部門(いわゆるファンドトラスト)、もうひとつは年金運用部門である。前者は事業法人、金融法人の資金を預かって運用する部門、後者は文字通り年金資金を運用する部門である。注目するべきは、両部門間で1980年代後半の日本株運用パフォーマンスに大きな差が出た点である。これは株式運用の手法において、両者で大きな違いがあったことに起因している。ファントラ部門は「マーケット・タイミング戦略」といい、ディーリング的な短期売買を主として志向した。一方で年金運用部門は「バイ&ホールド戦略」といい、いったん買ったら上昇相場が終わるまで売らない手法を主として実施した。なお当時のファントラ部門の日本株ファンドマネージャー数は7名、一方で年金運用部門は6名。運用能力はファンドマネージャーにより格差があるものの、平均してみればどちらの部門も似たようなものと推定された。両部門とも強気相場を見込んでいる点では一致しており、事実上どちらの売買戦略が上昇相場にフィットしていたかがポイントになった。本件、資金性格に伴う運用スタイルの違いはさておくとし、どちらがより高パフォーマンスだったかという点にフォーカスすれば、年金運用部門の「バイ&ホールド戦略」に軍配が上がった。どの程度良かったかを定量的に示すのは難しいが、当戦略が奏効したか、当信託銀行の年金運用はこの時期に連続して業界トップとなり、会社四季報で「年金運用で定評の信託」との見出しを得ることとなった。

 なぜこのような結果になったのか。上昇相場においてマーケット・タイミング戦略を取ったファントラ部門は、「押し目買いー噴き値売り」によりバイ&ホールド戦略よりも高い運用成績を目指したのであるが、これは叶わなかった。上昇相場において玉を売却後にその価格以下で買い戻すことは、想像以上に難しかったのである。当時の上昇相場では結果的に上昇トレンドをフルに取ることができず、「キセル売買」となってしまったケースが多かったのが実情だった。一方で年金運用部門は「バイ&ホールド戦略」であったことから、上昇トレンドを取り逃がすことなく、上昇相場の恩恵をフルに享受できた。

 観点を変えて言えば、ファントラ部門はマーケット・タイミング戦略により、「売りたい」というファンドマネージャーの欲求を素直に売買した売買手法だった。一方で年金運用部門は「バイ&ホールド戦略」であり、売りたくてしょうがない欲求を我慢し続けた。往々にして、投資家が相場において「したい」と感じることは、実は「してはいけない」ことにである。本件は、以上にも符号的であるように思われる。

 さて以上は信託銀行のファンドマネージャーの結果であるが、この状況が一般個人投資家に当てはまらないはずはない。


結論:

平均的な投資家(抜群のトレーディング能力を誇る投資家以外)の場合、上昇相場においては@買いから入り短期トレーディングを行う手法よりもA頻繁な売買は行わず建て玉を保有しつづける手法の方が有利。以上は、相場の上昇角度が高ければ高いほど、パフォーマンス格差が顕著になる。理由は、上昇相場のマーケット・タイミング戦略が「キセル売買」に陥りやすいため。

なお以上は上昇相場の話である。結果的にボックス相場であれば、あるいは上昇相場でも緩やかなものであれば、「マーケット・タイミング戦略」は有効に機能する。

低位株が1〜3月に上昇しやすいアノマリー

2004.11.04

株式市場は、さええない展開が続いている。今年の高値は4月であり、日経平均株価は10月で月足陰線が4ヵ月連続となった。しかしながら、(1)高値から半年が経過しており高値の信用の期日は過ぎている、(2)米国投信による10月にかけての節税目的の損出し売りがスケジュール的に終了している、(3)日本経済新聞によれば、月足陰線が5ヵ月連続は過去30年で4回しかなく、経験則からボトムが近いと考えられる、(4)毎年株価が上昇しやすい年前半特に4月をこれから迎える点…などから、足元は買い場探しと考えて良いのではないだろうか。

ファンダメンタルズを考えても株価予測はあまり当たらないが、少し触れる。政府が公表した10月月例経済報告における景気の基調判断では、企業収益に加え就業者数も増加している足元の状況から、4ヵ月連続でバブル崩壊後では最も強い表現となる「堅調に回復」を据え置いた。「景気は今後悪くなるのではないか」と考える向きもあるかもしれないが、4ヵ月連続で「堅調に回復」である状況と株価のこれまでの軟調な推移はあまりにも整合的ではなく、景気見合いの株価の位置は割り負け感が強いと考えるが、いかがだろうか?

さて野村證券金融研究所のストラテジスト芳賀沼千里氏によれば、低位株は1〜3月期に上昇しやすいアノマリーが存在するという。氏の分析では、低位株(ここでは東証一部銘柄で、野村證券金融研究所の業績予想銘柄のうち、株価が低位である上位5分くらい)における1990年から2001年までの12年間の対TOPIX平均超過収益率は4.4%であり、12年間で低位株が市場にアンダーパフォームしたのは12回中3回しかなかったという。ちなみにこの時期(1〜3月期)に市場をアウトパフォームする傾向がある季節性を示すファクターは低位株以外にもあり、小型株、低PER株、低PBR株、過去のリターンが低い株(いわゆるリターン・リバーサル銘柄)などがある。別の言い方をすれば、1〜3月期はそれまで市場に無視されていた地味な銘柄が市場をアウトパフォームしやすいという。

以上を参考に、ここでは年末にかけて仕込み、1〜3月期に上昇しやすいアノマリーを取りにいけるような銘柄のスクリーニングを行ってみた。条件は以下の通り。

 母集団 : 東証・大証1部銘柄
 株価 : 300円以下
 PBR : 1倍以下
 PER : 20倍以下
 配当 : 無配でないもの
 時価総額 : 下位20%
 ※株価は2004年11月2日現在

低位株以外に、小型株、低PER株、低PBR株もスクリーニングの条件とし、各ファクターに同時に該当する銘柄をピックアップしてみた。この条件で選別された銘柄数は、26銘柄となった。いずれも予想したとおり、地味な銘柄群である。なお今回は、信用リスク回避のため、「有配銘柄」であることが重要と考えた。「配当:無配でないもの」という条件があるのは、このためである。ただし有配でも倒産するケースはあるので、信用リスクは十分勘案していただきたい。

No. コード 銘柄名 株価 PER PBR 配当利回り 時価総額
(円) (倍) (倍) (%) (円)
1 1852 浅沼組 202 19.5 0.47 2.47 15,632,031,186
2 1955 東電通 266 19.5 0.65 2.25 10,733,919,280
3 2003 日東粉 279 17 0.82 2.15 11,112,430,500
4 3501 住江織 210 14.6 0.72 1.19 16,132,541,460
5 4615 神東塗 197 8.7 0.55 2.53 6,107,000,000
6 5234 デイシイ 248 15.7 0.42 2.01 7,860,709,680
7 5358 イソライト 191 10.6 0.66 2.09 4,241,455,443
8 5464 モリ工業 298 15 0.73 1.67 13,529,320,392
9 5771 菱伸銅 224 19.6 0.9 2.23 12,764,789,408
10 5815 沖電線 223 15.8 0.82 1.79 8,694,964,010
11 5986 モリテック 241 10.8 0.54 2.9 5,436,493,183
12 6214 大隈豊 225 17.7 0.89 1.77 10,659,577,950
13 6381 アネスト岩田 258 19.5 1.02 2.32 12,686,506,290
14 7987 ナカバヤシ 221 17.2 0.65 1.8 13,611,078,169
15 8025 ツカモト 191 18.9 1 2.09 5,692,051,547
16 8027 ルシアン 129 10.7 0.78 1.55 4,290,123,975
17 8041 魚市場 270 14.9 0.82 2.77 14,947,988,670
18 8042 日マタイ 223 20 0.53 2.24 8,216,870,742
19 8059 第一実 300 13.2 1.05 2 17,229,600,000
20 8118 キング 281 15.4 0.44 2.84 6,960,808,641
21 8173 上新電 280 12.2 0.45 2.14 15,920,688,280
22 8563 大東銀 139 12.7 0.9 0.71 15,359,917,000
23 9067 丸 運 284 18.2 0.61 2.11 8,226,187,516
24 9074 日石輸 236 18.2 0.71 2.54 7,842,126,600
25 9306 東陽倉 275 17.2 0.84 2.18 8,612,962,325
26 9358 宇徳運 174 15.8 1 1.43 5,064,444,000
27 9930 北沢産 247 20 0.62 2.42 5,401,459,479

 
 

市場が歴史的低PER状態である中の
高配当利回り銘柄投資戦略

2004.8.16

 メリルリンチ日本証券によれば、金融を除く東証一部の予想PER(2006年3月ベース、EPSは東洋経済の予測値を使用、株価は8月12日現在)は16倍であり、過去20年間で最低水準まで低下している。背景には、国内企業の業績モーメンタムがそこそこ好調であるにもかかわらず、市場全体の株価が下落していることがあると思われる。

 象徴的なのは、ハイテク株であろう。ここ1〜2週間、2004年4−6月期業績が次々と発表されたが、特に総合電気株においては総じて好調な決算内容であった。しかし株価は冴えず、好業績発表後、軒並み年初来安値近辺まで売り込まれている。この状況は、(1)オリンピック後の液晶関連製品を中心とした売上減懸念、(2)米国の今年のクリスマス商戦が振るわない懸念、(3)年後半の半導体需給の緩和に伴う価格下落懸念、という「3つの懸念」に加え、足元の米国株の軟調な展開が、東京株式市場の株価にネガティブな影響をもたらしているものと考えられる。

 筆者は、現在の株式市場はこのような相場の先行きに対する懸念を先行して織り込んだ結果として、全体として割安に位置している可能性が高い、そう認識するのが妥当と考えている。

 このたび、過去20年間で最低水準まで予想PERが低下している状況下、銘柄スクリーニングを行ってみた。

条件は:
 東証一部上場銘柄
 連結予想PERが5倍以上20倍以下
 配当利回りが2%以上
 株価が8月13日現在で300円以下
 株主資本比率が20%以上
である。

 さて予想PERが低い理由として、(1)来期の好業績がいまだ株価に反映されていない、(2)株価が大幅に下落した結果、PERからの評価が割安になっている、(3)特別利益の計上があるため、一時的に低PERとなっている、という3つのケースが考えられる。
 言うまでもなく、(3)のケースは投資妙味が高いわけではないため、除外する必要がある。リスト上の個別銘柄が上記(3)に該当するか否かについては、会社四季報などにより個別に確認して欲しい(該当するケースはそれほど多くないとは思うが)。

 なお高配当利回り銘柄投資とは:

 1.配当利回りが高い銘柄の株を買う
 2.株価が上昇したら売却、値上がり益をものにする
 3.株価が上がらなければ、配当を受け取りながら、株価が上昇するまで待つ

というスタンスで行う投資手法である。以上のムシの良い話の代償として、負担しなくてはならないリスクがあるのはもちろんで、一番発生しやすいのは無配転落のリスク。信用リスクも全くないわけではない。(「株主資本比率20%以上」という条件を設定することで、一応怪しげな銘柄は除外しているが)投資銘柄は、慎重に選び、かつ分散投資を心がけたいものである。

No. コード 会社名 株価
(円)
PER
(倍)
配当
利回り
(%)
自己資本
比率
(%)
1 8616 東海東京証券 286 7.1 3.5 29.66
2 1866 北野建設 204 20 2.94 39.27
3 9312 ケイヒン 193 16.7 2.9 23.28
4 3431 宮地エンジニアリング 181 14.2 2.76 32.92
5 6390 加藤製作所 192 16.1 2.6 40.99
6 2051 日本農産工業 196 19.5 2.55 33.63
7 8043 スターゼン 241 14.6 2.49 25.78
8 8158 ソーダニッカ 262 14.3 2.48 27.87
9 6393 油研工業 243 11.7 2.47 32.44
10 8091 ニチモウ 204 19.3 2.45 25.73
11 5262 日本ヒューム 248 18.2 2.42 47.49
12 3107 ダイワボウ 128 11.7 2.34 31.57
13 6381 アネスト岩田 256 18.1 2.34 53.24
14 3946 トーモク 263 14.1 2.28 28.98
15 9306 東陽倉庫 265 13.8 2.26 44.32
16 9534 北海道ガス 268 18.4 2.24 24.56
17 1301 極洋 183 11.1 2.19 23.29
18 8042 日本マタイ 231 14.2 2.16 35.51
19 5771 三菱伸銅 232 15.5 2.16 26.81
20 3877 中越パルプ工業 280 16.3 2.14 31.77
21 2201 森永製菓 236 19.1 2.12 37.95
22 7995 日本バルカー工業 236 16.6 2.12 45.91
23 9067 丸運 285 11.8 2.11 31.53
24 1882 東亜道路工業 238 19.1 2.1 24.29
25 5351 品川白煉瓦 240 13.8 2.08 29.83
26 4008 住友精化 291 15.6 2.06 50.88
27 8059 第一実業 291 11.9 2.06 26.28
28 6214 大隈豊和機械 195 15.4 2.05 55.1
29 2003 日東製粉 294 16.7 2.04 60.16
30 5612 日本鋳鉄管 197 18.5 2.03 44.69
31 6461 日本ピストンリング 197 15 2.03 31.42
32 5234 デイ・シイ 246 14.7 2.03 39.15
33 6853 共和電業 295 15.2 2.03 37.18
34 2109 新三井製糖 248 18.4 2.02 58.93
35 9066 日新 250 12.7 2 31.44

 
 

「人気こそが株価を動かす」という考え方

2004.5.3

 ある人から、「株価というものは常に企業業績の移り変わりを反映して変化するものですよね?」と尋ねられた。この考え方は一見正しいと思われるが、実際のところはどうだろうか?

 株式市場では、株価形成面で理屈に合わない状況が発生することがよくある。たとえば「業績の上方修正は株価の上げにつながる」ということは、株式市場において誰もが前提に置いていることだ。したがって皆、増額修正候補銘柄を探すのに躍起になるわけである。しかし、増額修正が実施されても、株価が上がらないケースも多々ある。このような場合、新聞などでは「材料が織り込み済み」などとあっさり説明されて終わりである。そして増額修正を期待して株式を購入した投資家には、釈然としないものが残ることになる。

 また株価が理不尽に、不当に割安に放置されているケースもある。たとえば8164のキャビンという銘柄は、2004年3月現在、一株あたり純資産(BPS)は607円、一株あたり現金・同等物は277円と計算されるにもかかわらず、株価は2000年から2003年初めにかけ、永らく200円以下で低迷していた。
(一株あたり現金・同等物については、日経会社情報によれば発行株式数が約48百万株に対し現金・同等物〔現金と3ヵ月以内に償還・満期がくる金融商品の合計〕が133億円であり、以上の数値を用いて計算すると277円となる)

 この会社は本業こそ不振であるものの、株主資本比率は85%と高く、当面信用リスクがあるとは思われない。一株あたり現金・同等物を重視するところの、かのベンジャミン・グレアム師の投資理論からすると、キャビンは素晴らしい投資対象ということになろう。株価は2003年3月以降、一株あたり現金・同等物の値に近づくことになるが、これは低位株全体が底上げした中での株価の水準訂正であり、この銘柄の一株あたり純資産や一株あたり現金・同等物面からのバリューが個別に評価されたことに起因しているわけではない。

 さて結論であるが、株価を決定するのは「人気」であり、その人気を決定する要素の一つとして業績・バリュー・個別材料等があると整理して認識したほうが現実的かつ合理的だろう。投資家の立場からは、「株価を決定するのは業績動向」「株価を決定するのは当該株式のバリュー」などといった正統的?な考え方に囚われていると、首尾良くいかない点が多々出てくると思う。業績動向を考えた場合、業績が増額修正されたから株価が上がるのではない。増額修正により当該株式が人気化したから株価が上がると解釈するべきである。増額修正は人気化のための十分条件ではない。結果的に人気化した、そのための一要素だったに過ぎないと認識するべきである。そもそも株価の変動理由について深く追求することは、実は投資家の立場としてはそれほど重要なこと・本質的なことではないのである。

 またこれは多くの先人の研究結果であるが、株価の人気は移ろいやすく、株式市場では3ヵ月、あるいは6ヵ月前後の期間で変化しやすい傾向があることがわかっている。


 

投資アイデアの「再現性」について

2004.03.01

 前回、当コーナーで4月に日本株が上昇しやすいアノマリーについて解説しました。こういった話をすると、必ずと言っていいほど筆者は「これまではともかく、今年の4月に上昇相場が来るとは限らないのではないか」という質問を受けることになります。株式運用の世界では、このようなことは「投資アイデアの再現性」と呼ばれ、非常によく尋ねられる疑問の一つです。今回はこの投資アイデアの再現性について、考えてみたいと思います。

 投資アイデアの再現性があるか否かの「感じ方」は、相場に対するその人の「やる気」にかかっている部分が大きいのではないかと考えます。ノウハウを用いて株式運用を有利に進めたいと考える人は、投資アイデアの再現性に対し寛容になるというか、あまり疑問を持たずに「とにかく経験則を活かそう」とする傾向があります。逆にそうでない人、つまり相場に対して評論家的な態度を取っている人、あるいはその投資アイデアについて懐疑的な人は、アイデアの再現性に対し、すぐに疑問を持つのが常であると思われます。ギャンブルの例で恐縮ですが、競馬に入れ込んでいる人を考えてみましょう。競馬新聞を見ると、常連の予想屋氏のこれまでの実績の良い部分が強調され、「次回のレースはズバリこれ!」などといった予想が書かれています。競馬に入れ込んでいる人は再現性にあまり疑問を持たないのでしょう、「前回は当たったが、本当に今回も当たる保証はあるのか?」などとはあまり考えず、真剣に赤鉛筆で線を引いたりします。しかし第三者的に考えた場合、過去に当たった予想の再現性については、相当あやしいと判断するのが妥当ではないでしょうか。競馬新聞の仕事は当てることというより、予想を書くことそのものが仕事というのが実態ですから。

 ここからが結論です。確率論からいえば、ゲームが1回限りであれば、どんなに勝率が高い経験則があるとはいえ当たる確率は限りなく二分の一である、これが現実です。しかし十分なゲームの回数をこなすことができるのであれば、話は別です。回数をこなせばこなすほど、勝率が高い経験則の再現性は高くなります。4月高のアノマリーの話で言えば、目先の4月の相場が上がる可能性は、実際のところは半々です。ただし、十分なゲームの回数を重ねることにより、4月高のアノマリーはその優位性を次第にあらわしてくることになります。みなさんが4月高のアノマリーを本当に投資ノウハウとして活かそうと考えるのであれば、「3月に買い5月に売る」を毎年繰り返すことです。そうすれば、確率を自分の味方にすることが可能になってくるでしょう。

 ただしこのような投資ノウハウは、より多くの人がやるようになればなるほど、有効性が薄れるという点には注意する必要があります。投資手法というものは、万人が信用して実行するようになればなるほど、比例して機能しなくなるものです。そういった意味からすれば、アノマリー重視派の立場からは、「これまではともかく、今年の4月に上昇相場が来るとは限らないのではないか」という考え方を持つ人が常に一定量供給されたほうが好ましいということになります。しかし、多くの人が「群がった」ことにより投資アイデアの有効性が薄れた場合、「なんだ、この投資手法はぜんぜんダメじゃないか」と失望した気の短い投資家がその手法を実践しなくなります。そうなると、今度は逆にその手法が再び機能する局面を迎える、これが常だと思われます。

 ゾーン「相場心理学入門」(パンローリング)によれば、最高のトレーダーは自分の優位性が十分にあり、またトレーディングの標本の大きさが十分であれば、最小的には勝利すると常にわかっているため、非常にリラックスしているといいます。よく整理された含蓄に富んだ文章であると、筆者は考えます。


 

3月に買い5月に売る(2004年版)

2004.02.18

 相場の春はすぐそこまで来ている……もうじき4月がやってくる。アノマリー重視派には、楽しみなシーズンの到来である。日本株の投資家にとって、4月という月は極めて興味深いチャンス月だ。1年12ヶ月の中で、4月は最も株が上昇しやすいアノマリーが存在するからだ。そしてこのアノマリーの発生を妨げる理由は、現在のところ見当たらない。

 今回お示しするデータは、過去10年間(1994年から2003年)における、TOPIX月足の4月の陽線回数を調査したものである。結果は過去10年間の陽線回数が8回、率にして80%と、非常に高いものであった。さらに驚くべきは、この状況が、趨勢的な下落相場の中で発生しているということだ。1994年3月のTOPIXが1563であるのに対し、2003年3月のTOPIXは788。全体株価が約50%下落する中で、月足陽線の発生率は80%という事実。これは驚くべき成績といえるのではないだろうか?

過去10年における4月のTOPIX推移
TOPIXの値 前月比
3月末 4月末
1994年 1563 1603 40
1995年 1307 1331 24
1996年 1636 1712 76
1997年 1373 1441 68
1998年 1251 1222 -29
1999年 1267 1337 70
2000年 1705 1648 -57
2001年 1277 1366 89
2002年 1060 1082 22
2003年 788 796 8

 アノマリーの発生理由は、3月と4月を跨いでの、企業の決算月に絡んだ株式需給の変化に起因する部分が大きい。国内の株式市場では、例年3月は売り物が嵩み需給悪状態となるが、4月は3月とは逆に買いニーズが発生、需給が様変わりに好転するパターンが繰り返されている。この点は拙著「ファンドマネージャーの株式運用戦略」で詳しく書いているが、機関投資家、及び金融機関等の売買行動による影響の部分が大きい。
 機関投資家&金融機関は本決算月である3月にかけ、ポジション調整や益出しなどの売りを先行させるのが常であるし、昨今ではこの時期、持ち合い解消の売りも高水準となる(但し厳密に言えば、持ち合い解消売りが最も嵩むのが2月、その次が8月であることが多い。それぞれ、本決算月、中間決算月の1月前というイメージ)。しかしながらこれが4月になると、決算に絡んだ売りが一巡する一方、機関投資家は4月スタートの新規ファンドの運用を開始する。持ち合い解消に伴う売り圧力についても、決算月が終われば、とりあえずは一段落する。(但し持ち合い解消が終了したという意味ではなく、あくまでも一段落ではあるが)

 また4月高のアノマリーの背景には、同時期に米国株式市場が上昇しやすいこともあるようだ。日経新聞によれば、米国株には2月中旬から5月にかけ上昇しやすい季節性があるという。米国では確定申告に基づき各家庭に税金が戻るが、還付金の一部が株式投資に回ることにより、この時期のアノマリーにつながるようである。そして今年は米国の大幅減税により、例年よりも500億ドル(5兆円強)還付額が増えるといわれている。

 さて昨年の4月は、少々珍しい現象が発生している。TOPIXではプラスになっているものの、日経平均は76円のマイナスとなっているのである。日経平均がマイナスとなった背景には、この時期に年金基金の代行返上売りが本格化したことから、年金が多く保有するような、日経平均採用の主力銘柄の株価が軟調に推移するものが多かったことがある。また以上に加え、4月に発生したいわゆる「ソニーショック」も日経平均下落に大きく影響した。ソニーショックの直接の原因は、2003年1−3月期で主力エレクトロニクス事業が1161億円と言う巨額の営業赤字に転落し、そこから抜け出すシナリオが見えてこないという投資家の不安だった。ちなみにこの状況は、業界を取り巻く環境が過去最悪だった2002年1−3月期の同社の513億円の営業赤字と比べても軽く2倍を上回る状況だった。以上に起因し、赤字転落を発表した日経平均採用銘柄であるソニー株は、4月中に2日連続してストップ安した。このソニー株下落の影響が、他のハイテク株の株価に影響したのは言うまでもない。
 一方でこの時期、主力銘柄以外は堅調な足取りとなっていた点は見逃せない。4月の東証一部銘柄の動きを見ると、1516の上場銘柄中、上昇したものは1026銘柄に達した。つまり市場全体を考えれば、実質的には上昇していたのである。大半の銘柄が上昇する一方で、日経平均に影響の大きい主力銘柄の多くが下落したため、日経平均安―TOPIX高となったというのが実際のところである。

 さて、さらにより長い期間の統計を紹介しよう。こちらでも、同様に、4月高アノマリーの存在を概ね確認することが出来た。
 図は、戦後、東証の取引再開以降の日経平均月足アノマリー分析表である。昨年も使用したものであるが、直近の数値まで入れて、リニューアルしてみた。1949年5月から2003年12月までの期間について、日経平均の上昇が多く発生している月の順に並べている。戦後、東証の取引再開以後の日経平均は、200ポイント以下である。ちなみに、同期間の上昇月の平均発生確率は57.51%となっている。データを見ると、機関投資家がまだ誕生していない時代を含めても、4月高アノマリーは存在していたと考えてよさそうだ(1月の上昇発生確率の高さには意外感があったが…)。1月については今後、前年12月に節税に伴う株式の損出し売りを行った後の買いニーズの高まりにより上昇しやすいアノマリーが発生する可能性がある。こちらも注意深く見ていきたいものである。

東証取引再開以降の日経平均月足アノマリー分析表(1949年5月〜2003年12月)
標本数 上昇
月数
上昇率
1月 54 41 75.93%
4月 54 38 70.37%
6月 55 35 63.64%
3月 54 32 59.26%
12月 55 31 56.36%
8月 55 31 56.36%
11月 55 30 54.55%
10月 55 30 54.55%
2月 54 29 53.70%
7月 55 29 52.73%
5月 55 27 49.09%
9月 55 24 43.64%
平均上昇月発生率 57.51%

(数値の出所:週刊CHART BOOK 週足集)

行動指針:5月ゴールデンウイーク明けに売ることを前提に、3月中に買い場さがし。銘柄的には投資家自身の相場観に委ねたい。


 

「3ヶ月波動銘柄」を見つけ、人気離散時に買う法

2003.01.25

 株式には、主として3ヶ月、あるいはその倍数の6ヶ月の周期で上げ下げを繰り返す傾向がある銘柄(以下「3ヶ月波動銘柄」とする)が存在することをご存知でしょうか。そもそも株価というものは、万年不人気銘柄を除けば人気化と人気離散を繰り返すわけですが、その波動が3ヶ月、あるいはその倍数の6ヶ月となることが多い銘柄があるということです。3ヶ月波動銘柄の分析については、林輝太郎先生の著作の中で詳しく説明されていますが、ここではこのような銘柄を注視し、循環的に発生する3ヶ月あるいは6ヶ月の波動を取りにいく戦略を考えてみたいと思います。
具体的には:

  1. 3ヶ月波動銘柄を
  2. 上記波動を見せている局面において
  3. 人気離散のときに買い
  4. 人気化したときに売る

ことで利益を得る手法です。

 まず銘柄選別戦略について説明します。3ヶ月波動銘柄は、以下の3条件を満たした銘柄の中に多く存在しています。

  1. ハイテク株ではなく内需株
  2. 値嵩株ではなく中低位株
  3. 時価総額が非常に大きい銘柄、あるいは小さい銘柄以外

上記「1」については、ハイテク株は株価が為替に影響されるケースが多いことから、周期が乱れることが多いと思われます。「2」については、機関投資家の投資対象となるケースが相対的に多いことから、業績等のファンダメンタルズや機関投資家の売買動向により株価が影響を受ける度合いが大きく、一定の周期を繰り返しにくい銘柄群と位置づけられます。「3」については、時価総額が非常に大きい銘柄については機関投資家の売買動向により株価が影響を受ける度合いが大きく、また時価総額が小さい銘柄は人気化と人気離散が一方通行になりやすく、やはり一定の周期を繰り返しにくい銘柄群と位置づけられます。
 以上の条件を勘案すれば、「内需の中低位銘柄で超大型株・中小型株以外」というのが、今回の投資戦略の銘柄発掘のキーポイントになるようです。実際に投資する銘柄については、各位がチャートを見ながら、波動面で納得がいく銘柄を発掘してほしいと思います。なお参考まで、一例ですが、上記条件を満たす3ヶ月波動銘柄は、素材関連・市況関連株に多くみられるように思われます。

 次に「人気離散のときに買う」戦略を説明しましょう。株式の人気が離散している局面では、多くの場合「ボラティリティが低くなる」「出来高が少なくなる」の2点の特徴が見られます。それが底値圏の目安となり、買いのサインを示しているともいえます。以上から、このような2点の特徴が見られた状況から株式の買いポジションを増やしていき、自律反発を狙うという戦略が可能になります。つまり:

  1. 3ヶ月波動銘柄を
  2. 2ヶ月下げてきた局面で注目し
  3. 次の一ヶ月で「ボラティリティが低くなる」「出来高が少なくなる」状況となったら、買い場と判断し、打診買いを入れる
  4. 想定通りに底打ちとなったら、押し目買いにより玉を増やしていく
  5. 再度新安値を更新し底打ちとならなかったら、打診買いの分を損切りし様子を見る

という建て玉戦略を実施するということです。

 最後に、当戦略のリスクについて説明します。3ヶ月あるいは6ヶ月の周期で上げ下げを繰り返す「傾向がある」銘柄と書きました。当該周期は、常に発生しているわけではないことを書き加えさせていただきます。言うまでもありませんが、時期によっては、周期が乱れる局面も多々あるということです。このようなイレギュラーな局面は、ここで説明する投資戦略を行う上で、避けることのできないリスクということになります。

 

株価変動リスクをヘッジしながら、株主優待を獲得する法

2003.12.26

 今回は、投資家にとってはインカムゲインの一部である株主優待について、株価変動リスクをヘッジしながら獲得する手法を紹介しよう。

 株主優待のある株式の現物を権利確定日に購入し、同時に信用で同株数売り建てる・・・・・・・この場合配当については、現物で得られる一方信用の売り建て玉で負担することになるため、実質的には手に入れることができない。売り買い両建てになっているのであるから、これは当然の帰結である。しかしここがポイントであるが、株主優待については、当該会社の株主名簿に載ることが権利を獲得するために必要な要件であるため、信用で売り建てていても権利が発生することになっている。したがってこの仕組みを利用すれば、株価変動リスクをヘッジしながら、株主優待だけを獲得することができるというわけである。具体的には@権利付き最終日である権利確定日の5営業日前の朝の寄付きで、現物株買いと信用売り注文を行い、両建てのかたちを取るA権利落ち後に現渡しを行う・・・・という手続きにより、株主優待を株価変動リスクなしで獲得することができる。

 当戦略は株価変動リスクがヘッジできる取引であることから、一定の大きな資金を銘柄分散し各月末(特に3・9月、2・8月、6・12月)に回転させることにより、大量の株主優待を獲得することが可能になる。この点が最大の魅力である。また3・9月のJAL,全日空等の飛行機会社、東急、京急等の電鉄会社の優待は、株数に比例して額も大きくなり、また換金も容易であると思われ、醍醐味も大きいといえよう。なお現在、上場企業のうち500社以上が株主優待を実施しており、多くは月末に権利が発生する。どの会社がどのような優待を行っているかについては、会社四季報や日経会社情報に掲載されている。

 当取引で発生する唯一のリスクは、信用の売り玉に逆日歩が発生するリスクである。一例だが、本原稿を執筆している12月26日の日経に12月末の権利最終日たる12月24日の逆日歩が掲載されているが、株主優待がある主な銘柄の中ではすかいらーく、アサヒビール、キリンに70銭の逆日歩が発生している(但し7日分、1日分では10銭)。このようなリスクを極力避けるため、仕掛けを行う銘柄については信用の取り組みに注意を払い、逆日歩が発生している場合には「権利発生日に建て玉、翌日現渡し」を励行し、少しでもマイナスを少なくするようにもっていきたいものである。

 なお、信用取引で株を購入した場合には、名義人は証券会社になるため、株主優待を獲得することはできない。信用建て玉について株主優待を獲得したい場合には、現引きすることが必要になる。

 
 
 
 

「カタリスト」という考え方と
昨今の銀行株相場について

2003.10.18   

1.「カタリスト」とは

 海外投資家が書いた文献や相場予測インタビューを読んでいると、「カタリスト」という概念が登場することがある。この考え方は国内の投資家やストラテジストからはあまり聞こえてこないものであるが、個別銘柄の投資妙味を考える上で、あるいは相場観を組み立てていく上で、興味深い考え方であると思われる。ここで紹介しておきたい。
 「カタリスト」とは、日本語に直訳すれば「触媒」という意味になる。ここでいう触媒とは、乾いている薪に火を焚き付ける新聞紙の役割というイメージである(本来の触媒の意味とは、少々違うかもしれない)。例えば乾いた薪に直接火をつけても、そのまま燃やすことは出来ない。新聞紙に火をつけ、その火を移すことにより、やっと薪に火がつくことになる。この新聞紙が、触媒の役割を果たすというわけだ。「カタリスト」=「触媒」という訳にこだわらなければ、「カタリスト」はダイナマイトに火をつけるための「起爆剤」、あるいは船を動かすための「原動力」とイメージしたほうがわかりやすいかもしれない。

 ちなみにマーケットの魔術師「株式編」(パン・ローリング)では、3人の相場師がカタリストの重要性を語っている。マイケル・ラウアーは、カタリストという要因なしに株は買わない。投資をする上での最大の問題は「株価を上昇させるものが何かということ」だという。またスティーブ・ワトソンは、ファンダメンタルズが好ましい銘柄を買うタイミングを計るのに、テクニカル的な分析は用いず、カタリストを探すことで近いうちに値が上がるバリュー株を判別するという。マイケル・マスターズは、売買モデルを思考錯誤していくうちに、カタリストには何にも勝る価値があるとわかった結果、彼の売買モデルはほぼ完全なまでにカタリストに焦点を絞ることになったという。

 カタリストを株式相場に当てはめて考えてみよう。タイミングの良い投資を行う上で、「多くの投資家に支持され買いにつながる触媒が存在するか否か」との視点は、重要なポイントとなる。「割安な銘柄を発掘し投資した」というだけでは十分ではない。その銘柄が引き続き割安なまま放置されても、なんら不思議ではないからである。つまり割安であることは、株価を上方に水準訂正させる素地を持っているに過ぎないのだ。水準訂正すべき素地(割安なファンダメンタルズ)が存在している状況に加え、株価上昇の原動力たる触媒が機能することで、初めて株価上昇が達成されることになる。割安銘柄に投資する際は、多くの場合、「割安」と「カタリスト」の両方を念頭において相場アイデアを組み立てたほうが良い結果をもたらすだろう。

2.「カタリスト」からみた昨今の銀行株相場

 以上の「カタリスト」の考え方を、最今の銀行株相場に当てはめて考えてみよう。象徴的な例は、みずほフィナンシャルグループである。政府による金融緩和の影響もあるとはいえ、同社の2002年3月期業務純益(通常の企業の営業利益に相当)は、1兆円を超えるレベルにある。ちなみに他の国内企業で同期の営業利益が1兆円を超えているのは、NTTドコモ、トヨタの2社のみである。如何に凄いことか、良くわかる。
 しかしながら驚くべきことに、2003年5月30日現在の同社の株価は69,500円、他の「公的資金注入大手銀行株」の株価は、UFJが113,000円、三井住友が198,000円などといった悲惨さであった。旧50円額面で計算し直せば、それぞれ70円、113円、198円である。フローの利益ベースで日本最大級を誇る企業の株価が、倒産株価に近い水準で評価されているという異常事態ともいうべき状況だ。この背景には、不良債権や保有株式の評価損等の増加に伴う自己資本の毀損問題があった。いずれの銀行株、中でもみずほ、UFJの株価には、株主責任リスク(株券が紙切れになるリスク)が反映されていたことは明らかだ。

 筆者は、これら銀行株の昨今の大幅な株価上昇は、6月以降以下の3つの「触媒」が発生したことに起因していると判断している。第一に、りそなグループへ公的資金注入の際、既存株券が紙切れにならない「前例」が出来あがったこと。2003年5月17日、金融庁はりそなHDおよび子会社であるりそな銀行に対し業務改善命令を発令、同社は5月30日に1兆9,600億円の公的資金の申請を行なった。ここでポイントになるのは、これまでの拓銀、長銀、日債銀のケースとは異なり、りそなグループへの公的資金注入が実施された際、既存の株主責任が問われなかった点である。この結果は政府の政策転換に伴うものであり、今後の大手銀行の破綻は事前の公的資金注入により未然に防止され、かつ株主責任は不問で株主価値はそのまま保全されるということが一般に認識されたのである。前述の通り、業務純益ベースで1兆円近い収益を得ていた企業が「倒産株価」にまで売り込まれていた。不良債権等に伴う株主責任リスクが回避されるのであれば、これは買われて当然だ。

 第2に、野村、ゴールドマン・サックスなどが久々に強気のアナリストレポートを書いたこと。ちなみに筆者の記憶では、野村が銀行セクターに対し業種レベルで強気転換したのは、バブル崩壊以降はじめてではないか。またゴールドマン・サックスでは不良債権が大幅に減少していると推定されることを理由に銀行株に強気の見方をしたが、この「不良債権が大幅減少」という示唆は、かなり強烈なものだ。両社のレポートとも、読み手に対する大きなインパクトとなったのは間違いない。

 第3に、足元の相場上昇を受け、またアナリストレポートの強気転換を受け、機関投資家が銀行株を買わざるを得なくなった状況がある。バブル崩壊以降、多くの機関投資家のファンドマネージャーは銀行株を大幅アンダーウエイトにし続けたが、その投資スタンスは多くの場合、有利にはたらいた。しかし今回の「意図せざる」銀行株の大幅上昇により、機関投資家の多くは銀行株を買い増ししなければ運用成績がベンチマークであるTOPIXに大幅に負けてしまう状況が発生した。少なくともベンチマークと同等程度の銀行株をファンドにおいて保有するための買い需要が発生したことが、銀行株上昇の「触媒」になった。前述のアナリストレポートの強気転換に象徴されるように、ファンダメンタルズの好転に根ざした相場上昇ということであれば、顧客に対する説明責任という側面からも、機関投資家としては「買わざるを得ない」状況に陥ってしまうものである。
 このように、誰かが買わざるを得ないというカタリストは最も説得力があり、また相場に対し大きなインパクトを与えるものである。

 もっとも、現段階では触媒は存在しないが、上昇する素地がある銘柄を買っておき、「カタリスト」の発生を待つ投資手法もなくはない。当コーナーでお勧めしている高配当利回り銘柄投資などもそうである。その場合は、首尾良く触媒の発生に遭遇する機会を増加させるため、数多くの銘柄に分散投資をしておくことが重要であるといえる。

3.「カタリスト」と「相場の材料」の違い

「カタリスト」は、「相場の材料」とどう違うのかとの尋ねられた。両者は似ている要素はあるが、「相場の材料」といわれるものは、概して後付け的、事後説明的あり、マスコミ、証券ブローカーの視点によるものであると思われる。一方でカタリストは、より実践的、論理的、事前着眼的なものであり、相場実践家の視点によるものと区別することが出来よう。

 
 

PERの低い高配当利回り低位株
のスクリーニング

2003.8.18

相場は堅調に推移している。日本株のアノマリーにおいては、6月前後に1年の高値を出し、その後7〜9月にかけては調整局面になるケースが多いのであるが、今年は少々様子が違うようである。背景には、予想以上に好調な企業業績があるようだ。野村証券によれば、今年から開示されるようになった4−6月期の四半期業績の決算発表を受け、通期の経常利益予想は増額修正することとなり、売上予想についてもわずかながら事前予想を上回っているという。ちなみにNOMURA400(除く金融)の連結経常利益は、前月時点の13.1%増の予想から、8月に入って15.6%増予想に増額修正されているとのことである。また東洋経済新報社の2003年度経常利益予想については、15%近い企業の業績見通しが7月に入って増額修正された模様である。なお参考まで、国内景気については4−6月期の実質GDPは前期比年率で2.3%の成長となり、経済が全体としては順調に回復していることを示唆している状況だ。

これまで当コーナーでは何度か、信用リスクの低い高配当利回り低位株のスクリーニングを行ってきた。これら銘柄はオールドエコノミーの地味なものが多いこともあり、個別企業のリストラ努力等により業績が回復傾向にあるにもかかわらず株価に十分に織り込まれておらず、いまだ割安に放置されている銘柄が多く存在している印象を筆者は持っている。そこで今回は、このような銘柄をピックアップするべく、これまでの条件に加え新たにPERもキーとし、スクリーニングを行ってみた。

条件は:

である。

これまでのスクリーニングでは、株価が200円以下の銘柄をターゲットとしていたが、低位株全般の底上げの影響もありこの条件では選び出される銘柄数が限定的となるため、今回は株価300円以下を条件とすることとした。この条件で、PER15倍以下の銘柄が25銘柄、PER20倍以下の銘柄が46銘柄スクリーニングされる結果となった。

低位株のPERがこれだけ低いという状況は、歴史的にもかなり珍しいのではないか。というのは、個別銘柄が低位に甘んじているのは通常、業績の水準が低いからこそであり、このような状況ではPBRこそ低くなるものの、PERは低くならないことが多いからである(たとえば株価が200円でも、EPSが2円であればPERは100倍)。

さて予想PERが低い理由は、1.来期の好業績がいまだ株価に反映されていない、2.株価が大幅に下落した結果、PERからの評価が割安になっている、3.特別利益の計上があるため、一時的に低PERとなっている………の3つのケースが考えられる。
言うまでもなく、Bのケースは投資妙味が高いわけではないため、除外する必要がある。リスト上の個別銘柄が上記3.に該当するか否かについては、会社四季報などにより個別に確認して欲しい(該当するケースはそれほど多くないとは思うが)。

なお高配当利回り銘柄投資とは

  1. 配当利回りが高い銘柄の株を買う
  2. 株価が上昇したら売却、値上がり益をものにする
  3. 株価が上がらなければ、配当を受け取りながら、株価が上昇するまで待つ

というスタンスで行う投資手法である。

以上のムシの良い話の代償として、負担しなくてはならないリスクがあるのはもちろんで、一番発生しやすいのは無配転落のリスク。信用リスクも100%全くないわけではない。(「株主資本比率20%以上」という条件を設定することで、一応怪しげな銘柄は除外しているが)投資銘柄は、慎重に選び、かつ分散投資を心がけたいものである。

銘柄コード 銘柄名 株価 利回り
(実績)
自己
資本
比率
[%]
PER
(連結・
東洋経済
予想ベース)
5234 第一セ 247 2.4 48.7 7.5
1835 東鉄工 274 2.9 22.8 7.6
5913 松尾橋 202 2.5 36.3 8.1
5262 日本ヒューム 232 2.6 46.9 8.5
8804 東建物 263 2.3 20.5 9.3
3110 日東紡 126 2.4 42.9 9.8
1937 西部電工 255 2.4 50.2 10.7
8089 ナイス 220 2.3 31.9 11.3
5351 白煉瓦 241 2.1 31.0 11.4
1888 若築建 118 2.5 23.6 11.8
7232 トキコ 296 2.7 53.8 11.9
1301 極洋 162 2.5 21.6 12.2
9066 日新 246 2.0 35.7 12.5
4228 積化成 240 2.1 53.7 12.5
5105 洋ゴム 245 2.9 32.3 12.5
3877 中越パ 250 2.4 33.6 13.0
9068 丸全運 274 2.6 52.1 13.5
6973 協栄産 262 2.3 34.4 13.7
3513 市川毛 282 2.1 63.7 14.0
8158 ソーダニッカ 184 3.0 25.3 14.0
7723 愛時計 253 2.4 28.9 14.1
2109 新三井糖 202 2.5 54.7 14.2
5931 川田工 243 2.1 26.2 14.2
3946 トーモク 209 2.9 46.8 14.4
9306 東陽倉 262 2.1 43.5 14.9
9119 飯野海 261 2.3 25.9 15.5
1866 北野建 199 2.5 46.7 15.6
2003 日東粉 237 2.5 62.5 15.7
7244 市光工 250 2.4 39.5 16.0
8803 平和不 287 2.8 22.8 16.1
9303 住友倉 271 2.2 49.1 16.3
9310 トランシティ 232 3.0 37.0 16.4
9532 大ガス 295 2.0 40.3 16.4
1822 大豊建 162 3.7 20.4 16.5
4008 住友精化 284 2.1 51.0 16.5
1863 テトラ 203 3.0 57.4 16.8
9302 三井倉 245 2.4 48.8 17.1
1882 東亜道 230 2.2 34.4 17.2
4215 タキロン 280 2.5 55.6 17.6
9312 ケイヒン 165 3.4 32.2 18.0
3106 クラボウ 155 2.6 52.0 18.2
8043 スターゼン 188 2.7 29.3 18.3
7905 大建工 290 2.6 31.5 19.0
3526 芦森工 220 2.3 65.4 19.6
9074 日石輸 209 2.9 60.4 19.8
2536 メルシャン 220 2.3 40.9 20.0

 
 

4社に1社が増復配
……高配当利回り銘柄スクリーニング

2003.6.11  

6月5日の日経新聞によれば、2003年3月期に増配か復配をする企業は414社となり、前の期の1.6倍に増加したという。これは上場企業全体の約23%、4社に1社が増復配を実施するという計算になる(一方で減配か無配になる会社は215社)。この背景には、上場企業業績が増益傾向である一方、有望な投資案件が減少傾向であることから、株主に対する利益配分を厚くする方針としている企業が増加していることがある。

このような状況下、今回は6月10日の株価データを用いて、高配当利回り銘柄スクリーニングを2種類ほど行ってみた。第一のスクリーニングは、このコーナーでは既にお馴染みの「高配当利回り低位株」スクリーニングである。条件は次の通り。

銘柄コード 銘柄名 株価 配当利回り
(日経予想ベース)[%]
株主資本
比率[%]
銘柄コード 銘柄名 株価 配当利回り
(日経予想ベース)[%]
株主資本
比率 [%]
1 1919 エスバイエル 126 3.97 25.19 51 8089 ナイス 203 2.46 30.05
2 8164 キャビン 140 3.57 86.03 52 7102 日車両 205 2.44 40.81
3 1954 日工営 212 3.54 60.03 53 5262 日本ヒューム 248 2.42 43.4
4 1975 朝日工 287 3.48 26.12 54 6973 協栄産 248 2.42 34.1
5 5959 岡部 299 3.34 36.08 55 3009 川島織 125 2.4 24.45
6 8024 シルバオクス 271 3.32 29.74 56 3106 クラボウ 167 2.4 41.05
7 2204 中村屋 267 3.18 37.65 57 4404 ミヨシ 210 2.38 32.42
8 5902 北カン 238 3.15 22.22 58 5914 宮地鉄 210 2.38 32.18
9 4216 旭有機 239 3.14 79.98 59 6853 共和電 252 2.38 37.12
10 3946 トーモク 193 3.11 26.75 60 8042 マタイ 210 2.38 28.95
11 8158 ソーダニッカ 179 3.07 25.87 61 7723 愛時計 253 2.37 29.77
12 8061 西華産 165 3.03 23.89 62 2051 農産工 211 2.37 31.12
13 8093 極東貿易 249 3.01 40.86 63 7987 ナカバヤシ 211 2.37 34.61
14 5407 日新鋼 100 3 36.63 64 3110 日東紡 127 2.36 34.37
15 5105 洋ゴム 234 2.99 22.5 65 5915 駒井鉄 297 2.36 56.1
16 9069 センコー 256 2.93 32.87 66 5457 住友鋼管 255 2.35 38.08
17 2108 甜菜糖 171 2.92 64.09 67 2052 協同飼 128 2.34 24.9
18 3216 御幸HD 275 2.91 62.86 68 5771 菱伸銅 214 2.34 24.66
19 4201 日合成 172 2.91 36.11 69 9303 住友倉 257 2.34 45.16
20 8043 スターゼン 172 2.91 25 70 1955 東電通 258 2.33 46.91
21 4031 チッカリン 277 2.89 46.95 71 5232 住友大阪 216 2.32 34.16
22 2201 森永 174 2.87 36.77 72 3401 帝人 282 2.31 26.87
23 1301 極洋 141 2.84 21.49 73 4989 イハラケミ 219 2.28 70.25
24 4228 積化成 248 2.82 47.54 74 6395 タダノ 219 2.28 43.28
25 6335 東京機 285 2.81 36.68 75 9067 丸運 219 2.28 29.03
26 8803 平和不 250 2.8 22.8 76 2536 メルシャン 220 2.27 40.6
27 3107 ダイワボウ 108 2.78 27.49 77 5234 第一セ 223 2.24 43.08
28 4214 高分子 290 2.76 69.63 78 7011 三菱重 268 2.24 34.66
29 5122 オカモト 272 2.76 54.05 79 4008 住友精化 269 2.23 46.68
30 5916 ハルテック 182 2.75 64.55 80 5261 ミサワリゾ 228 2.19 22.6
31 9068 丸全運 256 2.73 50.47 81 5195 バンドー 277 2.17 44.34
32 9074 日石輸 220 2.73 61.96 82 9066 日新 231 2.17 29.24
33 2004 昭和産 223 2.69 27.57 83 3513 市川毛 279 2.15 63.34
34 7232 トキコ 298 2.69 48.03 84 7913 図書印 279 2.15 46.84
35 2613 Jオイル 188 2.66 41.94 85 4092 日本化 234 2.14 29.6
36 3941 レンゴー 264 2.65 22.54 86 7243 シロキ 235 2.13 29.26
37 5210 日山村硝 189 2.65 53.38 87 1921 192 2.08 32.65
38 5913 松尾橋 195 2.56 31.23 88 1937 西部電工 288 2.08 48.74
39 7244 市光工 234 2.56 30.99 89 4213 菱樹脂 192 2.08 27.4
40 2003 日東粉 235 2.55 58.23 90 2288 丸大食 147 2.04 51.86
41 5612 鋳鉄管 157 2.55 44.78 91 9070 トナミ 294 2.04 42.36
42 7305 新家工 118 2.54 40.17 92 4103 大洋酸 295 2.03 40.84
43 7905 大建工 295 2.54 24.13 93 5707 東邦鉛 148 2.03 32.07
44 3877 中越パ 237 2.53 29.93 94 4461 一工薬 247 2.02 31.56
45 9302 三井倉 238 2.52 43.95 95 5301 東海カ 247 2.02 59.3
46 7224 新明和 298 2.52 50.56 96 6374 TCM 198 2.02 20.28
47 8059 第一実 239 2.51 22.22 97 7242 カヤバ 297 2.02 30.61
48 2109 新三井糖 200 2.5 61.73 98 4041 日曹達 249 2.01 31.8
49 3526 芦森工 202 2.48 64.31 99 6921 東光電 250 2 34.85
50 4215 タキロン 283 2.47 50.45 100 7260 富士機工 250 2 34.44

長期的かつ今3月ぐらいまでを見た場合には、現在の低位株の多くは1997年のいわゆる「2極化相場」において大きく売り込まれた後、1997年から2000年にかけて大底をつけ、その後は底値圏での持合いの動きに終始している状況と認識できた。
 しかし足元の状況を見た場合、この傾向には変化が出てきていると思われる。これまでの主力優良株の軟調さとはうらはらに(無関係に)、昨年12月を底にして上昇トレンドに入っている低位株も多いと思われる。株価については銘柄間格差が発生するし、また今後調整局面を迎える場面も当然ながら発生しようが、内容が良い低位株については、趨勢的にボトムを切り上げる型の動きになるのではないだろうかと筆者は考えている。

これらここ数年で大幅下落し低位株となった銘柄の戻りを取る目的も合わせ、高配当利回り銘柄スクリーニングは、現時点では上記の条件が一番適当と考えている。なお株価スクリーニング条件に「100円以上」を加えているのは、高信用リスク銘柄を除外することを目的としてのためである。この条件で検索された銘柄数は、配当利回り3%以上が14銘柄、2.5%以上48銘柄となった。

もう一つ行ったスクリーニングは、JASDAQ市場等の小型株に配当利回りの高い銘柄が多く存在している点に注目した、「シンプルな高配当利回り」スクリーニングである。その条件は、次の通り。

銘柄コード 銘柄名 株価 配当利回り
(日経予想ベース)
[%]
株主資本比率 [%] 銘柄コード 銘柄名 株価 配当利回り
(日経予想ベース)
[%]
株主資本
比率 [%]
1 7542 ビスケーHD 405 8.64 81.91 50 1905 テノックス 215 4.65 58.17
2 7865 ピープル 634 7.89 78.67 51 7863 平賀 645 4.65 51.8
3 2684 プライム 154000 7.37 60.63 52 9782 DMS 430 4.65 46.05
4 9873 ケンタッキー 2800 7.14 70.29 53 2901 石垣食 325 4.62 59.97
5 8887 リベレステ 44000 6.82 60.59 54 4771 F&M 87000 4.6 42.83
6 1789 山加電業 193 6.74 27.41 55 6359 粟村製 109 4.59 25.43
7 2743 ハイブリッド 61500 6.5 28.88 56 4642 オリジナル設 440 4.55 77.94
8 1781 国土総合 231 6.49 34.56 57 4843 三幸 440 4.55 61.89
9 4780 コナミTYO 1380 6.49 79.52 58 5382 中央商事 220 4.55 26.91
10 1798 守谷商会 140 6.43 28.75 59 4629 大伸化学 442 4.53 34.76
11 9609 ベンチャーリ 338 5.92 40.38 60 9053 中央運輸 223 4.48 36.6
12 8514 アース 255 5.88 45.65 61 1953 国電設 134 4.48 54.66
13 1772 東北エンター 190 5.79 27.87 62 9353 桜島埠 134 4.48 38.8
14 7523 アールビバン 527 5.69 89.11 63 5980 田中亜鉛 112 4.46 55.16
15 1790 平和奥田 214 5.61 40.83 64 5287 イトヨーギョ 677 4.43 67.32
16 9961 日岩鉄リース 146 5.48 35.25 65 8872 エイブル 2100 4.43 49.76
17 9767 日建工学 185 5.41 59.91 66 7605 フジコーポ 182 4.4 44.7
18 4742 エイト 233000 5.37 73.4 67 8737 洸陽フュチャ 342 4.39 52.84
19 7578 ニチリョク 280 5.36 26.69 68 6734 ニューテック 525 4.38 54.3
20 9836 リーバイス 937 5.34 63.99 69 5015 ペトロルブ 480 4.38 75.74
21 1763 北陸ミサワ 244 5.33 63.03 70 7632 住商メタレ 412 4.37 24.8
22 5281 旭ダンケ 189 5.29 36.33 71 1756 和興エンジ 138 4.35 44.33
23 9133 東栄リーファ 343 5.25 42.65 72 8139 ナガホリ 230 4.35 61.49
24 8955 Jプライム 264000 5.24 55.34 73 9789 栄光 460 4.35 35.46
25 7464 セフテック 193 5.18 41.59 74 8854 日住 185 4.32 70.3
26 8909 シノケン 145000 5.17 26 75 9617 全教研 290 4.31 70.82
27 1788 三東工業 155 5.16 53.8 76 9796 ダイテック 1160 4.31 88.98
28 9626 日本技開 156 5.13 61.09 77 6499 大隈エンジ 130 4.31 69.11
29 4955 アグロカネシ 391 5.12 75.88 78 7637 白銅 535 4.3 37.78
30 7929 新輝合成 196 5.1 79.26 79 5919 日鉄塔 163 4.29 40.07
31 4729 コナミOSA 850 5.06 79.01 80 9980 マルコ 815 4.29 74.3
32 9625 セレスポ 120 5 54.64 81 9663 ナガワ 420 4.29 74.92
33 9769 学究社 240 5 81.12 82 4226 テスコ 351 4.27 42.08
34 9087 タカセ 211 4.98 58.21 83 7851 カワセコンピ 234 4.27 78.01
35 5337 ダントー 362 4.97 56.52 84 8256 プロルート 234 4.27 21.16
36 4338 コナミJPN 1490 4.97 85.1 85 9885 シャルレ 703 4.27 74.31
37 6872 日本コーリン 725 4.97 40.68 86 9040 大宝運輸 235 4.26 64.87
38 1990 東邦建 121 4.96 54.81 87 7473 静岡スバル 330 4.24 62.03
39 4915 エイボンJ 334 4.95 51.78 88 9778 472 4.24 47.12
40 7901 マツモト 350 4.86 78.26 89 1993 ニッタン 189 4.23 29.54
41 3595 ヤギコーポ 310 4.84 93.37 90 1787 ナカボテック 355 4.23 55.35
42 4962 互応化学 620 4.84 84.08 91 7899 オザキ軽化 379 4.22 85.44
43 7642 ビジョンメガ 250 4.8 22.7 92 9648 ウエスコ 237 4.22 74.92
44 2612 かどや製油 837 4.78 74.87 93 4345 CTS 190000 4.21 54.45
45 1735 伊田テクノス 315 4.76 48.06 94 4720 城南進研 475 4.21 69.2
46 7877 永大化工 315 4.76 72.73 95 9317 オーナミ 119 4.2 42.97
47 3423 エスイー 317 4.73 49.45 96 8046 丸藤パ 143 4.2 56.56
48 7533 グリンクロス 254 4.72 58.06 97 8104 クワザワ 191 4.19 31.42
49 9644 タナベ経営 300 4.67 89.47 98 8749 エース交易 419 4.18 37.94
99 1782 常磐開発 120 4.17 21.54
100 3599 コーコス 360 4.17 68.06

JASDAQ市場等の小型株も含め検索すると、非常に利回りの高い銘柄群が多くなる。ちなみにこの条件で検索された銘柄数は、配当利回り5%以上が33銘柄、4.5%以上が59銘柄と、驚くべき利回りの高さであることがわかる。

なお高配当利回り銘柄投資とは:

  @配当利回りが高い銘柄の株を買う。
  A株価が上昇したら売却、値上がり益をものにする。
  B株価が上がらなければ、配当を受け取りながら、株価が上昇するまで待つ。

というスタンスで行う投資手法である。以上のムシの良い話の代償として、負担しなくてはならないリスクがあるのはもちろんで、一番発生しやすいのは無配転落のリスク。また信用リスクも全くないわけではない。(「株主資本比率20%以上」「除く建設セクター」という条件を設定することで、一応怪しげな銘柄は除外しているが)投資銘柄は、慎重に選び、かつ分散投資を心がけたいものである。

 

「かくあるべし」と期待される人間の姿が
相場では逆効果に

2003.5.5   

 筆者は常々、「人間としてかくあるべし」と一般的に期待される姿が、相場では全く否、逆効果
であるというケースがよくあると考えている。一例だが「希望を持つ」という行為もこのケースに該当すると思われ、興味深いものがあると思われる。

 たとえば社会通念上、「将来に希望を持って行動する」という行為にネガティブな要素があるとは思えない。足元は困難な状況であろうとも、将来に希望を持って日々の仕事に取り組んでいくことが前向きに人生を送る上で不可欠であるというのは、まさしく正論であろう。しかしこと相場を行っていく上では、「希望を持つ」ということは、有害に働くことが多いのである。かのジェシー・リバモア氏は、氏の本「世紀の相場師ジェシー・リバモア」(角川書店)において次の様に語っている。

 「取引にかかわる辞書から、希望と言う文字を排除せよ。株取引が何かをもたらしてくれると希望するのは「ギャンブル」以外のなにものでもない。ある銘柄を売買するのに確固とした理由が見当たらないという場合には、より論理性のある銘柄を探したほうが良い。値上がりして欲しい、あるいは値下がりして欲しいと希望を抱いたばかりに、これまでどれほど多くの投資家が姿を消していったかしれない。希望はまた、常に貪欲さと一体になって、投資家の周囲を徘徊している。」

 確かにそのとおりだろう。アゲインストな建て玉に対し、「せっかく建て玉したのだし」「いつか何とかなるから」という希望的観測を持つのは、当座の不安感を消し去る効果こそあれ、資産増加に好影響をもたらすものではない。この場合の「希望」は現実性に乏しい自己都合の願望と同等であり、損小利大のオペレーションを阻む危険な考え方と言える。相場においては、希望は過剰な期待へと変化し、また過剰な期待は不首尾な建て玉の正当化という悪癖につながりやすいことを十分認識する必要がある。

 そもそもである。希望を持って対処しなければならない状況というのは、不幸の入り口近しであることが多いようだ。白井利明著の「希望の心理学」によれば、「希望を失いかけているから、希望を持ちたいと願う。しかも悪いことに、希望が必要なときほど希望が持てない状況であることが多い」のであり、氏はこれを『希望のパラドックス』と名づけている。
 相場では、「ここは希望を持って」と自らを奮い立たせている状況それ自体が、建て玉に対する黄色信号点滅の示唆というケースが多いのではないだろうか。

 相場をする上では、希望をもって対処するのではなく、現実を直視しクールに行動することが求められる。そしてより現実を直視するためには、銘柄数は限定したほうが良いだろう。銘柄が多すぎると判断が散漫になり集中力を欠きやすく、また銘柄分散されているので大事には至らないだろうとの、誤った「希望」を持ちやすい傾向がある。

 また投資行動のフットワークを軽くするためには、建て玉を控えめにした方が良い。また特に損切りについては、あらかじめ行動計画を建てておき、然るべきポイント(株価が想定した金額を下回る)が到来したらそこで考えることはせず(ここで考えたりしたら、また「希望」を持ってしまう!!)、行動計画通りに実行するべきである。

 しかしそうはいっても、言うは易く、行うは難しだ。眼前の相場に対し、投資家が“したい”と感じることと、“するべき”こととの間には相当に隔たりがあるし、さらにいえば、“したい”と感じることの多くは、“してはいけない”ことである・・・・…これが現実であり、相場での成功を難しいものにしている。人間の脳の思考傾向には経済的に合理的ではない部分があり、無意識のうちに、不合理な思考、行動を行ってしまうことも多い。投機家が資産を形成する上では、どうしてもこの部分を克服することが課題となる。


 

3月に買い5月に売る(2003年版)

2003.2.28   

 「株式相場の季節性の点から、買い場が近いのではないか」ということをお知らせするのが、今回の趣旨である。アノマリー重視派にとって、楽しみなシーズンの到来である。このコーナーは1997年7月にスタートし、以来、何回か「3月に買い5月に売る」という戦略を紹介している。「またか?」と思う当コーナーの読者もいるかもしれないが、これはこれで重要なアノマリーなので、今年も紹介したい。
 さて日本株の投資家にとって、「4月」という月は極めて興味深いチャンス月である。1年12ヶ月の中で、4月は最も株が上昇しやすいアノマリーが存在するからだ。そしてこのアノマリーの発生を妨げる理由は、現在のところ見当たらない。
 今回お示しするデータであるが、過去10年間(1993年から2002年)における、TOPIX月足の4月の陽線回数を調査したものである。結果であるが、過去10年間の陽線回数は8回、率にして80%と、非常に高いものがあった。さらに驚くべきは、この状況が、趨勢的な下落相場の中で発生しているということだ。1993年3月のTOPIXが1431であるのに対し、2002年3月のTOPIXは1060。全体株価が26%下落する中で、月足陽線の発生率は80%ということであるから、これは驚くべき成績といえるのではないだろうか?

過去10年間における
4月のTOPIX推移
3月末 4月末 前月比
1993年 1,431 1,620 189
1994年 1,563 1,603 40
1995年 1,307 1,331 24
1996年 1,636 1,712 76
1997年 1,373 1,441 68
1998年 1,251 1,222 -29
1999年 1,267 1,337 70
2000年 1,705 1,648 -57
2001年 1,277 1,366 89
2002年 1,060 1,082 22

 アノマリーの発生理由は、3月と4月を跨いでの、企業の決算月に絡んだ株式需給の変化に起因する部分が大きい。国内の株式市場では、例年3月は売り物が嵩み需給悪状態となるが、4月は3月とは逆に買いニーズが発生、需給が様変わりに好転するパターンが繰り返されている。この点は拙著「ファンドマネージャーの株式運用戦略」で詳しく書いているが、機関投資家、及び金融機関等の売買行動による影響の部分が大きい。
 機関投資家&金融機関は本決算月である3月にかけ、ポジション調整や益出しなどの売りを先行させるのが常であるし、昨今ではこの時期、持ち合い解消の売りも高水準となる(但し厳密に言えば、持合解消売りが最も嵩むのが2月、その次が8月であることが多い。それぞれ、本決算月、中間決算月の1月前というイメージ)。しかしながらこれが4月になると、決算に絡んだ売りが一巡する一方、機関投資家は4月スタートの新規ファンドの運用を開始する。持ち合い解消に伴う売り圧力についても、決算月が終われば、とりあえずは一段落する。(但し持ち合い解消が終了したという意味ではなく、あくまでも一段落ではあるが)
今年の場合、年金基金の代行返上にからむ株式のキャッシュ化に伴う売りニーズという新たな問題も念頭におかなければならない。なにぶん初めてのことであり不透明な部分が多いが、現段階ではアノマリーに大きく影響を与えるほどの需給要因ではないと考えている。
 さらにより長い期間の統計を紹介しよう。こちらでも、同様に、4月高アノマリーの存在を概ね確認することが出来た。
図は、戦後、東証の取引再開以降の日経平均月足アノマリー分析表である。昨年も使用したものであるが、直近の数値まで入れて、リニューアルしてみた。1949年5月から2003年1月までの期間について、日経平均の上昇が多く発生している月の順に並べている。戦後、東証の取引再開以後の日経平均は、200ポイント以下である。ちなみに、同期間の上昇月の平均発生確率は57.25%。思ったほど高くはない。データを見ると、機関投資家がまだ誕生していない時代を含めても、4月高アノマリーは存在していたと考えてよさそうだ(1月の上昇発生確率の高さには意外感があったが…)。
 古い相場格言に、「鯉のぼりの季節を過ぎたら株は売り」というものがあるという。相場師の知恵といえようか、昔の相場師はアノマリーという言葉がない時代から、経験的に4月高の傾向を活かしていたのかもしれない。

東証取引再開以降の日経平均月足アノマリー分析表
(1949年5月〜2003年1月)
標本数 上昇した
月数
上昇率
1月 54 40 74.07%
4月 53 37 69.81%
6月 54 34 62.96%
3月 53 32 60.38%
12月 54 30 55.56%
8月 54 30 55.56%
11月 54 30 55.56%
2月 53 29 54.72%
10月 54 29 53.70%
7月 54 28 51.85%
5月 54 26 48.15%
9月 54 23 42.59%
平均上昇月発生率 57.25%

(数値の出所 : チャートブック週足集)

行動指針:5月ゴールデンウイーク空けに売ることを前提に、3月中に買い場さがし。銘柄的には投資家自身の相場観に委ねたい。
売買は自分の相場観で行ってください。株式投資は自己責任が原則です。


 

投信の投資対象となりそうな
高配当利回り銘柄スクリーニング

2002.2.13   

 株式市場は全体としては冴えない展開が続いているものの、足元では「高配当利回り銘柄」という新たな投資テーマが展開されつつあるように思われる。昨今証券会社の広告でよく目に付く「配当利回りと債券利回りの逆転現象」は、別に突然そうなったわけではなく以前から発生しているものであるが、税制面の優遇がきっかけとなり、高配当利回り銘柄にフォローの風が吹き出した状況となっている。国内企業の場合、多くの銘柄の配当落ちが3月末に実施されることから、もうしばらくはこの動きが継続する可能性が高いのではないだろうか。いずれにしろ当コーナーでは、かねてから歴史的な配当利回りの高水準に着目して投資するアイデアを提唱しているので、昨今の状況は、喜ばしく感じられる限りである。

 最近は、高配当利回り銘柄に投資する投信も、数多く設定されているようである。2月11日の日経によれば、野村アセットマネジメントは、配当利回りの高い銘柄を買う新しい投資信託の運用を始めたが、募集額は440億円に達した。実際に買い付けたのは一部分とみられるが、組み入れ対象になりそうな銘柄を先回りして買う動きが出たという。

 今回は、この投資シナリオに便乗するべく、「投信が組み入れ対象にしそうな高配当利回り銘柄」のスクリーニングを行ってみた。スクリーニングの条件は:

である。

 「株主資本比率20%以上」は、信用リスクの高い銘柄を除去するアイデアである。但し電力株については、この条件をはずしてある。信用リスクに特に問題があるとは思われない電力株の中には、一部、株主資本比率が20%を下回るものが存在するからである。「時価総額300億円以上」は、大量の株式を売買しなくてはならない機関投資家の状況を勘案し、ある程度の流動性を確保できる銘柄のみをピックアップするアイデアである。また一定の時価総額がある銘柄をピックアップすることは、信用リスクの問題がある銘柄を除去する効果も、副次的にあるものとみなすことができよう。

 以上の条件に基づいたスクリーニングでピックアップされたのは132銘柄、うち配当利回りが3%以上が25銘柄、配当利回りが2.5%以上66銘柄という結果となった。

 なお高配当利回り銘柄投資とは:

  @配当利回りが高い銘柄の株を買う。
  A株価が上昇したら売却、値上がり益をものにする。
  B株価が上がらなければ、配当を受け取りながら、株価が上昇するまで待つ。


というスタンスで行う投資手法である。以上のムシの良い話の代償として、負担しなくてはならないリスクがあるのはもちろんで、一番発生しやすいのは無配転落のリスク。信用リスクも100%全くないわけではない。(「株主資本比率20%以上」「時価総額300億円以上」という条件を設定することで、一応怪しげな銘柄は除外しているが)投資銘柄は、慎重に選び、かつ分散投資を心がけたいものである。

「投信が組み入れ対象にしそうな高配当利回り銘柄」
コード 銘柄名 予想配当
利回り[%]
時価総額
[億円]
株主資本
比率 [%]
1 9873 ケンタッキー 7.38 622.84 70.29
2 8955 Jプライム 5.73 656.03 55.52
3 8954 オリックスF 5.46 632.22 55.56
4 5012 東燃ゼネ 4.93 4325.56 25.03
5 8872 エイブル 4.81 328.39 49.61
6 7455 三城 4.05 692.30 80.70
7 1969 高砂熱 3.99 365.36 35.84
8 8175 ベスト電 3.90 486.90 41.13
9 1924 パナホーム 3.82 662.45 64.11
10 9942 ジョイフル 3.67 348.05 48.25
11 1970 日立プラ 3.62 325.21 27.50
12 9762 大和リース 3.51 427.04 51.80
13 2730 エディオン 3.36 465.75 99.87
14 8022 ミズノ 3.33 398.67 52.37
15 1883 前田道 3.26 429.68 69.72
16 8804 東建物 3.26 419.78 20.67
17 8623 明光ナショ 3.20 371.41 57.44
18 7905 大建工 3.18 308.87 31.56
19 1951 協エクシオ 3.17 408.81 45.93
20 2201 森永 3.17 428.10 40.10
21 5002 昭和シェル 3.15 2992.19 24.95
22 8577 ロプロ 3.10 369.70 45.16
23 1946 トーエネク 3.09 313.14 29.81
24 5122 オカモト 3.09 323.67 58.04
25 9509 北海電 3.06 3601.76 23.90
26 2580 コカセントラ 2.99 541.80 99.94
27 9505 北陸電 2.97 3708.20 20.95
28 9934 因幡電産 2.93 400.13 55.35
29 9506 東北電 2.87 8755.18 19.15
30 9508 九州電 2.87 8255.53 19.65
31 4626 太陽インキ 2.87 471.08 81.93
32 6454 マックス 2.87 420.56 77.02
33 4106 ケムキャット 2.83 307.24 66.49
34 3101 東洋紡 2.83 1223.07 27.02
35 6140 旭ダイヤ 2.80 323.37 83.92
36 9503 関西電 2.79 17261.18 18.99
37 3106 クラボウ 2.78 355.59 49.95
38 9504 中国電 2.78 6682.70 18.55
39 8609 岡三 2.76 573.81 34.79
40 9507 四国電 2.76 4883.97 23.90
41 9502 中部電 2.75 16063.48 18.70
42 1942 関電工 2.75 747.25 44.22
43 1961 三機工 2.71 429.13 33.81
44 2576 近畿コカ 2.71 416.23 76.08
45 8574 プロミス 2.70 4673.34 33.10
46 2004 昭和産 2.69 402.85 37.00
47 1944 きんでん 2.68 1093.53 59.33
48 5301 東海カ 2.67 381.65 65.27
49 6383 ダイフク 2.67 426.26 41.00
50 9672 東競馬 2.66 325.04 89.50
51 6462 リケン 2.64 302.42 34.38
52 5444 大和工 2.64 438.74 64.34
53 1820 西松建 2.62 956.17 24.93
54 5105 洋ゴム 2.61 560.88 31.35
55 9536 西部ガス 2.60 714.00 26.74
56 7231 トピー 2.60 423.89 29.20
57 8621 UFJつばさ 2.59 1399.52 41.07
58 5331 ノリタケ 2.58 552.91 62.92
59 7981 タカラスタ 2.56 749.72 54.90
60 7860 エイベックス 2.55 634.66 36.81
61 4651 サニックス 2.54 322.04 74.36
62 8140 リョーサン 2.53 461.67 75.91
63 8011 三陽商 2.53 807.84 35.74
64 7947 エフピコ 2.53 354.41 43.19
65 9302 三井倉 2.52 331.81 49.08
66 9511 沖縄電 2.50 364.13 17.25
67 6504 富士電 2.49 1500.43 29.43
68 6425 アルゼ 2.49 1451.53 86.73
69 4716 日本オラクル 2.48 4397.05 74.78
70 5929 三和シャタ 2.47 831.40 46.62
71 4272 日化薬 2.44 821.26 62.33
72 4213 菱樹脂 2.44 353.20 29.04
73 3941 レンゴー 2.43 695.65 29.29
74 8616 東海東京 2.42 366.52 41.23
75 8308 りそなHD 2.42 4195.15 82.94
76 1860 戸田建 2.40 671.12 29.91
77 7914 共同印 2.39 302.17 46.15
78 2284 伊藤ハ 2.39 705.12 58.15
79 4103 大洋酸 2.38 365.57 52.86
80 4643 コナミスポ 2.38 543.17 47.30
81 8573 三洋信販 2.37 986.38 51.01
82 7232 トキコ 2.36 424.08 55.91
83 2602 日清オイリオ 2.34 518.28 69.94
84 3201 日毛 2.33 379.57 58.86
85 3401 帝人 2.33 2589.95 55.50
86 4914 高砂香 2.32 347.63 41.23
87 8178 マルエツ 2.32 667.67 50.32
88 9303 住友倉 2.31 360.39 49.12
89 2572 三国コカ 2.29 485.78 70.61
90 1947 コムシス 2.28 588.91 64.57
91 6136 OSG 2.28 434.41 60.79
92 1959 九電工 2.27 365.22 34.32
93 8086 ニプロ 2.26 1187.89 40.06
94 1881 日鋪道 2.23 631.03 49.97
95 6586 マキタ 2.23 1237.82 85.60
96 6444 サンデン 2.22 631.49 37.99
97 5110 住友ゴ 2.21 1096.29 32.31
98 6151 日東工器 2.21 312.82 90.52
99 8309 三井トラスト 2.20 2472.08 58.73
100 8219 青山商 2.19 1078.98 75.85
101 6581 日立工 2.17 452.91 75.77
102 2001 日本粉 2.17 490.70 50.02
103 7223 関東自 2.15 422.55 37.81
104 8060 キヤノン販 2.15 1267.08 46.28
105 6474 不二越 2.13 320.34 25.29
106 1833 奥村組 2.12 968.10 34.97
107 8032 紙パル商 2.12 472.75 25.47
108 8133 エネクス 2.12 545.38 40.39
109 8068 菱洋エレク 2.11 303.40 83.33
110 4471 三洋化 2.10 840.19 69.74
111 1928 積ハウス 2.10 6093.62 49.89
112 6361 荏原 2.09 1073.41 25.36
113 9532 大ガス 2.08 6822.75 40.42
114 8252 丸井 2.08 3893.05 57.54
115 6426 サミー 2.08 1287.18 48.73
116 9766 コナミ 2.08 3347.16 63.46
117 1878 大東建 2.08 3280.06 63.68
118 5393 ニチアス 2.07 320.10 30.49
119 4812 ISID 2.07 315.48 62.69
120 6705 NECインフ 2.06 368.77 47.20
121 7453 良品計画 2.06 599.47 75.80
122 9533 邦ガス 2.06 1751.72 33.56
123 8572 アコム 2.05 5718.57 27.72
124 4916 ノエビア 2.05 426.21 48.83
125 9825 アズウェル 2.05 440.28 27.34
126 8841 テーオーシー 2.04 359.89 69.82
127 8251 パルコ 2.03 308.53 28.31
128 8132 シナネン 2.03 336.34 49.88
129 7270 富士重 2.02 3322.00 49.49
130 4061 電化 2.02 1434.71 32.09
131 6206 豊田工 2.00 663.37 53.33
132 7862 トッパンフォ 2.00 1321.35 65.11

 
 

高配当利回り銘柄スクリーニング

2002.10.11

足元の相場は、米国株安に加え、不良債権処理加速に伴うデフレ懸念で、目を覆わんばかりの展開となっている。相場の見方については様々な見解がありここでは多く語らないが、日経平均9000円割れを示現した日本株は、ヒストリカルに見て非常に低い株価水準であることは間違いなく、想定されている懸念材料を既に相当程度織り込んでいると考えることも可能だろう。

敢えて「長期的に見て現在の株価は割安」と考えている向きに贈ろう、10月8日の株価データを用いて高配当利回り銘柄のスクリーニングを行ってみた。スクリーニングの条件は以下の通り。

ここ数年で大幅下落し低位株となった銘柄の大幅戻りを取る目的も合わせ、現時点では高配当利回り銘柄スクリーニングはこの条件が一番適当と考えている。なお株価スクリーニング条件に「100円以上」を加えているのは、高信用リスク銘柄を除外することを目的としてのためである。

この条件で検索された銘柄数は、配当利回り3%以上が56銘柄、2.5%以上が110銘柄である。「半恐慌シナリオが言われているときに株が買えるか!」というご意見を持つ向きもいらっしゃるだろう。ごもっとも、もちろんそれは理解できる。そのような向きは現在は手を出さず、嵐が去るのを待った上で、改めて投資を検討すればよいだろう。その際にも、今回のデータはある程度参考になろう。

なお高配当利回り銘柄投資とは:

というスタンスで行う投資手法である。以上のムシの良い話の代償として、負担しなくてはならないリスクがあるのはもちろんで、一番発生しやすいのは無配転落のリスク。信用リスクも100%全くないわけではない。(「株主資本比率20%以上」「除く建設セクター」という条件を設定することで、一応怪しげな銘柄は除外しているが)投資銘柄は、慎重に選び、かつ分散投資を心がけたいものである。

CODE Name Industry 株価 配当利回り
(%、今期予想)
株主資本比率
%
6390 加藤製作所 機械 105 4.76 43.44
8059 第一実業 卸売業 135 4.44 26.53
9312 ケイヒン 倉庫・運輸関連業 131 4.27 20.91
5913 松尾橋梁 金属製品 165 4.24 31.34
6803 ティアック 電気機器 123 4.07 22.90
5464 モリ工業 鉄鋼 148 4.05 42.66
8061 西華産業 卸売業 125 4.00 25.45
1954 日本工営 サービス業 195 3.85 60.42
8043 スターゼン 卸売業 131 3.82 25.98
6358 酒井重工業 機械 132 3.79 60.81
8091 ニチモウ 卸売業 135 3.70 24.67
5916 ハルテック 金属製品 190 3.68 56.65
9930 北沢産業 卸売業 165 3.64 57.87
5959 岡部 金属製品 276 3.62 33.33
7995 日本バルカー 化学 139 3.60 39.95
5914 宮地鐵工所 金属製品 140 3.57 33.52
2204 中村屋 食料品 241 3.53 35.09
8024 シルバオック 繊維製品 255 3.53 32.72
9762 大和リース サービス業 284 3.52 51.80
5612 日本鋳鉄管 鉄鋼 114 3.51 44.50
5262 日本ヒューム ガラス・土石製品 114 3.51 39.32
8203 MrMax 小売業 288 3.47 34.13
7987 ナカバヤシ その他製品 145 3.45 34.00
5915 駒井鉄工 金属製品 204 3.43 50.22
7258 栃木富士産業 輸送用機器 219 3.42 58.63
5351 品川白煉瓦 ガラス・土石製品 147 3.40 25.39
2108 日本甜菜製糖 食料品 148 3.38 65.14
7407 日本飛行機 輸送用機器 148 3.38 47.19
5122 オカモト ゴム製品 223 3.36 51.04
6745 ホーチキ 電気機器 298 3.36 23.81
5902 北海製缶 金属製品 223 3.36 22.99
9351 東洋埠頭 倉庫・運輸関連業 150 3.33 48.43
8022 ミズノ その他製品 300 3.33 46.98
8158 ソーダニッカ 卸売業 165 3.33 24.85
4022 ラサ工業 化学 151 3.31 23.55
6118 アイダ 機械 243 3.29 84.32
3946 トーモク パルプ・紙 183 3.28 26.25
6335 東京機械製作 機械 246 3.25 39.85
9310 日本トランス 倉庫・運輸関連業 217 3.23 30.83
9069 センコー 陸運業 233 3.22 30.93
8070 東京産業 卸売業 280 3.21 39.45
5930 文化シヤッタ 金属製品 280 3.21 39.11
8042 日本マタイ 卸売業 157 3.18 30.28
9304 渋沢倉庫 倉庫・運輸関連業 222 3.15 31.70
4214 昭和高分子 化学 256 3.13 71.04
8610 さくらフレ 証券業 161 3.11 54.45
5210 日山村硝 ガラス・土石製品 161 3.11 49.69
6407 CKD 機械 289 3.11 35.06
9068 丸全昭和運輸 陸運業 226 3.10 52.02
2604 吉原製油 食料品 197 3.05 33.57
3877 中越パルプ パルプ・紙 197 3.05 28.75
3526 芦森工業 繊維製品 165 3.03 64.71
9074 日本石油輸送 陸運業 199 3.02 60.51
5658 日亜鋼業 鉄鋼 249 3.01 45.72
5234 第一セメント ガラス・土石製品 166 3.01 44.65
7260 富士機工 輸送用機器 166 3.01 30.98
6853 共和電業 電気機器 201 2.99 34.45
1515 日鉄鉱業 鉱業 204 2.94 43.14
6395 タダノ 機械 170 2.94 40.43
7905 大建工業 その他製品 255 2.94 24.42
8083 サンテレホン 卸売業 274 2.92 47.55
6973 協栄産業 卸売業 240 2.92 31.95
8803 平和不動産 不動産業 257 2.92 24.62
9306 東陽倉 倉庫・運輸関連業 190 2.89 43.94
1301 極洋 水産・農林業 104 2.88 20.19
4216 旭有機材工業 化学 261 2.87 76.28
6742 京三製作所 電気機器 244 2.87 41.08
3110 日東紡績 ガラス・土石製品 105 2.86 33.35
4031 チッカリン 化学 283 2.83 45.53
6462 リケン 機械 265 2.83 35.27
4404 ミヨシ油脂 食料品 177 2.82 32.14
2004 昭和産業 食料品 213 2.82 28.54
2536 メルシャン 食料品 178 2.81 35.41
8038 東都水産 卸売業 178 2.81 33.84
8089 ナイス 卸売業 178 2.81 29.54
6381 アネスト岩田 機械 143 2.80 55.09
4215 タキロン 化学 250 2.80 50.63
9302 三井倉庫 倉庫・運輸関連業 215 2.79 43.31
4228 積水化成 化学 180 2.78 41.68
8084 菱電商事 卸売業 288 2.78 38.81
3941 レンゴー パルプ・紙 253 2.77 23.42
2109 新三井糖 食料品 181 2.76 54.40
6768 タムラ製作所 電気機器 217 2.76 49.31
2201 森永製菓 食料品 181 2.76 34.99
9066 日新 倉庫・運輸関連業 181 2.76 27.53
9672 東京都競馬 サービス業 109 2.75 86.96
5204 石塚硝子 ガラス・土石製品 147 2.72 28.24
4225 筒中 化学 295 2.71 62.48
5195 バンドー化学 ゴム製品 221 2.71 43.15
2003 日東製粉 食料品 222 2.70 58.50
4611 大日本塗料 化学 111 2.70 20.58
4008 住友精化 化学 223 2.69 42.14
3106 クラボウ 繊維製品 149 2.68 39.43
4201 日本合成化学 化学 112 2.68 34.48
8623 明光ナショ 証券業 262 2.67 57.44
7723 愛知時計電機 精密機器 225 2.67 35.61
5105 東洋ゴム工業 ゴム製品 187 2.67 22.87
4041 日本曹達 化学 188 2.66 31.66
7102 日本車輌製造 輸送用機器 189 2.65 41.19
5301 東海カーボン ガラス・土石製品 190 2.63 57.89
6622 ダイヘン 電気機器 114 2.63 34.00
7244 市光工業 電気機器 228 2.63 32.68
7122 近畿車輌 輸送用機器 190 2.63 28.25
4103 大陽東洋酸素 化学 230 2.61 43.77
9067 丸運 陸運業 192 2.60 29.20
7913 図書印刷 その他製品 234 2.56 46.02
5457 住友鋼管 鉄鋼 235 2.55 32.21
6463 帝国ピストン 機械 274 2.55 26.23
5602 栗本鉄工所 鉄鋼 159 2.52 52.22
6242 スピンドル 機械 120 2.50 29.84
4046 ダイソー 化学 161 2.48 38.20
4213 三菱樹脂 化学 162 2.47 24.18
9070 トナミ運輸 陸運業 244 2.46 39.06
5142 アキレス 化学 122 2.46 36.89
6107 アマダマシニ 機械 204 2.45 79.31
3580 小松精練 繊維製品 209 2.39 63.21
4061 電気化学工業 化学 252 2.38 28.84
5101 横浜ゴム ゴム製品 252 2.38 26.16
6921 東光電気 電気機器 211 2.37 39.02
5976 ネツレン 金属製品 296 2.36 73.52
2001 日本製粉 食料品 254 2.36 44.96
8097 三愛石油 卸売業 297 2.36 37.11
8093 極東貿易 卸売業 214 2.34 36.67
7236 洋ラジエータ 輸送用機器 258 2.33 55.87
4989 イハラケミカ 化学 216 2.31 66.65
4997 日本農薬 化学 131 2.29 63.01
8621 UFつばさ 証券業 262 2.29 40.17
7011 三菱重工業 機械 262 2.29 32.76
5192 三ツ星ベルト ゴム製品 264 2.27 51.69
6313 共立 機械 132 2.27 38.14
7224 新明和工業 輸送用機器 166 2.26 47.00
1332 日本水産 水産・農林業 221 2.26 20.27
2102 台糖 食料品 222 2.25 35.05
8616 東海東京 証券業 134 2.24 40.64
7972 イトーキクレ その他製品 224 2.23 53.76
4617 中国塗料 化学 291 2.23 35.86
6504 富士電機 電気機器 224 2.23 22.45
4633 サカタインク 化学 270 2.22 30.83
3513 市川毛織 繊維製品 272 2.21 60.23
3401 帝人 繊維製品 294 2.21 28.20
3501 住江織物 繊維製品 113 2.21 27.64
5771 三菱伸銅 非鉄金属 136 2.21 23.13
3404 三菱レイヨン 繊維製品 274 2.19 39.11
5393 ニチアス ガラス・土石製品 228 2.19 28.70
6306 日工 機械 276 2.17 68.41
5706 三井金属 非鉄金属 230 2.17 26.73
7242 カヤバ工業 輸送用機器 231 2.16 31.18
6371 椿本チエイン 機械 278 2.16 31.09
4613 関西ペイント 化学 279 2.15 51.55
6212 帝人製機 機械 233 2.15 30.86
4218 ニチバン 化学 280 2.14 40.90
6798 SMK 電気機器 235 2.13 48.66
9303 住友倉庫 倉庫・運輸関連業 282 2.13 45.49
2217 モロゾフ 食料品 191 2.09 65.00
4047 関東電化工業 化学 239 2.09 20.14
6101 ツガミ 機械 144 2.08 68.33
3882 紀州製紙 パルプ・紙 144 2.08 53.26
6641 日新電機 電気機器 144 2.08 47.91
5707 東邦亜鉛 非鉄金属 144 2.08 31.81
6373 大同工業 機械 145 2.07 27.83
7971 東リ 化学 145 2.07 23.88
4612 日本ペイント 化学 291 2.06 41.45
5563 日本電工 鉄鋼 146 2.05 46.17
9533 東邦ガス 電気・ガス業 292 2.05 31.70
3407 旭化成 化学 295 2.03 41.64
9532 大阪ガス 電気・ガス業 298 2.01 37.69



高配当利回り銘柄スクリーニング

2002.07.01

足元の相場は、米国株式の急落、為替のドル安傾向などを受け、軟調な展開となっている。下落相場が言わせているのか、米国株式、米ドルとも、既に天井打ちしたなどと物騒な意見も聞こえてくる。

 相場の見方については様々な見解がありここでは多くは語らないが、TOPIXが1000ポイント割れを示現した日本株は、ヒストリカルに見て非常に低い株価水準であることは間違いなく、想定されている懸念材料を既に相当程度織り込んでいると考えることも可能だろう。また日米とも1−3月のGDP成長率は5%近いプラスになっており、日米とも景気が底打ちしている(と言われている)中での株価急落に、大いなる違和感を持っている向きも多いことだろう。

「現在の株価は割安」と考えている向きに贈ろう、6月27日の株価データを用いて高配当利回り銘柄のスクリーニングを行ってみた。スクリーニングの条件は:

  1. 東証一部企業
  2. 株価300円以下80円以上
  3. 株主資本比率20%以上
  4. 除く建設セクター
  5. 配当利回り2%以上

である。

ここ数年で大幅下落し低位株となった銘柄の大幅戻りを取る目的も合わせ、高配当利回り銘柄スクリーニングは現時点ではこの条件が一番適当と考えている。なお株価スクリーニング条件に「80円以上」を加えているのは、高信用リスク銘柄を除外することを目的としてのためである。

この条件で検索された銘柄数は、配当利回り3%以上が43銘柄、2.5%以上が100銘柄である。大量に発生しており、なかなか魅力的である状況がわかる。ボーナスの一部を高配当利回り銘柄の分散投資にあてるアイデアも、決して悪くないものと考える。

なお高配当利回り銘柄投資とは:

というスタンスで行う投資手法である。以上のムシの良い話の代償として、負担しなくてはならないリスクがあるのはもちろんで、一番発生しやすいのは無配転落のリスク。信用リスクも100%全くないわけではない。(「株主資本比率20%以上」「除く建設セクター」という条件を設定することで、一応怪しげな銘柄は除外しているが)投資銘柄は、慎重に選び、かつ分散投資を心がけたいものである。

コード 銘柄名 株価 株主資本比率 配当利回り
1332 日本水産 180 26.3 2.78
1515 日鉄鉱業 209 42.9 2.87
1919 エス・バイ・エル 136 30.8 5.51
1937 西部電気工業 256 53.9 2.34
1954 日本工営 201 58.4 3.73
1955 東電通 238 40.6 2.52
1968 太平電業 288 58.7 2.78
1975 朝日工業社 253 22.0 3.95
1983 東芝プラント建設 213 44.3 3.76
2001 日本製粉 248 43.2 2.42
2003 日東製粉 226 56.1 2.65
2004 昭和産業 215 30.1 2.79
2052 協同飼料 93 25.9 3.23
2108 日本甜菜製糖 150 63.9 3.33
2109 新三井製糖 192 53.8 2.60
2201 森永製菓 189 34.9 2.65
2204 中村屋 245 35.2 3.47
2264 森永乳業 290 24.7 2.07
2536 メルシャン 183 35.4 2.73
2604 吉原製油 229 33.1 2.62
3009 川島織物 108 24.5 2.78
3106 クラボウ 167 37.3 2.40
3110 日東紡績 129 32.5 2.33
3513 市川毛織 288 58.9 2.08
3526 芦森工業 186 62.0 2.69
3877 中越パルプ工業 212 28.9 2.83
3882 紀州製紙 140 50.7 2.14
3946 トーモク 202 24.5 2.97
4008 住友精化 245 37.7 2.45
4022 ラサ工業 194 24.8 2.58
4031 片倉チッカリン 280 45.0 2.86
4103 大陽東洋酸素 237 39.2 2.53
4201 日本合成化学 135 40.3 2.22
4213 三菱樹脂 186 22.4 2.15
4214 昭和高分子 277 67.2 2.89
4215 タキロン 264 48.7 2.65
4216 旭有機材工業 275 75.5 2.73
4218 ニチバン 295 38.8 2.03
4220 リケンテクノス 293 51.2 2.56
4225 筒中プラスチック 287 51.9 2.79
4228 積水化成品工業 186 37.8 2.69
4403 日本油脂 274 34.0 2.19
4404 ミヨシ油脂 203 32.1 2.46
4611 大日本塗料 134 21.0 2.24
4612 日本ペイント 278 40.6 2.16
4613 関西ペイント 280 49.5 2.14
4617 中国塗料 275 36.7 2.36
4989 イハラケミカル 207 66.7 2.42
5101 横浜ゴム 278 25.1 2.16
5105 東洋ゴム工業 195 21.5 2.56
5142 アキレス 138 36.3 2.17
5192 三ツ星ベルト 262 52.9 2.29
5195 バンドー化学 219 39.4 2.74
5204 石塚硝子 163 24.2 2.45
5210 日本山村硝子 181 49.7 2.76
5232 住友大阪セメント 173 31.3 2.89
5234 第一セメント 185 44.6 2.70
5262 日本ヒューム 138 38.0 2.90
5269 日本コンクリート 108 37.5 2.31
5301 東海カーボン 206 57.9 2.43
5351 品川白煉瓦 158 24.6 3.16
5457 住友鋼管 260 35.0 2.31
5464 モリ工業 153 40.5 3.92
5612 日本鋳鉄管 124 43.8 3.23
5658 日亜鋼業 268 63.9 2.80
5809 タツタ電線 135 59.7 2.22
5902 北海製缶 241 23.6 3.11
5913 松尾橋梁 186 29.4 3.76
5914 宮地鉄工所 162 34.5 3.09
5915 駒井鉄工 228 51.0 3.07
5916 ハルテック 204 55.6 3.43
5930 文化シヤッター 280 38.4 3.21
5931 川田工業 183 20.3 2.73
5959 岡部 289 33.3 3.46
5976 高周波熱錬 289 66.8 2.42
6107 アマダマシニックス 203 70.8 2.46
6213 オーエム製作所 99 39.8 2.53
6306 日工 277 69.0 2.17
6358 酒井重工業 163 62.9 3.07
6381 アネスト岩田 156 46.5 2.56
6390 加藤製作所 132 41.2 3.79
6395 タダノ 166 40.9 3.01
6462 リケン 288 29.5 2.60
6463 帝国ピストンリング 274 23.9 2.55
6622 ダイヘン 131 32.3 2.29
6742 京三製作所 235 38.7 2.98
6803 ティアック 213 21.6 2.35
6853 共和電業 229 34.5 2.62
6921 東光電気 235 38.9 2.13
6973 協栄産業 291 25.3 2.41
7007 佐世保重工業 103 41.0 4.85
7102 日本車両製造 177 42.4 2.82
7122 近畿車両 180 31.2 2.78
7204 小松ゼノア 262 47.2 2.10
7224 新明和工業 186 45.8 2.02
7232 トキコ 283 46.2 2.83
7236 東洋ラジエーター 261 58.4 2.30
7243 シロキ工業 196 25.9 2.04
7244 市光工業 197 32.9 3.05
7258 栃木富士産業 250 66.6 3.00
7260 富士機工 214 39.8 2.34
7407 日本飛行機 207 50.8 2.42
7723 愛知時計電機 227 33.6 2.64
7905 大建工業 300 21.6 2.50
7913 図書印刷 246 47.6 2.44
7972 イトーキ クレビオ 229 53.8 2.18
7987 ナカバヤシ 170 35.4 2.94
7995 日本バルカー工業 139 36.5 3.60
8024 シルバーオックス 256 32.5 3.52
8038 東都水産 186 34.9 2.69
8042 日本マタイ 194 30.3 2.58
8043 スターゼン 129 23.9 3.88
8059 第一実業 147 23.1 4.08
8061 西華産業 137 27.6 3.65
8070 東京産業 288 37.1 3.13
8083 サンテレホン 291 47.6 2.75
8089 ナイス 203 30.7 2.46
8091 ニチモウ 140 29.4 3.57
8097 三愛石油 295 33.9 2.37
8116 ダーバン 111 45.7 2.70
8158 ソーダニッカ 171 23.4 3.22
8203 Mr Max 290 30.0 3.45
8610 さくらフレンド証券 180 27.2 2.78
8614 東洋証券 191 25.2 2.62
8623 明光ナショナル証券 281 35.6 2.49
8803 平和不動産 249 24.9 3.01
8845 セザール 80 23.1 3.13
9066 日新 178 26.8 2.81
9067 丸運 187 25.7 2.67
9068 丸全昭和運輸 216 52.4 3.24
9069 センコー 228 26.7 3.29
9070 トナミ運輸 240 39.0 2.50
9074 日本石油輸送 203 59.3 2.96
9302 三井倉庫 232 42.1 2.59
9304 渋沢倉庫 232 31.1 3.02
9306 東陽倉庫 190 44.3 2.89
9310 日本トランスシティ 228 29.4 3.07
9312 ケイヒン 138 21.4 4.06
9351 東洋埠頭 156 49.4 3.21
9532 大阪ガス 285 36.2 2.11
9533 東邦瓦斯 255 32.1 2.35
9534 北海道ガス 249 21.4 2.01
9536 西部ガス 178 20.4 2.81
9672 東京都競馬 115 87.0 2.61
9762 大和工商リース 281 47.8 3.56
9930 北沢産業 177 54.1 3.39
9991 川商ジェコス 278 24.1 3.60



ジェシー・リバモアも『試し玉』を用いていた

2002.05.12

米国の大投機家、かのジェシー・リバモアの本「世紀の相場師ジェシー・リバモア」(角川書店)が昨年6月に出版されたが、筆者はこの本に感銘を受けた。(この良著の存在に、なんで今まで気がつかなかったのか?)これまでのリバモア氏の評価といえば、大儲けしながらも破産を繰り返したとか、不幸なピストル自殺とか、そう言う点ばかりが強調されていたように思う。しかし実際の彼は非常にオーソドックスな、優れた戦略を持つ投機家であったことが、この本を読めばわかる。氏についての本は、これまでにもなくはなかった。しかし氏の売買戦略が詳しく書かれた本として、この本は秀逸といえるのではないだろうか。

この本に感銘した点の一つはリバモア氏の売買手法に関連するが、彼が相場を行う時には「打診」から入るということ。何度も何度も小玉で相場を打診し、「いける」と判断できたら本玉を張る。たとえば次のような記述がある。

相場の流れに変化が起き始めているという自分の判断を確認するために、わたしは小口の取引で打診するという方法を取っている。「売る」にしろ「買う」にしろ、わずかな額からスタートし、自分の判断が正しいかどうか試すのだ。

リバーサル・ピボタル・ポイント(リバモア氏が認識する相場の転換ポイントのこと)が真の転換点かどうかを確認するには、どうしても腰のすわった忍耐が必要だ。わたしはその確認をおこなうためのテスト法を開発した。まず「探りを入れてみよう」というのがその基本なのだが、最終的な取引規模を頭に描きながら、小口の取引で結果を見るのだ。その結果が予想通りであれば、本格的な売買へと進んでいく。

ここまで読んで「これは「ためし玉」から相場に入る方法と同じではないか?」と思った読者は、かなりの林輝太郎先生フリークか、あるいは相場のやり方のポイントを相当につかんでいる方だろう。ここでためし玉の解説を少々しておきたい。相場をする上では、いきなり投資資金をすべて投入するのではなく最初に小枚数を建ててアンテナを張り、相場に乗れそうか、自分の出番か否かを図る売買手法が好ましい。これが「ためし玉」であり、林先生の著作の中では再三再四、様々にためし玉の重要性を唱えられている。

それにしても、かのリバモア氏が『ためし玉』と同様なことを行っていたという事実には驚かされた。やはり相場のやり方の本質は、古今東西、同じであるということだろうか。小玉の「打診」「ためし玉」から相場に入っていくという売買手法において、林先生もジェシー・リバモアも共通しているというのは、不思議な説得力を持つ。

なお参考まで、リバモア氏はまた「相場で成功した者で、休みなく取引を続けたものはいない」とも言っている。このあたりも、林先生の考えと共通している部分といえよう。

さてリバモア氏は当初、「バケットショップ」で株の売買をし成功を収めたにもかかわらずウオール街の初挑戦では大きな損失を抱えてしまったわけであるが、感銘した点のもうひとつはこの件に関連する。「バケットショップ」は、違法のいわゆる「株式の呑み屋」のことである。一見株式ブローカーであるが、実際には株の取次店ではない。客は株数を指定し目当ての株数を購入し、それと同時に店に購入価格の10%を払い込む。店は実際には株式の注文執行は行っておらず、株価が10%値下がりするとその時点でゲームは終了、客の金はすべて店のものになる。一方で値上がりし客が勝てば、その時のティッカー価格で払い戻しが行われる。

さて当時20才のリバモア氏は、バケットショップでの売買で大儲けをし颯爽とウオール街に乗り込むことになるが、この時に最初の破産に追い込まれてしまう。理由はいくつかあるが、最も興味深い点は、バケットショップでの損失は最大10%で収まるルールであった一方、ウオール街では自ら損切りしないと損が拡大してしまう状況であり、リバモア氏も当初この点に対応できなかったということだ。つまりバケットショップはそのゲームのルール上、「損小利大」が自動的に達成されるシステムを持っていたので、投資家は自ら損切りをする必要がなかったわけである。そしてこの状況は、リバモア氏にとって非常に好都合だったということだ。相場で資産を増加させる上では、売買において「損小利大」の達成がカギを握るということについて再認識させられる話である。

それにしても「損小利大」が自動的に達成されるシステムを持ている証券会社とは、投資家の立場としては具合が良い。「もし日本にバケットショップ的な証券会社が一般的にあれば」と思ってしまうのは、私だけだろうか(昔はあったように聞くが…もちろん、違法行為というのであれば問題だが…・)。しかし現実にはそのような好都合な証券会社は存在しないので、「バケットショップの10%ルール状態」(10%は3%でも5%でも良いが)を投資家自らが作り出すことが、売買を有利に展開していくカギになる。現段階でバケットショップの10%ルール状態に最も近いのは、あらかじめ手仕舞いのための逆指値注文を出しておくことを恒常化するということになるだろう。

現在、株式売買の逆指値は某ネット証券1社でしか行っていないようである。他の証券会社も逆指値が出来るよう、システム開発をして欲しいものである。

P.S.
ジェシー・リバモアは63歳でピストル自殺したが、これは相場に失敗したからではない。相場では成功を収め資産も名誉も得られたが、投機に夢中になっている間に家庭環境が破綻してしまい、絶望の淵に追いやられたことが原因である。



アノマリー研究
3月に買い5月に売る

2002.2.21

「株式相場の季節性の点から、買い場が近いのではないか」ということをお知らせするのが、今回の趣旨である。アノマリー重視派にとって、楽しみなシーズンの到来である。このコーナーは1997年7月にスタートし、以来、何回か「3月に買い5月に売る」という戦略を紹介している。「またか?」と思う当コーナーの読者もいるかもしれないが、これはこれで重要なアノマリーなので、今年も紹介したい。

日本株の投資家にとって、「4月」という月は極めて興味深いチャンス月である。1年12ヶ月の中で、4月は最も株が上昇しやすいアノマリーが存在するからだ。そしてこのアノマリーの発生を妨げる理由は、現在のところ見当たらない。

まずデータを示そう。1987年から1999年まで、延べ13年間の4月陽線回数は9回、率にして75%と非常に高い。またバブル崩壊以後のボックス相場だけをとればこの傾向はもっと顕著である。1993年から1999年の延べ7年間の4月陽線回数は6回。率にすると83%である(月間変動が200円に満たないケースは除く)。そしてどちらの期間の統計においても、1年12ヶ月の中で、「4月」は上昇発生率が第一位なのだ。

アノマリーの発生理由は、3月と4月を跨いでの、企業の決算月に絡んだ株式需給の変化に起因する部分が大きい。国内の株式市場では、例年3月は売り物が嵩み需給悪状態となるが、4月は3月とは逆に買いニーズが発生、需給が様変わりに好転するパターンが繰り返されている。この点は拙著「ファンドマネージャーの株式運用戦略」で詳しく書いているが、機関投資家、及び金融機関等の売買行動による影響の部分が大きい。機関投資家&金融機関は本決算月である3月にかけ、ポジション調整や益出しなどの売りを先行させるのが常であるし、昨今ではこの時期、持ち合い解消の売りも高水準となる(但し厳密に言えば、持合解消売りが最も嵩むのが2月、その次が8月であることが多い。それぞれ、本決算月、中間決算月の1月前というイメージ)。しかしながらこれが4月になると、決算に絡んだ売りが一巡する一方、機関投資家は4月スタートの新規ファンドの運用を開始する。持ち合い解消に伴う売り圧力についても、決算月が終われば、とりあえずは一段落する。(但し持ち合い解消が終了したという意味ではなく、あくまでも一段落ではあるが)

さて、前段で1987年から1999年までと、1993年から1999年までの期間を比較しているのは、@それぞれの時点の日経平均のレベルが16,000円前後と近似しているA株式市場で機関投資家の存在感が高まってきたのは、いわゆる特金、ファントラ運用が活発化した、1980年代半ばからである…・からだ。それでは機関投資家が登場する時代以前はどうだったのだろうか?今回、より長い期間の統計を取ってみたが、やはり4月高アノマリーの存在を、概ね確認することが出来た。図は、戦後、東証の取引再開以降の日経平均月足アノマリー分析表である。1949年5月から2002年1月までの期間について、日経平均の上昇が多く発生している月の順に並べている。戦後、東証の取引再開以後の日経平均は、200ポイント以下である。ちなみに、同期間の上昇月の平均発生確率は57.45%。思ったほど高くはない。データを見ると、機関投資家がまだ誕生していない時代を含めても、4月高アノマリーは存在していたと考えてよさそうだ(1月の上昇発生確率の高さには意外感があったが…)。

古い相場格言に、「鯉のぼりの季節を過ぎたら株は売り」というものがあるという。相場師の知恵といえようか、昔の相場師はアノマリーという言葉がない時代から、経験的に4月高の傾向を活かしていたのかもしれない。

東証取引再開以降の日経平均月足アノマリー分析表
(1949年5月〜2002年1月)
標本数 上昇した月数 上昇率
1月 53 40 75.47%
4月 52 36 69.23%
6月 53 34 64.15%
3月 52 31 59.62%
8月 52 30 57.69%
12月 53 30 56.60%
10月 53 29 54.72%
11月 53 29 54.72%
2月 52 28 53.85%
7月 53 28 52.83%
5月 53 25 47.17%
9月 53 23 43.40%
平均上昇月発生率 57.45%

(数値の出所:週間CHART BOOK 週足集)

行動指針:5月ゴールデンウイーク空けに売ることを前提に、3月中に買い場さがし。銘柄的には投資家自身の相場観に委ねたい。

前回執筆時に、一部の方から「簡単に4月高というが、今年もそうなるとは限らないぞ」との趣旨のご意見をいただいた。それはごもっとも。毎年必ず4月高が再現すれば、誰も苦労はしない。ここでは、過去の統計に照らし合わせた可能性という点からどうかということを言っているわけである。「今年もそうなるとは限らない」と考えるアノマリー非重視派であるなら、ここで書いていることは無視していただいたほうが良い。

・ 売買は自分の相場観で行ってください。
株式投資は自己責任が原則です。


  

高配当利回り銘柄スクリーニング

2001.12.18

足元の相場は97年後半以降を髣髴(ほうふつ)させるような二極化相場的な展開となっている。そんな中、同時テロ事件以降、TOPIXが再度1000ポイント割れとなった12月17日の株価データを用いて、高配当利回り銘柄のスクリーニングを行ってみた。3ヶ月前にも同様の試みを行っているが、それと比較すれば銘柄の顔ぶれが結構変わっている(相対的にクオリティの高い銘柄が顔を出している)ことに気がつくだろう。なおスクリーニングの条件は:

  1. 東証一部企業
  2. 株価300円以下
  3. 株主資本比率20%以上
  4. 除く建設セクター
  5. 配当利回り2%以上

である。

ここ数年で大幅下落し低位株となった銘柄の大幅戻りを取る目的も合わせ、高配当利回り銘柄スクリーニングは現時点ではこの条件が一番適当と考えている。この条件で配当利回り3%以上が56銘柄、2.5%以上が116銘柄と大量に発生しており、なかなか魅力的である状況がわかる。

東証一部の低位株は、本年5月高値銘柄が多い。それ以降の下落期間は既に6ヶ月を超え、直近では下げ足を速めている状況である。しかしながらこの長きに渡る下落期間の中で、既に相当程度、景気後退等の想定されている悪材料を織り込んだ可能性が高いと考える。「ここが底値」などと断定できるわけではないのはもちろんだが、概ね底値圏に近づきつつある状況といえるのでないだろうか?ボーナスの一部を高配当利回り銘柄の分散投資にあてるアイデアも、決して悪くないものと考える。

なお高配当利回り銘柄投資とは:

  1. 配当利回りが高い銘柄の株を買う。
  2. 株価が上昇したら売却、値上がり益をものにする。
  3. 株価が上がらなければ、配当を受け取りながら、株価が上昇するまで待つ。

というスタンスで行う投資手法である。以上のムシの良い話の代償として、負担しなくてはならないリスクがあるのはもちろんで、一番発生しやすいのは無配転落のリスク。信用リスクも100%全くないわけではない。(「株主資本比率20%以上」「除く建設セクター」という条件を設定することで、一応怪しげな銘柄は除外しているが)投資銘柄は、慎重に選び、かつ分散投資を心がけたいものである。

・売買は自分の相場観、リスクで行ってください。株式投資は自己責任が原則です

銘柄コード 銘柄名 株価 利回り
(日経予想ベース)
自己資本
比率 [%]
8175 ベスト電 289 5.19 38.196
8845 セザール 97 5.155 23.115
4089 大阪酸 129 4.651 59.974
8059 第一実 130 4.615 23.117
8835 太平発 66 4.545 21.948
8178 マルエツ 291 4.124 47.882
5612 鋳鉄管 122 4.098 43.752
1975 朝日工 246 4.065 22.048
9312 ケイヒン 138 4.058 21.444
8024 シルバオクス 226 3.982 32.548
8061 西華産 126 3.968 27.599
7007 佐世保 78 3.846 41.012
8043 スターゼン 133 3.759 23.94
5913 松尾橋 187 3.743 29.397
8203 MrMax 271 3.69 30.027
5916 ハルテック 191 3.665 55.594
8091 ニチモウ 137 3.65 29.375
5930 文化シヤタ 248 3.629 38.416
2108 甜菜糖 139 3.597 63.878
1968 太平電 284 3.521 58.661
5805 昭電線 86 3.488 25.207
3877 中越パ 174 3.448 28.859
5929 三和シャタ 266 3.383 37.129
9991 川商ジェコス 296 3.378 24.079
7244 市光工 179 3.352 32.877
1921 180 3.333 28.396
5915 駒井鉄 240 3.333 51.048
5959 岡部 300 3.333 39.318
9351 洋埠頭 150 3.333 49.372
9930 北沢産 181 3.315 54.095
5351 白煉瓦 151 3.311 24.558
2052 協同飼 91 3.297 25.884
8621 つばさ 243 3.292 27.213
1954 日工営 228 3.289 58.427
5914 宮地鉄 152 3.289 34.504
9304 渋沢倉 213 3.286 31.075
2204 中村屋 260 3.269 35.171
4022 ラサ工 153 3.268 24.767
9068 丸全運 216 3.241 52.446
4045 東合成 186 3.226 42.713
5122 オカモト 233 3.219 49.295
5105 洋ゴム 158 3.165 21.519
6213 OM製 79 3.165 39.751
3526 芦森工 159 3.145 62.01
8018 三共興 240 3.125 36.325
8158 ソーダニッカ 176 3.125 23.418
8610 さくらフレ証 160 3.125 27.158
8038 東都水 193 3.109 34.894
4225 筒中 259 3.089 51.926
9069 センコー 244 3.074 26.714
5902 北カン 245 3.061 23.631
9074 日石輸 196 3.061 59.256
6742 京三 229 3.057 38.737
7232 トキコ 197 3.046 46.229
3110 日東紡 99 3.03 32.476
6358 酒井重 165 3.03 62.945
5410 合同鉄 67 2.985 31.113
4214 高分子 270 2.963 67.231
8083 サンテレ 270 2.963 47.632
4201 日合成 102 2.941 40.308
5234 第一セ 170 2.941 44.591
6462 リケン 256 2.93 29.506
5451 淀川鋼 239 2.929 59.27
9306 東陽倉 188 2.926 44.302
2601 ホーネン 172 2.907 42.857
6973 協栄産 260 2.885 25.273
8116 ダーバン 104 2.885 48.769
6395 タダノ 174 2.874 40.914
5974 中国工 140 2.857 45.278
8616 東海東京 175 2.857 29.04
3946 トーモク 211 2.844 24.479
1332 日水 176 2.841 26.313
3941 レンゴー 247 2.834 24.631
1515 日鉄鉱 212 2.83 42.929
4619 日特塗 212 2.83 39.164
6472 NTN 212 2.83 28.944
2284 伊藤ハ 285 2.807 50.729
7913 図書印 215 2.791 47.572
4103 大洋酸 216 2.778 39.19
7258 栃富士 180 2.778 66.574
1937 西部電工 290 2.759 53.862
8093 極東貿易 273 2.747 31.846
8084 菱電商 292 2.74 33.407
5210 日山村硝 183 2.732 49.726
7248 カルソカンセ 275 2.727 31.353
4031 チッカリン 296 2.703 45.02
9066 日新 185 2.703 26.821
9536 西部ガス 185 2.703 20.385
9672 東競馬 111 2.703 85.951
4216 旭有機 279 2.688 75.496
4228 積化成 186 2.688 37.818
7102 日車両 186 2.688 42.372
2604 吉原油 225 2.667 33.113
4008 住友精化 226 2.655 37.706
8803 平和不 226 2.655 24.92
9302 三井倉 226 2.655 42.084
9310 トランシティ 226 2.655 29.361
2004 昭和産 227 2.643 30.053
5195 バンドー 227 2.643 39.409
5232 住友大阪 190 2.632 31.254
6622 ダイヘン 114 2.632 32.281
2003 日東粉 230 2.609 56.085
4634 洋インキ 231 2.597 41.281
6107 アマダマシニ 193 2.591 70.826
4617 中国塗 251 2.59 36.746
7236 洋ラジ 232 2.586 58.402
2109 新三井糖 194 2.577 53.823
8042 マタイ 194 2.577 32.873
4215 タキロン 272 2.574 48.652
6373 大同工 156 2.564 29.145
6853 共和電 234 2.564 39.427
6317 北川鉄 98 2.551 53.123
6850 チノー 157 2.548 60.589
9070 トナミ 239 2.51 39.034
2264 森永乳 240 2.5 24.667
6381 アネスト岩田 160 2.5 46.476
5931 川田工 201 2.488 20.331
4213 菱樹脂 161 2.484 22.394
7995 バルカー 101 2.475 36.461
8089 ナイス 202 2.475 30.721
7987 ナカバヤシ 193 2.461 35.413
4403 日油脂 244 2.459 34.009
7142 ナブコ 123 2.439 32.755
6313 共立 124 2.419 39.313
7407 日本飛 207 2.415 50.788
5976 ネツレン 290 2.414 66.767
4612 日本ペ 251 2.39 40.566
2201 森永 210 2.381 34.852
4633 サカタINX 253 2.372 28.836
4046 ダイソー 212 2.358 42.782
4404 ミヨシ 212 2.358 28.987
8097 三愛石 297 2.357 33.914
1955 東電通 255 2.353 40.584
5352 クロサキ 85 2.353 26.158
3580 小松精 256 2.344 58.21
4989 イハラケミ 214 2.336 64.659
5991 ニッパツ 258 2.326 28.523
2001 日本粉 261 2.299 43.177
3106 クラボウ 174 2.299 37.269
8029 レナウンルク 132 2.273 60.78
7972 イトキクレビ 221 2.262 55.581
5393 ニチアス 222 2.252 24.031
2533 合同酒 223 2.242 26.13
6768 タムラ 269 2.23 47.169
5301 東海カ 225 2.222 55.703
6498 キッツ 136 2.206 37.86
5453 洋鋼鈑 229 2.183 41.372
3513 市川毛 275 2.182 58.913
6212 帝人機 230 2.174 26.679
4613 関西ペ 277 2.166 49.455
5192 三星ベ 277 2.166 52.86
6306 日工 280 2.143 68.988
5101 浜ゴム 281 2.135 25.138
7204 コマツゼノア 258 2.132 47.235
4611 大日塗 142 2.113 21.004
6139 タンガロイ 239 2.092 65.472
6316 丸山製 96 2.083 34.181
4210 東洋化 290 2.069 48.45
4218 ニチバン 290 2.069 38.801
6931 日電池 243 2.058 23.198
3882 紀州紙 146 2.055 50.685
7961 兼松日産農 146 2.055 23.197
2871 ニチレイ 295 2.034 24.307
5142 アキレス 148 2.027 36.31
3514 バイリーン 198 2.02 39.27
5457 住友鋼管 297 2.02 34.963
4996 クミアイ化 150 2 69.526



日本航空、日本ハムなど「事件に巻き込まれた」株価の考え方

2001.10.29

日米とも株式市場は、同時テロ事件の影響により一時期相当に乱高下したが、最近はかなり落ち着いてきた印象を受ける。同事件については新聞、週刊誌等で様々に書かれているが、その中で筆者は、10月8日付け週間DIAS(光文社)における藤巻健史氏の次のコメントに強く感銘を受けた。「今回の同時テロ事件は、社会的、政治的には大事件であるが、経済的には大事件ではない」。僭越ながら、9月20日付け当コーナーの「P.S.さきの米国同時テロ事件の、景気、株式市場に対する影響について」で解説した意見と同一のベクトルにある考え方と受け止めた。氏の頭の中が高度に整理されているからこそ、このような端的な表現が可能なのだろう。

「社会的、政治的には大事件であるが、経済的には大事件ではない」……こういった状況は、投資家にとっておいしいチャンスにつながることが多い。事件収束に伴う過剰反応の修正過程や、社会的大騒動が個別企業収益に長期的に大打撃を与えるとの誤解が解かれる過程で発生する、売り込まれ過ぎの株価の戻りを懐に入れる戦略が考えられるからだ。この状況に該当する銘柄として筆者は現在、日本航空の200円台、日本ハムの1100円台あたりをイメージするのであるが、いかがだろうか?

両銘柄のこのたびの株価下落は、社会的には間違いなく前代未聞である大事件を、個別企業の企業価値という経済的部分にまで及ぶ大事件と誤解した結果、発生したものではないだろうか?まず日本航空。同時テロ事件の影響から足元での海外渡航の手控えは深刻で、海外では倒産する航空会社が複数発生している。実際、事件の3日後に成田からNYに行った人の話では、ジャンボ機の中には旅客がわずか50人しかいなかったという。この状況下、日本航空の収益見通しも下方修正され、2001年度は400億円の赤字見通しとアナウンスされた。

しかし、同時テロ事件がいつか収束の方向となり、それに伴い航空旅客が事件前水準に回復し、その過程で売り込まれた株価が回復する…・・このような考え方が、経済的見地からは妥当なのではないだろうか?今回の事件は、日本の航空業界、ましてや日本航空という個別企業を直撃した事件ではない。経済的にとらえた場合、「旅客の回復は趨勢的に望めない」とするシナリオには、相当に無理があると考えるのが妥当ではないか。

次に日本ハム。国内の狂牛病事件の発生後、株価下落が加速している。しかし日本ハムの国産牛肉の取り扱いは同社の牛肉売上の10%、肉全体売上の5%に過ぎない。一方で豚肉、鶏肉の販売はそこそこ好調で、牛の減少分をかなりの部分カバーしている状況である。以上から、日本ハムに対する狂牛病の業績面でのインパクトは、限定的であることがわかる。
この銘柄も、考え方は日本航空のケースと同様。狂牛病が収束していく中で牛肉離れなどの風評的影響は後退し、その過程で売り込まれた株価が回復するという考え方が、経済的見地からは妥当ではないだろうか?

「ではブリジストンはどうなのか?株価が大幅下落した後、長く低迷期間が続いたではないか?」との意見も聞かれよう。ブリジストンの場合は、以下の点で日本航空、日本ハムのケースよりも相対的に深刻だったのである。

  1. 事件が業界やその環境に対してではなく、米ファイヤーストーンというブリジストンの連結対象会社を直撃していることから、自社ブランド力の低下リスクが懸念された。
  2. 従ってブリジストンの賠償問題に発展するリスクがあった。
  3. フォードという世界第二位の自動車メーカーとの関係が揺らぐリスクがあった。

つまり、事件に巻き込まれたのではなく、事件の当事者となってしまったという点で、前述の2社と異なるということである。

**以上の見解は、銘柄選別対する考え方を示したものであり、日本航空、日本ハムを買い推奨しているわけではありません。当コーナーのヒントにより投資行動を行う際は、自己責任でお願いします。



高配当利回り銘柄スクリーニング&米国同時テロ考

2001.9.20   

9月19日の株価データを用いて、高配当利回り銘柄のスクリーニングを行った。銘柄スクリーニングの条件は:

  東証一部企業
  株価300円以下
  株主資本比率20%以上
  除く建設セクター

である。

ここ数年で大幅下落し低位株となった銘柄の大幅戻りを取る目的も合わせ、高配当利回り銘柄スクリーニングは現時点ではこの条件が一番適当と考えている。この条件で配当利回りが2.5%以上である銘柄は105と大量に発生しており、なかなか魅力的である状況がわかる。現在の海外の突発的事件に伴い株式市場が連鎖安している状況は、このような銘柄に関する投資タイミングとしてはまずまずであると考える。

なお高配当利回り銘柄投資とは:

  1. 配当利回りが高い銘柄の株を買う。
  2. 株価が上昇したら売却、値上がり益をものにする。
  3. 株価が上がらなければ、配当を受け取りながら、株価が上昇するまで待つ。

というスタンスで行う投資手法である。以上のムシの良い話の代償として、負担しなくてはならないリスクがあるのはもちろんで、一番発生しやすいのは無配転落のリスク。信用リスクも100%全くないわけではない。(「株主資本比率20%以上」「除く建設セクター」という条件を設定することで、一応怪しげな銘柄は除外しているが)投資銘柄は、慎重に選び、かつ分散投資を心がけたいものである。

コード 銘柄名 株価 利回り
(日経予想
ベース)
自己資本
比率 [%]
   コード 銘柄名 株価 利回り
(日経予想
ベース)
自己資本
比率 [%]
7987 ナカバヤシ 249 3.82 35.41 5612 鋳鉄管 174 2.87 43.75
9312 ケイヒン 148 3.78 21.44 6853 共和電 209 2.87 39.43
6358 酒井重 240 3.75 62.95 9070 トナミ 209 2.87 39.03
8173 上新電 216 3.70 35.17 9310 トランシティ 209 2.87 29.36
5930 文化シヤタ 250 3.60 38.42 5351 白煉瓦 176 2.84 24.56
6809 TOA 280 3.57 49.45 5974 中国工 141 2.84 45.28
2204 中村屋 239 3.56 35.17 4617 中国塗 230 2.83 36.75
8059 第一実 175 3.43 23.12 8091 ニチモウ 177 2.83 29.38
2108 甜菜糖 147 3.40 63.88 6455 モリタ 266 2.82 43.09
9991 川商ジェコス 294 3.40 24.08 4214 高分子 285 2.81 67.23
8061 西華産 148 3.38 27.60 3946 トーモク 214 2.80 24.48
8203 MrMax 296 3.38 30.03 4225 筒中 286 2.80 51.93
5959 岡部 297 3.37 39.32 4089 大阪酸 216 2.78 56.30
8621 つばさ 297 3.37 27.21 4619 日特塗 216 2.78 39.16
5913 松尾橋 210 3.33 29.40 1515 日鉄鉱 218 2.75 42.93
9069 センコー 225 3.33 26.71 7102 日車両 182 2.75 42.37
9351 洋埠頭 152 3.29 49.37 5210 日山村硝 183 2.73 49.73
7242 カヤバ 184 3.26 29.64 2004 昭和産 220 2.73 30.05
8043 スターゼン 154 3.25 23.94 8201 さが美 294 2.72 68.51
5916 ハルテック 217 3.23 55.59 8622 水戸 294 2.72 24.04
5602 栗本鉄 251 3.19 52.63 4046 ダイソー 185 2.70 42.78
5915 駒井鉄 253 3.16 51.05 4213 菱樹脂 185 2.70 22.39
4045 東合成 190 3.16 42.71 5234 第一セ 186 2.69 44.59
7244 市光工 191 3.14 32.88 8042 マタイ 186 2.69 32.87
7971 東リ 191 3.14 25.89 8610 さくらフレ証 186 2.69 27.16
8018 三共興 239 3.14 36.33 3009 川島織 112 2.68 24.53
8158 ソーダニッカ 176 3.13 23.42 2601 ホーネン 187 2.67 42.86
6742 京三 225 3.11 38.74 9536 西部ガス 187 2.67 20.39
5464 モリ工 194 3.09 40.51 2003 日東粉 225 2.67 56.09
7007 佐世保 97 3.09 41.01 7248 カルソカンセ 282 2.66 31.35
6498 キッツ 162 3.09 37.86 9306 東陽倉 188 2.66 44.30
8084 菱電商 292 3.08 33.41 4103 大洋酸 226 2.66 39.19
9068 丸全運 228 3.07 52.45 6973 協栄産 283 2.65 25.27
8845 セザール 163 3.07 23.12 5232 住友大阪 190 2.63 31.25
5122 オカモト 245 3.06 49.30 8835 太平発 114 2.63 21.95
5902 北カン 245 3.06 23.63 9067 丸運 190 2.63 25.72
7260 富士機工 165 3.03 39.81 5931 川田工 191 2.62 20.33
2052 協同飼 100 3.00 25.88 5195 バンドー 231 2.60 39.41
7232 トキコ 200 3.00 46.23 3580 小松精 270 2.59 58.21
9074 日石輸 200 3.00 59.26 6107 アマダマシニ 232 2.59 70.83
5105 洋ゴム 168 2.98 21.52 7723 愛時計 234 2.56 33.64
8038 東都水 202 2.97 34.89 4008 住友精化 235 2.55 37.71
9304 渋沢倉 239 2.93 31.08 6803 ティアック 196 2.55 21.57
3877 中越パ 205 2.93 28.86 7258 栃富士 196 2.55 66.57
5914 宮地鉄 171 2.92 34.50 5981 東京綱 118 2.54 25.09
9066 日新 172 2.91 26.82 4022 ラサ工 197 2.54 24.77
5451 淀川鋼 241 2.91 59.27 4228 積化成 197 2.54 37.82
7913 図書印 207 2.90 47.57 6763 帝通工 276 2.54 76.73
3526 芦森工 173 2.89 62.01 2604 吉原油 237 2.53 33.11
6395 タダノ 173 2.89 40.91 6798 SMK 277 2.53 46.85
9930 北沢産 208 2.89 54.10 9672 東競馬 119 2.52 85.95
4989 イハラケミ 200 2.50 64.66
5407 日新鋼 80 2.50 38.90
6381 アネスト岩田 160 2.50 46.48


  P.S.  さきの米国同時テロ事件の、景気、株式市場に対する影響について

上記につき筆者が現時点において考えることを、徒然なるままに書いてみたい。但し、限られた知識と情報に基づいて書いている点は、ご理解ください。


売買は自分の相場観、リスクで行ってください。株式投資は自己責任が原則です。


バリュー株投資家への福音か?行き過ぎた2極化相場修正へ追い風が発生

2001.7.24  

 これまで「負け組み」と言われ、持合解消に伴う売り圧力などから超割安に放置されていたバリュー株。さすがに最近では、個人投資家の買いに加え、バリュー株投信、高配当利回り投信などの設定もあり、徐々に常軌を逸した割安状態から水準訂正の動きにある。以上に加え、最近になってこれら銘柄群に需給面で新たな追い風が吹きつつあることをご存知だろうか?

 2001年6月に成立した確定給付企業年金法により、厚生年金基金は「代行部分の返上」が認められることとなった。これまで、企業年金である「厚生年金基金」は、国営年金である「厚生年金」の一部を国に代わって運用し支給する「代行給付」という行為を行ってきた。「厚生年金基金の代行返上」とは、この厚生年金基金が行ってきた代行給付の部分を、本来担当してしかるべきである厚生年金に返すことを指す。

ここにきて代行部分の返上が認められた背景のひとつとして、運用難にともなう個別企業の負担を軽くする目的がある。昨今の低金利や株価低迷が災いし、厚生年金基金の運用は予定した利回りを下回るケースが多いが、この予定利回りを下回った部分については、企業自身が仕方なく穴埋めしている状況である。が、本来は国営年金である「厚生年金」の一部であるはずの「代行給付」部分についても穴埋めしなければならないとなると、個別企業の負担が理不尽に大きくなってしまうので、この点が配慮されたということである。

 そしてここからが注目すべき点である。厚生労働省は、厚生年金基金が国内株式のポートフォリオを代行返上する場合には、TOPIX連動型のポートフォリオ(いわゆるパッシブ・ファンド)のみ受け入れを行う方針を固めたのである。つまり基金が既存の年金運用の株式アクティブファンドを返上するためには、TOPIX連動型のパッシブ・ファンドに変更するべく、銘柄入れ替えを行わなければならなくなったということである。

 年金基金の株式アクティブ・ファンドの多くはTOPIXをベンチマークとし、運用は東証一部の時価総額の大きい主力銘柄を中心に行なわれている(ちなみに東証一部の時価総額全体に対する時価総額上位100銘柄のシェアは70%、上位200銘柄のシェアは80%前後である)。これをTOPIX連動型ファンドに変更するとなると、NTTドコモ、トヨタなどに代表される時価総額の大きな銘柄のウエイトを減少させる一方、これまで保有しているケースが少なかった時価総額の小さな細かい銘柄までも幅広く組み入れるオペレーションを行う必要がある。これまで50〜200銘柄前後でアクティブ運用をしていたファンドを、TOPIXの時価総額のウエイトに準じて1300〜1450銘柄前後のファンドに組替え、その上で代行返上を行う…・そんなイメージである。

 以上から、時価総額の大きい主力銘柄に新たに相応の売り圧力が発生する一方、これまで時価総額が小さいという理由で見向きもされなかった地味な銘柄には新たに買いニーズが発生する。結果として、行き過ぎた2極化相場の修正に追い風が吹く公算が高いと考えられるのである。2001年3月末時点の厚生年金基金の資産残高は58兆円、そのうちなんと30兆円近い金額が代行部分と考えられる!今後どの程度の数の基金が代行返上を行い、またその中で日本株の部分がどの程度の比率か、また株式アクティブファンドからTOPIX連動型のポートフォリオへの変更しなければならない額がどの程度かなどについては、現時点では不明な点も多い。しかしながらこの30兆円という穏やかならぬ金額が根っこにあるのは事実であり、株式需給面で少なからぬインパクトがあることは想像に難くない。

 なお確定給付企業年金法の実施は2002年4月であるが、システム整備に時間を要することから、代行返上の開始は2003年秋頃からの実施になる可能性が高いとのことである。「今すぐに」という話ではないことがわかるが、一方で相場は、既に明らかになっている材料は前倒しで織り込みに行くもの。バリュー株の需給は、代行返上の開始に先行して改善を見せるのではないか?PBR1倍割れ銘柄続出状態からの脱却の起爆剤となる可能性が期待される。要注目である。

* 今回の原稿は、大和総研投資調査部、壁谷洋和氏の6月19日付けレポート「確定給付企業年金法の成立と株式市場」をもとに、筆者の意見を加えてみたものです。




TOBに応募して儲ける戦略その2

2001.5.10



前回このコーナーで紹介したマイカルカード(8519)のTOBに、筆者の友人A氏が応募した。どのような結果になったかを報告したい。

@A氏の取った戦略


1、 マイカルカード株を3、500株、3、500円で購入し、TOBに申し込む。使用資金は3、500円x3、500株=12,250,000円

TOB発表翌日に、同株を3、500円で購入することが出来た。TOB価格が1株4、100円であるから、応募して抽選に当たれば、14%近い差益が得られる状況である。

2、 同時に、1、400株を3、500円で空売りする。

空売りの目的は、TOBに応募して抽選に外れた株式のためのヘッジ売り。ヘッジ売り株数については、以下の算式により、1、400株と推定。

予想される外れ率=(85%−51%)/85%=40%。3、500株の40%は1,400株。

但し:
85%=発行済み株式のうち、TOBに申し込まれるとA氏が予測した比率
51%=発行済み株式のうち、TOBにより取得される株式の比率

ATOBの結果と特徴


1、 得られた収益は676,500円(下表Cトータル損益を参照)、投下資本収益率で言えば5.52%の儲け(売買手数料、税金考慮せず)。もしも逆日歩がなかりせば、得られた収益は1,320,000円(下表Dを参照)、投下資本収益率10.8%の儲け。

今回のマイカルカード株のTOB申し込みに伴うトータル損益
備考 株数 買値 売値 損益
@TOBに当選した分 2,200 3,500 4,100 1,320,000
ATOBに落選し、売り建て玉に現渡した分 1,300 3,500 3,500 0
B発生した逆日歩の合計(494.75円x1,300株) -643,500
Cトータル損益 676,500
D仮に逆日歩が発生しなかった場合のトータル損益 1,320,000
(売買手数料、税金は考慮していない)


2、TOBの買取率は62.45%

買い付け株式総数15,494,000株に対し、24,809,990株の応募があった。従って、この差の9,315,990株が外れである。15,494,000株/24,809,990株=62.45%。同株の発行済株式数は30,380,000株であるから、発行済株式の81.6%が応募されたことになる。
TOBに申し込まれるとA氏が予測した比率は、当たらずとも遠からずと言うことになる。

2,4月3日から4月19日にかけ、ヘッジ売り玉に494.75円と強烈な逆日歩が発生。

逆日歩の状況は下表の通り。発行済株式の81.6%がTOBに応募され固定されたのであるから、日証金が株券の調達に困難をきたして大逆日歩が発生するのは当然だが、それにしても常軌を逸した額である。

前後のマイカルカード株の株価推移と逆日歩の発生状況
株価 前日比 逆日歩 備考
3月29日 3,090 0.00 引け後にTOBを発表
3月30日 3,540 450 0.00
3月31日 3,420 -120 0.00
4月1日 3,600 180 0.00
4月2日 3,490 -110 0.00
4月3日 3,620 130 0.05
4月4日 3,610 -10 10.00
4月5日 3,580 -30 1.00 この日から空売り禁止
4月6日 3,630 50 20.00
4月9日 3,600 -30 60.60
4月10日 3,620 20 20.60
4月11日 3,610 -10 20.60
4月12日 3,600 -10 20.60
4月13日 3,510 -90 52.20
4月16日 3,440 -70 47.60
4月17日 3,390 -50 144.00
4月18日 3,150 -240 48.50 TOB締め切り日
4月19日 3,130 -20 49.00 結果発表
4月20日 3,010 -120 0.00
4月23日 2,790 -220 0.00
4月24日 2,780 -10 0.00
4月25日 2,750 -30 0.00
4月26日 2,805 55 0.00
逆日歩合計 494.75


B感想


・ 投下資本収益率は5.52%。仮に逆日歩がなかりせば、10.8%。(いずれも売買手数料、税金を考慮せず)。今回のTOBの応募は、ヘッジ売り玉の逆日歩と戦いながらの、ギリギリの勝利であった。逆日歩を避けるため、TOB締め切り直前にヘッジ売りを行う戦略……これは奏効しなかった。株券の調達難から、表にあるように4月5日から空売り禁止の措置が取られているのである。

・ 今回の状況から、TOBの応募は確実に儲かると断言できる類のものとは限らないことがわかる。とはいえ、たとえ運悪く損勘定となっても損失は極めて限定的なのも事実である。知恵を絞ってやり方を工夫することで、コンスタントに応募を繰り返し、安定的に儲かるスキームを作る余地はありそうだ。では、どう「やり方を工夫する」のか……ここから先は、みなさん自らが考え、実行してください。私もあれこれ、妙案を自分で考えていきます。Good Luck!

**今回は内容が多く、また私自身も超多忙なため、要点だけの説明とさせていただきました。なお、前回、今回の内容については、メール等による質問には一切お答えしかねますので、あしからずご了承ください。**




TOBに応募して儲ける戦略その1

2001,4,18

マイカルカード(8519)のTOB


 筆者は昨年、自社株買いに絡んだ公開買付に応募して儲ける方法を、アツギ(3529)のケースを例に解説した。今回はマイカルカード(8519)を例に、TOB(Take Over Bid)に絡んだ公開買付に応募して、市場価格より高く売却する戦略を紹介する。市場価格よりかなり上で行うTOBは、コカコーラウエストジャパンによる三笠コカコーラのTOBに次いで今年2件目であるが、いずれも投資家にとって非常においしいプレゼントといえる。今後も同様なケースの発生が期待できよう。

 さて2001年3月27日、消費者信用会社の大手の一角である三洋信販は、マイカルカード(8519)の発行株式数の51%を株式の公開買付(TOB)により取得すると発表した。親会社のマイカルは、リストラ政策の一環である連結有利子負債の削減のため、マイカルカード株の売却を計画していることを従来から公表していた。TOB価格は1株4100円。TOBが発表される前日の3月27日終値が3040円であるから、市場価格よりも35%近く上で価格決定がされたことになる。TOB価格について三洋信販の小野社長は、「50%以上の株式を取得させてもらうことへのプレミアムと考えた」とコメントしているが、同社以外に買収に強い関心を示していたとされるGEキャピタルやシティ・グループなどに持って行かれないために買収価格を高く提示したのは想像に難くない。

 その後3月29日の日経新聞に、今回のTOBの公告が掲載され、申し込み方法等の詳細が明らかになった。公開買い付け代理人及び副代理人には、CSFB証券、DLJ Direct証券、国際証券が指定された。TOBの申し込み手続きについては、DLJ Direct証券か国際証券の口座にマイカルカード株の株券を保護預かり状態とし(公開買い付け期間内に購入し受け渡しを終了、あるいは他証券会社から株券を移管。両証券会社に口座がなければ、新規に設定する必要あり)、公開買い付け応募申込書(両証券会社が発行)に必要事項を記入し、郵送すれば事足りる。そんなに面倒なことではない。
公開買い付け期間は2001年3月29日〜4月18日だが、この期間中の株価は3600円を中心に小幅なレンジでの推移することが多かった。ゆえにTOB発表以降、この買い付け期間に向けマイカルカード株を購入し応募しても、抽選に当たれば14%近い差益が得られる状況であった。

  TOBに応募するリスク

 このようなおいしいTOBで一儲けするために、避けられないリスクが存在するのは言うまでもない。それは@TOBの抽選に外れるリスク、およびA外れに備えてヘッジした空売り玉に強烈に逆日歩が発生するリスクである。

 まず@について。前段で、「TOBに応募して抽選に当たれば、14%近い差益が得られることになる」と書いた。以前紹介したアツギ(3529)の公開買い付けは応募者全員が当選した大変幸運なケースであったが、このようなケースは稀であると考えたほうが良い。TOB公告によれば、目標の51%を上回る応募があった場合には、買い付けは比例配分になるという。一方で親会社のマイカルは、保有しているマイカルカード株1658万5700株(保有比率54.59%)をすべて公開買付に応募する旨を既に表明している。以上から応募株式すべてが買い付けされる状況ではないことは明らかであり、抽選に当たる率がどの程度になるかがポイントである。競争率は1.07倍(54.59%/51%)から1.96倍(100%/51%、株主全員が応募した場合)の範囲に収まるはずであるが、競争率1.96倍は現実的ではないだろう。TOBの実施を知らない株主や、そもそもTOBの仕組みすら理解していない株主も多数存在するはずであるからだ。推定は難しいが、競争率は1.07倍と1.96倍の中間値(1.52倍)からどのくらい上ブレするかといったところだろう。

 次にAについて。以上の状況から、「応募して外れると思われる株数をつなぎ売りしておけば、抽選外れリスクは概ね回避できるのではないか」というアイデアが浮かんでくるかもしれないが、それは誰しもが考えつくこと。信用売りが殺到し、株不足となり逆日歩が大量発生するのは火を見るより明らかである。

 逆日歩に目をつぶって抽選結果が出る直前に売りつなぐか、外れ株数がわかり次第、外れた現物を可及的速やかに売却するか、あるいは外れた分は当面保有すると割り切るか……・この部分の決定については、個別のTOBのケースをみながら、投資家自身が判断していくしかない。

  どのような方法でTOBの発生を知るか

 そもそもTOBの実施予定情報が入手出来なければ、TOB応募は始まらない。TOBの発生に対し常にアンテナを張っておくことが必要である。とはいっても、別に怪しげなインサイダー情報が必要というわけではない。日経新聞に掲載された公告に一通り目を通す習慣をつけておくことを徹底すれば、おおむね事足りよう。

 くしくも件のTOBに、筆者の友人A氏が応募している。どのような結果になったか、次回報告したい。



4月高のアノマリー
2001、3、1

3月に買い、5月に売る……日本株の投資は、このやり方で報われることが多いものだ。日本株には「1年12ヶ月の中で4月が最も上昇しやすい」という、4月高のアノマリーが存在するからである。そして今年に関してこのアノマリーの発生を妨げる理由は、現在のところ見当たらない。筆者は、自ら担当している特金ファンドの3月決算空け(3月20日前後であることが多い)には、株式ポジションを可及的速やかに増加させることが多い。そしてこの投資行動は多くの場合、運用の好調なスタートをもたらしてくれる。

 データを示そう。'87年から'99年まで、延べ13年間に4月の日経平均が陽線だった回数は9回、率にして75%と非常に高い。バブル崩壊以後のボックス相場だけをとれば、この傾向はもっと顕著である。93年から99年の延べ7年間に4月の日経平均が陽線だった回数は6回。率にすると83%である(月間変動が200円に満たないケースは除く)。そしてどちらの期間の統計においても、1年12ヶ月の中で、最も上昇発生率が高い月は4月なのだ。

アノマリーの発生は、多くの企業にとって決算月である「3月」に絡んでの株式の需給関係の変化に起因している。株式市場では2月から3月中旬にかけ、毎年決まったように株式需給悪化の時期が訪れるが、4月は3月とは逆に株式の買いニーズが発生し、需給が様変わりに好転する傾向がある。この傾向は拙著「ファンドマネージャーの株式運用戦略」で詳しく書いているが、機関投資家と金融機関の売買行動に起因する部分が大きい。彼らは本決算月である3月にかけ、持ち合い解消や益出しなどの売りを活発化させるのが常である。しかし3月の決算期末を前後して、株式需給は様変わりに好転する。決算に関連した売りニーズが峠を越す一方、新年度入りに伴う株式運用のスタートなどから株式の買いニーズが高まることで、相場が上昇に転じることが多いのである。

 さてこの4月高のアノマリー、昨年は不発に終わっている。昨年のアノマリー不発は、ITバブル崩壊圧力の方がアノマリーを発生させる株式需給の変化よりはるかに大きかったという理由により、80%は説明がつくと思われる。つまり4月高のアノマリーの要因が構造的に変わってしまったというわけでは決してなく、何事もなければ4月高は再現される可能性が高いと考えているわけだ。逆にいえば、この「何事もなければ」という点がポイントである。

行動指針:5月ゴールデンウイーク空けに売ることを前提に、3月中に買い場さがし。悪目買い。銘柄は投資家自身の判断に委ねたいが、比較的無難なのはバリュー系か。


・売買は自分の相場観で行ってください。株式投資は自己責任が原則です。



名目GDP四半期値の100億分の一が、日経平均の下値メドとの経験則

2001、2、8


 株式市場は、軟調な展開が続いている。このような状況ではファンドの委託者などから、「株価の下値はどの程度までか?」という質問を良く受ける。それがわかれば筆者も苦労しないわけであるが、それはともかく日経平均の下値メドを考える場合、興味深い経験則が存在するので紹介する。

ドイツ証券の下出ストラテジストによれば、日本株には「名目GDP四半期値の100億分の一が、日経平均の究極の下値メドになる」経験則が存在する。「経済の市場価値」ともいうべき株式の時価総額と、「一国の付加価値の総体」たるGDPとの間に一定の関係が存在するという考え方は、経済学的にも正統的な議論であり、これまでにもさまざまな研究がなされている。しかし、日経平均と「名目GDP四半期値の100億分の一」を比較し相関関係を考えるアプローチに取り組み結果を出したのは、私が知る限りにおいては下出氏が初めてではないかと思う。

図をご覧いただきたい。これは、1955年からこれまでの日経平均チャートに加え、その期間に対応する四半期(1〜3月、4〜6月、7〜9月、10〜12月)ベースの名目GDP値の推移を示したものである。但し四半期ベース名目GDPについては100億分の一した値、およびそれを2倍したものと4倍したものを示してある。たとえば2000年10〜12月期の名目GDP四半期予測値は126兆8000億円であるが、図ではこれを100億分の一し、1万2680円としている。ゆえにこの経験則によれば、当面の「日経平均の究極の下値メド」は1万2680円ということになる。



図を見ると、確かに1967年以降これまで、「名目GDP四半期値の100億分の一」が日経平均の究極の下値メドとなっている状況が見て取れる。かなりハマリが良い指標ということが出来よう。

加えて注目したいのは、例外的な時期を除き、日経平均は「四半期ベース名目GDPの100億分の一」からその2倍の「100億分の二」の間に収まるかたちで推移していたということだ。例外的な時期というのは、1958年から1961年にかけての過剰流動性相場、及び1980年代後半の内需株相場〜バブル相場の2つである。経験則からは、買われ過ぎの指標として「100億分の二」が使えると判断しても良さそうである。(買われ過ぎの指標を探すような時代の到来を期待したいものである。)

日経平均の銘柄入れ替えに伴う誤差の影響(2900円近くあるといわれる)など、この考え方に問題点がないと言うわけではない。しかしながらこれまでのハマリの良さに捨てがたいものがあるのも事実であり、経験則に重きを置いている投資家は、問題点を踏まえた上でこの考え方を有効に使ってほしいものである。筆者は、この経験則は長期投資に使用する場合においては、かなり有効性が高いものと判断している。

また、米国においても同様の傾向が存在しているようである。(但しこちらは未確認)

・売買は自分の相場観で行ってください。株式投資は自己責任が原則です。


相場における高値覚えを認知科学の視点から分析

2001.1.5

あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。

人間には性として、「投錨と調整(Anchoring and adjustment) のバイアス」と呼ばれる、予測を行う上での偏考性が備わっている。これは認知科学の概念のひとつであるが、投資家をしばしば確率論からみて合理的でない思考や行動に導く原因となるので、覚えておいた方がよい。

投錨と調整のバイアスとは、要約すると次の通り。人間が「不確実なこと」を予測する時は、まず一定の数値を設定してそれに投錨(anchoring)し、そこに微調整(adjustment)を加えて最終的な予測を決定することが多いが、このアプローチでは最終的な予測値は当初設定値に引きずられることになるため、合理的な決定が出来ない(当初設定値の微調整の範囲を出ない)ことになる……・という説である。たとえば「トルコの人口は6、000万人以上だろうか?以下だろうか?」と聞いてから「では何人だと思うか」と尋ねると、このときの推定値は、どうしても6、000万人に引きずられてしまうことになる。別の人に、「トルコの人口は2、000万人以上だろうか?以下だろうか?」と聞いてから推定させると、6、000万人以上だろうか?とたずねた場合より推定値はずっと小さくなってしまう。これは出題者がヒントだと言っているわけではないのに、聞かれた人が勝手に与えられた値を基準として、それを調整することで答えとしているためである。

話を相場に向けよう。相場において、高値覚え&安値覚えは百害あって一利なしといわれるが、この理由は高値覚え&安値覚えが、まさに投錨と調整のバイアスの悪影響そのものだからではないだろうか。次のケースを考えてほしい。投資家Aは銘柄Bを300円で買った後、株価が首尾良く上昇したために利食い売りを考えた。B銘柄の株価は一昨日の480円の高値の後、昨日の引け値は450円と下落している。「なるべく高いところを売りたい」との想いからA氏は、「480円とまでは欲張らないが、450円よりは少し上の465円で指値をしよう」と考えた。しかし株価はその後5日連続安し、売り指値に苦戦したあげく、売却できたのは結局は400円であった。A氏は不愉快この上なく、まるで損したかの如く気分となった。

A氏の行動は、投錨と調整のバイアスの点からは次のように説明できる。A氏はまず、直近の高値である480円に投錨している。これは480円の高値覚えと同意である。この株価に昨日の引け値450円を勘案して微調整を加えた結果、指値の465円が設定された。この465円という指値は、銘柄Bを買った時点で具体的に想定されているわけではない。465円に大した根拠があるわけではなく、480円の高値を見てなんとなく「まあこのぐらいならいいか」と決定された指値である。その後株価は5日連続安することになるが、その過程では高値の480円や下落過程の前日株価がどうしても意識されそこから大きく離れた指値を行うには抵抗があり、下落トレンドの中で指値の追っかけを繰り返すこととなった。

また利食いなのに損したかの如く不愉快な気分で終わったというのも、報われない話である。値幅の大小はともかく、客観的に見れば利食いに伴い運用資産を増加させているわけであるから、今回は間違いなく成功例なのである。にもかかわらず、高値覚えの影響から利食いの喜びよりも高値を売れなかった無念さが勝り、A氏は気分を害している。これも480円に投錨したことに起因する、感じ方の問題である。

さて、投錨と調整のバイアスという概念が知識として知られていたかどうかは定かではないが、これまでの相場の成功者は、このバイアスに伴う具合の悪さを十分に認識し、首尾良く対処していたと思われる。相場における売買注文は、指値をせずに寄り付き成り行きで行うべきであるといわれる。その理由の一つは、投錨と調整のバイアスによる悪影響を避けるためであると筆者は考えている。なぜそうなのか?…この点については、これまでの説明をもとに読者自身が自ら考えてみることをお勧めする。

      当面の投資指針

当面はナスダック次第でどちらにも大きく動き得る、波高き相場。