■目次

訳者まえがき                                                 1
献辞                                                         5
序文                                                         15
 本書の内容                                                 18
 本書の特徴                                                 18
 引用例について                                             20
 計算の簡略化                                               21
 頻出するウエブサイト                                       21

謝辞                                                         25
 プロのマネジャーに対する謝辞                               25
 学問的研究                                                 33
 特別な謝辞                                                 34


第1部 さあ始めよう                                         35

第1章 分析プロセス                                         37
 投資銘柄の選択                                             37
 株式の分析――最強の投資銘柄の絞り込み                     38
 速やかな予備選択テスト                                     38
 詳細な分析                                                 41
 売り時                                                     45
 まとめ                                                     46

第2章 リスクの評価                                         47
 株式の市場価値                                             50
 相場の方向                                                 52
 下げ相場での強い産業の見つけ方                             53
 企業に特有のリスク                                         54
 企業に特有のリスク(続)                                   58
 まとめ                                                     60

第3章 スクリーニング                                       61
 クイッケンの「グロース・スクリーン」                       63
 クイッケンの「バリュー・スクリーン」                       66
 MSNマネーの「不人気なバリュー株ファインダー」              69
 マルテックス・インベスターの「防弾株式」                   73
 スクリーニング法                                           76
 レディーメードの画面                                       76
 まとめ                                                     77


第2部 分析ツール                                           79

第4章 分析ツール1――アナリストの格付けと予想の分析       81
 アナリストとはどのような人々か                             82
 アナリストの格付け                                         83
 「売り」という2文字                                       84
 コンセンサス格付け                                         86
 「強い買い」は「売り」よりも儲かるのか                     88
 アナリストの数                                             90
 センチメント指標                                           92
 アナリストの予想利益                                       95
 予想利益のトレンド                                         97
 予想外の業績修正                                           101
 売上高の予想                                               103
 レギュレーションFD                                         104
 調査レポート                                               105
 まとめ                                                     106

第5章 分析ツール2――株式評価                             107
 インプライド成長率                                         108
 GARP                                                       113
 配当金                                                     116
 まとめ                                                     118

第6章 分析ツール3――目標株価の設定                       119
 目標株価の計算プロセス                                     120
 シスコシステムズ                                           128
 まとめ                                                     133

第7章 分析ツール4――産業分析                             135
 事業                                                       135
 産業の成長見通し                                           136
 産業の集中度                                               140
 細分化された新興市場で勝ち組企業を見つける                 142
 業界情報                                                   149
 まとめ                                                     149

第8章 分析ツール5――ビジネスプランの分析                 151
 序                                                         152
 注意すべき競争上の優位性(過大評価してはならない要因)      161
 ビジネスプラン・スコアカード                               164
 まとめ                                                     164

第9章 分析ツール6――経営陣の能力                         167
 役員と取締役の能力                                         167
 明朗会計                                                   169
 安定した利益成長                                           170
 経営陣の株式保有率                                         171
 まとめ                                                     173

第10章 分析ツール7――財務健全度の分析                     175
 財務健全度                                                 175
 財務面から見た問題企業の分類                               176
 問題の単純化                                               177
 低債務と過剰債務企業の分析                                 177
 現金燃焼企業の分析                                         179
 詳細な財務健全度テスト                                     186
 社債格付け                                                 205
 社債のリスク・プレミアムでリスキーな債務企業を特定する     210
 まとめ                                                     214

第11章 分析ツール8――収益性の分析                         217
 利益はどこからもたらされるのか                             217
 ヒストリカルな売上高の分析                                 221
 売上利益率の分析                                           226
 売上総利益率                                               226
 営業利益率                                                 228
 売上純利益率                                               228
 各利益率の比較                                             228
 売上総利益率                                               229
 営業利益率                                                 230
 利益率の分析                                               233
 営業利益率の比較                                           234
 間接費の分析                                               237
 収益性指標                                                 237
 限界ROA                                                    246
 キャッシュフローの分析                                     247
 EBITDAと営業キャッシュフロー                               255
 フリーEBITDA                                               257
 まとめ                                                     258

第12章 分析ツール9――赤信号を見抜く                       261
 売上伸び率のトレンド                                       263
 売上債権と棚卸資産                                         268
 棚卸資産                                                   272
 キャッシュフロー計算書                                     276
 退職年金収支                                               280
 黄信号                                                     281
 まとめ                                                     283

第13章 分析ツール10――大口株主の株式保有率                 287
 機関投資家の株式保有率                                     287
 インサイダーの株式保有率                                   290
 インサイダーの保有率の分析                                 290
 まとめ                                                     293

第14章 分析ツール11――株価チャート                         295
 トレンド                                                   295
 移動平均                                                   297
 下降トレンドは避ける                                       299
 リスクゾーン                                               300
 チャートの種類                                             301
 出来高                                                     302
 まとめ                                                     302


第3部 分析プロセス                                         303

第15章 投資銘柄の速やかな選択                               305
 「企業概要」                                               306
 「スナップショット・レポート」                             307
 株式評価レシオ                                             309
 「ハイライツ・レポート」                                   312
 評価レシオの比較                                           313
 うわさ情報のチェック                                       314
 まとめ                                                     316

第16章 バリュー投資のプロセス                               317
 景気の循環                                                 318
 正常化                                                     319
 バリュー投資の分析プロセス                                 319
 ステップ1――アナリストの格付けと予想の分析               321
 ステップ2――株式評価                                     323
 ステップ3――目標株価の設定                               326
 ステップ4――産業分析                                     331
 ステップ5――ビジネスプランの分析                         333
 ステップ6――経営陣の能力                                 335
 ステップ7――財務健全度の分析                             337
 ステップ8――収益性の分析                                 338
 ステップ9――赤信号を見抜く                               341
 ステップ10――大口株主の株式保有率                         342
 ステップ11――株価チャート                                 342
 売り時                                                     343
 まとめ                                                     345

第17章 グロース投資のプロセス                               347
 有望なグロース株                                           348
 グロース投資の分析プロセス                                 349
 ステップ1――アナリストの格付けと予想の分析               350
 ステップ2――株式評価                                     355
 ステップ3――目標株価の設定                               357
 ステップ4――産業分析                                     361
 ステップ5――ビジネスプランの分析                         364
 ステップ6――経営陣の能力                                 366
 ステップ7――財務健全度の分析                             368
 ステップ8――収益性の分析                                 369
 ステップ9――赤信号を見抜く                               374
 ステップ10――大口株主の株式保有率                         379
 ステップ11――株価チャート                                 380
 売り時                                                     381
 まとめ                                                     383

第4部 追加分析ツール                                       385

第18章 業績発表とコンファレンスコール                       387
 公表利益                                                   388
 まとめ                                                     390

第19章 詐欺・ペテン・株価煽りによる売り逃げを見抜く         391
 チャンス到来                                               391
 自転車操業                                                 392
 株価煽りは儲かるのか?                                     393
 こうした手口のチェック法                                   394
 まとめ                                                     395


付録A 財務諸表の読み方                                     397
 損益計算書                                                 398
 バランスシート                                             399
 キャッシュフロー計算書                                     401
 データの入手先                                             403
 見積りとGAAPの数字                                         404

付録B 分析スコアカード                                     407
 バリュー株分析スコアカード                                 408
 グロース株分析スコアカード                                 411

付録C 用語集                                               419

■訳者まえがき

 「マネーマネジャーやアナリストと呼ばれるプロの人たちは、一体どのような基準に基づいて投資判断を下しているのか」――こうした疑問を抱き興味を持つ株式投資家にとって、本書はうってつけの本である。  アメリカでは最近、アナリストの評判はかなり悪い。その理由は、2000年のハイテク株ブームのときにとんでもない高値の株式を買い推奨した、2001年には破たん寸前のエンロン株の買いを勧めた、顧客に買いを推奨しながら自分は保有株を売却して利益を得ていた……などである。
 一方、プロのマネーマネジャーの運用成績についても、チンパンジーが当てずっぽうに新聞の相場欄にダーツを投げて選んだ銘柄のポートフォリオの成績と大差はないという見方もある。確かにそうした事実があることも否定できない。しかし、たとえそうしたマイナスの事実があるにしても、その一事だけをもって、高度な専門知識と投資技術を持つプロフェッショナルのやり方を一蹴(いっしゅう)するのはあまり賢明ではないだろう。株式投資で安定した利益を上げたい投資家にとって大切なことは、プロの投資結果をうんぬんすることではなく、その高度な専門技術と知恵を盗んで自家薬籠中(じかやくろうちゅう)の物とすることであろう。
 本書は主にプロのマネーマネジャーが実践している株式分析・投資法をベースに、筆者の研究成果も盛り込んだ、有望なバリュー/グロース株を発掘するための手引書である。「バリュー投資家はグロース投資家に株式を売っている」(本書で紹介されたあるポートフォリオマネジャーの言葉)と言われるように、この2つの投資法はかなり異なっている。しかし、本書ではこの2つの異なる投資法を分かりやすく比較できるように、共通の分析ツールを使って検討されている。
 本書のもうひとつの特徴は、インターネット上のウエブサイトで簡単に入手できるデータを使って分析していることである。アメリカと日本ではヤフー、マルテックス・インベスター、MSNマネーなどの金融サイトの表示データはかなり異なるが、本書から学ぶべきものはそうしたデータをどのように分析して読み取るのかということである。自分の欲しいデータがそれらのウエブサイトになければ、ほかの多くの情報サイトから必要なデータを収集すればよい。
 本書のファンダメンタルズ分析は、グレアム(グラハム)とドッドの『証券分析』を彷彿(ほうふつ)とさせるものがある。精緻さという点では『証券分析』にはとても及ばないが、実用性という点では本書のほうがはるかに上である。読書の皆さまが本書に盛り込まれたプロの知恵を自分の株式分析・投資法に生かして利益を上げられるようになれば、訳者としてそれ以上の喜びはない。  邦訳の機会を与えてくださった後藤康徳氏(パンローリング)、編集・校正でご尽力いただいた阿部達郎氏(FGI)、ステキな装丁で本書を仕上げていただいた新田和子氏、皆さまのご協力に心からお礼申し上げます。

 2003年6月
                          関本博英

■序文

「数字で表されるものすべてが重要であるとは限らず、また重要なものすべてが数字で表されるわけでもない」――アルバート・アインシュタイン

 本書は株式を分析するための本である。私はこの本を執筆することで多くの経験を積んだ。本書を執筆し始めたころ、私は自分でこのテーマ(株式の分析)について多少は知っているだろうと思っていた。株式の分析について人に教え、多少なりともそれについて執筆し、何年間も実際に株式投資を実践してきたからである。著名・無名を問わず、さまざまな投資専門家のハウツー本を読みあさり、自分なりにそこに書いてあることを研究してきた。そしてそれらの戦略を実践して結果を詳細に分析してきたのである。専門家たちの投資法を統合し、自分なりの投資戦略を確立しようと努力してきた。  私は本書の執筆に当たって15人のプロのマネーマネジャーやマーケットアナリストらと会見した。執筆し始めたときはまさかこんなことをしようとは思わなかった。そのなかには、手堅い長期の資産運用でベンチマークを上回るパフォーマンスを上げている超一流のミューチュアルファンドのマネジャーもいた。このほか、私がほかのプロやその著作物から知った革新的な投資戦略の専門家であるアナリスト、そうした投資手法を自らの資金で実践しているマネーマネジャーもいる。これらのプロの多くは私との会見に快く応じてくれた。
 しかし、私は、彼あるいは彼女たちの内心の期待を裏切ったのかもしれない。おそらく彼らの多くは、私が、自分たちひとりひとりについてその幼年時代、仕事ぶり、オフィスの環境、投資手法などについてそれぞれ1章を割いて紹介すると思ったであろう。しかし、私はそうはしなかった。彼あるいは彼女たちとの会見の内容を、‥蟷駝段舛慮つけ方、△修譴蕕諒析法、G笋蟷の決定――の3項目にまとめてしまったのである。私は以前にもマネーマネジャーと会見したことがあるが、その話の内容は今回のようなレベルではなかったし、またこのようなテーマについての会見でもなかった。それはいわば職場実地訓練的なもので、私は最初の2人と会見したときは質問の適切さを欠くという点で大きなへまをやってしまった。それからはだんだんと彼らとの会見のコツも分かるようになった。
 しかし、株式投資のプロと会見するということは彼らの著書を読んだり、その講演を聞くこととはまったく次元の違うものだった。まず最初に気をつけなければならないのは、もし皆さんが彼らの著書をすでに読んでいたり、その投資手法を知っているのであれば、それに関する同じ質問を繰り返してはならないということである。その代わりに質問の内容をさらに突っ込んで、「買われ過ぎの状態をどのように判断されますか」「優れた経営者を見分け方は?」「その産業の最強企業の見抜き方は?」「あなたの売りシグナルとは?」――などの質問をぶつけるのである。
 話が思わぬ方向に向かってしまうことも少なくなかった。例えば、私はニコラス・ガーバーが懇切丁寧に説明してくれるまでは、マイケル・ポーターの「(企業競争における)5つの力モデル」についてはまったく知らなかった(それからほぼ1週間後のケン・シーアとの会見の席で同氏がそれについて触れたとき、私はそのコンセプトをよく知っていますよといった顔で対応できた)。ポーターのこの5つの力モデルは「分析ツール5――ビジネスプランの分析」のところで使わせてもらった。このほか、会見の内容があまりにも学問的で読者の関心が薄れてしまうのではないかと思われるものもあった。しかし、シカゴ大学ビジネススクールのジョゼフ・ピオトロスキー教授の学問的研究は、第10章の財務健全度の分析のところで使わせてもらった。
 そして私にとって最大の驚きはバリュー投資に関するものだった。私はバリュー投資についてはあまり知らなかったのでさまざまな本を読みあさったところ、そこには低PER株を購入すれば人気株よりも高いパフォーマンスが得られると書かれてあった。そこでさっそくそのようにやってみたが、その結果は必ずしも芳しいものではなかった。また低PERのボロ株を買ったところ、その後も下げ続けたこともあった。何人かのマネーマネジャーと会見したとき、彼らが実際にやっていることは私が読んだバリュー投資に関する本の内容とは似ても似つかぬものだということが分かった。彼らは低PERの株などはけっして買わないのである。彼らが買うのは一時的な業績不振で下げた優良株である。本に書いてあることと現実との何という違いだろうか。
 本書にはこれらプロのマネーマネジャーやアナリストが語ってくれた数多くの知恵が盛り込まれている。しかし、彼あるいは彼女たちが私に語ってくれた投資手法をひとつずつ取り上げなかったことは、その尽力に報いなかったという点で本当にすまないと思っている。本書では彼らのそうした投資手法はさまざまな分析ツールとステップにまとめられている。

本書の読者

 本書は濡れ手であわ的な本ではない。ここには魔法の投資法などについては書かれていない。私は、漫然とスクリーニングをしたり、CNBC(株式専門テレビ)を見るだけでは株でお金を儲けることなどできないと知っている人々のために本書を書いたのである。すなわちこの本は、時間と手間をかけて有望な銘柄を発掘し、リサーチしようという投資家を対象としている。

本書の内容

 私は素晴らしい考え方や投資手法が書いてある数多くの投資関連の書籍を読んだが、満足することはできなかった。というのは、そこにはそうした素晴らしい考え方を実践に移す方法が書いてなかったからである。本書はそうした本とは異なり、有望な投資銘柄を発掘、リサーチし、分析するための具体的な手順を踏んだ内容が盛り込まれてる。さらに投資の成功で欠かせない売り時の決定法も具体的に示されている。
 ここで紹介されているのは、バリュー株とグロース株の具体的な投資手法である。この2つの株式については同じ投資手法で対処してもよいと主張する専門家もいる。確かに割安のグロース株が存在することも事実であるが、やはりこの2つの株式の分析・投資法はかなり違っている。バリュー投資家が売っているときに、グロース投資家が買うからである。バリュー投資家とグロース投資家が同じ時期に同じ銘柄を買うことはあり得ない。ただその2つの投資手法が異なるとはいえ、本書では共通の分析ツールで検討した。

本書の特徴

 本書では従来の投資の常識やよく知られた手法などには触れられていない。ここで紹介される分析手法ではインターネットを利用する人であればだれでも簡単に入手できる情報を使っているが、次のような新しい観点に焦点を当てている。

■第1部 さあ始めよう

■第1章 分析プロセス

 株式投資で成功するには有望な銘柄の発掘、そのリサーチと分析に関する熟練したプロセスが不可欠である。本章ではそのひとつのアプローチを紹介し、以下の各章ではそれについてさらに詳しく検討する。その分析プロセスはベンチマークを上回る投資成果を上げているマネーマネジャーの投資原則に基づいている。それは唯一のまたはベストの投資手法ではないが、株式投資の定石であり、それに従えば読者の皆さんの成功率は確実に向上するだろう。まずはこれらのプロの投資手法をマスターし、次にそれらを自分の投資スタイルに合わせていけばよい。
 この分析プロセスとは、順に、投資銘柄の選択、不適切な銘柄の除外、残る有望な銘柄のリサーチと分析、ベストの投資銘柄の絞り込み、であり、それと同時に大切なことは明確な売りのルールを定めておくことである。

投資銘柄の選択

 投資銘柄の選択は、例えば、美容院に行くこと、隣人とのおしゃべり、雑誌の拾い読み、インターネット・サーフィンまたはテレビを見ること、などと同じでそれほど難しいことではない。日常生活のなかにそのヒントや情報は事欠かないため、不適切な銘柄を直ちに除外できる眼があれば、多くの株式を投資銘柄に含めてもかまわない。
 選別眼が向上すると有望な銘柄を絞り込むコツが分かってくるので、スクリーニングのテクニックを使って投資対象を広げてもよい。スクリーニングとは市場全体を見渡して、自分の投資基準に合致した銘柄を選択することである。それは効果的なツールであるが、有効に使いこなすにはまず最初にベストの投資銘柄を見つける方法を理解しなければならない。それについて本書ではおいおい述べていくが、手始めに第3章でそのいくつかの具体例を紹介している。ともあれ、皆さんはまず最初にこれから学ぼうとする分析テクニックの適用対象として、自分なりの考え方、友人の意見、テレビに出演している専門家、さらには著名な投資家であるウォーレン・バフェットなどの発言をヒントに多くの投資銘柄を選ぶことである。

株式の分析――最強の投資銘柄の絞り込み

 本書の分析プロセスは、いわば適者生存のアプローチを取っているため、不適切な銘柄はそのつど除外していく。この方法ではわずかな銘柄ではなく、例えば10〜20ぐらいの投資銘柄を選ぶのが最も有効である。投資銘柄のリサーチには多くの時間と労力が必要であり、不適切な銘柄が見つかったら直ちに除外する。これによって最も有望な銘柄だけにリサーチの対象を絞ることができる。くれぐれも不良な銘柄の除外をためらわないことである。悪い株式にかかわって貴重な時間を浪費してはならない。

速やかな予備選択テスト

 不良な銘柄を選り分けるには速やかな予備選択テストを適用する。不良な銘柄とはあらゆる投資家にとってマイナスの材料を持つ株式である。例えば、実際には売り上げや利益がまったくまたはほとんどないのに、それらのインチキ数字を公表するような企業の株である。このほか、単に自分の投資スタイルに合わない株式(例えばグロース投資家にとってのバリュー株など)なども不良な株式に含まれる。予備選択テストとは以下の項目に関するものである。

 以上のような速やかな予備選択テストによって不適切な銘柄を投資対象から外していくが、そのコツが分かるようになればわずかな時間で投資銘柄の取捨選択ができるようになるだろう。そして残りの銘柄を以下のような詳細な分析のふるいにかけていくのである。

詳細な分析

 ベストの投資銘柄を絞り込む方法は第16〜17章で詳述する。それらの選別法はかなり多岐にわたるが、そこで使われる分析ツールは第2部で紹介する同じ基準がベースとなっている。最強の投資銘柄の選択プロセスは11の分析ツールから成り立っている。例えば投資対象企業の財務健全度を分析するステップ7では、「分析ツール7――財務健全度の分析」が使われている。これらの各章では各ステップに沿って投資銘柄が分析され、その結果をバリュー/グロース投資というそれぞれの投資スタイルに適用する方法も述べられている。各分析ステップを効果的に進めるには、それぞれの分析ツールに習熟する必要がある。そして例えばステップ1のテストをクリアできない投資銘柄は直ちに除外して、ステップ2には進まないことである。

ステップ1――アナリストの格付けと予想の分析

 証券会社などに所属するマーケットアナリストは上場企業の評価やその投資格付けを行っている。詳細な分析の第一歩は自分の投資銘柄の市場における人気度を測るため、その銘柄に対するアナリストの投資格付け、その企業の予想売上高や利益などを分析することである。ベストのバリュー株とはアナリストが注目しないような銘柄である。一方、グロース株はアナリストがある程度注目している銘柄であるが、あまり強く買い推奨してもいけない。アナリストの注目度を測る目安は、第4章で紹介するセンチメント指標である。その企業の売上高と利益に関するアナリストの予想もバリュー/グロース株を選ぶひとつの目安になる。高い利益成長予想はバリュー株の必要条件とはならないが、グロース株にとっては絶対条件である。

ステップ2――株式評価

 現在の株価を正当化するために、将来も毎年75%もの利益成長率を維持しなければならないような企業の株をあなたは買うだろうか。ここでは投資銘柄の現在の株価が織り込んでいる利益成長率を検討する。これを調べることによって、その株式に十分な上値余地があるのかどうかが分かるだろう。

ステップ3――目標株価の設定

 バリュー投資家は投資銘柄について買い/売り目標値を設定すべきである。例えば、ある銘柄は有望に見えるが、現在の株価では十分な安全域(Margin of Safety)を確保するには高すぎるような場合、バリュー投資家としては事前に決めた買い目標値まで株価が下がるのを待つべきである。もしその株式がこの目標値まで下がらないときは買わない。そして購入したあとに株価が事前に決めた利食い目標値に達したらためらわずに手仕舞うことである。  こうした目標株価の設定はバリュー投資の絶対条件であり、またグロース投資家にとってもこうした目標値の設定は有効であろう。こうすれば2000〜2001年に見られたような株式の総崩れといった最悪の事態を乗り切ることができる。そのためのテクニックが「分析ツール3――目標株価の設定」である。

ステップ4――産業分析

 その企業が、今後も成長が持続する成長産業に属していれば、その株主にも大きな利益をもたらすだろう。このため、投資銘柄の産業の利益成長見通しやその企業の成長を大きく左右するような要因を分析することも大切である。しかし、いくらそうした成長産業の企業でも、間違った銘柄を選んだのでは努力も無駄になってしまう。このため、成長産業のリーディング企業の株式を選択すべきである。

ステップ5――ビジネスプランの分析

 マイクロソフトは世界有数の高収益会社であるが、その一方でゲートウェイは苦戦している。その明暗を分けているのはその企業のビジネスプランである。ビジネスプランの分析によって自分の投資銘柄が未来のマイクロソフトか、それともゲートウェイのどちらなのかが分かるだろう。

ステップ6――経営陣の能力

 多くのマネーマネジャーはその企業の経営陣の能力を重要な分析プロセスの一環としている。皆さんは投資対象企業の工場を訪れてその幹部と長話をする時間もないだろうし、またその必要もない。役員や取締役の略歴を調べ、その企業の会計手法など重要な項目をチェックするだけでその経営陣の能力を評価できる。

ステップ7――財務健全度の分析

 投資家は保有株の企業が倒産すれば大きな損失を被る。しかし、大きな損失は何も倒産だけによってもたらされるのではない。単なるうわさが株価暴落の引き金になることはけっして珍しいことではない。アナリストといえども、ある銘柄を買い推奨するときに、その企業の財務力をいつも念入りにチェックしているわけではない。エンロン(エネルギー)、Kマート(小売り)、グローバル・クロッシング(通信)など、アナリストの買い推奨銘柄で最近破たんした企業も少なくない。こうしたアナリストの投資推奨の犠牲となってはならない。それには本書で紹介する有効な分析ツールを使って、投資対象企業の財務力を詳しく分析しなければならない。

ステップ8――収益性の分析

 株価とは最終的にはその会社の利益を反映したものである。投資対象企業の収益が上向きまたは下向きなのかを見るには、その売上高や収益のトレンドを分析する必要がある。これによってその企業は真の利益を出しているのか、それとも数字上だけの利益なのかが分かるだろう。

ステップ9――赤信号を見抜く

 予想外の悪決算や経営陣による予想利益の下方修正などで、保有株が40%も暴落したらそれこそ悲惨である。こうした事態も何の前触れもなく突然起こることはまれである。ここでは株価暴落の前兆となる赤信号の見抜き方を紹介する。

ステップ10――大口株主の株式保有率

 便利なインターネットが普及したとはいっても、ミューチュアルファンドやその他の機関投資家が、あらゆる株式について個人投資家よりも豊富な情報を持っていることに変わりはない。それゆえ、自分が正しい方向を向いているのかどうかを確認するうえで、これら機関投資家の株式保有状況の分析は極めて重要である。
 一方、役員や取締役、大口株主などのインサイダーもその企業の多くの株式を保有しているが、これらインサイダーの持ち分がかなり多いのは要注意である。機関投資家の保有率をよくチェックして、投資銘柄にとって機関投資家やインサイダーの株式保有率が好ましい状態にあるかそうでないかを見極める必要がある。

ステップ11――株価チャート

 皆さんが信じるかどうかは分からないが、その企業の内情に通じたインサイダーが自社株を大量に買い集めたり、または保有株を売り逃げるチャンスが来るまで、一般投資家に大きな影響を及ぼす重要な情報を隠しておくことはけっして珍しいことではない。そのようなとき、何が起こっているのかを知る唯一の手掛かりは株価の動きだけである。こうした理由から、株式を購入する前にはその株価をよくチェックすべきである。ここでは買ってもよい銘柄の株価チャートとはどのようなものなのかを検討する。

分析スコアカード

 章末の付録Bにはバリュー/グロース投資家向けのそれぞれの分析スコアカードを掲載した。それをコピーして投資銘柄の分析結果を各項目に記入する。そうすれば自分でも驚くほど株式の分析力が向上したのが分かるだろう。

売り時

 私にとって株式の売り時は買い時よりも難しい。というのは、保有株に評価益が出るとうれしくなって、もっと儲かるのではないかと売り渋ってしまうからである。そしていったん売り時を逃すと売りのチャンスはさらに遠のいてしまう。その株式を保有しているかぎりマネーゲームは続いており、株価はまたもとの水準に戻るのではないかとつい期待してしまう。ここで売るとこれまでの評価益が大きく吹き飛んでしまうからだ。「明日まで様子を見てみよう」と売り時は日に日に延びていく。そうこうしているうちに評価益は評価損となり、その金額も日々大きくなっていく。こうならないためにも、厳格な売りのルールを決めておくことである。有望なバリュー/グロース株の選択法を扱った章では、こうした売り時の詳しい決定法も紹介する。
 一般にグロース投資の売り条件はバリュー投資のそれとは異なる。例えば、利益の大幅な下方修正などはグロース投資にとっては絶対的な売り条件であるが、バリュー投資にとってはそうではない。一方、大きな上向きの株価チャートはバリュー投資の売り条件となるが、グロース投資にとっては絶好の買い条件である。しかし、ファンダメンタルズの悪化、利益の大幅な下方修正、大規模な企業買収などはバリュー/グロース投資のいずれにとっても売り条件となる。

まとめ

 株式投資で成功するには、有望な銘柄の選択、そのリサーチ、買い/売り時の決定という、本書で紹介する一貫したアプローチに習熟することである。読者の皆さんは今そのスタート地点に立っており、これからその第一歩を踏み出すのである。



 
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