目次
翻訳によせて
謝辞
イントロダクション
執筆者一覧
訳者あとがき

■目次
翻訳によせて 1 謝辞 7 イントロダクション 9 執筆者一覧 13 第1章 リスク・バジェッティング:リスク管理新手法の探究――経験者の視点から 27 レスリー・ラール   キャピタル・マーケット・リスク・アドバイザーズ 第2章 金融危機とリスク管理 63 マイロン・ショールズ   オーク・ヒル・キャピタル・マネジメント 第3章 リスク・バジェッティング――ファンド全体でのアクティブリスク管理 79 カート・ウィンクルマン   ゴールドマン・サックス・インベストメント・マネージメント 第4章 ヒストリカルデータにひそむ危険性 123 アンドリュー・B・ワイズマン   日興證券インターナショナル ジェローム・D・アバナシ−   ストーンブルック・ストラクチャード・プロダクツLLC 第5章 ファンドマネジャーのためのVaR 147 クリストファー・L・カルプ   CPリスク・マネジメント ロン・メンシンク   ウィスコンシン州投資委員会 アンドレア・M・P・ネビス   CPリスク・マネジメント 第6章 年金基金とファンドマネジャーのための、VaRを使ったリスク・バジェッティング 179 ミッシェル・マッカーシー   ドイツ銀行グループ 第7章 アクティブ・ファンドマネジャーのためのリスク・バジェッティング――「グリーン・ゾーン」を用いたリターンの質の評価 229 ロバート・リッターマン ジャックス・ロンガーステイ ヤコブ・ローゼンガーテン カート・ウィンクルマン   ゴールドマン・サックス・インベストメント・マネジメント 第8章 リスクへのこだわり 275 エミー・B・ハーシュ   パラダイム・コンサルティング・サービス 第9章 マーケットニュートラル投資戦略 303 ジョセフ・G・ニコラス  HFR社 第10章 システムインフラの課題――情報技術とデータベースの効果的な利用法 417 ガブリエル・ボウスビブ   ロイター・フィナンシャル 第11章 年金基金におけるリスク・バジェッティング 467 レオ・デ・ビーバー ウェイン・コズン バーバラ・ズバン   オンタリオ州教職員年金基金理事会 第12章 条件付きリスク許容度の下でのリスク・バジェッティング 495 マイケル・デ・マルコ トッド・E・ペッツェル   パトナム・インベストメント・アンド・コモンファンド・グループ 第13章 ファンドマネジャーにとってのVaR 543 ステファン・リース   ベアリング・アセット・マネジメント 訳者あとがき 557

■翻訳によせて

 本書は、レスリー・ラール編『Risk Budgeting――A New Approach to Investing』を全訳したものである。ここでは、リスク・バジェッティングに関して、実務家がそれぞれ専門の立場から、その有用性や実用化に際しての留意点などについて見解を述べている。

 改めて申し上げるまでもなく、日本における企業年金は、退職給付会計の導入、確定拠出年金制度の発足などを背景として、現在「年金新時代」ともいうべき制度発足来の一大変革期にある。将来の年金給付原資確保を目的とする年金資産運用においても例外ではなく、母体企業を含めた個々の企業年金が自ら負担し得る「リスク」とのバランスのなかでポートフォリオを構築するというアプローチが、急速に一般化してきている。今や、企業年金は母体企業の一事業部門と同様、またはそれ以上の存在であり、年金が抱えるリスクは企業自身のリスクである、との認識が広まりつつある。またそうした意味から「年金スポンサーにとって第一の役割はリスク管理者である」との言葉も聞かれるようになってきた。厚生年金基金連合会においても、リスク管理研究会で議論を重ねられ、厚生年金基金におけるリスク管理のあり方について先ごろ、第二次報告書を公表されたところである。
 年金資産運用においては、リスク管理が重要な命題になってはいるものの、実務の現状は伝統的なものが中心となっているものと考えられる。そうしたなかで最近登場してきたのが、リスク・バジェッティングという考え方である。
 リスク・バジェッティングは、資産や運用スタイル・手法の違いを問わず、リスクを横断的に把握し、限度を設定、それぞれに割り当てるというコンセプトである。政策アセット・ミックスのリスクと、アクティブ運用のリスクを同一の指標で計測できるなど、非常に分かりやすいのが特徴である一方で、実務適用における課題も指摘されている。
 本書では、こうした状況をも踏まえ、リスク・バジェッティングを中心としたリスク管理に関する最先端の考え方を、年金スポンサー、運用マネジャー、コンサルタントなどの実務家が網羅的に紹介している。原書にはリスク・バジェッティングに関する調査研究を進める過程で出合ったのであるが、弊社で翻訳を行うことにしたのは、その内容を広くご紹介することが日本における年金新時代のリスク管理を考える際の一助になるに違いないと考えたからである。本書を契機に、企業年金におけるリスク管理に関する議論がさらに深化すれば、望外の喜びである。
 企業年金関係者の皆さまに、またリスク管理に関心がある皆さまに、ぜひともお読みいただきたい。

 2002年3月
        三菱信託銀行株式会社常務取締役 矢ケ崎隆二郎


■謝辞

 本書の編集者として私が受ける全収入は、フィッシャー・ブラック記念財団(FBMF)に捧げる。故フィッシャー・ブラック氏と彼の同僚であるマイロン・ショールズ氏が新時代を切り開く研究をしなければ、このような先進的な内容を本書で解説することはできなかったからである。また、フィッシャー・ブラック氏、マイロン・ショールズ氏、そして私自身(寄稿者の何人かも同様に)も享受した、マサチューセッツ工科大学スローン校の最高レベルの学問や研究成果があったからこそ、リスク管理や金融工学といった学問がここまで発展し、今なお進化し続けていることをここに書き添える。

                     レスリー・ラール


■イントロダクション

       レスリー・ラール
       キャピタル・マーケット・リスク・アドバイザーズ社

 私は、本書の編集依頼を受けたことを光栄に思う。本書は、これまでのところ「リスク・バジェッティング」というテーマを取り扱った唯一の本であり、リスク・バジェッティングを実践したうえでの注意点や持ち上がった問題点について書き記したものだからである。お読みいただければ分かるとおり、本書の出版に貢献した最先端のプレーヤーから見ても、リスク・バジェッティングのアートとサイエンスは、今なお進化し続けている。
 また、リスク・バジェッティングへの「転向者」が増える一方で、今なお懐疑的な見方をする人も多いことを認識しておかなければならない。以下は、そのような批判の一例である。

 ●「リスク調整後リターンを気にしてもしょうがない」
 ●「必要な前提条件がとても多く『私の株式ポートフォリオは常に年間5%稼ぐ』のほうが、明解で分かりやすい」
 ●「リスクはそれほど重要ではない。本当に重要なのは、私の運用マネジャーがベンチマークをアウトパフォームするか否かである」
 ●「リスク測定手法は、そもそも不正確であり、使い物にならない」

 こうした議論はまったく意味がないというわけではないが、私たちのようなリスクのパイオニアが、開発・進化を遂げようとして立ち向かってきたさまざまな議論とさして違いはない。
 アセット・アロケーションは、慣れ親しんでいる手法である。一方、リスク・バジェッティングには新しい考え方が求められる。そのため、新たな課題が持ち上がるのである。

 本書は2000年夏に、リスク・バジェッティングやリスク管理といった分野における最先端の考え方について、機関投資家や年金基金が、さまざまな角度から評価できるように編集されたものである。私は、本書に採り上げたコンセプトの多くが、今後飛躍的に発展していくものと十分に期待しており、また本書がその発展の重要な礎になることを確信している。
 本書の内容は以下のとおりとなっている。
 第1章では、私がこれまでのリスクに対する見方を紹介し、投資のリスク管理について一般的な概論を述べる。  第2章では、1997年に栄光のノーベル賞を受賞し、ソロモン・ブラザーズのデリバティブ部門やLTCMでの経験が豊富なマイロン・ショールズ氏がリスクや危機管理について自身の考えを述べる。
 第3章では、カート・ウィンクルマン氏が、十分に確立しているポートフォリオ理論の原理をどのようにファンド全体のリスク管理に適用できるかについて述べる。
 第4章では、アンドリュー・ワイズマン氏とジェローム・アバナシー氏が、ヘッジファンドの本当のパフォーマンス特性を描き出す、扱いやすいモデル(GMDモデル)を紹介している。
 第5章では、クリストファー・カルプ氏、ロン・メンシンク氏、アンドレア・ネビス氏が、VaR(バリュー・アット・リスク)を運用マネジャーのリスク管理に応用するに当たっての考え方を述べている。運用マネジャーの取っているリスクが、望んだものなのか、必要なものなのか、予定したものなのかを検証するツールとして、VaRは非常に重要であると評価している。
 第6章では、ミッシェル・マッカーシー氏が、リスク・バジェッティングやVaRを、伝統的な投資リスク管理の実践と区別して考察している。後者には、アセット・アロケーションや標準偏差のような伝統的な投資リスク測定の実践も含まれている。本章では、新しい技術を既存の投資プロセスに組み入れる、独創的で価値のある見方を学ぶことになるだろう。
 第7章では、ロバート・リッターマン氏、ジャックス・ロンガーステイ氏、ヤコブ・ローゼンガーテン氏、カート・ウィンクルマン氏が、ファンドマネジャーの役割について論じる。ファンドマネジャーは顧客に代わってリスクを取っており、その適切な範囲を「グリーン・ゾーン」と呼んでいる。
 第8章では、エミー・ハーシュ氏が「リスクへのこだわり」について、観察によって得た情報と経験を述べ、第9章では、ヘッジファンド・リサーチ社の創設者兼社長であるジョセフ・ニコラス氏が、マーケットニュートラル投資戦略のリスクについて述べる。
 第10章では、運用業務に携わるさまざまな関係者にリスク情報が素早く伝わるために必要なシステムの配備、利用法について、ガブリエル・ボウスビブ氏が見解を述べる。
 第11章では、レオ・デ・ビーバー氏、ウェイン・コズン氏、バーバラ・ズバン氏が、オンタリオ州教職員年金基金でリスク・バジェッティングを実践し、学んだことを述べる。当年金基金は、いち早く資産クラス間のリスク測定や比較にVaRを用いている。
 第12章では、マイケル・デ・マルコ氏が、リスク・バジェッティングを採り入れることは、投資家にとってリスク管理を学ぶ良い機会になるだろうという見解を述べる。なぜなら、重要な前提条件の多くは組織の投資哲学に深く浸透しているため、受託者や運用スタッフがその前提条件にもはや何の疑問も持たなくなっているからである。
 そして最後に、第13章では、ステファン・リース氏が、伝統的な運用マネジャーのリスク管理手法であるトラッキングエラーを捨て去り、代わりにVaRを利用すべきであるという意見を述べる。

【関連書籍】
天才たちの誤算 ドキュメントLTCM破綻LTCM伝説

■執筆者一覧

 レスリー・ラール(Leslie Rahl) 第1章
 リスク管理コンサルティング会社、キャピタル・マーケット・リスク・アドバイザーズ社(Capital Market Risk Advisors, Inc)社長。1991年にコンサルティング会社を設立するまで、シティバンクに19年間勤務し、うち9年は北米地域デリバティブ・グループの責任者を務めた。1997年には『ユーロマネー』誌の「ファイナンス部門・女性トップ50」に入り『リスクマガジン』の5周年、10周年記念号でも紹介されている。また、著作も数多くある。その他の経歴としては、5年間国際スワップ・デリバティブ協会のディレクターを務め、現在は国際フィナンシャル・エンジニア協会やフィッシャー・ブラック記念財団のボード・メンバーである。さらに、マサチューセッツ工科大学スローン経営学大学院のフィナンシャル・エンジニアリング・プログラムの諮問委員会でボード・メンバーになっている。マサチューセッツ工科大学でコンピューター科学学士を、同大学スローン経営学大学院でMBAを取得。

 マイロン・ショールズ(Myron Scholes) 第2章
 オーク・ヒル・キャピタル・マネジメント(Oak Hill Capital Management)の共同経営者で、スタンフォード大学経営大学院では、ファイナンスのフランク・E・バック名誉教授である。また、ブラック・ショールズのオプション・プライシング・モデルの共同開発者でもある。このモデルは、世界の金融機関がリスクを評価、管理するときに用いるリスク管理ツールの基礎となっている。この功績によって、1997年にノーベル経済学賞を受賞した。
 彼は、スタンフォード大学経営大学院のファイナンスのフランク・E・バック教授であるだけでなく、同大学フーバー研究所では、シニア・リサーチ研究員を務めた。また同大学経営大学院で、ファイナンスのエドワード・イーグル・ブラウン教授を務め、さらにマサチューセッツ工科大学スローン経営学大学院では、ファイナンスのアシスタントや準教授も務めた。その他、彼は数多くの金融機関や企業、取引所でコンサルティングを行うだけでなく、世界各地の機関で講演会を行っている。オーク・ヒル社に移籍する前は、ロング・ターム・キャピタル・マネジメントの社長兼リミテッドパートナー、ソロモン・ブラザーズではマネジングディレクターやリスク管理委員会のメンバーを務めた。また、債券デリバティブセールス・トレーディング部門の共同責任者であったとき、デリバティブの仲介業務を行う子会社、ソロモン・スワップ・コーポレーションの創設に貢献した。シカゴ大学で博士号を取得。また、パリ大学、マックマスター大学、そしてルーバン大学で名誉博士号を取得。

 カート・ウィンクルマン(Kurt Winkelmann) 第3章、第7章
 1993年にゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)に移籍し、現在は法人調査・戦略部門のバイス・プレジデント兼責任者。ここでは、機関投資家の関心事となるような戦略的な問題を採り上げている。ゴールドマン・サックスに移籍する前は、5年間ロンドンの債券リサーチグループに所属し、グローバル債券ポートフォリオ戦略の責任者を務めた。著作や共著に『マーケット・エクスポージャの管理(Managing Market Exposure)』(1996年)『「共分散行列の推定(Estimating Covariance Matrices)』(1998年)『ブラック・リッターマン・モデル−3年の実践経験(Using the Black-Litterman Model: Three Years of Practical Experience)』(1998年)がある。また、インベストメントテクノロジー業界でも業務経験があり、ファーストバンク・システムズ社ではエコノミストを担当した。マカレスター大学で文学士を、ミネソタ大学で経済学博士号を取得。

 アンドリュー・B・ワイズマン(Andrew B. Weisman) 第4章
 日興証券インターナショナル(The Nikko Securities Co. International, Inc)のチーフ・インベストメント・オフィサーで、アセット・アロケーションや資産管理、ポートフォリオ分析、定量的リスク管理、商品開発および自己勘定トレーディングの責任者を務める。そして、同社やほかの資産運用会社が使用する分析ツールやトレーディング手法といったリスク管理システムを開発した。そのなかにはカーギル・フィナンシャル・サービス向けに開発されたコールオプション連動型信託(COLT)も含まれる。日興へ移籍したのは、山一インターナショナルでストラクチャード・プロダクツ・グループのシニア・バイス・プレジデント兼マネジャーのときである。それ以前は、バンカース・トラストの自動通貨トレーディングチームで責任者を、クレディ・ド・ノール・アンド・アメリカから受託した通貨ファンドの運用責任者を、コモディティーズ・コーポレーションでシニア・アセット・マネジャーを務めた。コロンビア大学で哲学・経済学士を取得。同大学で国際問題、公共問題を研究し、国際分野で修士号を取得した。また、同大学経営大学院で博士号取得の特別奨学生となり、博士号の全課程、全試験を終了した。

 ジェローム・アバナシー(Jerome Abemathy) 第4章
 ニューヨークに拠点を置くオルタナティブ投資会社、ストーンブルック・ストラクチャード・プロダクツ(Stonebrook Structured Products, LLC)の共同経営者。ボラティリティ・ヘッジ・プログラムや外国為替プログラム、エンハンスド・トレンド・プログラムなど、ヘッジファンド商品の開発責任者でもある。ストーンブルック社を創立する以前は、ニューヨークにあるヘッジファンド、ムーア・キャピタル・マネジメントで調査局長の職にあった。調査局長時代は、オフショア・デリバティブ・ファンド、IMSグローバル気留人僖泪優献磧爾函調査・研究部門の育成・指導責任者を兼務した。ムーア・キャピタル移籍前は、メリルリンチ、ピアース、フェナー・アンド・スミスでバイス・プレジデント、ニューヨークのFCMではブローカー・ディーラーをしていた。FCMではトレーディング分析グループの管理者で、定量的手法に基づいた自己勘定ディーリングを担当。トレーダー兼調査担当者としては、モルガン・スタンレーのデリバティブ・トレーディング・グループで最初に経験を積んだ。そこでデリバティブ、通貨市場におけるクオンツ手法の開発、運用を担当した。ワシントンDCのハワード大学電気工学理学士、マサチューセッツ工科大学電気工学コンピューター科学で科学修士および博士号を取得。

 クリストファー・L・カルプ(Christopher L. Culp) 第5章
 シカゴのCPリスク・マネジメント(CP Risk Management LLC、以下CPRM)ではリスク管理部門のディレクター、シカゴ大学ではファイナンスの準教授を務める。CPRMでは、金融リスクの管理、すなわちリスク調整後の資本配分やALMにかかわる諸問題についてコンサルティングを行っている。それ以前は、リスク・マネジメント・コンサルティング・サービスの代表、シカゴ連邦準備銀行規制監督部門で準主任調査官、GTマネジメント・アジアでリサーチ・エコノミスト、トレードリンク社で通貨オプションのトレーディング・ストラテジストを歴任した。デリバティブやリスク管理、金融における規制など、幅広い分野で著作があり『デリバティブ・クォータリー』誌の編集長も担当している。また、ワシントンDCのコンペティティブ・エンタープライズ・インスティテュートでは、金融規制のシニア研究員をしている。シカゴ大学経営大学院でファイナンス博士号、ジョンズ・ホプキンス大学で経済学士を取得。

 ロン・メンシンク(Ron Mensink) 第5章
 ウィスコンシン州投資委員会(The State of Wisconsin Investment Board)における定量分析担当のディレクター。アセット・アロケーションやパフォーマンス測定、リスク計測に関する分析業務を管理している。ウィスコンシン大学でファイナンスのMBAを取得、米国証券アナリスト協会会員。

 アンドレア・M・P・ネビス(Andrea M. P. Neves)第5章
 シカゴに拠点を置くCPリスク・マネジメント社(CP Risk Management, LLC、以下CPRM)のバイス・プレジデント。金融リスク測定やボラティリティ分析、経営リスクコンサルティングを専門とする。CPRM移籍前は、リスク・マネジメント・コンサルティング・サービス社のシニア・テクニカル・コンサルタントであった。また、デリバティブ取引をめぐる訴訟をサポートする会社に所属したほか、フューチャーズオプション市場研究センターでリサーチを担当した経歴を持つ。加えて、VaRや資産管理といったリスク管理に関する共著がある。シカゴ大学経営大学院で、役員教育プログラム・リスク管理コースの講師も務めている。物理学士、経済学士であるほか、現在、シカゴ大学でファイナンスのMBA取得を目指している。

 ミッシェル・マッカーシー(Michelle McCarthy) 第6章
 ドイツ銀行グループ(The Deutsche Bank group)のマネジングディレクターで、機関投資家向けサービスを行うリスクオフィス部門リスク測定サービス局(かつてはRAROC2000として知られていた)の責任者。バンカース・トラストとの合併によってドイツ銀行へ移籍した。1986年にバンカース・トラストに勤務して以来、さまざまな業務を経験している。IQフィナンシャル・システムのリスクプロダクト・マネジャーや資産管理部門のリスク管理責任者、社内リスク管理グループの欧州リスク管理責任者、金利、株式、通貨デリバティブのマーケティングおよびトレーディングなど。ハーバード大学で博士号を、ワシントン大学で学士を取得。

 ロバート・リッターマン(Robert Litterman) 第7章
 ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs & Co)のクオンツ部門ディレクター。故フィッシャー・ブラックと、ブラック・リッターマン・モデルを共同開発した。このモデルは、アセット・アロケーションをするときの重要なツールとなっている。資産運用部門の前は、1994年以来、企業リスク部門の責任者を務めた。OT&F部門の前は、8年間債券部の調査部門に所属し、故フィッシャー・ブラックと調査・モデル開発グループを共同管理していた。2人は、2つの論文『アセット・アロケーション−投資家予測と市場均衡の結合(Asset Allocation: Combining Invester Views with Market Equilibrium)』(1990年)『株、債券、為替を使ったグローバル・アセット・アロケーション(Global Asset Allocation With Equities, Bonds, and Currencies)』(1991年)を共著している。また、カート・ウィンクルマン(Kurt Winkelmann)との共著に『マーケット・エクスポージャの管理(Managing Market Exposure)』(1996年)があるほか、著作に『ホット・スポットとヘッジ(Hot Spots and Hedges)』(1996年)がある。さらにウィンクルマンとの共著に『共分散行列の推定(Estimating Covariance Matrices)』(1998年)がある。これらに加え、ゴールドマン・サックスの企業リスク部門に在籍中の1998年に、SBCウォーバーグ・ディロン・リードと共同制作で『リスク管理の実践(The Practice of Risk Management)』を著した。ゴールドマン・サックスに勤務する1986年以前は、ミネアポリス連邦準備銀行調査部門のアシスタント・バイス・プレジデント、マサチューセッツ工科大学経済学部の準教授であった。スタンフォード大学で理学士を、ミネソタ大学で経済学博士号を取得。

 ジャックス・ロンガーステイ(Jacques Longerstaey) 第7章
 JPモルガンからバイス・プレジデントとしてゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)へ移籍。その後ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント(GSAM)のリスク管理部門に所属し、ヤコブ・ローゼンガーテンと共に共同責任者となった。後にマネジング・ディレクターに就任。JPモルガン時代は「リスク・メトリクス」の開発責任者であった。また、欧州、中東、アフリカ滞在中は、リスク管理の顧問を担当し、リスク管理技術やプロセスを最大限導入できるように、多くのクライアントと共同作業を行った。このほか、JPモルガンでは債券インデックス部門を運営し、経済、債券戦略上の展望に基づき、ベネルクス(ベルギー、オランダ、ルクセンブルクの3国)を同インデックスに採用した。ルーバン大学で経済学士を取得。

 ヤコブ・ローゼンガーテン(Jacob Rosengarten) 第7章
 リスク・マネジメント社(Risk Management Group)資産管理部門のマネジング・ディレクター兼共同責任者。それ以前は、コモディティーズ・コーポレーション(1997年ゴールドマン・サックスが買収)に1983年まで在籍。同社で会計、アシスタントコントローラーおよびコントローラーのディレクターを務め、その前はリスク分析、クオンツ分析のディレクターを担当した。この間、各ポジション、つまり、フューチャーズやデリバティブ、株式、エマージング市場など、多様な商品を取引する運用マネジャーやポートフォリオマネジャーのポジションについてリスク測定を行うグループを指揮した。同社に移籍する前は、アーサー・ヤング社で監査役を務めた。ブランダイス大学で経済学士を、シカゴ大学会計学科でMBAを取得。また公認会計士の資格も取得している。

【コモディティーズ・コーポレーション(1997年ゴールドマン・サックスが買収)】のことは『 ピットブル 』の書籍の中に出てきています。

 エミー・B・ハーシュ(Amy B.Hirsch) 第8章
 パラダイム・コンサルティング・サービスのCEO(最高経営責任者)。同社は投資コンサルティング会社であり、オルタナティブ投資を行っている機関投資家向けに、定量的ポートフォリオ分析やリスク管理サービスを提供している。彼女はこの分野で20年の経験があり、特にヘッジファンド、フューチャーズ、コモディティプール、インターバンク市場の通貨およびデリバティブ取引に精通している。メリルリンチには12年間在籍した。そのうち半分は、メリルリンチ・フューチャーズ・インベストメント・パートナーズ社のバイス・プレジデントであった。そこでコモディティ・プールのオペレーターとして、MFLIPのトレーディング・グループを創設、運営した。その後、スミス・バーニー、ハリス・アップハム社で、マネージド・フューチャーズ部門を監督するシニア・バイス・プレジデントの任に就いた。リンク・ストラテジック・インベスターズ社で2年を過ごした後、1994年にパラダイム社の共同創業者となった。彼女は、オルタナティブ投資の分野にも理解があり、多くの会議で議長を務めている。また、ニューヨーク・マーカンタイル取引所資金管理諮問委員会の会員でもある。フォードハム大学で経済学士を取得。

 ジョセフ・G・ニコラス(Joseph G. Nicholas) 第9章
 ヘッジファンドとオルタナティブ投資戦略の権威。ヘッジファンド・リサーチ(HFR)LLCおよびヘッジファンド・リサーチ(HFR)Inc.の創業者で社長。HFR LLCは、SEC(米証券取引委員会)登録の投資顧問会社でファンド・オブ・ファンズとマルチ・マネジャー・ポートフォリオの構築と管理を専門としている。HFR Inc.は、ヘッジファンド関連データ提供の大手であり、業界随一の規模とカバレッジを誇るヘッジファンドのデータベースである「HFRデータベース」が有名。また同氏はチューリッヒHFRインデックスファンドを共同開発した。このファンドは、マーケットニュートラルおよびヘッジファンドの各戦略別インデックスへの投資を世界で初めて可能としたものであり、日次ベースでの時価開示などの高い透明性などを特徴としている。著書に『マーケットニュートラル投資の世界』(パンローリング刊・2002年)『ヘッジファンドのすべて』(東洋経済新報社刊・2000年)がある。オルタナティブ投資に関する講演やメディアへの出演も多数。ド・ポール大学卒で商学士号、ノースウェスタン大学ロースクールで法学博士号を取得。

 ガブリエル・ボウスビブ(Gabriel Bousbib) 第10章
 ロイター・フィナンシャル(Reuters Financial)の戦略マーケティング・業務開発マネジング・ディレクター。商品開発をはじめ、社外提携やジョイントベンチャー、買収を通じて投資業界におけるロイターのプレゼンス向上に努めている。また、同社のアプリケーションやエンタープライズソリューション(トレーディング・システムや発注管理ソフト、インフラストラクチャーなど)のマーケティング活動も担当している。それ以前は、ロイター・アメリカ・ホールディングスのリスク管理部門シニア・バイス・プレジデント兼チーフ・オペレーティング・オフィサーであった。ここでは、発注管理やリスク管理の執行責任者であったことに加え、業務開発、金融工学の発展から、セールスやマーケティング、そして技術指導、アプリケーション・サポートまで担当した。ロイター移籍前は、財務サービスやリスク管理専門の経営コンサルティング会社、CBMグループのマネジング・ディレクター兼社長であった。彼はまた、デリバティブ・ディーラー向けにリスク管理システムを開発するソフトウェア会社、MYCA社の創業者でもある。それ以前は、メリルリンチ・キャピタル・マーケッツのデリバティブ部門でリスク管理を担当した。コロンビア大学経営大学院でMBAを取得、パリのエコール・ポリテクニ−クを卒業。

 レオ・デ・ビーバー(Leo de Bever) 第11章
 オンタリオ州の教職員退職基金を運営するオンタリオ州教職員年金基金理事会(Ontario Teacher's Pension Plan Board、以下オンタリオ基金)の調査・経済部門でシニア・バイス・プレジデントを務める。この部門では、基金のアセットミックスの研究やリスク管理、TAAおよび投資戦略の背景にある経済分析を行っている。また、基金のインフレ連動債ポートフォリオも管理している。最近、同部門で定量的リスク測定システムが導入された。現在これは、アクティブ運用のリスク配分に用いられている。オタワのバンク・オブ・カナダに入社後、チェース銀行の傘下にある経済コンサルティング会社のトロント事務所に勤務した。この後、資産運用業界へ転身、クラウン生命、野村證券へ移る。オンタリオ基金には1995年に就任した。彼はまた、カナダ経営経済協会元会長で、現在「カナディアン・ビジネス経済ジャーナル」誌の編集も担当している。ウィスコンシン大学で経済学博士号を取得。

 ウェイン・コズン(Wayne Kozun) 第11章
 オンタリオ州教職員年金基金理事会の調査・経済部門ディレクターで、定量的通貨ポートフォリオを管理している。ほかにもリスク管理やSAA、TAA、定量的投資戦略および通貨エクスポージャの管理を行っている。それ以前は、エクソンのカナダ子会社、インペリアル・オイル社の資金部門に所属。またそれ以前はノーザン・テレコム社の電気工学部門に所属していた。ウェスタン・オンタリオ大学アイベイ校でMBAを、また同大学で電気工学士を取得。1996年にCFAを取得。現在、米国投資管理調査協会会員、トロント財務アナリスト協会会員。

 バーバラ・ズバン(Barbara Zvan) 第11章
 オンタリオ州教職員年金基金理事会(The Ontario Teacher's Pension Plan Board)調査・経済部門のディレクター。年金基金にオルタナティブ投資を紹介するほか、長期アセットミックスや短期TAA、そしてリスク測定を行うことが、この部門の重要な業務となっている。とりわけ彼女の専門は資産・負債に関する研究であり、それは戦略アセットミックスの策定のために、またサープラス政策の違いがどのように基金のリスクに影響を及ぼすかを調査するために利用されている。オンタリオ州教職員理事会へ移籍する前は、カナダの大手銀行でクオンツ・リサーチ部門を担当した。年金アクチュアリー協会会員、カナダアクチュアリー協会会員。ウォータールー大学で数学博士号を取得。

 マイケル・デ・マルコ(Michael de Marco) 第12章
 パトナム・インスティテューショナル・マネジメント(Putnam Institutional Management)のシニア・バイス・プレジデント兼戦略リレーションチームのメンバー。同社の大手先端企業顧客に対してクライアントサービスやリレーションシップの充実をはかっている。彼はまた、パトナムの利益分配退職金基金諮問委員会や米国投資管理調査協会、ボストン証券アナリスト協会、シカゴ・クオンツ連盟、国際金融工学協会の会員である。パトナム移籍前は、GTEインベストメント・マネジメントに在籍。この業界に就いたのは、シティコープでグローバル株式のファンドマネジャーを担当してからである。また、シティバンク・インターナショナル・バンキング・グループに所属し、アルゼンチン、プエルトリコの在住経験もある。カーネギーメロン大学で理学士、マサチューセッツ工科大学で理学博士号を取得。

 トッド・E・ペッツェル(Todd E. Petzel) 第12章
 コモンファンド・アセット・マネジメント・カンパニー社(Commonfund Asset Management Company, Inc)の社長兼チーフ・インベストメント・オフィサー。それ以前は、シカゴ・マーカンタイル取引所業務開発部門のエグゼクティブ・バイス・プレジデントであった。業務経験は、ニューヨークにあるコーヒー、砂糖、ココア取引所でチーフエコノミストを担当したことから始まり、その後シカゴ・マーカンタイル取引所の金融リサーチ部門でバイス・プレジデントを務めた。シカゴでは、シカゴ大学経営大学院で教鞭を執り、ファイナンスの講義を行った経験もある。著書には『フィナンシャル・フューチャーズとオプション−マーケット、アプリケーション、ストラテジーガイド(Financial Futures and Options: A Guide to Markets, Applications and Strategies)』(1989年)があるほか、多くの記事、レビューを著している。また、経済やファイナンスの専門誌を数多く審査しており『デリバティブ・クォータリー』誌では編集も担当している。シカゴ大学で文学士、同修士、同博士号を取得。後に、マカレスターカレッジ、スタンフォード大学で教鞭を執った。

 ステファン・リース(Stephen Rees) 第13章
ロンドンのベアリング・アセット・マネジメント(Baring Asset Management)クオンツリサーチ部門のディレクター。投資分野の経験年数は13年におよび、クオンツ手法の開発、導入、そしてマーケティングに従事してきた。この分野の業務経験は、BZWインベストメント・マネジメント(現バークレイズ・グローバル・インベスターズ)で、英国株式市場向けに株式銘柄選択システムのひとつを開発したことから始まった。その他、クオラム社に勤務し、ベアリングへ移籍するまでは、ロスチャイルド・アセット・マネジメントのクオンツリサーチ部門責任者であった。クオンツ投資やリスク管理に関する会議での講演経験も豊富。ロンドンのインペリアル・カレッジで物理学の最上級名誉号を、ケンブリッジ大学で数理物理学博士号を取得。


■訳者あとがき

 本書は、英文のサブタイトル「A New Approach to Investing」のとおり、リスク・バジェッティングを「投資の新たなアプローチ」ととらえ、その重要性をさまざまな角度から論じるとともに、実務利用上の課題についても考察している。またもうひとつの魅力は、年金スポンサー、運用マネジャー、コンサルタントなどの実務家が、それぞれ専門の立場から、このテーマを分担して論じている「実践」の書であることである。
 資産運用を担当する弊社の受託財産運用部門が、本書の翻訳に取り組む契機となったのは、まさにこの点であった。日々市場と対峙し、また年金基金のさまざまなご相談を承る立場にある弊社では、新時代の企業年金にふさわしい実践的なリスク管理とは何か、という課題に取り組んできている。社内で議論・研究を進める過程で原書に出会ったのであるが、実務家の著作だけあって内容が非常に実践的かつ網羅的であったため、これを広くご紹介することが、企業年金関係者をはじめとした皆さまのお役に立てるひとつの方策と考えた次第である。
 このように本書は、リスク・バジェッティングおよびリスク管理の重要性について実例を挙げて述べている章と、VaRをはじめとしたリスク・バジェッティングを実践する際の手法上の諸論点や利用実例を解説している章とに大別される。よって、本書を最初からお読みいただいても、読者の関心に応じてランダムに読み進めていただいてもよろしいのではと考えている。
 翻訳に当たっては、原書の記述内容を単に日本語に置き換えるというよりは、読者が著者の意図をより理解しやすくなるように解説的に日本語を補うなどしている。また、邦訳した場合にその日本語が必ずしも原文を表さないと疑われるものについては、極力原文をカタカナ表記したことをご了解いただきたい。
 翻訳の過程で専門的かつ貴重なアドバイスをいただいた、各方面の方々に深く感謝する。

 2002年3月
                    訳者代表 福本 昇


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