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ウィザードブックシリーズ Vol.117


株は6パターンで勝つ
リスクをとりたくない人のための必勝投資法

定価本体2,800円+税/A5判 ソフトカバー 254頁
ISBN 9784-7759-7083-6 C2033/2007年4月13日発売

著 者●チャック・デューカス、T・パーカー・ガラハー
監修者●長尾慎太郎
訳 者●井田京子

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目次 | 監修者まえがき | まえがき | はじめに

「マーケットの年齢」見分け法がわかれば、今は買い時なのか、売り時なのかがわかる!

 トレーダーや投資家として金融市場で利益を上げる方法はたくさんある。しかし、マーケットで過ごす時間を最大限に活用したいのであれば、本書以外は必要ない!  これまで何百人ものトレーダーや投資家に教えたり、コーチングを行ったり、相談に乗ったりしてきた経験から、著者のデューカス(トレンドアドバーザー・ドット・コム社長)とガラハーは今日のダイナミックなマーケットで成功するためには何が必要かを理解している。その彼らが本書でトレンドアドバイザー・ダイヤモンド理論と呼ばれるマーケット分析と安定したトレーディング戦略を統合したアプローチを紹介し、ブル相場でもベア相場でもかなりの利益を上げられる方法を伝授している。  この深い洞察とエキスパートのアドバイスが満載の総合ガイドは、株でもミューチュアルファンドでも商品先物でもそれ以外の金融商品でも、またそれが投資でもトレーディングでも、それを買うべきかそれとも売るべきかを判断する戦略構築の手助けをしてくれる。しかし、そのためにはさまざまな段階から成るマーケットサイクルとそれをどう見分けるか(買いサイドは「回復」「アキュミュレーション」「強気」、売りサイドは「警告」「ディストリビューション」「弱気」)を理解し、それぞれの段階でどのようなトレードを行うかを学ばなければならない。  このような知識に加えて、デューカスは上昇トレンドと下降トレンドの両方を分析して剃刀の刃のように鋭い仕掛けと手仕舞いの判断を下すためのテクニカルツールも紹介している。テクニカル指数の算出方法や、それがマーケットのさまざまな状況の下でどう機能するのか、そして、それぞれの条件の下でそれらの指標を使ってどうトレードしていけばよいのかについての彼の幅広く詳細な説明は、プロにとっても経験の浅いトレーダーや投資家にとっても優れた洞察と指針を与えてくれるだろう。  そして最後のまとめとして、デューカスはテクニカル指標やお膳立てから離れ、トレーディングや投資の計画を構築することについても述べている。ここでは、分析を計画に組み込むことだけでなく、たとえ最悪の状況であってもよく練られた計画が規律を保つ助けになってくれることを明かしている。  経験豊富なプロであっても、投資の世界の初心者であっても、リスクをコントロールして資金を維持し、利益を確定するためには明確な手法を定めてそれを一貫して使っていかなければならない。本書はその方法を伝授するだけでなく、今日のマーケットで前進していくためのさまざまな教えが詰まっている。

本書への賛辞

「デューカスは従来のテクニカル分析の概念をもとにして、株式分析のためのライフサイクルに見立てた興味深い枠組みを開発した。この発想はテクニカル分析のパイオニアで、『ウエンスタインのテクニカル分析入門』[パンローリング]を書いたスタン・ウエンスタインを思い起こさせる。自分でモデルを構築する人なら、絶対にこのアイデアをマーケットの荒波のなかで試したくなるだろう」――ジョン・ボリンジャー(『ボリンジャーバンド入門』[パンローリング]の著者)

「これからも、デューカスのような著者が6段階それぞれのテクニカル指標の違いを説明するなどしてテクニカル分析の水準を高めていくことだろう。彼の願いは計画を準備し、それを実行するための規律を持ってマーケットに臨むということを読者に理解してもらうことにある。私と同様、本書を楽しんでほしい」――ラルフ・アカンポラ・ナイト・エクイティ・グループ・マネジング・ディレクター・オブ・リサーチ

「マーケットのトレンドを見極め、仕掛けと手仕舞いのタイミングを決める手順を定め、賢いマネーマネジメントを行うことはすべて安定した長期のトレーディングや投資で成功し利益率を高めるための重要な要素になる。本書では、これらの要素をトレーディング計画に盛り込むために必要な処方箋を、明確かつ詳細にわたって紹介している。これはマーケットで生き残っていきたい人の必読の書と言ってよい」――トム・デマーク・マーケット・スタディース社社長

「本書は現代の株式市場で利益チャンスを探すための有効かつ総合的なガイドであると同時に、この道に専念してきた経験豊富なプロによって書かれた価値ある1冊になっている。これはトレーダー志望者の夢を詰め込んだ“絵に描いたもち”ではなく、株式市場の実際の仕組みとそこでどうしたら儲かるかを記した綿密かつ明快な解説書なのだ」――マイク・エプスタイン・マサチューセッツ工科大学ラボラトリー・フォー・ファイナンシャル・エンジニアリング客員学者兼AMEX理事




目次

監修者まえがき
まえがき
謝辞
はじめに

第1章 トレンドの始まりと終わりを見極めるための分析ツール
 60期間高値安値チャネル
 ROC指標
 ストキャスティックス
 出来高の加速
 ツール

第2章 トレンドアドバイザー・ダイヤモンドの6つのフェーズ
 ダイヤモンド理論の仕組み
 6つのフェーズ
 まとめ

第3章 回復フェーズ
 回復フェーズに見られるトレーディングの流れ
 回復フェーズのトレード候補を探す
 理想的な回復フェーズの特性
 回復フェーズのトレーディング
 回復フェーズの終わり
 回復フェーズの失敗チャート

第4章 アキュミュレーションフェーズ
 アキュミュレーションフェーズに見られるトレーディングの流れ
 アキュミュレーションフェーズのトレード候補を探す
 理想的なアキュミュレーションフェーズの特性
 アキュミュレーションフェーズのトレーディング
 アキュミュレーションフェーズの終わり
 アキュミュレーションフェーズの失敗

第5章 強気フェーズ
 強気フェーズに見られるトレーディングの流れ
 強気フェーズのトレード候補を探す
 理想的な強気フェーズの特性
 強気フェーズのトレーディング
 トレーディングのルール
 強気フェーズで買う条件
 強気フェーズの終わり
 強気フェーズの失敗

第6章 警告フェーズ
 警告フェーズのトレーディング
 警告フェーズのトレード候補を探す
 理想的な警告フェーズの特性
 警告フェーズのトレーディング
 警告フェーズの終わり
 警告フェーズの失敗

第7章 ディストリビューションフェーズ
 ディストリビューションフェーズのトレーディング
 ディストリビューションフェーズのトレード候補を探す
 理想的なディストリビューションフェーズの特性
 ディストリビューションフェーズのトレーディング
 ディストリビューションフェーズの終わり
 ディストリビューションフェーズの失敗

第8章 弱気フェーズ
 弱気フェーズのトレーディング
 弱気フェーズのトレード候補を探す
 理想的な弱気フェーズの特性
 弱気フェーズのトレーディング
 トレーディングのルール
 弱気フェーズの終わり
 弱気フェーズの失敗

第9章 まとめ
 買いサイドのフェーズ
 トレンドアドバイザー・ダイヤモンド・マトリクス――買いサイド
 売りサイドのフェーズ
 トレンドアドバイザー・ダイヤモンド・マトリクス――売りサイド
 まとめ

第10章 規律とマネーマネジメントを実現するためのトレーディング計画

第11章 過去に向けたレンズ
 統計分析
 比較分析
 まとめ



著者紹介

原書 THE TREND ADVISOR GUIDE TO BREAKTHROUGH PROFITS : A Proven System for Building Wealth in the Financial Markets
by Chuck Dukas and T. Parker Gallagher
チャック・デューカス(Chuck Dukas)
ヘッジファンドの代表兼ウエブサイトのトレンドアドバイザー・ドット・コム社長。このウエブサイトは、トレーディングの助言とトレーダーの教育(マーケットに対する理解を深め、独立してトレードできるようにするためのサービス)を行っている。また、MTA(全米テクニカル・アナリスト協会)ニューイングランド支部の代表も務めている。それ以外にも、テクニカル・アナリシス・オブ・ストックス・アンド・コモディティーズ誌やストックス・フューチャース・アンド・オプションズ誌に寄稿し、東海岸の番組にも数多く出演している。

T・パーカー・ガラハー(T. Parker Gallagher)
トレーダー兼投資家。ヘッジファンドの運用、トレーディングシステムの開発、トレーダーの訓練、ポートフォリオマネジャーに対するテクニカル分析やトレーディングについての助言など活動は多岐にわたる。ハーバード大学経済学部を卒業後、バブソン大学でMBAを修得。MTA(全米テクニカル・アナリスト協会)協力会員であり、バブソン大学オーリン経営大学院やMITラボラトリー・フォー・ファイナンシャル・エンジニアリングの客員講師を務め、米国各地でトレーダーのためのワークショップやセミナーを開催している。


監修者●長尾慎太郎(ながお・しんたろう)

東京大学工学部原子力工学科卒。日米の銀行、投資顧問会社、ヘッジファンドなどを経て、現在は大手運用会社勤務。訳書に『魔術師リンダ・ラリーの短期売買入門』『タートルズの秘密』『新マーケットの魔術師』『マーケットの魔術師【株式編】』『デマークのチャート分析テクニック』(いずれもパンローリング、共訳)、監修に『ワイルダーのテクニカル分析入門』『ゲイリー・スミスの短期売買入門』『ロスフックトレーディング』『間違いだらけの投資法選び』『私は株で200万ドル儲けた』『バーンスタインのデイトレード入門』『究極のトレーディングガイド』『投資苑2』『投資苑2 Q&A』『ワイルダーのアダムセオリー』『マーケットのテクニカル秘録』『マーケットのテクニカル百科 入門編・実践編』『市場間分析入門』『投資家のためのリスクマネジメント』『投資家のためのマネーマネジメント』『アペル流テクニカル売買のコツ』『高勝率トレード学のススメ』『スペランデオのトレード実践講座』(いずれもパンローリング)など、多数。


訳者●井田京子(いだ・きょうこ)

翻訳者。主な訳書に『ワイルダーのテクニカル分析入門』『トゥモローズゴールド』『ヘッジファンドの売買技術』『投資家のためのリスクマネジメント』『トレーダーの心理学』『スペランデオのトレード実践講座』(いずれもパンローリング)ほかがある。


■監修者まえがき

 本書は、株式におけるフェーズ分析を解説した”The TRENDadvisor Guide to Breakthrough Profits”の邦訳である。株式市場における値動きの遷移を理解するにあたっては、フェーズ分析は不可欠なもののひとつであり、マーケットが現在どのフェーズにあり、そして次にどのフェーズへと移っていくかを見極めることが、株式投資の成否を分けるカギになると言ってもいいだろう。このため、これまでもさまざまなフェーズ分析の手法が解説されてきた。

 しかし一般的にはこれらの手法はファンダメンタルズ分析やマクロ経済の理解を通してそれを行うというアプローチであったために、経済学になじみがない読者や初心者の投資家にとっては取り組みにくいのが実情であった。

 本書の著者らはこの問題点を、フェーズ認識を単純化し、デフォルメ化することによって解決している。すなわち、分析に利用するツールは移動平均線や出来高の推移といった、いわゆるテクニカルな情報に限定し、さらに、上昇や下落ともに、それぞれ3つの分かりやすいフェーズに分けることによって、ルールの明確化を図ったのである。

 読者におかれては、本書に示されたフェーズ分析を既存の運用手法に加え、有効に活用することによって、パフォーマンスの改善を図ることができるであろう。その効果は一見すると地味なものに思えるかもしれないが、本書の最後に収められたマネーマネジメントの原則とあわせ、トレードにあたっては、あらゆる手段を用いて不用意なリスクを削り取り、将来の予見性を高めることが、長期的にはその運用者に安心感を与え、成功を助けることになる。もし読者が初心者である場合にはなおさらである。なぜなら、本書にあるような、ユニークに定義されたルールには恣意的な解釈が入り込む余地がないために、迷いを振り切ることが比較的容易だからである。トレードとはあくまで人間の行うゲームなのだ。

 翻訳に当たっては以下の方々に心から感謝の意を表したい。いつもながら井田京子氏には正確で分かりやすい翻訳をしていただいた。そして阿部達郎氏には丁寧な編集・校正を行っていただいた。また、本書が発行される機会を得たのはパンローリング社社長の後藤康徳氏の努力に負うところが大きい。

 2007年3月          長尾慎太郎




■まえがき

 アメリカにおけるテクニカル分析の歴史は、チャールズ・H・ダウが株式市場の動きと投資家のセンチメントに関する考えを述べた1800年代末までさかのぼることができる。彼が観察したプライマリーサイクル、セカンダリーサイクル、マイナーサイクルなどの価格動向は、今日われわれがテクニカル分析として認識している手法の大基になっている。ダウは、投資家やトレーダーの行動に見られる恐怖や欲望の感情は非常に似ているとも言っているが、このセンチメントに関する記述は現代の大学で行動経済学と呼ばれている研究を先取りしている。彼をはじめとする多くのライターのおかげで、われわれは今日のマーケットを支配する基本的な力である需要と供給を理解することができるのである。

 最近、この基本原則に本書がいくつかの項目を付け加えた。著者のデューカスは、まず最初に手法自体と、トレーディングや投資をするのがだれかということを理解する必要性があると述べている。この違いを知ることが、トレンドを分析してトレーディングや投資に利用するために必要な規律と知識を構築する助けになると考えているからだ。ダウと同様に、デューカスも価格動向ははっきりと区別することができると書いている。そしてさらに、現代のツールを用いてテクニカル指標を組み合わせ、トレンドアドバイザー・ダイヤモンドという独自の手法を開発していったのである。

 ダイヤモンドは買いサイドと売りサイドに分かれていて、需要が買い手の行動を支配したり、供給が勝って売り手の思惑どおりなるなどといったテクニカルの特質を表している。また、各サイドに具体的な条件を設定してフェーズを定義し、トレンドを分解していく。各フェーズには、それぞれ違った動きがあり、その解釈のしかたを学ぶために、指標の成り立ちと、フェーズごとの動きも細かく見ていく。そして、各章でチャート上の買い手と売り手の勢力のせめぎ合いを観察すれば、需給の力学が理解しやすくなるだろう。そのほかにも、手法や計画に分析を含める必要性や、売りサイドを詳細に分析することで重要ながら見過ごされがちな利食いについて述べるだけでなく、空売りに関する有益な説明まで含まれている。

 ここで紹介しているような詳細かつ有益なテクニカル分析をとおして、この手法がさらに広く受け入れられていくことになるだろう。本書は、かつてチャールズ・ダウがウォール・ストリート・ジャーナル紙に価格動向に関する記事を始めて発表した日以来最も重要な出来事、つまりSEC(米国証券取引委員会)がテクニカル分析を認めた日のすぐあとに発行された。2005年3月、SECはルール344を修正し、「ウォール街には2種類の正式なアナリストがいる。ひとつは企業に注目するファンダメンタルアナリストで、もうひとつは株価に注目するテクニカルアナリストである」と発表したのだ。テクニカル分析がファンダメンタルズ分析と同等の地位を占めるようになるというこの出来事は、テクニカル分析にとって大きな転換点となった。それまで、この手法が社会的な権威に認められたり受け入れられたことは一度もなかった。この歴史的快挙は、テクニカル分析がその価値に見合う地位に向上するよう尽力してきたMTA(全米テクニカルアナリスト協会)の功績と言ってよい。

 これからも、デューカスのような著者が、6つのフェーズにおけるテクニカル指標の違いを説明するなどしてテクニカル分析の水準を高めていくことだろう。彼の願いは、計画を準備し、それを実行するための規律を持ってマーケットに臨むということを読者に理解してもらうことにある。私と同様、本書を楽しんでほしい。

ラルフ・アカンポラ



はじめに

 本書は、マーケットで儲けるためのアプローチについて書いてある。どうすればトレーディングをしたりマーケットに投資したりすることで利益を上げられるのだろう。それに対する答えは、手法を持ち、常にそれを使い、資本を維持するためにリスクをコントロールを行い、正しく利食うことだ。本書では、手法を確立する手助けをしながら、自分が保有したいのが株なのか、ミューチュアルファンドなのか、商品なのか、それともそれ以外の金融商品なのか、あるいはそれを投資したいのかトレードしたいのかをはっきりさせていく。筆者が伝えたいのはどのような金融商品でも分析できる方法で、これがあれば自分のお金を投資したりトレードしたりすべき対象かどうかが判断できる。マーケットで儲ける方法はたくさんある。投資家になるのもいいし、トレーダーになってもよい。この世界では、投資家はどちらかと言えば長期的な視野で考え、トレーダーは短期が中心になっているが、どちらもマーケットで儲けを上げるという目的は共通している。

 すべてのマーケット参加者は、2つの重要な判断を迫られる。いつ仕掛けて、いつ手仕舞うか、つまり、いつマーケットに参入していつ退出するかを決めなければならないのだ。仕掛けと手舞いのポイントの関係が、投資やトレードの結果(つまり利益や損失)を左右する。そして、これらを判断するために使うのが手法なのである。本書は、金融商品をトレードしたり投資したりするために、自分に合った手法を構築する方法について書いてある。

 ただ、重要な判断は仕掛けと手仕舞いだけではない。それ以外にも、ポジションやトレードをいくつまで保有するかとか、ひとつのポジションにどのくらいまで資本を投入するか、ひとつのポジションでいくらまでリスクを取ることができるかなどを、ストップポイントの置き方によって決めなければならない。ストップポイントは、価格がそこに達したとき永遠に失う資本の額を意味している。トレードや投資を手仕舞う方法は2つあり、もうひとつは利益目標、つまり勝っている投資やトレードの清算を始めるレンジになる。多くのトレーダーが、利益が出たときにそれを確定する方法を決めていない。筆者は、目標を設定することと、それを達成して利食うことは別のアプローチで臨むよう勧めている。

 投資やトレードの対象を選択するときには、さらに判断すべきことがある。対象は株式か、それとも先物、指数(上場投資信託を含めて)、商品、為替、ミューチュアルファンドか、期間は2〜3日から1週間、数カ月、数年も可能だし、目的は何で、それを達成するためにどのくらいの資本を投入できるのかも決めなければならない。  これらの答えは、系統立ててトレーディングや投資にアプローチするために用意しておくトレード計画の一部になる。トレーディングも投資も、運や偶然ではなく、一貫して明確な手法を用いていくこととリスクをうまくコントロールすること(つまり系統立てた計画)によって成功確率が高まるという点では、ほかのビジネスや経済活動と何ら変わらない。自分に合ったトレーディングや投資の計画を立てる方法については、第10章で紹介する。本書は、このために必要な知識を学ぶためのものだということを念頭に置いて、読み進めていってほしい。

 簡単な手法の一例に、「バイ・アンド・ホールド」と呼ばれるアプローチがある。ミューチュアルファンドの保有者の多くが退職金勘定で使っている手法だ。彼らは給与の一部で(たいていは定期的に)ミューチュアルファンドを買い、それを退職するまで保有する。マーケットが上下しても、彼らはずっと保有し続け、退職するか、そのあと資金が必要になったときに売ったり手仕舞ったりする。この買って保有する手法は、時間とともに資金が増えるという理論に基づいており、売るのは退職してお金が必要になったときだけという明確な戦略がある。

 ミューチュアルファンドのマネジャーや、それに投資する人たちもまた、何らかの手法を持っている。彼らはたいてい、さまざまな業種の企業をスプレッドシートモデルで分析し、将来の予想価値と比較して現在割安になっている成長企業を探す。買ったあとは、その企業が成長し、株価がそれを反映するようになるまで待つ。そして、モデルが「正当な」割引率とする価格よりも高くなれば売る。

 ただし、これは理論でしかない。インベストメント・カンパニー・インスティチュートの計算によると、実際のミューチュアルファンドの年間平均回転率は100%を超えているのだ。これは、ファンドマネジャーがポートフォリオ内のすべての株を毎年、平均一度は売買していることを意味している。しかし、これではとても長期投資とは呼べないし、膨大な数のトレーディングが行われていることにもなる。このことと、大部分のミューチュアルファンドがベンチマークの指数を下回っているという事実を考え合わせると、先の手法は利益を生むトレーディング戦略ではないと言わざるを得ない。

 ここでは、だれにでも手法が必要だということがポイントになる。ただし、ひとつの手法だけを使い続けている人は、あまりいない。もし自分の金融資産(株、ミューチュアルファンド、商品など)を積極的に運用しているのなら、買おうとしているものと売ろうとしているものそれぞれについて、理由と方法を確認する条件を手法のなかに組みこんでおくべきだろう。

 筆者のアプローチは、「上昇トレンドという条件を満たす株や金融商品のみを買って保有する」という単純な理論に基づいている。もしもっと複雑な取引が可能な人やふさわしい人ならば、「下降トレンドという条件を満たす株や金融商品を売る、または空売りする」と付け加えてもよい。上昇トレンドや下降トレンドは、もともと価格の動きを基にして定義されており、テクニカル分析の世界もここから始まる。われわれの手法にはファンダメンタルズ分析は入っていない。割引キャッシュフローモデルも、収益予想も、業界予測も現在価値の算出も必要ないのである。

 ポジションを建てると、その結果はほかのマーケット参加者の行動の関数になる。もしほかの参加者と一緒にトレードすればおそらく儲かるし、もし反対を行けばおそらく損をする。そこで、周りのプレーヤーがどのような人たちで、どのような手法で判断を下し、どのようにして利益を上げているのか(それによって動機が分かる)を理解する必要がでてくる。ほかのプレーヤーの判断過程を理解して、その情報を自分の判断材料として利用すれば、マーケットで利益を上げやすくなることに気づくだろう。

 株やそれ以外の金融商品の価格は、なぜ上昇したり下降したりするのだろう。トレードした瞬間の価格は、実はその瞬間の株や商品の需給バランスでもある。市場参加者は、それぞれの瞬間において、それぞれの価値観を持っている。もし上昇しているものがあれば、そろそろ売って利食おうとしている大口トレーダーがいるのかもしれない。そうなれば、価格の上昇は止まるか、下げ始めることになるだろう。同様に、もし価格が下げているものがあれば、大口投資家のモデルのどれかが買い時を指示しているのかもしれない。そうなれば、価格の下落は止まるか、上昇に転じるだろう。

 ところで、一緒にトレードしたり、反対にトレードしたりするほかのマーケット参加者とは一体だれなのだろう。もちろんここにはさまざまな人たちが含まれているが、実はこれを3つのグループに分けることができる。最初のグループは、ミューチュアルファンドとそれ以外のプロの投資家(マネーマネジャー)で、次のグループはヘッジファンドだ。ちなみに、ヘッジファンドには投資中心のものもあるが、多くはトレーディングが中心になっている。そして3つ目のグループには、ウォール街の大手ブローカーに所属するトレーダーやそれ以外のプロのトレーダー(トレーディング中心のヘッジファンドはここに入れることもできる)が含まれる。

 ミューチュアルファンドは、ひとり、もしくは複数のファンドマネジャーが運用している。そして、優れたアナリストはミューチュアルファンドの良いポートフォリオマネジャーになれる。アナリストになるためには、良い大学を出て、2〜3年投資銀行かミューチュアルファンドで働きながら、企業の現在の収支を基にして将来の損益を予想できるスプレッドシートモデル(それもさまざまな環境下で)を構築すればよい。そのあと、一流ビジネススクールで2年間勉強してさらにスプレッドシートモデルを構築し、ミューチュアルファンドやブローカーでアナリストの仕事に就く。もし有能なアナリストとしてポートフォリオマネジャーに良い推奨をしていれば、3〜5年でポートフォリオを運用してみないかと声がかかる。ちなみに、ミューチュアルファンドのマネジャーは、ベンチマークとする指数をどれだけ超えたかで評価される。ただし、これは必ず利益を上げなくてはいけないというわけではなく、下降相場ではマーケットの下げ幅よりも少ない下げで止まれば、ボーナス(これが収入の大部分を占める)は支払われる。そこで、ファンドマネジャーの多くはベンチマークに含まれるすべての業種や企業のなかから低パフォーマンスになりそうなものを外して買うことで、ベンチマークを超えるパフォーマンスを達成している。もちろん、ベンチマークのなかで高パフォーマンスを上げそうな部分の比率を上げ、それ以外の比率を下げるという方法もある。プロのマネーマネジャーと同様に、ファンドマネジャーも成長を予想した企業が実際に利益を上げるようになるまで待たなければならない(たいていは数四半期から数年)。彼らの判断材料には、アナリストが探してきた対象や、アドバイス(バイサイドとセルサイドの両方)、そして企業からの情報が含まれている。現在、ミューチュアルファンドの投資額は総額で1兆ドルに上ると言われている。

 ヘッジファンドは、大きさも形態もさまざまで、ミューチュアルファンドと同様、投資家の資金を集めて運用している。ただ、いくつかミューチュアルファンドとは違う点がある。まず、ヘッジファンドマネジャーの報酬は、ファンドの利益の一定割合に設定されている。つまり、どこかの指標を超えることでではなく、実際に自分が上げた利益から報酬が支払われるようになっているのだ。これはマネジャーにとって、高パフォーマンスを目指す大きな動機付けになる。このような評価方法は、相対パフォーマンスではなく、絶対パフォーマンスとも呼ばれている。次に、ヘッジファンドでは株を買うだけでなく、空売りもできる(空売りについては後述する)。空売りができるということは、マーケットや株や金融商品が下げていても利益が上げられることを意味している。最後に、ヘッジファンドはレバレッジを効かす、つまり資金を借り入れて投資額を増やすことができる。これによって、ファンドのリターンは増大する(ただし損失も!)。ヘッジファンドの利益率は非常に高く、ファンドマネジャーの報酬もミューチュアルファンドに比べて格段に良い。そこで、最高のポートフォリオマネジャーやアナリストは、しばらくするとミューチュアルファンドをやめて自分でヘッジファンドを設立してしまう。ファンダメンタルズ系ファンドのマネジャーの判断材料にも、アナリストが探してきた対象や、アドバイス(バイサイドとセルサイド)、そして企業からの情報が含まれている。マネジャーの報酬は利益の一部から支払われるため、彼らはマーケットの動きを利用して利益を上げようとポジションを頻繁に入れ替える。また、彼らの多くは複雑なアルゴリズム(数学モデル)を使って、売買の判断を下している。ちなみに、ヘッジファンドの投資総額も、ミューチュアルファンド業界と同じ約1兆ドルと言われている。2つのファンドの違いは、戦略と目的にあるのだ。

 空売りは、洗練されたトレーダーが(上昇相場ではなく)下降相場で利益を上げるために使う戦略だ。架空のトレードを使って、概念を説明しよう。現在50ドルのある銘柄が、今後下落するという分析結果が出たが、これを利用して利益を上げたいとする。そこで、取引のあるブローカーに連絡して100株の空売りを依頼する。ブローカーは顧客リストからこの銘柄を保有する投資家を探して連絡をとり、この株を「貸して」利息を受け取らないかと持ちかける。話を聞いた顧客はこう言う。「最初に確認しておきたい。私の保有する株の一部を借りたいが、保有者はあくまで私で、貸した分に対しては利息が支払われる、という理解でいいのか」。ブローカーは「そうです」と答える。顧客の了解によって、100株を借り入れることができると、それを50ドルで売って代金を受け取る(5000ドルから手数料を引いた額で、これはブローカーの会社に開設した口座に入金される)。この株が40ドルに下がると、株を貸した顧客がブローカーに「前に貸した株を売りたいから、返してほしい」と言ってくる。そこで、ブローカーは空売りの依頼者に連絡をとり、「貸し手がこの銘柄を返してほしいと言っている」と伝える。そこで、空売り側は、「分かりました。それでは私の口座の資金を使って40ドルで100株買って、株を返してください」と答え、ブローカーはこれを実行する。結局、50ドルで100株売って5000ドルを受け取り、40ドルで買って4000ドル支払ったため、差額の10ポイントで1000ドルの利益が上がったことになる。

 ただ、空売りにはいくつかの大きなリスクが伴うことを覚えておいてほしい。ほんの一例を挙げると、対象企業が買収されて株価が高騰するなど、実にさまざまなケースがある。空売りしている銘柄は、値上がりすると売った価格よりも高い価格で買い戻さなければならないため、損失が発生する。

 このようなリスクがある空売りは、洗練されたトレーダーのための手法と言える。ただ、ヘッジファンド(極めて洗練されている)や、ウォール街の大手企業のトレーディングデスクでは、空売りが広く使われている。売り圧力には、現物を保有している売りのほかに、このような空売りも含まれている。下降トレンドで大きな売りが出るのは、ミューチュアルファンドの総額と同じ1兆ドルを動かしていると言われているヘッジファンドの売りが、大きくかかわっているのである。

 ミューチュアルファンドやヘッジファンドは、だれに売って、だれから買っているのだろう。その相手はウォール街大手のトレーディングデスクで、彼らは複雑な数学モデルを使って価格を算出し、主に短期(数時間から数日)でトレードしている。面白いことに、最大級のウォール街のトレーディングデスクがマーケットに投入している額を合計してみると、やはり約1兆ドルになる。つまり、彼らもミューチュアルファンドやヘッジファンドどほぼ同じ額を動かしていることになる。

 この1兆ドルという豊富な資金を持った3つのプレーヤーは、どのようにかかわっているのだろう。指数売買が中心のヘッジファンドは、複雑な数学モデルを使って、売買の判断を下している。そのほかのプロのトレーダー(トレーディングデスクを含む)は、ヘッジファンドの売買の波に反応する。一方、ミューチュアルファンドのマネジャーは、アナリストや企業の情報を基にして売買しているため、年に4回ある四半期決算の発表時期には、その結果に応じてポジションの入れ替えが積極的に行っている。このときの取引相手がウォール街のトレーディングデスクになる。ミューチュアルファンドは長期投資家だということと(理論的には)、スプレッドシートモデルに影響を与えるような情報に基づいて売買の判断をしていることから、売買価格そのものにさほどのこだわりはない。彼らは買うと決めたときに買い、売ると決めたときに売る。そして売買の相手は、ほんの短期間このポジションを保有し、価格がすべてだと考える洗練されたトレーダーであることから、価格は短いスパンで設定されている。しかし、収益発表シーズン以外は判断材料が少ないため、ミューチュアルファンドの投資家にはあまり動きがない。このことは、収益シーズン以外のマーケットや株の動きに関しては、トレーディングモデルの影響が非常に大きいということを意味している。

 商品市場には、また別のプレーヤーが存在する。例えば、農産物市場には生産者(トウモロコシ農家など)や、利用者(トウモロコシからシリアルを生産するケロッグ社など)や、単に利益目的のトレーダーがいる。また、商品市場の価格の長期トレンドは、その商品の需給状態が基になっている。例えば、干ばつになればトウモロコシの収穫は落ち込んで供給が減るため、価格は上昇する。こうなるとトウモロコシ農家にはよいが、消費者は困る。

 簡単に言えば、マーケットはプロのトレーダーに左右されるが、長期的には投資家の影響も大きくなる。このなかで成功を収めるためには、自分のトレード対象の根本的な需給関係の流れに合わせた判断を下し、対象を選んでいく必要がある。つまり、トレンドに合わせてトレードしなければならないのだ!そこで、これからトレンドを効率的に分析する方法を紹介していこう。


関連書籍


『テクニカル投資の基礎講座』

『オニールの成長株発掘法』

『オニールの相場師養成講』

『オニールの空売り練習帖』

『投資苑』

『タートルズの秘密』

『ボリンジャーバンド入門』

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