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ウィザードブックシリーズ Vol.323

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新版 バリュー投資入門 グレアムとバフェットを超えるために 新版 バリュー投資入門
グレアムとバフェットを超えるために

著 者 ブルース・C・グリーンウォルド、ジャッド・カーン、エリン・ベリッシモ、マーク・クーパー、タノ・サントス
監修者 長岡半太郎
訳 者 藤原玄

2021年12月発売/A5判 574頁
定価 本体 3,800円+税
ISBN978-4-7759-7292-2 C2033

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著者紹介目次

先人の知恵と知見を踏まえ、新しいバリュー投資の世界へ、ようこそ
見えてきた新しい時代のバリュー投資!

 本書の第1版が出版されたのが2001年である。いまだに版を重ね、累計10万部以上が販売され、5カ国語に翻訳された。ビジネススクールの教授たちは今も本書を講義の教科書として使用している。だが、第1版から20年が経過し、経済状況は変化し、投資の世界は進歩した。バリュー投資はこの新しい環境に適応してきている。本書はこれらの新展開に対応するようにアップデートされたものになった。大恐慌期のベンジャミン・グレアムとデビッド・ドッドがバリュー投資という新しい道を切り開き、ウォーレン・バフェットやチャーリー・マンガーたちが1ドルの価値を持つ株式を50セントで買うことでその跡を継いだが、現在、そのような機会はもはや存在しない。

 本書はブルース・グリーンウォルドがコロンビア大学ビジネススクールで四半世紀にわたって教えてきたバリュー投資の講義が土台となっている。その講義と本書で彼が目指したものは、グレアム・ドッドの伝統を継ぐ投資家が取引の正しい側につく一助となることである。その手順とは、望ましい株式を検索し、それらを適切に評価し、正しい行動に時間を費やすべく調査戦略に磨きをかけ、そして投資家が資金を永久に失わないようにするリスク管理を行うことである。

 本書では成功しているバリュー投資の実務家たちを紹介し、そして、今までの業績を称え、彼らが現場で実際に何を行い、何を避けているのかも詳しくルポルタージュしている。


著者紹介

原題
Value Investing : From Graham to Buffett and Beyond 2nd Edition
by Bruce C. Greenwald, Judd Kahn, Erin Bellissimo, Mark A. Cooper, Tano Santos

Value Investing: From Graham to Buffett and Beyond

ブルース・C・グリーンウォルド(Bruce C. Greenwald)
2001年から2019年まで、コロンビア・ビジネススクールのハイルブラン・センター・フォア・グレアム・アンド・ドッド・インベスティングのディレクターを務めた。2007年の創業以来、パラダイム・キャピタル・マネジメント会長、2007〜2011年にはファースト・イーグル・ファンドの調査部長、それ以降は上級アドバイザーを務めている。著書に『競争戦略の謎を解く』『スティグリッツのラーニング・ソサイエティ』などがある。

ジャッド・カーン(Judd Kahn)
ダビドソン・カーン・キャピタル・マネジメントのパートナー。カリフォルニア大学バークレー校で歴史学博士を修得。

エリン・ベリッシモ(Erin Bellissimo)
ノートルダム・インスティテュート・フォア・グローバル・インベスティングのマネジング・ディレクター兼コロンビア大学のハイルブラン・センターの創設時の理事。ペンシルベニア大学ウォートンスクールでMBAを修得。

マーク・クーパー(Mark A. Cooper)
MACアルファ・キャピタルマネジメントのCIO(最高投資責任者)であり、コロンビア・ビジネススクールの非常勤教授。コロンビア・ビジネススクールでMBAを、MITで理学士を修得。

タノ・サントス(Tano Santos)
コロンビア大学で、デビッド・L・アンド・エルシー・M・ドッド金融論教授兼ハイルブラン・センターの学部長。シカゴ大学で経済学博士を修得。


目次

監修者まえがき
謝辞
序文

第1章 バリュー投資――定義、特徴、結果、リスク、原理

第2章 バリューを探す――トレードの正しい側を見つける

第3章 バリュエーションの原理とバリュエーションの実践

第4章 資産を評価する――簿価から再調達原価まで
例1――ハドソン・ゼネラル

第5章 収益力の価値
例2――マグナ・インターナショナル

第6章 成長

第7章 「優良な」事業

第8章 フランチャイズ銘柄のバリュエーション
付録――フランチャイズ事業のリターン計算
例3――WD-40
例4――インテル

第9章 調査戦略

第10章 リスク管理とポートフォリオ構築

第11章 投資家の横顔 ウォーレン・バフェット――投資とは資本配分である
ロバート・H・ハイルブラン――投資家に投資する
ウォルター・シュロスとエドウィン・シュロス――簡潔に、割安に
マリオ・ガベリ――プライベート・マーケット・バリューとカタリストを見極める
グレン・グリーンバーグ――競争優位で株主利益を守る割安銘柄
ポール・ヒラル――少数の企業に集中特化した投資
ジャン・ハンメル――厳しい規律と徹底したファンダメンタルズの調査
セス・クラーマン――安全域(マージン・オブ・セーフティー)の追求
マイケル・プライス――安全域と経営陣の徹底分析
トーマス・ルッソ――「50セント・ドル」銘柄を探し求めて
アンドリュー・ワイス――専門知識からミスプライスを見つける

彼らの活動を本書でも簡単に説明しているが、付随するウェブサイトでもプレゼンテーションの動画を閲覧することができる。


本書への賛辞

「このバリュー投資の決定版が完全に改訂され、議論を呼ぶXファクターとしてのグロースを取り上げている。グロースにいつお金を支払うべきか、また支払うべきではないのか。これは、グレアム・ドッドの伝統に深く根差している最も優秀な投資家たちが常に自問している逃れられない疑問である。第2版は優れた投資の主たる変数としてのグロースに対応することで、急速に変化する世界でアウトパフォームしようとしている賢明なる投資家たちのためにさらに多くの知恵と知見をまとめている」――ジョン・ミハルジェビック(MOIグローバル会長兼『バリュー投資アイデアマニュアル』[パンローリング]著者)

「このバリュー投資の改訂版でグリーンウォルドとカーンは異彩を放っている。私はデスクに1冊置いておくが、あなたもそうすべきだろう。必携書だ」――ウェスリー・R・グレイ(アルファ・アーキテクトCEO兼『ウォール街のモメンタムウォーカー』[パンローリング]著者)

「本書第1版はすぐに古典となった。第1版が出版された1999年、バリュー投資のスタイルは不人気で、それは今も同じである。刊行直後に発生したITバブル崩壊は、この歴史が証明しているバリュー投資戦略を打ち捨てた者たちにとっては残忍なものであった。改訂された本書は新しい内容も豊富で、より良いものとなっている。買うのだ、学ぶのだ、そして利益を得るのだ」――ビル・ミラー(ミラー・バリュー・パートナーズ創業者・会長兼CIO)

「本書は真面目に取り組むすべての投資家の本棚にあるべきだ」――フィナンシャル・タイムズ

「世界的な金融危機以降、特に2020年の今日に至るまで、『グロース投資』は『バリュー投資』を大幅にアウトパフォームしている。バリュー投資は終わったのだと言う者もいれば、グロース投資の成功は直近の優れた業績とパッシブ投資の隆盛による好循環によるものだと言う者もいる。世界の変化を受け入れることは重要だが、投資で基調となる優れた価値を生み出していることに関して、時間の試練に耐えた原則を見失わないようにすることも同じく重要である。本書はいずれの立場を取るかにかかわらず、投資家が理解しなければならない方法論に対するすこぶる有益なガイドである」――ハワード・マークス(オークツリー・キャピタルマネジメント共同創業者兼共同会長、『市場サイクルを極める』の著者)

「本書は、真面目に取り組む投資家、そして投資を学ぶ者たちにとってはマストな1冊だ。学術界のバリュー投資の権威であるブルース・グリーンウォルドがジャッド・カーンとともに過去の著作を更新し、金融危機、パンデミック、そしてハイテク株をめぐる高揚期にバリュー投資のステップがどのように変化したか・変化しなかったかを探求している。今日50セントで売られている1ドル紙幣はほとんどないかもしれないが、グリーンウォルドとカーンは、本書で取り上げる一流投資家とともに、今日の市場を生き抜くための優れたガイドを提供している」――グレン・ハバード(コロンビア・ビジネススクール院長兼金融論・経済学のラッセル・L・カーソン教授)

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監修者まえがき

 本書は、コロンビア大学ビジネススクールのファイナンス系講座の関係者であるブルース・C・グリーンウォルド、ジャッド・カーン、エリン・ベリッシモ、マーク・クーパー、ならびにタノ・サントスによる“Value Investing : From Graham to Buffett and Beyond 2nd Edition”の邦訳であり、これは、かつて日本経済新聞社から出版され高い評価を得ていた『バリュー投資入門――バフェットを超える割安株選びの極意』の20年ぶりに改訂された第2版にあたる。

 バリュー投資の始祖であるベンジャミン・グレアム由来の著者らのプログラムは資産運用の世界の名門講座でもある。それは、そのときどきの市場環境に対応した実際の運用結果から得られた知見が共有される場でもあり、ウォーレン・バフェットをはじめとした多くの実務家がそこで学びかつ教えてきた。本書は単に科学的な投資方略の源流であるだけではなく、この分野の最新の包括的なテキストである。

 ところで、投資はもともと優良な資産(「優良」の意味はさまざまだが)を対象にして、それが割安となっている状況を見極めて行うことが原則である。それゆえ、そこには本源的価値の評価が必ず伴い、したがって本文中にもあるとおり「バリュー投資」という言葉は冗長である。現に本書のスコープは必ずしも割安株の選択だけにとどまるわけではなく、広くバリュエーションにかかわる考え方と技法が説かれている。

 一方で、本書の初版が世に出た20年前と比較すると、現在の日本ではバリュー投資はすっかり色あせ、輝きを失っているように見える。そして多くの人は、バリュー投資とはPER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)といった定量的な指標で見て「割安」とされている銘柄に投資することだと思っているようだ。実際にはそういった断片的な解釈は極めてゆがんだものであり、バリュー投資の名誉を著しく傷つけるものだが、そうした安易なデフォルメは投資スタイルの分類や管理上都合が良く、説明がしやすいことから(あるいは単なる怠慢から)、運用会社や評価機関やインデックスベンダーといった関係者はその誤解を正す努力をしようともしない。これは資産運用業界のみならず、投資家にとってもまことに不幸で残念なことである。

 せめて、本書の読者におかれては、本来のバリュー投資の考え方を正しく理解し、自身の投資活動を通じて、その真価を顕現させていただきたいと思う。それが発現した暁には間違いなくその威力に驚かれるはずである。なお、有価証券の価値の分析、特に安全性の分析については、本書にも十分に詳しい解説がなされているが、さらに体系立てて理解したい場合には、本書の初版の共著者の1人であるポール・ソンキンの手による『パーフェクト証券分析――株式投資でリターンを向上させるための基本ガイド』(パンローリング)が解説書として非常に素晴らしい。これぞ21世紀における『証券分析』であり、本書と併せて読まれることを強く推奨する。

 翻訳にあたっては以下の方々に心から感謝の意を表したい。まず藤原玄氏には正確で読みやすい翻訳を、そして阿部達郎氏は丁寧な編集・校正を行っていただいた。また本書が発行される機会を得たのはパンローリング社社長の後藤康徳氏のおかげである。本書のような価値ある書籍を刊行できたことは関係者にとって大変名誉なことである。

 2021年11月

長岡半太郎


序文

 1999年に本書の第1版を書き始めたとき、ベンジャミン・グレアムとデビッド・ドッドによって生み出されたバリュー投資は銘柄選択の方法としては色あせたものとなっていた。金融論の世界は30年にわたりEMT(効率的市場仮説)を奉じていたが、これはアクティブ運用が安定的に成功する可能性を否定するものであった。初期のインターネットバブルに煽られた強気相場はバリュー投資が依拠する分析面のあらゆる原則を無意味なものとしているかのようであった。ウォーレン・バフェットを除けば、バリュー投資を行う者は時代遅れであり、現代の経済的現実からかけ離れているとはねつけられていた。幸運なことに、2000〜2002年にかけてハイテク株やテレコム株が暴落し、その間、バリュー投資家がより優れたパフォーマンスを上げたことで、グレアムとドッドの方法論が再び注目されることになった。時を同じくして、EMTと相矛盾する学術的証拠が大量に公表される。統計的に構築されたバリュー株ポートフォリオは、十分なヒストリカルデータが入手できるほとんどすべての国の株式市場において、長期にわたり市場をアウトパフォームした。

 ダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーを草分けとする心理学の学術研究が広く受け入れられるようになったことで行動ファイナンスの分野が生み出され、これらバリューポートフォリオの長期的なアウトパフォーマンスが説明されることになったが、それは人間の行動上のバイアスに深く根差したものであった。結果として「バリュープレミアム」は将来の金融市場にも一貫して見られる特徴であるように思われた。これらの研究と、バリュー投資を実践する者たちによる絶え間ないイノベーションによって、グレアムとドッドの原則に対する包括的な理解が進み、バリュー投資の実践、とりわけ「フランチャイズ(独占的な権利・地位)」を持つ事業を見いだし、評価することについて改善が見られた。

 2008〜2009年の金融危機を底とする長期的な強気相場によって、グレアムとドッドの方法論の有効性に再び疑義が持たれるようになった。2009年以降の数年間、多くの著名バリュー投資家たちが国内の指数と外国市場の指数に大幅にアンダーパフォームしている。統計的に注意深く構築されたバリューポートフォリオで見ても、バリュー株と市場全体のパフォーマンスの差はなくなりこそしなかったが、大幅に縮小してしまった。新世代のハイテク銘柄が安定的なリターンを生み出しているが、これは確立されたバリューの原則と矛盾するかのようにも思える。そして、再びバリュー投資家は時代遅れで、現在の経済的現実についていけていないとみなされ始めた。

 バリューポートフォリオの相対的なパフォーマンスが低下することは、バリュエーションが過大になる長きにわたる強気相場の後半ではある程度予想できる結果である。1990年代後半がそうであったが、歴史的にバリュー投資家はそのような時期には比較的パフォーマンスが優れないものなのだ。だが、別の重要な要因が働いているように思われる。2000〜2007年にかけてグレアム・ドッドの投資法が再び成功したことでバリュー投資の人気が高まった。とりわけアメリカでは、バリュー志向の投資家の割合が大幅に増大した。矛盾する証拠も存在するが、バリュー銘柄に対する需要が増大したことで、グラマー株とバリュー株のバリュエーションマルチプルのスプレッドが圧縮されてしまったのかもしれない。次に、経済の発展によって、グレアムとドッドの原則を当てはめることが難しくなっている。経済活動の中心が製造業からサービス業へと移ることで、顧客や優秀な従業員、製品ポートフォリオやブランドイメージといった無形資産の重要性が、会計士が伝統的に企業の貸借対照表(BS。バランスシート)に計上してきた在庫や売掛金、有形固定資産といった有形資産のそれよりも高まっている。さらに、広告や採用活動、研修や商品開発といった無形物への投資は、会計上は経費として計上されることが多いので、収益力を定義し、測定することがますます難しくなっている。テクノロジーの発展も同様の影響をもたらしている。アマゾン、グーグル、オラクル、フェイスブック、マイクロソフト、ネットフリックスといった現代のコンピューターやインターネットを足場とする企業は保有する有形資産が比較的少ない。彼らの成長に向けた投資の多くが、会計上は経費に埋没しており、それが決算上の利益をおそらくは過剰に圧縮し、バリュエーションマルチプルの幾つかを増大させている。

 さらに、サービス企業や現代のハイテク企業は狭い地域の市場やニッチな製品市場で活動する度合いが高まっていることが事を複雑にしている。このようなローカルな市場やニッチな市場の特徴は、継続的な顧客とのコミュニケーションや高度な顧客の囲い込みを通じて規模の経済性が働く可能性があることにある。その結果、ローカルな市場やニッチ市場において強力な参入障壁を持つ独占企業が増えている。バリュー投資で言うところの、広範な「モート(経済的な堀)」を持つ「フランチャイズ」事業が経済活動全体に占める割合が大きくなっている。フランチャイズ事業では収益力を決定するうえで純資産が持つ役割は小さく、成長性が全体の価値に大きく寄与することになる。その結果、株式のバリュエーションは将来のキャッシュフロー、そして多くの場合遠い将来のキャッシュフローに大いに依拠することになるが、グレアム・ドッドの資産価値と収益力に基づく評価方法を用いてその価値を測定することは難しい。また、フランチャイズ事業にとっては、経営陣のパフォーマンス、とりわけ資本配分に関するそれが企業のバリュエーションに与える影響が大きくなる。そのような環境では、貸借対照表に焦点を当てる伝統的なバリュー投資家の多くがうまくいかないのも当然である。

 フランチャイズ事業のバリュエーションにおいて重要な役割を果たす最後の新しい要素が、企業のフランチャイズとしての立場を台無しにしかねない破壊的変化が起こる可能性が高くなっていることである。強力な規模の経済性のない競争の厳しい事業では、事業が縮小することに伴う固定資本や運転資本の回収によって、収益性の低下はおおよそ相殺される。だが、EPV(収益力の価値)が資産価値を上回るフランチャイズ事業では、破壊的な減少ははるかに重大な影響をもたらす。規模の経済性を失うと資本の回収によって補われることはなく、利益は減少する。ROC(資本利益率)が高いということは、資本を回収することで相殺される利益喪失分はほんのわずかにすぎないということだ。崩壊以前の状態と比較した瀕死のフランチャイズ事業の価値は、瀕死の「しけもく」事業の価値よりもはるかに小さなものとなってしまう。割安となっているフランチャイズ事業に投資をするには、破壊による影響を注意深く評価することが求められる。

 これらの変化は、われわれが本書の第1版で示したバリュー投資のあらゆる側面を再考する必要があることを意味する。われわれは魅力的な投資機会を探し、ひとたびそれを見つけたら評価する際の必須事項を再考している。また、われわれは、予備的なバリュエーションが終わるとアクティブな調査プロセスを注意深く検証し、第1版で行ったよりも徹底してリスク管理という問題に目を向けている。この見直し作業において、われわれは現実のバリュー投資家たちを観察し、彼らが経済環境の変化に対応していることに気づくことができた。これらすべての分野において、われわれはすべてのアクティブ投資家が直面する基本的な課題に対して、現代のグレアム・ドッドの方法論が持つ優位性を明確に割り出している。学術界でもいまや金融市場が効率的でないとする確たる証拠が存在するが、基本的に市場が効率的であることは免れ得ない。あらゆるアセットクラスの投資家すべての平均リターンは、そのアセットクラスに属するすべての資産の平均リターン(すなわち、そのアセットクラスの「市場」リターン)と等しくなければならない。すべての資産はだれかに所有されており、デリバティブ取引(例えば、空売り)ではすべての売り手にはそれを相殺する買い手が存在するのだから差し引きゼロとなる。それゆえ、特定のアセットクラスで市場をアウトパフォームする者がいるとしたら、別のだれかの運用資産が同じ割合だけアンダーパフォームしていなければならない。この制約条件はすべてのアセットクラスに当てはまるので、すべての投資に当てはまるということだ。

 グレアムとドッドは、その表現こそわずかに違えども、この効率性の拘束を十分に理解していた。だれかがほかの投資機会と比較してうまくいくだろうと考えて株式を買ったときは、必ずほかのだれかがほかの投資機会にアンダーパフォームすると考えてその株式を売っていることを理解していた。結果に基づけば、これら投資家の1人は必ず間違うことになる。よく考えられた投資プロセスに欠かせない特徴は、検索、バリュエーション、調査プロセス、リスク管理といった各段階で、投資家を取引の正しい側に置くことにある。その投資プロセスは取引の反対側にいる投資家のそれよりも優れたものでなければならない。この要件こそが、われわれがこの第2版で説明する、現代実践されるバリュー投資法を厳格に評価するときに用いたものだ。

 検索のプロセスには、バリュー志向であること、グラマー株を避け、醜く、不人気の無名の銘柄を好むことだけでなく、ある程度の専門特化が含まれる。私がゼネラリストだとして、等しい能力を持ち、高い規律を持ったスペシャリストを相手に取引するとしたら、たいていの場合、スペシャリストのほうが理解も情報も優れていることであろう。それゆえ、彼・彼女がたいてい取引の正しい側につくことであろう。本書では検索に関する章を拡張し、効果的な専門特化戦略についても議論している。最近経験したことがこの点を支えている。特化しているバリュー投資家のほうがバリュー投資のコミュニティー全体と比較しても大きな成功を収めている傾向にある。成功してはいるが、より広い銘柄を対象としているバリュー投資家は、自ら集中した業界や地域においてほかの分野よりも優れたパフォーマンスを上げる傾向にある。それゆえ、われわれは投資家紹介の章においてたくさんの専門特化した投資家を取り上げている。「コンピタンス領域」というグレアムとドッドのコンセプトは、不案内の分野を避けることだけでなく、専門知識のある分野を明確にすることでもある。

 第1版出版以来、何年にもわたってバリュエーションに関する似たような教訓を学んできた。異なるリターン特性を持つ資産にはそれぞれ異なるバリュエーションの課題がある。清算過程にある資産やカタリストを伴う短期的な投資には、DCF(割引キャッシュフロー)によるバリュエーションがふさわしい。当該キャッシュフローは正確に予想される可能性が高い。不動産や天然資源やフランチャイズと呼べない事業など、その価値が競争の厳しい市場で決定される資産は、成長が大きな価値を生まない。それゆえ遠い将来のキャッシュフローの重要性は限られたものとなる。そのような投資では、グレアム・ドッドの成長性を無視した資産価値やEPVの公式のほうが、DCFまたはレシオバリュエーションよりも優れているが、その理由は本書の第1章で議論する。ほとんどのバリュー投資家はこの方法を用いて銘柄を選択している。だが、これは成長が大きな価値を生む事業を評価するには不適切である。その場合、成長しているということは、成長率の小さな差が遠い将来の大きな差につながるので、そのキャッシュフローを見積もることが難しく、それでいて遠い将来のキャッシュフローが価値の重要な部分を占めているということである。結果として、そのような事業の現在の本源的価値を十分な精度をもって予想することができない。投資判断は予想価値よりも予想される将来のリターンに基づいて下すほうが有効である。第2版の主たるイノベーションは、3つの章を通してリターンに基づいたフランチャイズ事業の評価方法を説明したことにある。われわれが説明するプロセスはフランチャイズ事業の評価の決定版ではないかもしれない。だが、投資家を安定的に取引の正しい側につける可能性が高い万能のバリュエーション方法などないと自信を持って言うことができる。

 1999年以降の数年間、成功しているバリュー投資家の実務を注意深く観察した結果、第2版ではアクティブな調査方法に関する章を加えることになった。世界経済が進化するにつれ無形資産への投資やフランチャイズがもたらす利益の重要性が高まったことで、伝統的な財務諸表分析は多くの事業を評価するうえでもはや適切な方法ではなくなっている。そのような資産からリターンを生むうえで経営陣の管理責任の質が重要性を増していることも、投資家が投資を評価する際に公表された財務諸表以外にも目を向けざるを得ない。このような責任が加わったことでアナリストの時間はこれまで以上に限られたものとなっている。投資で成功するためには適切かつ効率的に焦点を絞った、アクティブな調査プロセスの重要性が高まっている。優れた調査プロセスは投資家を取引の正しい側につけることが増えるであろう。今回付け加えた章において、われわれは素晴らしい調査プロセスとはいかなるものかを説明している。

 最後に、専門特化とアクティブな調査の重要性が高まることでリスク管理に重大な問題が生じている。歴史的に見ても、個々のファンドマネジャーは顧客の資産のほとんどすべてを運用しているかのように、ポートフォリオを構築する傾向にある。彼らは、富の所有者たちは通常、多くのファンドマネジャーに自らの資産を分散しているという事実を考慮せずに分散の度合いを選択していた。富の所有者にとっては自らのポートフォリオ全体のリスクこそが重要なのであり、これら全体のポートフォリオのなかには流動性の乏しいポジションや事業が含まれていることが多い。原則として、ポートフォリオ全体のリスクに気を配る富の所有者たちはリスクを一元管理すべきである。リスク管理が分散すると、個々のファンドマネジャーが相殺するポジション――ファンドマネジャーAはファンドマネジャーBがヘッジしているリスクを許容する――を取ったり、流動性の乏しい資産とリターンの相関関係が高い巨額のポジションを取ったりすることになる可能性がある。その結果、リスク管理のプロセスは高くつくばかりで、ポートフォリオ全体のイクスポージャーの低減にほとんど役に立たないことになりかねない。専門特化したファンドマネジャーを用いるならば、分散の効果は富の所有者のレベルで達成されなければならない。それゆえ、リスク管理は個々の銘柄選択から切り離されていくことであろう。リスクを一元管理する者は、自らの役割を効果的に行うために個々のファンドマネジャーから十分な情報を得なければならない。このような展開を考慮して、われわれは第2版でリスク管理に関する議論を拡張することにした。われわれはリスクをグレアムとドッドの視点から注意深く定義し、そのリスクを管理する効果的な方法を説明している。

 グレアムとドッドの伝統が生き続けるかどうかは実際のバリュー投資家たちが経済、そして金融状況の変化にうまく対応できるかどうかにかかっている。われわれはそのことを胸に本書の投資家紹介の章を改訂した。第1版で取り上げた投資家がすでに他界しているとしても、彼らから学ばなければならない価値ある見識をそのままにするために当初の紹介内容を変更せずに盛り込んでいる。われわれが取り上げたその他の投資家たちは自らのプロセスを革新し、改善し続けている。幸運なことに、彼らのほとんどはコロンビア大学のMBA(経営学修士)のバリュー投資の講義で毎年教壇に立ってくれている。彼ら、そしてその他の講演者について、それぞれが広範にわたるバリュー投資の実務の世界においてどこに位置しているのか、そして彼らの方法論が時間の経過とともにどのように進歩しているのかも簡単に説明している。テクノロジーの進歩を利用して、これらのサマリーは教室形式のオンライン動画で提供できることであろう。第2版で新たに取り上げた投資家であるトム・ルッソ、ポール・ヒラル、アンドリュー・ワイスなどの専門家たちは何回も講義で話をしているので、同じような形で取り扱うことになろう。経験豊富なウォーレン・バフェット、そして新たに取り上げるジャン・ハンメルという2人の重要な投資家は講義で話をしていない。ハンメルについては、オンライン向けのプレゼンテーションを準備しており、彼の専門特化した投資手法について簡単な説明を提供できることになろう。ウォーレン・バフェットについてはこれまでどおり、彼の広範なパブリック・コメントから引用する形で1章を設けている。

 第1版に取り掛かった1999年は、グリーンウォルドがMBAコースでバリュー投資を教えて5年ほどが経過したところで、エグゼクティブMBAで幾たびか、企業幹部向け講座でも2日間講義を行っていた。20年が経過した今、ときどきの研究休暇がありながらも、彼はおよそ25年にわたって教鞭を執ってきたことになる。2005年、われわれは『競争戦略の謎を解く』(ダイヤモンド社)を出版したが、これは競争圧力にさらされる企業を参考にした持続可能な競争優位を構成する要素、フランチャイズ事業の差別化要因、参入障壁に守られた企業に関する詳細な研究である。また、これまでの期間、われわれ2人は自ら投資を実践し、世界的な投資信託と3つの小規模なヘッジファンドで働いてきた。学生たち、そしてグレアムとドッドの伝統を発展させるべく自らの時間と専門知識を惜しみなく提供してくれたゲスト投資家たちのおかげもあり、さらなる教育活動のすべてがわれわれ自身の理解を高めたことは間違いない。少なくともわれわれの現場での時間も同じく重要であった。歴史家のエドワード・ギボンが回想録で7年戦争に従軍した経験について記しているように、「近世の大隊の規律や展開は私に古代ギリシアの密集隊形やローマの混成軍団についての一層明確な観念を与えた。それゆえに、ハンプシヤー精鋭部隊の大尉は(読者は思わず嘲笑するだろう)ローマ帝国の史家にとっても必ずしも無益無用ではなかった」。

 2020年 ニューヨークにおいて

ブルース・グリーンウォルド、ジャッド・カーン


第11章 投資家の横顔 セス・クラーマン――安全域(マージン・オブ・セーフティー)の追求

 セス・クラーマンが投資を始めたのは10代のころで、大学生のときにバリュー投資に出合った。彼は大学の夏休みの間とハーバード・ビジネススクールに入るまでの18カ月間、マックス・ハイネとマイケル・プライスの下で働いた。1982年に卒業すると、2人の教職員が自分たちの資産とほかの2つの家族の資産を運用する手助けをするために、彼を雇った。外部の投資アドバイザーについていろいろ調査した結果、彼らはクラーマンがさまざまな選択肢よりも見事に仕事をこなすであろうと判断した。これは資産運用の歴史のなかの最良の判断の1つにランクされなければならない。彼らはクラーマンをファンドマネジャーとしてザ・バウポスト・グループを設立し、2700万ドルの運用資産を手に、1983年初頭に投資を始めた。1999年末までに、運用資産は、多額の外部資金を調達することなく、20億ドルほどになっていた。この値は2019年末までに280億ドル超まで増大している。

 クラーマンはバウポストで特別な立場にある。金融機関のファンドマネジャーのほとんどは顧客の資産の一部しか運用していない。結果として、リスク管理が彼らの投資判断に影響を及ぼすにもかかわらず、彼ら自身がリスクを管理することはない。バウポストは、創業者一族の莫大な資産だけでなく、クラーマンの従業員たちの資産も運用している。従業員たちは自身の資金を投じることを重要と考えており、集団としては同社の最大顧客となっている。クラーマンが記した貴重な投資本のタイトルが『マージン・オブ・セーフティー(Margin of Safety : Risk Averse Investing Strategies for the Thoughtful Investor)』であるのも驚くに値しない。バウポストの目的は長期間にわたって、リスク調整後で魅力的なリターンを獲得することにある。

 自分の方法論を実践するにあたり、クラーマンはまず「自分のエッジは何か」と問うことで、すべての投資対象に目を向ける。彼は、自分が優れた投資となるであろうと考えて資産を買っているときは、必ずほかのだれかがその価値について否定的な見解をもって売っている、ということが分かっている。エッジがなければ、クラーマンが長期的に正しい側にいることが多くなると考える理由はない。幸運にも、バウポストの組織構造と顧客との長期的な関係は、クラーマンが忍耐強く資金を保有できることを意味しており、そのため彼は日々の市場の圧力に対応する必要もなく、投資対象を売却する必要もなく、短期的な不利な状況をやり過ごすことができることを意味している。クラーマンは、動機のある売り手や軽率な売り手が存在する市場や株に焦点を当てる。それには、投資適格の資産しか保有することができないファンドマネジャーが処分したディストレス債も含まれる。その他にも、マテリアリティを理由にファンドマネジャーが自動的に売却した大会社からスピンオフした企業の株式、金融機関が売却した不良資産、1990年代初頭の整理信託公社のような政府機関が処分せざるを得なくなった破綻した貯蓄貸付組合が当初経済的安定性を理由に取得していた資産、市場インデックスから除外され、インデックスファンドが売却しなければならなくなった株式、半分空っぽのビルのような二級以下の不動産、その他売却の難しい資産などがある。

 この手の市場のもう1つの魅力的な特徴は、クラーマンが直面することになる情報通で資金力ある買い手との競争がかなり軽微であることだ。だが、長期的には、投資家はそのような投資機会を見つけだすので、ほかの投資家たちが参入し、価格をつり上げる。クラーマンは調査すべき新しいフィールドを繰り返し見つけざるを得なかった。例えば、クラーマンは地方の不動産を運用するパートナーたちのネットワークを構築し、彼自身が洗練された、いつでも投入できる外部資金の主たる源泉や唯一の源泉として振る舞うこともした。

 特定の投資対象を選択するにあたり、クラーマンはまずダウンサイドに集中するが、彼はこれを恒久的な損失の可能性と度合いと定義している。この方法論によって、価格の激しく変動しても、長期的価値の予測が可能な資産を取得できる。その好例が1980年代のテキサコの優先債の取得である。裁判での不利な判決に対応するために、テキサコは破産を宣言し、すべての債券の金利支払いをやめることで自らを守らざるを得なくなった。組織再編が行われる間、未払い利息は貯まり続けた。テキサコは、不利な判決後でさえも、債務の元本と長年にわたって蓄積された優先債の金利を十分にカバーできるだけの資産を保有していた。この投資の不確実性は主に最終的な返済の可否ではなく、そのタイミングに端を発するものだった。破産状態が解消されるまでに長い時間がかからないかぎり、当時の債券価格は少なくとも年15%のリターンを生み出すものだった。だがその間、債券価格は破産処理の展開に応じて変動しかねない。長期的視点を持ち、資本の恒久的喪失をリスクと定義するクラーマンは、そのような懸念に影響されなかった。事態が順調に運んだことで、彼は数年間のうちにほとんどリスクをとることなく、年20%を優に上回るリターンを得た。

 ダウンサイドが限られ、大きなアップサイドがあるディストレス債のもう1つの例が、エンロンの債券だった。エンロンの債券は巨大な不正の発覚後、1ドル当たり数ペニーで売られていた。資産の正確な価値は不確実だったが、債券の市場価格はリスクを過大に織り込んでいるように見えた。

 クラーマンには別の優位性があった。この職業には珍しいことではないが、彼は高度なインテリジェンスと並外れた規律とを組み合わせることで、市場トレンドの浮き沈みや他者の熱狂に対する免疫を維持することができた。彼と彼の会社は入念な調査を行っている。そして、彼の輝かしい評判のおかげでクラーマンは一流の人々を引きつけ続けることができる。だが、彼が手にした並々ならぬ業績は忍耐力のない投資家や、「私に何をしてくれたの」ということにばかり注目する者たちには不可能だったかもしれない。彼はまた協調性と卓越性を絶えず追い求める強固な団結した企業文化を築き上げた。


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