著 者 トム・ホウガード
監修者 長岡半太郎
訳 者 井田京子
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世界屈指の個人トレーダーの内面を詳しく分析し、ここまでに至った道筋を紹介しているのが本書である。ホウガードはトレード大会で優勝を重ね、あるトレードでは2万5000ポンドを1年間で100万ポンドに増やしたこともある。これほどのパフォーマンスを上げるには、普通ではない考え方が必要になる。
では、「普通ではない考え方」とはどういうものなのだろうか。著者の言う「普通ではない考え方」とは、脳が指令することとは違う考え方や行動を身に付けるということである。99%の人と同じこと(脳の指令のままに利食いを早くし、損切りを引き延ばす)をやっていては、トレーダーとしての大成功は夢のまた夢になる。
本書は、これまでのトレード本とはまったく違う指針とひらめきを与えてくれる。書かれているのは戦術・戦略や資金管理ではなく、個人のメンタル管理に特化している。平凡なトレーダーだった著者が、テクニカル分析の探求以上に自身のメンタル管理に力を注いだことで、信じられないほどの高みに到達した。その経験について、独特かつ斬新で、初心者にも分かりやすい例を挙げながら説明をしている。
トレーダーがトレード中の心理的な起伏に伴って、脳の指令に唯々諾々と従っていてはたまにしか利益を上げることができない平凡なトレーダーで一生を終える。しかし、太古の昔から人間のDNAに組み込まれたものとは異なる考え方を会得すれば、初めて安定的に高い収益を上げるトレーダーになることができる。本書ではそのトレーダーの内面を変える方法を詳しく紹介している。これは、テクニカル分析を世界一極めるよりもかなり容易な行程である。著者いわく、「失敗するのはテクニカル分析を十分に理解していないからではない。市場がトレーダーの心に及ぼす影響を十分に理解していないからだ」。
「最高の負け方を習得した者だけが最終的な勝者になる(Best Loser Wins)」というが、著者の一番強調したいことである。これは従来の欠陥だらけのトレードに対する考え方を捨て、「Best Loser」になることができれば、トレード結果もあなたの想像レベルを超えるものになるということである!
●トレードで同じ正しい行動をとれば、長期的に見て利益になるが、その正しい行動とは下のどれか(回答はすべて間違いからすべて正しいまで複数回答可)?
●あなたは株Aと株Bの2銘柄を保有し、最初はどちらも100万円の価値がありました。現在、株Aは50%上昇し、株Bは50%下落していますが、急に50万円の資金が必要になりました。あなたは1と2のどちらを選択しますか。
●大手FXブローカーが顧客2万5000人の4300万回のトレードを調査した結果、一般トレーダーの勝率は以下のどちらだったでしょうか(トレードのほとんどはユーロ/ドル、ポンド/ドル、ドル/スイスフラン、ドル/円)?
トム・ホウガード(Tom Hougaard)クイズ
(答えは、本書のなかで)
(答えは、本書のなかで)
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著者紹介
イギリスの2つの大学で経済学とファイナンスを学び、JPモルガン・チェースに勤務後、ロンドンのシティで10年間CFD(差金決済)のブローカーでチーフマーケットストラテジストを務めた。テレビやラジオで市場に関するインタビューを多く受けているほか、トレード戦略に関して何万人もの顧客を教育している。2009年以降は自己資金でトレードしている。また、自費出版でトレード心理、プライスアクション、商品知識などに関する著作を発表している。TelegramやYouTubeでトレードを公開しているほか、トレード結果を自身のウェブサイト(https://tradertom.com/)で公開している。
本書への賛辞
「暗殺者が次の標的に向けて準備する方法」――ラリー・ペサベント(『フィボナッチ逆張り売買法』[パンローリング])の著者兼トレーディング・チューターの創業者兼所有者)
「本書を、トレードを極めて、さらに自分自身を極めたいすべてのトレーダーに勧める」――スティーブ・ワード(投資のパフォーマンスコーチ兼コンサルタント)
監修者まえがき
親愛なるマーケットへ
まえがき
序章
第1章 ライアーズ・ポーカー
第2章 トレーディングフロア
第3章 だれでもチャートの専門家
第4章 パターンの呪い
第5章 人間の弱さとの闘い
第6章 嫌悪感
第7章 さまよう心
第8章 スランプのときのトレード
第9章 失敗を受け入れる
第10章 うまく負けた人が勝つ
第11章 理想的な考え方
本書は、JPモルガン・チェースやシティ・インデックスでの勤務経験があるトム・ホウガードの著した“Best Loser Wins : Why Normal Thinking Never Wins the Trading Game”の邦訳である。ホウガードは、トレードにおいては負け方の巧拙こそが最終的な成功・失敗を分けるカギであることを本書で丁寧に説いている。この主張は一見すると奇妙に思えるかもしれないが、紛れもない事実である。
一般に、投資やトレードの世界では、本当の成功者は表に出てわざわざ話をしたりしない。そんなことをするよりも仕事に専念したほうがはるかに良いからだ。だが、自らが知る真実を私たちに伝えようとする善意の人も少ないながらもなかには存在する。
そして、彼らはたいてい同じことを語る。最初は小さく賭けること、事実に基づいて行動すること、リスクを管理すること、精神的な安定を図ることなどである。本書にも書かれているこれらのことは、表現の違いはあるが、マーケットの魔術師であるラリー・ハイトやマーク・リッチーが、『ルール』(パンローリング)や『財産を失っても、自殺しないですむ方法』(パンローリング)で述べたこととまったく同じである。
多くの人の思い込みとは違い、トレードでは高度な技術は必ずしも必要ない(あっても邪魔にはならないが)。いわゆるテクニカル分析は基礎的な本を何か1冊読んでおけば十分だ。どのみちどんなに分析に凝ったところで、実際にトレードを始めればあっけなく逆行して引かされることになる。社会的に成功した人であればあるほど、トレードではあまりに勝てないことに当惑することだろう。
しかし、トレードの成功には勝率は関係がない。それを理解したうえで市場の動きに沿ってポジションを動かしていけば、体感的にはやることなすことうまくいかず負け続けているにもかかわらず、いつの間にか純資産が増えていくのに再度驚くことになる。
ところで、本書を読んでいる方はどんな人だろう。まったくの初心者や資金を短期間で何万倍にもするつもりの人は本書には興味を示さないだろうし、仮に読んでも意味がまったく分からないだろう。だが、トレードの経験はあるがあらゆる努力を重ねてもなかなか利益が出せなくて悩み、これを手に取った人ならば、著者の言葉がよく理解できるはずだ。問題はトレードのルールが一般社会とは違うということだけなのだ。成功するためにあなたは自分自身を変える必要はないが、少なくとも勝ち負けの認識は変える必要がある。そして、新しい価値観を受け入れる努力はきっと報われることになる。
翻訳にあたっては以下の方々に心から感謝の意を表したい。井田京子氏はいつもながら丁寧な翻訳をしてくださった。阿部達郎氏は丁寧な編集・校正を行っていただいた。また本書が発行される機会を得たのはパンローリング社社長の後藤康徳氏のおかげである。
2024年4月
長岡半太郎
1973年にあなたが壊滅的な下落に見舞われていたのは、私がやっと歩き始めたころだった。1987年の暴落であなたが怒りの声を上げていたころ、私は高校を卒業したばかりだった。そして、あなたが1990年代の強気相場に入ろうとしていたとき、私はほぼ準備ができていた。ただ、まだ完全ではなかった。(続きを読む)
失敗をどう受けとめるかが、人生の多くの場面でその人の成長と人生の行く末に非常に大きな影響を及ぼすと言ったらどう思うだろうか。
本書をいったん閉じて、そのことについて少し考えてみてほしい。この一文の深い意味を考えると怖くなる。
トレーダーの99%が、答えを探すところが間違っていることに気づいていない。テクニカル分析、ファンダメンタルズ分析、指標、レシオ、パターン、トレンドラインはだれでも知っているが……多くの人がみんな負けている。1%の人たちを除いて。
この1%の人たちがやっていて、残りの99%がやっていないことは何なのだろうか。
私がトレードで成功するためにやっていることで、多くの人がやっていないことは何なのだろうか。
答えは簡単であり、複雑でもある。私は負け方がものすごくうまいのだ。
そして、トレードはうまく負けた人が勝つ。
私は、負けても不安になったり、精神のバランスを崩したり、執着したり、腹を立てたり、なんとかしてトントンにしたいと思ったりしないよう心を整えた。
このような心を持つことで、私は自分のトレードができている。私のテクニカル分析の並外れた知識を持っていることが多くの人との違いを生んでいる。
人としての成長を測るために重要なのは、何を知っているかではなく、その知識をどう使うのかである。
本書は、私が自分自身を変えて今のようにトレードできるようになった経緯と、自分ができることと、自分が実際に達成したことの溝をどう埋めたのかについて書いている。
私の名前はトム・ホウガード、52歳だ。30年前、私は故郷のデンマークをあとにした。金融トレーダーを志した私は、ロンドンを目指した。
どうすればトレーダーになれるかは考えていた。経済学の学士号と、金融とファイナンスの修士号を修得した私は、トレーダーになるために必要なすべてを身に付けたと思っていた。適切な教育と、正しい労働倫理と、市場に対する情熱だ。
しかし、私は間違っていた。(続きを読む)