株価変化のカレンダー効果 第4回

        日経平均(現物指数)の月効果 その二

 

              オリエント貿易アセットマネジメント部 浅井宏作成

              電話 0120-777-205

 

 第4回は日経平均の現物指数を利用して月ごとの日次収益率の変化をみます。

 

 データとしては、日経平均(現物指数)の戦後東証開設以来の終値データ(19999月末まで)を用います。日次収益率(=(当日終値÷前日終値)×100100)、累積収益率(=1営業日からの累積変化率)、上昇日率(=前日比上昇した日の比率)、上昇日上昇率(=上昇日の収益率平均)、下落日下落率(=下落日の収益率平均)については、第1回と同じ計算式です。

 

 以下においては、@月の始めを1営業日として(基点として)日次収益率がどのように変化するのか、A月の終わりを1営業日として(基点として)日次収益率がどのように変化するのか、そして、B月中の日次収益率のロードマップ(月間の騰落曲線)がどのように推移しているのか、をみてみましょう。いずれも全期間のデータを使って計算した結果です。

 月ごと年ごとに営業日数が異なるため、終わりの1〜3営業日くらいはデータ数が少なくなることに注意してください。当然、累積収益率についても最後の1〜3営業日は正確に反映されないことになります。

 

【1月】月間上昇率が最も高い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《1月の特徴》

@1月は年間で最も上昇率が高い月である(+3.692%)。

A月中の騰落曲線はほぼ一本調子の右肩上がりとなっている。

B月の始めから9営業日目(+0.569%)、16営業日目(+0.324%)の日次収益率が高い。

C月の終わりから5営業日目までの日次収益率は高い(月末は高い)。

 

【2月】上旬は高い、中旬以降横ばい

 

《2月の特徴》

@上旬は若干高い(月の始めから7営業日目までの累積収益率は0.901%)。

A中旬以降は横ばいが続く。

B月末の日次収益率は高い(月の終わりから1営業日目の日次収益率は+0.129%)。

C2月の月間騰落率はプラスである(+0.872%)。

 

【3月】中旬までは一進一退、19営業日以降は高い

 

 

 

 

 

 

 

 

《3月の特徴》

@月の始めから18営業日目までは一進一退の状況が続く(弱含み横ばい)。

A19営業日目以降月末までは日次収益率はプラスとなる可能性が高い(月末は高い)。年

 度末は決算対策のため、金融機関や事業法人、機関投資家などが保有株式の評価を上げ

 ようとする傾向がある。それを裏付けた結果と評価できる。

B特に月の終わりから5営業日目の日次収益率は+0.549%、上昇日率も74.0%と高い。

C最終営業日については、日次収益率が+0.114%、上昇日率が70.0%と高い。年度末の「お化粧買い」がうかがえる。

D3月の月間騰落率はプラスである(+0.793%)。

 

 

 

【4月】月初は利食い売りで安い、中旬から月末にかけて高い

 

《4月の特徴》

@月の始めから1営業日目の日次収益率がマイナスとなっている(日次収益率は−0.307%、

 下降日率は56.0%)。3月末の日次収益率が高かったため、その利食い売りが出るため

 と思われる。

A月の始めから4営業日目以降月末までは、緩やかな右肩上がりで上昇している。

B月の終わりから6営業日目までは日次収益率、上昇日率ともに高い(月末は高い)。

C4月の月間騰落率はプラスである(+1.615%)。

 

【5月】連休明けが高値、中旬以降は低迷、月末は高い

 

 

 

 

 

 

 

 

《5月の特徴》

@月の始めから5営業日目までの累積収益率が高い(+1.191%)。特に月の始めから3営

 業日目までの上昇日率は60%を越える。ゴールデンウィーク明けに高値をつけることが

 多いようだ。

A月の始めから6営業日目以降14営業日目まで下落する(中旬にかけて株価は低迷)。

Bその後、22営業日目まで横ばい状況が続く。

C月の終わりから2営業日目までの日次収益率と上昇日率は高い(月末は高い)。

D5月の月間騰落率はプラスである(+0.472%)。

 

 

 

 

 

 

 

 

【6月】月初は高い、中旬は横ばい、月末は高い

 

《6月の特徴》

@月の始めから5営業日目までの累積収益率は高い(+0.419%)。

Aその後、21営業日目まで一進一退の状況が続く。

B月の終わりから4営業日目までの日次収益率は高い(月末は高い)。

C特に月末最終日の日次収益率は+0.241%、上昇日率は72.6%と高くなっている。年央

 の「お化粧買い」があるのかもしれない。

D6月の月間騰落率はプラスである(+0.737%)。

 

【7月】中旬まで強含み、下旬にかけて一時下落するものの、月末は高い

 

 

 

 

 

 

 

 

《7月の特徴》

@月の始めから2営業日目までの日次収益率はプラスである(月初は高い)。

A月の始めから14営業日目までは強含みで推移している(月初から13営業日目までの累

 積収益率は+0.742%)。

Bその後18営業日目まで下落する(月初から14営業日目から18営業日目までの累積収

 益率は−0.958%)。

C19営業日目から月末にかけては日次収益率がプラスとなっている(月末は高い)。

D7月の月間騰落率はプラスである(+0.578%)。

 

【8月】上旬は弱含み、中旬は保合い、月末は高い

 

《8月の特徴》

@上旬は弱含みで推移する(月の始めから7営業日目までの累積収益率は−0.316%)。

Aその後15営業日まではやや強含み保合いとなる(月の始めから15営業日目までの累積

 収益率は+0.523%)。

B保合いが続いた後、22営業日目から月末までの日次収益率は高くなる(月末は高い)。

 月の終わりから5営業日目までの日次収益率と上昇日率は高い。

C8月の月間騰落率はプラスである(+1.130%)。

 

【9月】月間騰落率はマイナス、月末は高い

 

 

 

 

 

 

 

 

《9月の特徴》

@月初は若干高い(月の始めから1営業日目の日次収益率は+0.099%、上昇日率は

 52.9%)。

Aしかし、その後22営業日目まで下落トレンドが続く(月の始めから22営業日目までの

 累積収益率は−1.066%)。

B月末は反発する(月の終わりから3営業日目まで、日次収益率、上昇日率ともに高い)。

 月末最終営業日は金融機関や事業法人などにとっては中間決算日にあたるため、多少の

 「お化粧買い」が入っている可能性が考えられる。

C9月の月間騰落率はマイナスである(−0.477%)。

 

10月】一進一退が続く、月末は高い

 

10月の特徴》

@月の始めから22営業日目まで一進一退の保合い相場が続く。

A日次収益率のロードマップをみると、22営業日まで+0.400%〜−0.400%の間を上下し

 ている。

B月の始めから数えて、6営業日から20営業日目までの下落率は0.714%に達する。

C月の始めから23営業日目以降反発に転じ、月末まで日次収益率がプラスとなる(月末

 は高い)。

D月の終わりから1営業日目、3営業日目の日次収益率が高く、上昇日率も60.0%を超え

 る。

E10月の月間騰落率はプラスである(+0.350%)。

 

11月】保合い相場が続く、月末は高い

 

 

 

 

 

 

 

 

11月の特徴》

@一進一退の保合い相場が続く。上旬はやや弱含み、中旬以降はやや強含みである。

A月の始めから2営業日目の日次収益率、上昇日率が高い。

B月の始めから数えて、7営業日目から14営業日目までの上昇率は+0.677%に達する。

C月の始めから21営業日目以降月末まで日次収益率はプラスとなる(月末は高い)。

D月末最終営業日の日次収益率は高く(+0.323%)、上昇日率も高い(60.0%)。

E11月の月間騰落率はプラスである(+0.629%)。

 

12月】月初は高い、その後下旬まで調整局面が続く、しかし年末は高い

 

12月の特徴》

@月の始めから2営業日目までの累積収益率は高い(+0.259%、月初は高い)。

Aその後、16営業日目まで下落基調が続く(2営業日目から16営業日目までの下落率は

 −0.810%)。海外の機関投資家は、利益確定と年明けのポートフォリオ組み替えに備え

 て年末までに保有株式を売却することが多い。その影響があるのかもしれない。

B17営業日目以降月末まで日次収益率がプラスとなる(年末は高い)。

C月の終わりから4営業日目までの日次収益率は高く、上昇日率も60.00%を超える。年末の「お化粧買い」があるものと考えられる。

D12月の月間騰落率はプラスである(+0.914%)。

 

 最後に、日経平均の月次騰落率(月末値比較)をまとめました(下表を参照)。

 上表をみると、以下のことがわかります。

@月間の騰落率をみると、1月が最も高く(+3.692%)、4月(+1.615%)、8月(+

 1.130%)、12月(+0.914%)がそれに続く。

A上昇月率(月間騰落率がプラスである確率)をみると、1月が最も高く(76.00%)、4

 月(68.00%)、6月(66.67%)、12月(62.00%)がそれに続く。

B逆に9月の月間騰落率は唯一マイナスであり(−0.477%)、下降月率(月間騰落率がマ

 イナスである確率)も唯一50.0%を超える(52.9%)。

 

 以上をまとめてみましょう。

 日経平均連動型のインデックス・ファンド(ブル型ファンド、ベア型ファンド)を売り買いして運用する場合を考え、どのような戦術が有利であるかをみてみましょう。手数料は考慮していませんが、レバレッジの高いファンドを選択すれば、それなりの投資効率を見込めるでしょう。

 

 上記の分析結果(傾向)が今後も続くと仮定すれば、次の戦略が有効だといえます。

(1)ブル型ファンドを12月の中旬(15営業日目から19営業日目までの間)に購入し、

  翌年2月の上旬(7営業日目まで)に売却する。

(2)ブル型ファンドを3月中旬(18営業日目まで)に購入し、5月の連休明け(5営業

  日目まで)に売却する。

(3)ブル型ファンドを5月中下旬(14営業日目から22営業日目までの間)に購入し、

  7月中旬(14営業日目まで)に売却する。

(4)ブル型ファンドを8月上旬(5営業日目から9営業日目までの間)に購入し、月末

  に売却する。

(5)ベア型ファンドを8月末に購入し、9月の下旬(20営業日目から22営業日目まで

  の間)に売却する。

(6)ブル型ファンドを10月下旬(19営業日目から22営業日目の間)に購入し、12

  初旬(1営業日目ないしは2営業日目)に売却する。