SP波動率利用売買

その2

過剰反応利用売買(l)

 SP波動率で決めた天底の立会年月日と株価は,波動率の値が同じなら,誰がやっても必ず同じになります。上手下手はありません。今回から何回かに宜って,SP波動率とSP変化率を使って過剰反応アノマリーを探し出し,これを指標にして売買する方法(以下,「過剰反応利用売買」と略します)を紹介します。

 表lをご覧ください。FAI貸借銘柄のうち,88/l/4〜95/10/31の約8年間に発生した,SP波動率25%の天底数が多い100銘柄のリストです。過剰反応は,滅多に起こらないはずなので,天底数が多い銘柄のほうが売買チャンスが多いと考え,表1の銘柄を選び出しました。これらの銘柄の95/10/31までの直近256立会日の株価を使い,過剰反応利用売買のシミュレーションをしてみます。 表2をご覧ください。現物売買のように,まず株を買い,適当な時期に売って手仕舞いする,「買→売」のシミュレーション結果です。下げの過剰反応を-45%以下とみなした場合(数字の横方向のいちばん上の欄です)を例として,表の内容を説明します。

 天井からの下げが,SP変化率が‐45%以下(表の「下げ過剰反応率」)になったら,下げ過剰反応が現れたとみなします。すると,直近256立会日の間に,表1の100銘柄中84銘柄(表の「仕掛け銘柄数」)に下げの過剰反応が86回(表の「過剰反応発生回数」)現れました。

 下げ過剰反応が現れたら,直ちにl売買単位「買」を入れます。もし,株価がさらに増玉幅(表題の2行目の「-15%」です)以上下げたら(-45−15=60%以下になった場合です),l単位増し玉します。増玉幅以上さらに下げることに,1単位ずつ増し玉します。

 株価が反転して上昇し,「底」が決まったら,直ちに全部売って一括手仕舞いします〔直前の底が決まる日を「底決定日」と呼ぶことにします。「底」や「天井」の決め方は,前回の「天底探し」の説明を参照してください)。

 上記のように,いたって単純な売買法ですが,損益はどうなるでしょうか。

 「買」や「売」と判断した当日の終値で売買できた(表の「当日終値売買」)と仮定すると,仕掛けた86回中,決済した回数は86回,まだ決済できないで買い持ちのまま(表の「未決済回数」)が0回です。

 値洗いの損益(表の「値洗損益」)では,決済した86回中,利益になった回数(表の「+」)は84回(97.7%),差引ゼロになった回数(表の「0」)は0回(0.0%),損失になった回数(表の「−」)は2回(2.3%)です。

 取引コストは往復約4%なので,値洗損益額から買値と売値のそれぞれ2%を差し引いた損益(表の「実損益」)は,「+」が83回,「0」が0回,「一」が3回です。

 実際の売買では,終値で「買」や「売」を判断し,翌日の寄り付き(成り行き)で注文(表の「翌日始値売買」)するのがよい,といわれます。このようにした翌日始値売買の損益も,当日終値売買とほぼ同じ結果が得られます。

 以上が,下げ過剰反応率を‐45%としたときのシミュレーション結果です。下げ過剰反応率をもっと低くすると,当然ですが,仕掛け銘柄数も過剰反応発生回数も少なくなります。

 表の成績全体を見ると,下げ過剰反応率が-50%以下のどの場合でも,l回だけですが,「一」になっています。これは,住専の不良債権が大きな問題になっている時期の「8581日住金」の場合で,95/9/22頃に仕掛け始めて95/10/13頃(下げ過剰反応率の値によって少し変わります)に手仕舞った例です。この時期のこのような問題が起こっている銘柄の「買」は,敬遠するのが常識かもしれません。この例を除けば,「8581日住金」の他の時期の売買も含め,下げ過剰反応率を-50%以下にすれば,当日終値売買でも翌日始値売買でも,値洗損益でも実損益でも,「+」が100%,という嘘みたいな結果が出ています。

 表3をご覧ください。信用取引で空売りし,適当な時期に買い戻す「売→買」のシミュレーション結果です。

 表2の成績と比べると,過剰反応の取り方とも関係しますが,仕掛け銘柄数と過剰反応発生回数が少ないように思います。しかし,未決済回数は多そうです。未決済回数が多い理由は,つい最近のやや低迷している相場の中で,いくつかの仕手株や仕手性の株が顔を出し,それが未決済のまま残っているためです。

 発生同数は少ないけど,表2とほぼ同様に,嘘みたいな結果が出ています。

 表4をご覧ください。表1で第1位の「1813不動建」の直近256立会日(95/10/31夜現在)のデータを使い,SP波動率を25%,下げ過剰反応率を-60%,上げ過剰反応率を60%としたときを例とし,「買→売」と「売→買」の両方を行った売買経過です。実際に毎日場帖に記入しながら売買するやり方で説明します。

 表には,立会日の月日,終値,変化率〔SP変化率のことです)および備考の欄を設けてあります。

 場帖を94/10/21からつけ始めた,と考えてください(紙幅の関係で,月日の欄は年数を省略してあります)。

 毎日,月日と終値を場帖に書きながら,天底が現れるのを待ちます。天井も底も,なかなか現れません。しかし,l/18になり,やっと,去年の12/16の終値490円が「底」になりました。そこで,12/16の備考欄に「底」の印の●,1/18の備考欄に「天底決定日」jの印の×(天井決定日も底決定日も同じ印にしてあります)を記入します。また,変化率の欄に,12/16の次の立会日から底決定日1の1/18まで,次の(1)式で計算したSP変化率を記入します。

  SP変化率(%)=200×(毎日の終値一直前の底値)

          ÷(毎日の終値十直前の底値)(1)

 12/19〜1/18のSP変化率は,全部プラスの値になります。

 次の日1/19からは,月日と終値に加え,上式で計算したSP変化率を毎日場帖に記入し,SP変化率が上げ過剰反応率60%以上になるのを待ちます。株価はどんどん上がり始め,1/26,ついに終値が1000円,SP変化率が60%を超えて68.4%になりました。

備考欄に空売りの指標(下向きの細い▼)を記入します。

 翌日1/27の寄り付きで,信用で1単位,新規の空売りをします(表にはありませんが,始値は1080円です)。ところが,この日の終値は1200円,SP変化率は84.0%。60+15=75%の増玉幅を超えています。備考欄に,また空売りの指標を記入します。

 次の立会日1/30の寄り付きで,信用でl単位,新規の空売りで売り増します(始値は1400円です)。ポジションは2単位の売り持ちで,売値平均は当日終値売買なら1100円,翌日始値売買なら1240円になりました。ところが,この日の終値は始値と同じ1400円,SP変化率は75+15=90%を超えて96.2%。またまた増玉幅を超えたので,備考欄に空売りの指標を記入します。

 翌日l/31,前日は寄引同事ですが,まだまだ上がりそうにも思えて不安です。しかし勇気を出し,指標に従い寄り付きで,信用で1単位,新規の空売りで売り増します(始値は1420円です)。

3単位の売り持ち,売値平均は当日終値売買なら1200円,翌日始値売買なら1300円になりました。

 その後は幸い下げに転じ,2/20の終値1060円で,1/30の1400円が天井値と決まりました。そこで,1/30の備考欄に「天井」の印の○(すでに記入してある空売りの指標と併記します),2/20の備考欄に「天井決定日」の印の×と一括買手仕舞いの指標(上向きの細い▲)を併記します。

 翌日2/21の寄り付きで,3単位の売り持ちを一括買手仕舞いします(始値は1040円です)。

 上記の売買は,当日終値売買の値洗損益ならl株当たり1200-1060=140円,3単位で420,000円の利益,翌日始値売買の値洗損益なら1株当たり1300−1040=260円,3単位で780,000円の利益です。手仕舞った2/21から,場帖に記入するSP変化率は,新たな天井値を使い,次の(2)式で計算します。

     SP変化率(%)=200×(毎日の終値一直前の天井値)

             ÷(毎日の終値十直前の天井値)(2)

 その後の株価は,一進一退しながら次第に下げていきます。場帖をつけながら,SP変化率が下げ過剰反応率‐60%以下になるを待ちます。

 5/16,終値が747円,SP変化率が‐60.8%になりました。備考欄に,買の指標(上向きの細い△)を記入します。

 翌日の5/17の寄り付きで,現物または信用の新規でl単位,「買」を入れます(始値は745円です)。

 その後も下げ続けますが,増玉幅以下に下がらないで上げに転じ,7/11の867円で,5/31の658円が「底」と決まりました。そこで,5/31の備考欄に「底」の印の●,7/11の備考欄に「底決定日」の印の×および一括売手仕舞いの指標(下向きの細い▽)を併記します。

 翌日7/12の寄り付きで,買い持ちのl単位を売手仕舞いします(始値は905円です)。

 今回の売買は,当日終値売買の値洗損益なら1株当たり867‐747=120円,l単位で120,000円の利益,翌日始値売買の値洗損益なら1株当たり905−745=160円,1単位で160,000円の利益です。

 手仕舞った7/12から,新たな底値を使い,(l)式で求めたSP変化率を場帖に記入します。しかし,その後も株価は上げ続け,8/14,終値が1240円,SP変化率が上げ過剰反応率60%を超えて61.3%になりました。備考欄に,空売りの指標▽を記入します。

 翌日8/15の寄り付きで,信用で1単位,新規の空売りをします〔始値は1240円です)。

 その後も上げ続けますが,増玉幅以上に上がらないで下げに転じ,8/31の1080円で,8/21の1390円が「天井」と決まりました。そこで,8/21の備考欄に「天井」の印の○,8/31の備考欄に「天井決定日」の印の×と一括買手仕舞いの指標▲を併記します。

 翌日9/1の寄り付きで,売り持ちの1単位を買手仕舞いします(始値は1080円です)。今回の売買は,当日終値売買の値洗損益ならl株当たり1240‐1080=160円,l単位で160,000円の利益,翌日始値売買の値洗損益なら当日終値売買と同じく,1株当たり1240−1080=160円,l単位で160,000円の利益です。

 手仕舞った9/1から,新たな天井値を使い,(2)式で求めたSP変化率を場帖に記入します。その後は一進一遇を繰り返し,「買」のチャンスがないまま,10/31に至っています。

 表2〜4の成績を見ると,SP波動率とSP変化率による過剰反応利用売買のリスクばかなり低そうです。個人投資家の場合,大きな損失を出したらおしまいです。林先生の話にもしばしば出てくるように,致命的にならないとも限りません。損失を冒すリスクが低い売買法を選ぶほうが無難です。

 過剰反応利用売買ば,「+」が100%という嘘みたいな結果が常に出るとは限りませんが,リスクが低くやさしい売買法のひとつと思います。しかし,銘柄ごとの売買チャンスが少なく,銘柄によっては売買チャンスがまったくないことがあります。そのため売買チャンスを増やすには,多数の銘柄を追いかけねぱならず,パソコンの利用が不可欠になります。

 なお,表4の成績を見ると,もう少し待って手仕舞えば,もっと利益が大きくなる,と思う人がいるかもしれません。しかし,そう思うのは危険です。「腹八分目」が鉄則,と考えるべきです。その理由も含め,引き続き過剰反応利用売買の検討結果を紹介していく予定です。

付図)ノモグラムの使い方

 SP変化率の計算は,パソコンやメモリー付き電卓で簡単にできますが,結構面倒くさいものです。そこで,粗い計算ですが,ノモグラム(計算図)を作り,私自身,愛用しています。

 SP変化率の計算式SP=200x(A‐B)/(A+B)には,3つの値A,B,SPがあります。このうち2つの値を与えれば,定規を使うだけで他のlつの値を読み取れます。以下,ノモグラムの使い方を説明します。紙幅の関係で図が小さく,印刷による歪みで少し誤差が出るかもしれませんが,興味のある方はご利用ください。なお,計算式のBには,ふつう,天井値や底値を入れます。

l)いま,天井値が500円で,今日の終値は300円とします。A尺上の300の点とB尺上の500の点を結びます。この線とSP尺の交点は‐35です。今日の終値のSP変化率は‐35%(正確に計算すると‐35.29%)です。

2)底値が400円で,今日の終値は500円になりました。A尺上の500とB尺上の400を結びます。この線とSP尺の交点は22%(正確には22.2%)です。

3)底値が320円のとき,上げ過剰反応率60%は何円以上でしょうか。B尺の320とSP尺の60を結ぶ線とA尺の交点は595です。上げ過剰反応率60%は595円(正確には594.3円)以上です。

4)天井値が900円のとき,下げ過剰反応率-60,-70,-80%の株価はいくらでしょうか。B尺の900とSP尺の-60,-70,-80を順に結んでA尺の値を求めると,484,432,385円です。

5)底値候補が350円のとき,株価がいくら以上になればSP波動率25%の底値と決められるでしょうか。B尺の350とSP尺の25を結ぶと,A尺の値は450です。

6)天井値候補が800円のとき,株価がいくら以下になればSP彼効率25%の天井値と決められるでしょうか。B尺の800とSP尺の‐25を結ぶと,A尺の値は623です。

7)AまたはBの片方または両方が1000〜2000円のとき,A尺とB尺の値を2倍して読み取ります。ただし,SP尺の値はそのままです。底値が800円のとき,1200円のSP変化率はいくつでしょうか。A尺の600(1200=600x2)とB尺の400(800=400x2)を結ぶと,SP尺の値は40%です。

8)AまたはBの片方または両方が2000〜3000円のとき,A尺とB尺の値を3倍して読み取ります。以下,同様です。

 上記のように,概算ですが,A,B,SPのどれか2つを与えれば,他の1つが簡単に決まり便利です。工夫すれば,いろいろな使い方ができます。実用上,概算でも十分と思います。SP波動率や変化率に興味のある方に,活用することをおすすめします。

p39-40-41-42