S P波動率利用売買

その4

過剰反応利用売買〔3)

 年が変わり,8年分の日足4本値が揃ったので,FAI貸借銘柄のSP波動率25%天底数を数え直しました。その結果,上位l〜100位の銘柄と順序は,1995年ll月号に紹介したものと少し変わりました。しかし大差がありませんので,リストは省略します。今回は,組み替えた上位100銘柄の1988〜1995年8年分の日足を使い,いろいろな条件でシミュレーションした勝率を紹介します。なお売買は,当日の終値で判断し,翌日の寄り付きで売買(翌日始値売買)する,とします。また取引コストを往復4%とみなし,これを売買結果から差し引いた値がブラスなら「勝」とします。

 図1をご覧ください。下げ過剰反応利用売買結果の一部で,最初の仕掛けから30立会日以内で底が決定したら,翌日の寄り付きで直ちに一括手仕舞い,30立会日が経っても底が決定しない場合,損益に関係なく一括手仕舞いする場合(「打切り30日」と呼ぶことにします)の勝率です。ただし,増工数はl単位です。

 左上の図は,仕掛開始の過剰反応率(SP変化率)を‐50,‐60,‐70,‐80および‐90%とし,仕掛開始からのSP変化率が5%以上下がるごとにl単位ずつ買増した場合の勝率です。仕掛開始過剰反応率を‐70または‐80%にした場合の勝率が高くなっています。

 右上の図は,仕掛開始過剰反応率を‐50%とし,SP変化率がさらに下がったら増し玉するSP変化率の低下幅(増玉幅)を6種類に変えた場合の勝率です。増玉幅は,l)仕掛開始過剰反応率からSP変化率が5%以上低下するごとに増し玉(等間隔5%),2)10%以上低下するごとに増し玉(等間隔l0%),3)15%以上低下するごとに増し玉(等間隔15%),4)20%以上低下するごとに増し玉(等間隔20%),5)1回目の増し玉は15%以上,2回目は10%以上,3回目以降は5%以上低下するごとに増し玉(不等間隔No.1),6)1回目の増し玉は20%以上,2回目は15%以上,3回目は10%以上,4回目以降は5%以上低下するごとに増し玉(不等間隔No.2)の6種類です。等間隔5%または不等間隔No.1の勝率が良さそうです。

 下の図は,上記6種類の増玉幅と5種類の仕掛間始過剰反応率の組合せで勝率を比較した場合です。仕掛開始過剰反応率は棒の模様で区別してあります。増五幅が不等間隔No.2で仕掛開始過剰反応率が‐70%の場合,勝率がいちばん良いようです。

 表lをご覧ください。いろいろな条件の組合せで下げ過剰反応利用売買した場合の勝率表です。数字アレルギーの人は厭になると思いますが,たくさんの情報が詰まっています。この表の左上の部分を棒グラフにしたのが図lです。棒グラフや折れ線グラフにして比較すると,分かりやすくなります。試みてください。

 表の数字は,次のような比較をする目的で,いろいろな条件の組み合せでシミュレーションした勝率(%)です。

1)最初に仕掛ける単位数は1とし、増し玉が必要になるごとに増し玉する単位を1(等分割です)または2(不等分割になります)とする比較。

2)増玉幅の比較(前述)。

3)底が決まったら一括手仕舞いするが,底が決まらない場合,損益に関係なく一定期間(最初の仕掛けから30,60,90および120立会日)後に打ち切って売買する場合の比較(前述の「打切り30日」の説明参照)。

4)一定期間中(狙い期間:30,60,および90立会日)は底が決定して一括手仕舞いするのを狙って待つが,底が決まらない場合,一定期間後のさらに30立会日後までは予め決めた利益率(手仕舞率:取引コストを差し引いた利益率が5,10および15%。表では紙幅の関係で「手仕舞」と略)になったら直ちに一括手仕舞いする。しかし,手仕舞えずに一定期間後のさらに30立会日後になったら損益に関係なく一括手仕舞いする場合の比較。

5)3)と4)の比較。

6)仕掛開始過剰反応率の比較(前述)。

 だいぶややこしい表lですが,たくさんの条件の組合せでシミュレーションして求めた勝率の比較表です。紙数の都合で説明を省略しますが,丹念にグラフを描いて比較すると,かなり参考になると思います。

 大まかな感じをいえぱ,仕掛単位数は等分割より不等分割のほうが,増玉幅は資金力が大きければ細かな等間隔または不等間隔,資金力が小さければ最初の増玉幅を広くして次第に狭くするほうが良さそうです。また,仕掛開始過剰反応率は-70か‐80%が良さそうです。しかし,打切り期間や狙い期間などは,個人的好みや考え方で違ってくるのでぱないかと思います。

 表2をご覧ください。上げ過剰反応利用売買した場合の勝率表です。いろいろな条件の組合せは,過剰反応率がプラスに変わった以外は,下げ過剰反応利用売買の場合と同じです。「下げ」場合に比ベ,全体として,勝率が低くなっています。やはり「買→売」のほうが,「売→買」より易しいのかも知れません。

 今年に入ってから,仕手性の強い材料株が日替わりメニューように登場し,上げ過剰反応を示している銘柄がたくさんありす。「大変な時代」を迎えているかも知れない現在,今後の相場がどう変わるのか分かりません。もしかしたら,過去8年間とく違う相場になるかも知れませんが,過去の資料はそれなりに参考になると思います。 表2に示したように,仕掛開始過剰反応率を80%にしたときの上げ過剰反応利用売買の発生例数は少なく,わずかに82回ですこの程度の回数なら,ひとつの条件下における個々の勝敗結果2頁に印刷することができます。上げ過剰反応を示している銘柄が多い現在,ご参考までにl例として紹介します。

 表3-lと3-2をご覧ください。過去8年間における天底数上位100銘柄の日足を使い,比較的大人しい仕掛条件でシミュションした結果の詳細です。仕掛条件は,増玉数がl単位,増玉幅が等間隔15%,打切り120日,仕掛開始過剰反応率が80%です。

ただし増玉幅は,増し玉と判断した日のSP変化率に上乗せすることにしてあります(その結果,l例の「勝」が「負」に変化してしまいました)。

 「順位」は,利益率の大から小の順〔降順)にしてあります。

 「仕掛回数」は,最初の仕掛をl回目とし,増し玉するごとにl回ずつ増やした回数です。増正数を1単位としているため,売買した単位数は仕掛回数と同じです。  「仕掛開始年月日」は,終値が仕掛開始過剰反応率以上になった日の次の立会日です。

 「手仕舞年月日」は,「仕掛開始年月日」から120立会日以内に天井が決定した日の次の立会日,または「仕掛開始年月日」から120立会日目の日です。この日の寄り付きで一括手仕舞います。

 「所要立会日数」は,「仕掛開始年月日」から「手仕舞い年月日」までの立会日数です(暦日数ではありません)。

 「平均仕掛値」は,売値の合計÷売買単位数です。

 「手仕舞値」は,「手仕舞年月日」の始値です。

 「一株利益額」は,平均仕掛値一手仕舞値です。

 「利益率」は,100×(一株利益領一取引コスト)÷(平均仕掛値十手仕舞値)%です。この値がブラスなら「勝」,ゼロなら「分け」,マイナスなら「負」になります。また,この値に2%を加えると,値洗い計算の利益率になります。

 利益率の順位が低い場合,仕掛回数が多くなっています。運が悪いと,このような銘柄を仕掛けてしまいます。仕手性が強いほど,SP変化率が大きくなりそうです。仕掛ける前に仕手性の程度が分かれば,そのような銘柄は敬遠するか,もっと高い過剰反応率から仕掛けることができるばずです。なんとかならないか,と検討している最中ですが,何か良いアイデアはありませんか?

 今回は省略しますが,天底数の順位が低い銘柄群を対象にすると,順位が低くなるにつれて勝率が少しずつ低下します。しかし,最近の典型的な仕手株である「1301極洋」,「3869日本紙業」、「7961兼松日産農林(貸借銘柄ではありません)」の場合でも,表3と同じ条件で仕掛ければ,利益が取れます。

 私自身,l月初旬,増玉数2単位,増玉幅不等間隔No.1,過剰反応率70%で「6205 0KK」を仕掛けてみました。仕掛後どんどん値上がりして売持ち玉数が増え,一時は最初の仕掛値の7割まで上がった高値がつきました。しかし,所要立会日数35日で手有無い指標がパソコンに出て,利益が出ました。仕手株を売り上がると,かなり強いストレスを感じます。この点からも,「売→買」よりも「買→売」のほうが易しいかもしれません。

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