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■□■マーク・モビアス(Dr. Mark Mobius)博士からの特別寄稿『ブラジル』編■□■


特別寄稿『BRICsとは?』編 |  特別寄稿『マレーシア』編 |  特別寄稿『ブラジル』編

新興市場ファンドの第一人者として、年間200日以上は世界中を飛び回り、自らの足で有望な成長企業を発掘するマーク・モビアス博士。かねてから自分の旅行記を折に触れ提供してくれる。
以下は、今年10月のブラジル大統領選直前に同国を訪問したときの記録から引用したものである。

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■騒々しいブラジル株式市場

 2003年、ブラジルの株式市場は米ドル換算で141%上昇し、翌04年には28%の上昇、05年には45%の上昇、そして06年は現在のところ22%の上昇をみせている。同時にブラジル通貨であるレアルも、米ドルに対して強くなり、03年に22%、04年に9%、そして05年には13%上昇した。今年(06年)も9%の上昇だ。

 この結果、我々のブラジルへの投資も拡大した。これは、我々がブラジル株の取得を増やしたことだけが理由ではない。資産価値が上昇したことも理由となっている。我々の新興市場グループは今や単独で、28億米ドル(資産の約10%相当)をブラジル株式市場に投資している。


■考慮されるリスク

 まず、マクロレベルでいえば、鉄鉱石(ブラジルは世界最大の輸出国である)などの商品価格の低迷が経済を悪化させる可能性はある。ただし、同国は新しい市場を開拓し、輸出量を劇的に増やしている。このことが商品価格の下落に対する重要な緩衝材になると証明することも考えられる。

 もし、ブラジルで鳥インフルエンザが蔓延すれば、肉や穀物(飼料用のトウモロコシ・大豆)に対する需要が減る。同国の重要産業である農業部門には大打撃となるだろう。つまるところ、レアルに対する評価は、ブラジルの輸出競争力全体にかかっているはずだ。

 国内政治のレベルでいえば、目に見える改革がないことと、継続する国家支出の拡大に対する懸念がある。これは、相対的に少ない投資と国有企業の非民営化によるものだ。また、政府の政策が過去の大衆迎合に回帰しているため、その結果インフレが起こりうる危険もある。  朗報となるのは、金利が歴史的低水準まで下げており、世界的な引き締め政策とは対照的に金利のトレンドが今なお下向きであることだ。外資の流入は依然として強く、それゆえ企業は安価に資金を調達できる。インフレは収束し、期待も高く、結果として金利水準の低下を導いている。


■歴史問題への認識の必要性

 ブラジルは過去に、通貨とインフレに関して多くの問題を抱えてきたことに触れなくてはならない。例えば、我々がブラジルに投資していた1989年、インフレ率は高く、金利は2000%にも達していた。
 94年、権威のある経済学者はこう言った。「大言壮語の新『レアル』通貨計画は、もうひとつのブラジル通貨危機を延期させただけだ」と。その年の7月、ブラジルは米ドルと固定させる「レアル・プラン(Plano Real)」を導入した。  当時畏怖されたのは、レアルが1994年に発生したメキシコペソ危機(ペソもまた、米ドルと固定された)と同じ道を歩むのではないかということである。しかし、97年までにレアルは、インフレ率を低下させ、米ドルとの協調(1.10レアル=1ドル)という大成功を収めた。98年の選挙で、ブラジル大統領カルドソはレアルの対米ドル固定相場制を主張することとなった。


■大都市で問題となり続ける犯罪

 ブラジルでは常に犯罪が問題となっており、それは「シティ・オブ・ゴッド(City of God)」という映画で鮮明に表現されている。この映画はリオ・デ・ジャネイロのファベーラなどのスラム街が舞台である。ある資料によると、毎日100人以上のブラジル人が銃で殺害されているという。

 03年12月、銃器保有と装備についての制限が導入され、サンパウロ(ブラジルで最も暴力に溢れた都市のひとつであろう)では、銃弾に倒れた人の数は04年の間で22%減少した。ところが不幸なことに、銃販売禁止法案は国民投票で否決され、国全体としては引き続きこの銃問題を抱えている。

 私が話をした、ブラジル訪問経験のあるほとんどの人が、強盗の被害にあったり、もしくはそういった話を耳にしている。私自身は、コパカナーバ・ビーチを歩いていたときに、強盗に遭ったことがある。そのとき、私の隣にいた人が、後ろから近づいてきた男にポケットをひったくられた。男は走り去り、私たちはそいつを捕まえることができなかった。


■経済を安定させた通貨管理

 06年10月には、上院選(一部)、下院選、州議会選だけでなく、大統領・州知事選も予定されている。

 現大統領であるルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァ(略してルラ)は非常に成功を収めてきた。世論調査の結果や、その強い人気を考えれば、ルーラ大統領が再選されるだろう(※実際、再選された)。

 彼は経済安定策(インフレ目標、連動為替レート、財政規律)を維持すると考えられる。

 ただし、ルラ政権は政府高官や前蔵相のアントニオ・パロッチら大物を含むスキャンダルの処理に多くの時間を費やしている。パロッチは贈収賄関与の罪に問われ、辞任させられた。彼は今なお取り調べ中だ。ただし、後任者は慎重な経済政策を維持している。

 大統領選では、前大統領フェルナンド・エンリケ・カルドーゾ(任期95〜02年)の所属する政党であったPSDB(ブラジル民主社会党)は対立候補として前サンパウロ州知事のジェラルド・アルクミンを擁立した。

 PSDBが政権を取れば、改革政党として私有化、投資を促進すると思われる。しかし、現時点の世論調査ではアルクミンが選出される可能性は低い。ルラのかつての盟友であったPSOL(社会主義自由党)のエロイザ・エレナは、現時点では出馬を表明していない(※実際は立候補したが、第一回投票で敗退した)。

 誰であろうと、この選挙で選出された者はブラジルという国を統括する。この国の経済環境は以前に比べて非常に良くなっている。引き続き我々は、リオのオフィスを通じてブラジルの状況を注視していきたい。


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(出所:Yahoo Japan)
モビアス博士の来日講演
第5回ご愛顧特別感謝祭 投資戦略フェア2007
多数のご来場ありがとうございました。

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