■目次

監修者まえがき
まえがき
謝辞
序文
第1章 基本原則


序文
 ボラティリティ以外の要因
 コンピューターの革命とトレーディング
 情報端末の進歩
 国内外の政治的背景
 デイトレーダーの責務と目標
 本書について
 「大風呂敷」に用心すること
 勝者と敗者を分けるもの――成功の資質
 本書でできないこと、したくないこと
 大げさに主張はしない
 過去の結果
 各自で調査すること
 実践
 トレーディングを始めるにあたって
 トレードのリスクと損失

第1章 基本原則
 用語の定義

第2章 デイトレーダーとは何か
 デイトレーダーは何をトレードするのか?
 なぜデイトレードするのか?

第3章 システム検証の錯覚
 システム開発
 トレーディングシステムとは何か?
 何を伝えようとしているのか?
 マーケットの変化――マーケット参加者の変化
 問題解決の努力
 人工知能の役割
 将来への影響

第4章 移動平均でデイトレードを行う
 移動平均について
 従来型の移動平均システム――利点と欠点
 移動平均のクロスオーバー――価格と移動平均
 支持線と抵抗線

第5章 ストキャスティックスを適用する
 ストキャスティックスについて
 基本的なストキャスティック指標
 ストキャスティック指標タイミングの基本的アプローチ
 日中のストキャスティック・ポップの定義
 ストキャスティック・ポップのパラメータ
 ストキャスティック・ポップがうまくいくマーケット
 ヒットエンドランのトレード
 ストキャスティック・ポップのバリエーション
 何が期待できるか?
 ストキャスティック・ポップに適したマーケット

第6章 ギャップ、ギャップ、ギャップ
 ギャップのトレーディングルールと定義
 ギャップのテクニックについて
 経験を積もう
 ギャップのサイズと突き抜けのサイズ
 現実的に期待できること
 ストップオーダー(逆指値注文)について

第7章 支持線と抵抗線――移動平均チャネル(MAC)
 移動平均チャネル
 支持線と抵抗線の展開
 トレンド、支持線、抵抗線を判断する
 確立されたトレンドでのトレード
 ポジションの手仕舞い
 保ち合いでのトレード――チャネル内でのトレード
 警告と提案
 チャネルテクニックとほかの手法との併用
 移動平均チャネルの評価

第8章 ワイルダーのRSIを使用したデイトレーディング
 一番目の派生指標(一次導関数)の定義
 RSIを使用したデイトレーディングのルール

第9章 日中のモメンタム

第10章 日中のROC

第11章 日中のチャネルブレイクアウト
 チャネルブレイクアウト・システムについて

第12章 従来型のテクニカル分析とデイトレーディング
 トレンドラインの分析
 トレンドラインの適用例――チャートフォーメーション

第13章 デイトレーディング固有のオシレーター
 始値と終値
 日中トレードにおけるO/Cの構成
 シグナルの検証

第14章 スキャルピング
 スキャルピングとは何か?
 スキャルピングのルール
 スキャルピングの方法
 大幅下落で買い、大幅上昇で売る

第15章 注文の重要性
 成行注文
 条件付き成行(MIT)注文
 フィル・オア・キル(FOK)注文(即時執行注文)
 ストップオーダー(逆指値注文)
 ストップリミット・オーダー(指値条件付逆指値注文)
 グッド・ティル・キャンセル(GTC)注文(オープン注文)
 ワン・キャンセル・アザー(OCO)注文
 注文をうまく利用する

第16章 季節性がマーケットに及ぼす影響
 主な季節要因日の定義
 主な季節要因日の活用方法
 日々の季節傾向

第17章 日中のスプレッド取引
 事前選択――スプレッド・デイトレードで利益を上げる秘訣
 スプレッドのデイトレーディングの手法
 現実的な期待

第18章 CCシステム
 定義とシグナル
 CCシステムの効果

第19章 センチメントの支配
 センチメントの定義
 デイリーセンチメント指数――短期トレーディングに最適
 これまでの経緯
 デイリーセンチメント指数のデイトレード適用例
 マーケットセンチメントの関係を図示する
 マーケットセンチメントの重要性
 デイリーセンチメント指数の過去のデータ

第20章 CTOD(決定的瞬間)
 基本的なCTODのシグナルとパラメータ
 CTODを使用するときのコツと提案

第21章 いろいろ組み合わせてトレードする

第22章 デイトレーディングの心理学
 成功に必要な自己規律

第23章 24時間トレーディングの影響

第24章 デイトレーダーとして成功する20のヒント

付録
 公式

■監修者まえがき

 デイトレードという言葉が日本でも人口に膾炙し始めてから数年になるが、それは近年の手数料の自由化と情報通信技術の発達、安価で高性能なPCの出現によって成立した素晴らしい売買手法である。幸いなことに私には周囲に何人ものデイトレーダーがおり、皆それぞれのやり方で成功を収めている。ここで彼らの例を引くことで、デイトレーダーの実際を少々紹介したい。断っておくが、以下に挙げる3人は私が毎日のように話をする実在の人物であり、皆日本のマーケットでデイトレードを行っている。  デイトレーダーを志して会社勤めをやめたA氏は、わずか数カ月でトレードだけで生活していけるようになった。しかもそれをほとんど独学でなしとげたのである。彼は現在も着実な成果を上げ続けているとともに、デイトレードへの果敢な挑戦とデイトレーダーであることの自由を楽しんでいる。  本書で著者のバーンスタインはデイトレードにおける人工知能の可能性について指摘しているが、優秀なビジネスマンでもあるB氏はデイトレードにニューラルネットワークを使っている。そしてPCが計算した「明日のトレード」を毎日私に電子メールで送ってくれており、そのとおりに翌日トレードして利益を上げるという驚くべき世界を実現している。  優秀なエンジニアでもあるC氏はデイトレードを売買の中心に据えてから一気に運用利益が増えるようになった。彼は現在高級マンションの最上階に住み、毎日わずか数分をデイトレードのために使うだけで、一般的なサラリーマンの何倍もの収入を得るという夢のような生活を送っている。  さて、デイトレードとはけっして私たちに手の届かないものでもなければ、一過性のブームで終わるような現象でもない。それはマーケットでの成功を志す個人投資家にとって、最も大きな可能性を秘めている分野であると言える。なぜなら高いパフォーマンスの可能性があるばかりではなく、リスクを極めて小さく抑えることができるからである。この点に関しては本文中でも何度も指摘されており、デイトレードの最大の魅力となっている。ところで、最後に引き合いに出したC氏には翻訳して世に出してほしくない書籍が2冊あったという。
1冊はリンダ・ブラッドフォード・ラシュキ女史
による“Street Smart”(邦題 『魔術師リンダ・ラリーの短期売買入門』パンローリング刊)であり、もう1冊は本書の“The Compleat Day Trader”である。  今回、優れたデイトレードの教科書として知られていた本書をこうして出版できるにあたって、以下の方々に心から感謝の意を表したい。岡村桂氏は特異な分野に特化した本書に対し、丁寧で分かりやすい翻訳をしてくださった。阿部達郎氏は本書の版権獲得に根気強く取り組んでそれを実現するとともに、丁寧な編集・校正を行っていただいた。またパンローリング社社長の後藤康徳氏はいち早く本書の価値を見抜き、われわれに翻訳のチャンスをもたらしてくれた。なお、本書の翻訳・出版は私個人にとっても足掛け5年に及ぶ仕事であり、今回こうして具現化できたことは喜びに堪えない。

 2003年2月
                        長尾慎太郎

■まえがき

 先物トレーダーたちがデイトレーディングに魅せられてから、ずいぶん長い年月がたっている。マーケットのボラティリティが高くなると1日の値幅も大きくなり、デイトレーダーに対して多大な機会を提供した。  機会が増えただけでなく、低価格のコンピューターやソフトウエアが利用できるようになると、プロのデイトレーダーと初心者の差があまりなくなった。  本書では、さまざまなデイトレーディング手法を紹介している。ぜひとも時間をかけて、その手法を学習し、研究し、追求してほしい。そして使用してみたいテクニックが見つかったら、トレードを始めてみよう。ただし、十分に学習しないうちに飛び込んではならない。  本書を読む前に、大切なポイントをひとつ伝えておこう。一瞬でも、デイトレーディングが簡単だなどとは思わないでほほしい。それどころか、デイトレーディングは、ポジショントレーディングより難しいかもしれないのだ。デイトレーディングは、多くのトレーダーが求めている「朝飯前」のようなトレードではない。たいした努力をしなくてもデイトレーディングで金持ちになれるなどと言う人がいたら、それは間違っている。デイトレーディングは、1にも2にも努力なのである。努力をすれば、利益を得ることができる。非常にシンプルであると同時に、非常に難しいのだ。  皆さんの健闘を祈る。私にできることがあれば、いつでも遠慮なく質問してもらいたい。

                 ジェイク・バーンスタイン

■序文 Introduction

 先物取引の世界では、短期の投機が幅を利かせるようになってきた。古き良き時代には、マーケットはゆっくりとそして堅実に目標に向かっていたか、あるいは長期にわたって横ばいを続けていたものだった。しかし、今では状況が変わってしまった。1970年代初めごろから、ほぼすべての先物市場が変動的になり、値動きの時間は確実に短くなってしまった。  「大きな利益はポジションを長く維持することによってのみ得られる(the big money is made in the big pull)」という格言がもはや当てはまらなくなった、と言っているのではない。もちろん今でも言えることである。そして今後も、大きく長期的な値動きは生じるだろう。何が変わったかというと、短期的なボラティリティが非常に高くなり、ストップロスを大きく定める必要が生じ、そのためにトレーダーはこれまでにないほど多額の資金をリスクにさらすことになった、という点である。ポジションを長く保有すると確かに大きな機会に結びつくが、これまでにないほどのリスクを伴うことにもなる。  ボラティリティは天使にも悪魔にもなる。ボラティリティが高いと、リスクを限定しようとして利益のほうはあまり期待できなくなるが、一方で、膨大な短期トレーディングの機会をもたらしてくれる。現在、ほぼすべてのマーケットには大きな利益を上げる可能性が潜んでいる。ボラティリティが高くなる前は、短期トレーディングやデイトレーディングで利益を得られるのはフロアトレーダーだけだった。今では、すべてのトレーダーにその機会が開かれている。しかし、機会があるということはリスクがあるということでもある。リスクをとらなければ利益を得ることもできない。ボラティリティがないマーケットにはデイトレーディングの機会もないのだ。

ボラティリティ以外の要因

 ボラティリティの上昇のほかにも、1970年以前にはほとんど見られなかったさまざまなファンダメンタル要因が先物市場の原動力となった。なかでも、手数料の低下とテクノロジーの発展の影響は大きい。  ブローカーと手数料が交渉できるようになったり、ディスカウントブローカーが出現したことで、すべての先物トレーダーと先物オプショントレーダーに巨大な新しい分野が開放された。ブローカーのアドバイスや情報や「フルサービス」を必要としないトレーダーは、手数料を大幅に節約することができるようになった。そのため、小さな値動きで頻繁にトレーディングできるようになった。先物取引において、手数料は最大の出費である。つまり、手数料は先物トレーダーの収益を左右する要因なのだ。残念なことに、極めて重要なこの事実に気づいているトレーダーは少ない。システムの限界、トレーダーのミス、スリッページ、手数料コストによる損失は、すぐに大きな金額に膨れ上がってしまう。そして年度末になり、トレーダーは、手数料などに支払った金額を目の当たりにして面食らってしまうのだ。  しかし、手数料を大幅に削減することができるようになったため、短期トレーダーやデイトレーダーはよりアクティブに、より有利に、そしてよりアグレッシブにトレードすることができる。このように、1980年以降に短期トレーディングやデイトレーディングが伸びてきた背景には、手数料の割引が最も重要な役割を果たしているといえよう。

コンピューターの革命とトレーディング

 リテールトレーダー(つまり、プロでないトレーダー)に対する手数料コストの根本的な改革に加え、コンピューターのテクノロジーに革命が起こった。1980年代半ば以降、家庭用コンピューターは機能が向上し、効率的になり、値段も手ごろになった。最先端のPCシステムの値段が着実に低下する一方で、そのクオリティーと処理能力は大幅に向上した。1983年時点では10万ドル(さすがにそれ以上ということはないが)もした高性能コンピューターも、今では数千ドルもあれば購入することができる。  しかし、コンピューターというのはソフトウエアに忠実に作動するだけである。つまり、ソフトウエアのプログラムに限界があるとコンピューターの機能も制限されてしまうのだ。1980年後半以降、PC向けに設計されたソフトウエアが著しく増大した。高性能コンピューターの画期的な発展は、科学、文学、数学、投資などほぼすべての分野に影響を及ぼした。高性能コンピューターのハードウエア、ハイレベルのソフトウエア、低コストのコンピューター・メモリーといった要因が組み合わさり、先物取引に新しい時代が到来したことを告げた。J・ピーター・ステイドルマイヤーのコンセプトを拝借し、私はこれを「インスタンティズムの時代」と呼ぶ。

気配値システムの進歩

 インスタンティズムの世界を冒険しようとしている人は、ティック単位のデータからディレイドデータや大引け後のデータに至るまで、あらゆる情報を提供するさまざまな気配値サービスを自由に活用している。コンピューターにアクセスすれば、正確な気配値サービスを手ごろな価格でいつでも受けることができる。ティック単位のデータがリアルタイムで入手できるようになると、フロアのピットブローカーやオフ・ザ・フロアのプロのトレーダーが長年独占していた分野に一般人も多数参加できるようになった。さらに、短期トレーディングやデイトレーディングの参加者の裾野も広がった。それと同時に流動性も高まり、短期トレーディングやデイトレーディングが促進された。

国内外の政治的背景

 前述のテクニカル要因とファンダメンタル要因のおかげで、1980年代初め以降、先物市場において短期トレーディングやデイトレーディングが促進されたが、国内外の政治や経済が不安定だったことも相乗効果となった。OPEC(石油輸出国機構)の石油禁輸措置によって世界情勢は不安定になり、この20年の間に、ほぼすべてのマーケットに影響を及ぼした。つまり、ほぼすべてのマーケットが、国際的な政治不安や策謀の影響を受けたのだった。  アメリカでは、1975年から1981年にかけて景気がピークに達していたため、かつては尊ばれていた国内機関投資家の安定性は脅かされ、トレーダーや投資家の信用も当然低くなってしまった。その不安定性は、比較的限定的な期間ではあったが、非常に感情的なマーケットや短期間の激しい値動きを引き起こした。  1987年と1989年に株式市場が暴落(1992年にも、これより規模は小さいがやはり暴落した)すると激しい価格変動が生じ、トレーダーたちはパニックになり不安に陥ってしまった。このパニックは、既存の機関投資家の信用が低下したこと、そして政府が経済問題を調整できなくなってしまった結果として生じたものであった。

デイトレーダーの責務と目標

 私の役割は、短期トレーディングやデイトレーディングの発展を促進してきたさまざまな要因について分析したり説明したりすることではなく、事実を認めること、そしてそれをどのようにしてデイトレーディングに生かすかを皆さんに教えることである。値動きのいわく因縁を理解することがデイトレーダーの仕事なのではない。デイトレーダーの責務とは、次の3点に絞られる。
  1. 毎日を「フラット」で締めくくること、つまり毎日ポジションを手仕舞いすること
  2. 多少を問わず、利益を上げること
  3. 損失を最小限に抑えること
 このような責務を持ちながらも、原因を問わずあらゆるマーケットのボラティリティを利益機会としてとらえなければならない。私たちは、マーケットで何が正しいかということを証明する者でもなければ、物事のあり方を判断する教師でもない。私たちは、この3つの信条に忠実であること、そして本書の核心となる3つの目標を達成することに関心があるのだ。その目標とは以下のとおりである。
  1. デイトレーディングによって堅実かつ大きな利益を上げること
  2. 経験豊富で優秀なデイトレーダーになること
  3. デイトレーディングの目的を達成するために、規律がありビジネスを優先としたアプローチをとること

本書について

 本書の目的は、すべてのデイトレーダー、デイトレーダー志望者、その他の関係者に対して、デイトレーディングで成功する原則を伝えることである。そして私の目的は、簡単な手法、指標、ガイドラインを提供するためにデイトレーディングの基礎を説明することである。本書が皆さんの利益に結び付くことを切に願う。本書はデイトレーディングの手引書や「楽勝」本ではない、ということを覚えておいてもらいたい。トレーダーとしての長年の経験から、私は、効果的なトレーディングは学習によって獲得できるものであり、多くのトレーダーが効果的なトレーディングを学習できる、と確信している。ただし、仕事をきちんとこなし、経験豊富で、頭脳明晰で、そして何よりも専門の教師から学ぶ、ということが必須要件である。  トレーダーとしての経験から、デイトレーディングで成功するには芸術と科学をうまく組み合わせなければならない、という結論にたどり着いた。両方の要因の配分を「見積もる」と、デイトレーディングの成功の70%は科学(テクニック)、30%は芸術(スキル)で構成されているといえよう。しかし、両者は共生するものであり、一方だけでは効果を発揮しない。その相乗効果によって利益と一貫性と継続性が生じ、デイトレーダーとして成功するのである。

「大風呂敷」に用心すること

 先物市場の初心者は、勝ち星の少ないトレーダーや最新のシステムを開発した人の成功の自慢話を何度も聞かされたことだろう。しかし、それはすべてくだらないたわごとである。先物市場で初めてトレードする人にとっては、わくわくするような話かもしれない。マーケットがあるかぎり、そしてそこでトレードする人がいるかぎり、この手のほら話は存在し続けるだろう。しかし、それに惑わされてはいけない。また、他人と比較してもいけない。他人と比較するとフラストレーションがたまり、損失につながりかねないからだ。  私のアドバイスは、「自分とだけ比較する」ということだ。他人のルールで他人と競っても、負けることは目に見えている。デイトレーディングで成功する究極の要素は、自分が得意なことを見つけ、それを継続して実施することである。ただし、これは覚えておいてほしい。デイトレーディングはけっして楽な仕事ではないし、おいしそうなレシピを見つけてそのとおりに作ればよいといった簡単な作業でもない。

勝者と敗者を分けるもの――成功の資質

 当然ながら、デイトレーディングはどの人にも適しているというわけではない。デイトレーダーとして成功するか失敗するかを左右する資質があるのだ。長年の経験から得たデイトレーディングのテクニック、システム、手法について説明する前に、デイトレーダーとしての成功を促進したりそれを妨げたりする資質について説明しよう。これから紹介する事柄は、マーケットだけでなく生活のあらゆる場面に当てはまることである。  本当に成功するためには多くのスキルを必要とするが、それは簡単に習得できないものである。厳しい試練が待ち受けているかもしれないが、長期的に見ても短期的に見ても、その努力は価値のあるものとなる。なぜならば、職業が違うとスキルも変わるからだ。しかし、必ずしも優秀なエンジニアが優秀なトレーダーになれるというわけではない。同様に、エンジニアとして不適当な人はトレーダーとしても不適当だというわけでもない。私がこれまで見てきたかぎりでは、職業の選択と先物市場で成功する可能性との相関性はそれほど高くない。では、トレーダーに必要と思われる資質について説明しよう。

フレキシビリティ

 柔軟性に欠けるということはルール以外のことを考える能力を身につけていないということであるため、先物トレーダーとしてうまくいかないことが多い。仕掛けは非常に明確であり、説明もそれほど必要としない。しかし、手仕舞いは限定的で実務的な手順が必要であるのに、直観的に行動していることが多い。したがって、本書で規律、根気、秩序、遂行能力(フォロースルー)などの資質について言及するときは、融通が利かないという意味で表現しようとしているのではない。  デイトレーダーが持つべき最大の資質は、フレキシビリティ、つまり順応性である。ただし、本書の解釈、トレーディングシグナル、ガイドラインの範囲内にフレキシビリティをとどめておかなければならない。トレーダーは、マーケットに関する新しいアイデアに対してフレキシブルであるだけでなく、1日のマーケットで展開される状況にもフレキシブルでなければならない。このように、フレキシビリティは重要な資質であるが、残念ながら、教わるというタイプのものではない。フレキシビリティについていくつかのアイデアを提供するので、必要に応じて皆さんのトレーディングスタイルに合わせて調整してもらいたい。  デイトレーダーとして成功するには「フレキシブルでありつつ堅実」でなければならない、といえよう。言い換えると、ルール、シグナル、タイミング指標を理解しなければならないが、一方で、自分自身やマーケットについての解釈との折り合いをつけながらこれらを適用しなければならない。このことについては、以降の章で明らかにしていくことにする。

一貫性

 デイトレーダーが成功するのに持つべきもうひとつの資質は、一貫性である。一貫性とは、望ましい結果を得るために、テクニックを使用し続けるかぎり特定のプログラムやトレーディング法に従うことができるということと、それに進んで取り組むということである。言い換えると、本を読んで役立つ事柄を学んだら、それがうまくいかなくなるまで、あるいはゆっくりではあるが確実に効果が薄れてきたと感じるまで続ける、ということである。手法を改善しようとして多くの時間を費やしているトレーダーがあまりにも多い。実際のところ、マーケットで一貫してうまくいく方法は少なく、うまくいったとしても一定の水準以上に改善させることは困難である。「壊れていないのなら、それを直してはならない」のだ。一貫性は非常に重要な資質であり、デイトレーディングで成功したいと考えるならば、この資質の啓発に努めなければならない。

忍耐

 忍耐も重要な資質である。運命の転機を忍耐強く待つためには、損失の連続にも耐えられなければならない。しかし、忍耐強すぎるのは考えものである。忍耐強すぎることは致命的な欠点にもなりかねない。損失を抱えているポジションに執着しすぎると、デイトレーディングの基本的ルール、つまり、損失を翌日に持ち越さないというルール(さらに言えば、ポジションを持ち越さないというルール)に違反するのだ。いかなる場合でも、できるだけ素早く効率的に損切りしなければならない。当然のことながら、損失を迅速に除去して最低限の金額に抑える一方で利益を最大限に伸ばす、という考えが根底にある。

自制心

 自制心を持つこと、あるいは自制心を培うことも、デイトレーダーとして成功するのに重要な資質である。1日のうちに、文字どおり何百という取引機会があるだろう。利益を上げられる機会かどうかということは、前もって分かるものではない。見掛け倒しの機会も多い。  さらに、デイトレーダーが利用できる機会は限られている。そのため、デイトレーダーは、その日のイベントを判断して適切な行動をとるための行動計画を立てることから1日を始めなければならない。ただし、予期しないイベントを見過ごしてしまうような限定的な計画を立ててはならない。価値のない機会や損失につながるような機会をあらかじめ排除し、最大の可能性を秘めていると思われる機会に注目するのだ。  このような判断をするのに、本書で説明する事柄が役に立つことを切に願う。デイトレーダーの仕事は猟師の仕事に似ている。デイトレーダーも猟師も、攻撃手段が限られている。猟師の手段は、弾薬、矢、武器である。デイトレーダーの手段は「資金」である。役に立たない獲物を追い求めると、資金も武器もすぐに使い果たしてしまう。また、トレーダーも猟師も、無益な活動にかかわっていると、もっと大きい獲物が現れたときに攻撃手段がなくなってしまう。デイトレーダーは、忍耐強く規律正しく、究極の目的を待たなければならない。そして機会が現れたとき、計画に従ってやり遂げなければならないのだ。

1日の終わりに手仕舞い

 大引けで手仕舞いができる、ということも重要な資質である。ベテランの先物トレーダーは、長期のポジションのことをジョークで「損をして1日を終えるデイトレード」と定義している。この言葉には、最初はデイトレーダーとしてポジションを建てるのだが、大引けで損を出していることが分かると、それを翌日に持ち越して損失を拒否しようとするトレーダーが多すぎる、という教訓が込められているのだ。1日単位でトレードするより利益が大きい、と言い訳する人もいるかもしれない。ポジション(特に損失を抱えたポジション)を持ち越すということは、デイトレーダーにとって最大かつ唯一の防御となるかもしれない。しかし、最も手痛いルール違反になることも多いのである。

損失の容認

 デイトレーダーとして成功するには、損失をどのように受け入れるか、そしてこのルールに違反していることをいつ認識するかということを学ばなければならない。これについては非常に明確で簡単な方法があるが、のちほど説明する。デイトレーダーは、フラストレーションをためることもなく、無謀な望みを持つこともなく、1日の取引終了時の結果(勝ちでも負けでも、トントンでも)を潔く受け入れなければならない。人間というのは常に過去を振り返る生き物であり、別なやり方ですればよかったなどと後悔するものだ。「別なやり方ですればよかった」ということが当てはまる場合が多いのだが、それは建設的な考えではない。損失を経験すると、適切に対処するということを学習できる。適切なタイミングで損切りできれば、どの損失もレッスンに結びつき、大切な「何か」を教えてくれるだろう。システムや手法の公式を当てはめて損失金額を見積もったとしたら、システムに従うということを学習しているだろう。しかし、ルールどおりのタイミングで損切りをしなかったために損失が大きくなったとしたら、システムに逆らうとその失敗は高くつく、ということを学ぶだろう。

毎日の結果分析

 デイトレーダーは、毎日の結果について分析する正式な手順を定めなければならない。分析することで、利益を上げていても損を出していても、それぞれのトレードから最大限の学習効果を得ることができる。もちろん、ある程度の秩序と一貫性が必要である。「トレーディング日誌」をつけることについては、あとで詳しく説明する。今の段階では、日誌をつけていない人はとりあえずつけてみることを勧める。大引け後(取引時間中でも構わない)に簡単なコメントを書き記してみると、どれほど大きな効果があるかが分かるはずである。ほんの数分の手間で、文字どおり数百倍もの代価を得ることができるのだ。

本書でできないこと、したくないこと

 ほかの本では、読者のために何ができるかということを熱心に説明していることがある。しかし私は、皆さんのために何ができるかということだけでなく、何ができないか、何をしたくないか、ということについても説明したい。皆さんが非現実的な期待を持ったり、とりとめもない空想にふけらないように、あえて本書の初めに断っておく。本書は、秘密の財宝の地図でもなければ、トレーディングで成功する秘訣の指南書でもない。私が知っている秘訣や貴重な情報についてはお教えするが、行動を伴わない秘訣、あるいは方向性や一貫性のない情報は、博物館の動かない展示品でしかない。  「本書を読めばデイトレーダーとして巨万の富を築くことができる」などと主張したりはしない。本書はそのようなことを保証するものではない。保証を求める方は、ほかの本をあたっていただきたい。私が保証できることは、本書のアイデア、システム、手法、指標、提案を理解すれば成功する可能性がある、ということだけである。潜在的なエネルギーを実際のエネルギーに変えるのは、皆さん自身なのだ。  私は、先物トレーダーならびに株式トレーダーとして25年間の経験を積んできた。私がそこで得た知識を皆さんも身につけたいと考えるなら、本書を読むことをお勧めする。本書は、皆さんを教育し、指導し、支援し、物事を解説し、成功への道を照らすだろう。しかし、皆さんに代わってトレーディングしたり、皆さんの懐や銀行口座を豊かにしたり、誤った保証をしたりするものではない。自転車のこぎ方について教えることはできるが、皆さんに代わって乗ることはできないのだから。  トレーダーとしての経験を多少なりともお持ちの方は、先物取引で一貫して成功を収めるのは至難の技であるということを認識しているだろう。成功を収められるのはほんの一握りしかいないのである。その理由については、あとの章で明らかにしていく。トレーダーとして成功するということはトレーダーにとって最も難しいことである、ということを皆さんにはっきりと説明する。自己を改善するテクニックや手法を教えて皆さんの成功を促進し、最終的にはデイトレーダーの成功者に名を連ねさせることが、私の目標なのである。

大げさに主張はしない

 デイトレーダーが何を達成できるのかということについて、誇張した言い方はしない。先物取引は「天井知らず」であるとは言うものの、利益を最大限に伸ばすのはトレーダー次第である。私は、長年の経験で得たテクニックを教えるガイドでしかない。本書では非現実的な主張はしない。そのようなものを望む方は、くだらない考えを載せた雑誌を読まれるか、ジャンクメールに目を通されるとよいだろう。むしろ、皆さんが成功したときに気分良く驚くことができるように、私はトーンダウンして伝えてきたつもりだ。期待を小さく持って、結果に満足するほうがよいではないか。長年にわたって、多くの無節操な投機家たちが一般大衆を食い物にし、気まぐれな主張を繰り広げ、人間の欲望という弱みに付け入ってきた。本書では、けっしてそのようなことを主張しない。

過去の結果

 本書では、過去の結果や統計概要をたくさん載せている。特に明らかにしていないかぎり、できるだけ最新の情報を提供するようにしている。ただ、統計数値は時とともに変わっていくということを皆さんに警告しておく。そのため、皆さんが独自に調査をしたり、私の事務所に問い合わせたりして、適宜更新する必要がある。どの数値を適用したらよいかという質問がある方は、いつでも質問して構わない。  また、例として挙げている内容は主にそのときの市場活動に基づいている、ということを覚えておいていただきたい。過去の例については簡単に探すことができたため、私の論点を完璧に説明することができた。しかし、あくまでも典型的な例であって、誤解を招くこともある。デイトレーディング(デイトレーディングだけでなくどのトレーディングに関してもそうだが)の現実は、紙上の現実とは異なる。このことを心に留め、そして何よりも現実主義者として本書から飛び出してもらいたい。

各自で調査すること

 私は常々、トレーダーが各自で調査することを奨励している。現在の先物市場に適用できるアイデアはたくさんあるため、だれ一人として調査を一人占めすることはない。マーケットに対する見解はトレーダーによって非常に異なり、トレーダーごとにまったく異なる方法論や応用法を展開させることになる。本書で紹介するアイデアのなかには、皆さんの心にフィットするようなコンセプトや手法もあるかもしれない。私の言葉にとらわれたり私の言葉を負担に感じたりしないでほしい。私の言葉を起点として各自の調査に取り組んでほしい。もちろん、私が説明するテクニックが役に立つと思ったら、それを利用したりそれぞれの目的に合わせて取り入れても構わない。  皆さんからの意見をいつでも歓迎している。私が紹介したテクニックについてフィードバックしてくださったり、私の提案を改善して新しい方法論を導き出してくださることは、なおさら歓迎である。自分でトレーディング手法を編み出して、それをほかの人と分かち合いたいと思われる方は、ぜひご連絡いただきたい。

実践

 実践は極めて重要なことである。本書で説明する指標、コンセプト、トピックを実行に移そうと考えているなら、実践は必要不可欠である。できるだけ早くそしてできるだけ多く、リアルタイムでの実践をするべきだ。本でデイトレードを学ぶということは、自転車の乗り方の本を読むようなものである。実際に自転車に乗ってこぎ始めなければ、私が伝えようとしていることは具体的な利益につながらない。私の言葉にのっとった行動を皆さんが理解するまでに、何度も自転車から転げ落ちないことを願うばかりだ。

トレーディングを始めるにあたって

 どのような投機でもモチベーションと持続性を持つことは不可欠であるが、スタートを切るうえでそれ以外に特に必要なものはない。ただし、必ず役に立つ事柄をいくつか提案しておこう。
  1. ゆっくり読むこと。主題は単刀直入で簡単に思えるかもしれないが、ゆっくりと読むことを心掛けてほしい。まずは一般的なアイデアを理解し、そして2回目3回目で詳細に目を配るのが望ましい。
  2. 各自の知識を例に当てはめること。私が例を示した個所では、皆さんがこれまでに学んできた事柄を当てはめてみて、確実に理解してもらいたい。
  3. メモをとること。ページの余白でも別のノートでも構わないので、メモをとることを勧める。メモをとると、データを理解して覚えておくのに役立つからだ。
  4. 学習した事柄をマーケットで利用すること。コンセプトを理解したらそれを実際のマーケット環境で観察して、どのように機能するか、そしてトレーダーとしてのニーズに一致しているかどうかを判断してもらいたい。

先物取引のリスクと損失

 CFTC(商品先物取引委員会)やNFA(全米先物協会)など、先物市場を監督する規制当局は、会員に対して特定の要件を課してきた。当局の規制に従わないと、除名されたり懲戒されたり、あるいは罰金を払わなければならない場合もある。皆さんはこの事実を認識されていることとは思うが、(知らない方のために)先物取引には損失リスクを伴うということを警告しておく。  法によって定められているため、次のただし書きを添えておく。

CFTCでは、次のように供述することを定めている。警告――仮説上の実績またはシミュレーションの実績には一定の限界がある。実際の記録とは異なり、シミュレーションの実績は実際のトレーディングを表すものではない。また、トレーディングを実際に行ったわけではないため、非流動性などの市場要因の影響を補正している場合がある。一般的に、シミュレーションのトレーディングプログラムも、あとになって判断してみれば計画どおりの事実に従っているものである。どのアカウントに関しても、利益を上げたり損失を出したりする可能性について説明はしない。先物取引において損失リスクはつきものである。各自の財務状況に照らして、そのトレーディングが適しているかどうかを慎重に判断しなければならない。過去の実績は将来の結果を暗示するものではない。先物取引では損失リスクを伴うのだ。

 さらに、本書で利益の可能性について言及するときは、リスクの可能性についても繰り返し言及する。皆さんはリスクについてすでに認識されていることと思うので、それを繰り返し説明するのはいささか心苦しい。スペースと時間の無駄であり、皆さんの理解力と私の理解力を侮辱するものである。ただ、私がしつこく警告した場合は、好んでそうしているのではなく、規制に従ってそうしているのだということをご理解いただきたい。

■第1章 基本原則

 デイトレーディングのテクニカルな面を深く掘り下げる前に、実務的な細かい点を説明する必要がある。まず、重要な用語を簡単に定義しておこう。先物市場では独特の用語が使われていて、これらなくして先物市場は機能しないし、トレードすることもできない。では、本書で使われる主な専門用語を見てみよう。これらの用語は、ほぼ頻出度の高い順に並べてある。

用語の定義

デイトレーディングとデイトレーダー

 時間とページの無駄だと思われる方もいるかもしれないが、混乱や誤解を避けるため、最初に「デイトレーディング」と「デイトレーダー」を定義する。驚いたことに、デイトレーディングとは何であるか、そしてどのような目的を達成するものなのかということについて、一般的な知識に欠けている個人投資家が非常に多い。  デイトレードとは、1日の時間枠で仕掛けて手仕舞いされるトレードである。(利益が生じたとしても)ポジションを翌日まで持ち越すことを意味するものではない。また、常に寄り付きで仕掛けて大引けで手仕舞いするとは限らないし、リスクを伴わないというわけでもない。デイトレードは、大引けまでにはその日の取引を終えている。次の取引セッションまでポジションを持ち越すのなら、当然それはデイトレードではない。日中どのようにトレードするかにかかわらず、真のデイトレーダーは、次の取引日までポジションを持ち越したりはしない。簡単に言うと、損失は損失、利益は利益なのであり、すべてのスコア(勝ちか、負けか、あるいはトントンか)がその日の終わりまでには確定していることを意味している。デイトレードでは、日中いつでも仕掛けることができるが、1日の終わりまでに手仕舞いしなければならない。

ポジショントレーダーとポジショントレーディング

 デイトレーダーとはデイトレードをする人である。デイトレーダーが翌日までポジションを持ち越したならば、そのトレードをデイトレードと呼ぶことはできないし、その人をデイトレーダーと呼ぶこともできない。一方、ポジショントレーダーはある程度の期間にわたってポジションを保持する。先物取引におけるポジショントレーダーは、株式取引における投資家に似ている。短期的な観点から相場を見ている場合でも、その期間は限月の一代の長さに限られているわけではない。  ポジショントレーダーであることに何ら問題はないし、もちろんデイトレーダーであっても何ら問題や面倒なことはない。しかし、自分に言い聞かせることについて、つまり自分の位置づけについては慎重でなければならない。そうでないと、それが有効だと思うようになってしまうからだ。デイトレーダーとは、一定の明確な行動計画に忠実に従う人のことである。この行動計画からはずれるということは、計画をくつがえすということである。計画から逸脱するということは、その原則を放棄するということであり、新たな期待を持つということなのである。たとえそれが最初の目標に矛盾するかもしれなくても、である。したがって、いったん行動計画を決定したならば、それに忠実に従わなければならない。  ポジショントレーダーになりたいと考えるなら、ポジショントレーダーとして行動し、デイトレーダーと名乗ってはならない。そうでなければ目的に混乱をきたすことになる。簡単に言うと、ポジショントレーダーに当てはまることは必ずしもデイトレーダーに当てはまるとは限らず、そして逆もまた同様である。例えば、ポジショントレーダーは、損失を出しているポジションでも最終的には利益に転ずるだろうと期待して、かなりの期間にわたってそのポジションを保持することがある。しかし、デイトレーダーにとって、これは非常に重大なルール違反である。  トレーダーは、時と場合に応じて異なった役割を演じたり、あるいは同時に多くの役割を果たしたりすることはできないのだろうか? もちろん可能だ。あとで説明するが、特定の体系と特定のルールに従っていれば、さまざまな時間枠で同時にトレードすることも何ら問題はない。しかし忘れないでほしい。本書は「デイトレーダー」のための本である。

短期トレーディングと短期トレーダー

 デイトレーダーやポジショントレーダーに対して、短期トレーダーとは、2〜10日間という比較的短期間の値動きを利用してトレードする人のことである。短期トレーダーがポジションを保持する期間については、明確な定義はない。短期トレーダーとポジショントレーダーの違いはそれほど明確ではない。デイトレーダーが厳格なルールに基づいて1日の時間枠でトレードするのに対して、ポジショントレーダーと短期トレーダーの時間枠は特に定義されていない。本書で説明しているテクニックの多くは、デイトレードだけでなく短期トレードにも応用できるだろう。短期トレードの売買システムや手法に興味がある方には、私の著書『ショート・ターム・トレーディング・イン・フューチャーズ(Short Term Trading in Futures)』を読むことをお勧めする(ご希望の方は、私のオフィスに問い合わせていただきたい)。

中期トレーディング

 中期トレーディングとは、通常数カ月にわたってポジションを保持するトレードのことである。このタイプのトレードを好むトレーダーやマネーマネジャー、投資家は多い。中期トレーダーは、比較的大きな値動きを取ろうとするものである。

長期トレーディング

 先物取引では、長期トレーダーは非常に少ない。ポジションを建てている限月が納会に近づくと、長期トレーダーは限月を乗り換えて何年にもわたってポジションを保持することもある。デイトレーダーの行動は長期トレーダーの行動と正反対である。長期トレードに興味がある方には、私の著書『ロング・ターム・トレーディング・イン・フューチャーズ(Long Term Trading in Futures)』を読むことをお勧めする(ご希望の方は、私のオフィスに問い合わせていただきたい)。

スリッページ

 スリッページは、売りや買いのストップオーダー(逆指値注文)を素早くこなしながら、急激に上昇したり下落したりするマーケットで生じる傾向がある。「スリッページとして100ドル差し引く」という場合、起こったであろうことをより正確に示すために、仮説上のバックテストにおけるすべてのトレードから100ドル差し引くことを意味する。したがって、スリッページが多発するマーケットでは、予想に反した価格や、注文価格から不当にかけ離れた価格で、注文が突然執行される傾向がある。

トレーディングシステム

 トレーディング手法、タイミング指標、トレーディングテクニック、マーケットパターンなどと違い、トレーディングシステムは整然とまとめあげられた方法論である。明確な仕掛けと手仕舞いの指標、ならびにさまざまなリスク管理(フォローアップのストップロス)の方法や手順などの実務手順(「ルール」と呼ばれる)もこれに含まれる。トレーディングシステムを実行する場合は、仕掛けと手仕舞いを示す明確なタイミングシグナルに従う。具体的でないマーケットテクニックや事前に決められた手順に従わないマーケットテクニックと区別するため、トレーディングシステムという用語をここで明確に定義する。  具体的な手順を示すため、トレーディングシステムの構成は厳格でなければならない。意図されたとおり、あるいは検証されたとおりにシステムが機能しているかぎり、理論的には、利益をもたらすトレーディングを導き出すはずである。しかし実際には、トレーディングシステムに従うトレーダーは少ない。システムに従ってトレードしているものと勘違いしているだけなのだ。自分のトレーディングシステムのルールに違反していることが多く、その行動はとてもシステマティックとは呼べない。この定義については、あとの章で詳しく解説する。  トレーディングシステムについての定義を締めくくるにあたって繰り返して言っておくが、「システム」で売買していると称する人がどのように考えるかにかかわらず、トレーディングシステムはシステマティックでなければならない。そうでなければ、それはトレーディングシステムではない。実際のところ、トレーディングシステムに従っているトレーダーはごくわずかしかいない。ほとんどのトレーダーはシステムでトレーディングを始めるのだが、マーケットに対して持っている自分の感情に合うようにシステムを変えてしまう。しかも、自分の心に頼った主観というシステム以外にはまったく従わない、ということもあるのだ。

タイミング指標とタイミングシグナル

 タイミング指標とは、ファンダメンタルかテクニカルかにかかわらず、仕掛けと手仕舞いのタイミング、あるいはマーケットの基調を成す状況(つまり、強気、弱気、ニュートラル)を客観的に示す明確なテクニック、と定義できる。タイミング指標は、タイミングシグナルとも呼ばれる。本書ではどちらの表現も使用する。  タイミング指標については、意図的に概括的に定義している。あとの章を読めばお分かりいただけるが、文字どおり何千というタイミング指標がさまざまな方法で使われる。タイミング指標は客観的でなければならない。つまり、解釈によって左右されるものではないのだ。解釈の仕方によって左右される指標は本当の指標ではない。それはむしろテクニックであるため、トレーダーごとに解釈が異なり、さらには同じトレーダーでも状況によって異なった解釈をする。本書では、タイミング指標、トレーディングテクニック、トレーディング手法を区別して言及する。

トレーディングテクニック

 タイミング指標、タイミングシグナル、トレーディングシステムと比べ、トレーディングテクニックはそれほど厳密ではなく、仕掛けや手仕舞いについてトレーダーが意思決定をするのに役立つ手順である。トレーディングテクニックは、一般的な仕掛けと手仕舞いのルールやリスク管理手順と組み合わせたタイミング指標から成り立っていることが多い。したがって、トレーディングテクニックはトレーディングシステムではない。むしろ、一般的には客観的であるがトレーディングシステムほど明確でも厳格でもないトレーディングのアプローチ、と言える。  実際には、ほとんどのトレーダーはシステムではなくテクニックに従っている。本書では、基本的にトレーディングテクニックについて説明するが、私のお気に入りのトレーディングシステムについてもいくつか紹介する。場合によっては、トレーディングシステムをトレーディングテクニックとして使用しても構わない。前に指摘しているように、実際にそうしているデイトレーダーやポジショントレーダーも多い。

仕掛け(参入)と手仕舞い(撤退)

 どのトレーダーもこの用語にはなじみがあるだろう。この用語についてすでに詳しく理解している方はこの定義を読む必要はない。仕掛けとは、ロング、ショート、スプレッドのポジションを新規にとることである。手仕舞いとは、保有しているロング、ショート、スプレッドのポジションを清算することである。仕掛けや手仕舞いの注文には多くの種類がある。これについてはあとで説明する。

最適化とカーブフィッティング

 最適化とは、過去のデータにトレーディングシステムをフィット(こじつけ)させる行為のことである。トレーディングシステム開発者は、過去のデータでうまくいったシステムのルールを編み出すためにシステムを最適化する。そのシステムは、過去にはうまく機能したように見えるが、実際にはそのデータに「フィットさせられた」のである。そのため、そのシステムは、将来はうまく機能しないことが多い。システムを検証する場合には、ある程度の最適化、つまりカーブフィッティングを伴うものである。カーブフィッティングについての見解はマーケット専門家の間で大きく異なっているが、そのようなシステムを使用しないように皆さんに警告しておく。

 ここで定義した用語は、本書で使用する一般的な用語である。ここで定義していない用語については、本書で出てきたときに定義する。皆さんがすでにご存じの用語を定義し直そうとしているのは、けっして皆さんの知性を侮辱つもりなのではなく、確実にコミュニケーションできるようにするためだということをご理解いただきたい。なぜなら、トレーディングシステム、トレーディングテクニック、トレーディング手法について明確に伝えるときにはこのことが非常に重要になるからである。さらに付け加えると、個人投資家は、最近広く使われている多くの用語を明確に理解していないことがある。


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