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『バイ・アンド・ホールド時代の終焉』
2006年3月16日発売
ISBN4-7759-7066-6 C2033
定価本体2,800円+税
A5判 上製本 310頁
著 者 エド・イースタリング
訳 者 関本博英
株式投資のハウツー本を読んだり、投資アドバイザーの意見を聞く前に、まずはこの本書を読んでほしい。今の株式市場が1980〜1990年代と、なぜ、どのように違うのかがよく分かる――一般投資家のみならずプロにもぜひとも読んでほしい啓発的な良書である。本書ではこうした変化をもたらした基本的な要因だけでなく、経済と株式の主要な指標を包括的に統合した独自の株価分析モデルによって株式の長期サイクルを詳しく分析している。またカラーのチャートや豊富なリサーチデータを駆使して、この5年間のマーケットの変化や現在の厳しい投資環境下でも利益を上げるにはどうすればよいのかを究明している。本書はいわば投資の科学とアートを絶妙に織り込んだものともいえるもので、今の株式市場に対する根拠のない願望と合理的なビジョンの違いがよく理解できるだろう。その内容は長期にわたる詳細なデータに基づいており、投資家がどのような投資アプローチを選択しようとも、本書から将来の合理的な株式投資のスタンスと展望のヒントが得られるだろう。
「投資家は株価が大きく変動することはよく知っているが、その背後にときに数十年にも及ぶ長期の上昇サイクルや下降サイクルが存在することはあまり理解していない。エドは本書のなかで、こうした長期相場がなぜ起こるのか、投資家はそうした局面でどのような投資スタンスを取るべきかについて貴重なヒントを提示している」――ロブ・アーノット(リサーチ・アフィリエイツ社会長兼フィナンシャル・アナリスツ・ジャーナル誌編集長)
「本書は株式市場の長期サイクルを分かりやすく分析した素晴らしい本である。本書を読めばマーケットのボラティリティをうまく抑えながら、厳しい投資環境下でもコンスタントに利益を上げる方法を知ることができる。真摯な個人投資家だけでなく、投資のプロにもぜひとも読んでほしいと思う」――ジョン・モールディン(ミレニアム・ウエーブ・インベストメンツ社長、『ブルズ・アイ・インベスティング』の著者)
「一般投資家の株式投資スパンのリターンを決定するさまざまな要因について、広く深くそして興味深い分析が加えられている。FRBの通貨政策アドバイザーとして特に興味があったのは、株式投資のパフォーマンスを大きく左右する要因としてインフレを詳しく分析したところである」――ハーベイ・ローゼンブラム(ダラス連邦準備銀行の副議長、リサーチ担当部長)
「この本は100年以上にわたる株式市場を徹底的に分析し、そこから将来のマーケットにどのように対処すべきかについて現実的なビジョンを提示している。そのベースとなっているのは経済と株式の主要指標を包括的に統合したユニークな株価分析法であり、真剣な投資家や証券市場を学ぶ学生にとって必読書である」――リチャード・シイラ(ニューヨーク大学スターン・ビジネススクールの冠講座教授[金融機関・市場歴史学]、『ア・ヒストリー・オブ・インタレスト・レート』の著者)
原書: UNEXPECTED RETURNS : Understanding Secular Stock Market Cycles by Ed Easterling
訳者まえがき(立ち読みページ) 謝辞 序文 第1部 始めに 第1章 旅の始めに 正しい観点 本書全体の10のキーポイント 第2章 原則 最後の準備 第2部 マーケットの歴史 第3章 株式市場の歴史 株式市場マトリックス――現実世界が見える赤い薬 リターンとコスト 各20年間のリターン 大きな変動 ボラティリティが意味するもの ボラティリティという小鬼 株式市場の変動 常に相場を張らなければ勝てないのか 第4章 金利とインフレの変動 お金とその力 金利について インフレについて 金利とインフレ ダイナミックな金利の歴史 6・50ルール 第2部のキーポイント 第3部 長期サイクル 第5章 長期サイクル 株式の長期サイクル 長期相場の特徴 インフレ・デフレと株式市場の季節 世間の一般常識を捨てよう――株価は経済どおりには動かない Yカーブ効果 価格評価 第6章 株式のサイクル 現在の株式サイクル 株価評価尺度としての配当 将来のリターンの予測 第3部のキーポイント 第4部 フィナンシャルフィジックス 第7章 フィナンシャルフィジックス 将来の株式相場の予測 フィナンシャルフィジックスモデル フィナンシャルフィジックスモデルによる株価予測の具体例 第8章 フィナンシャルフィジックスから見た株式市場の現況と将来の展望 これまでの内容の再検討 将来の展望 株価評価カスケード――PERの上限 リターンの分析――株式投資リターンの予測 限られたリターンとマーケットの不確実さ 第4部のキーポイント 第5部 投資哲学 第9章 投資哲学 絶対リターン手法と相対リターン手法の違い リスクは敵か味方か リターンについて 2つの投資手法の異なる前提 相対リターン投資が人気のある理由 第10章 帆走に代わる舟漕ぎを 帆走と舟漕ぎ 川の平均深さ 第5部のキーポイント 第6部 投資戦略 第11章 伝統的な投資法 効果的な債券投資法の一例 株式ポートフォリオのリバランス 第12章 投資マネジメントの進化 株式取引の簡単な歴史 ヘッジファンドの投資法 将来の投資マネジメントの展望 最後に 本書全体の10のキーポイント 分かれ道 注釈――情報源と方法論 付記 参考文献
1980〜1990年代の大強気相場が終わったアメリカの株式市場は、今まさにそのような局面(変動の大きいトレンドレスのチョッピー相場)にある。アメリカではこの100年間に(10年以上にも及ぶ)長期の上昇・下降相場が繰り返されてきた。それでもメジャートレンドが常に上向きだったので、株式を購入して長期保有するというバイ・アンド・ホールドは、株式投資の定番としてしっかりと定着した。しかし、筆者はこうした100年間の株式市場の歴史を振り返り、そして20年にも及ぶ大相場が終わった今、さらに株価が上値を追っていくことはあり得るのだろうかと自問する。
株式投資にとってベストの条件とは、割安な株価、高い配当、低位安定に向かうインフレ、金利の低下、PER(株価収益率)の上昇――などである。しかし、今のアメリカにはこうした有利な条件は何も存在しない。それどころか、高い株価とPER、低い配当利回り、インフレと金利が上昇する可能性など、悪い条件ばかりがそろっている。こうした状況を考えるとこれからの局面では、従来のバイ・アンド・ホールドといった杓子定規のような投資法では利益を上げられず、新しい環境に見合った別の投資法が必要なのではないか。
ひるがえって日本の現況を見ると、2003年4月末に大底を打った株価はそれ以降のほぼ3年間に上昇トレンドをたどり、今はちょっとした株式ブームである。しかし、日本はそれまでの13年間にわたって株価が暴落し、全世界にデフレの脅威を発し続けてきた「失われた10年」を脱したばかりである。歴史を振り返れば、株式は長期にわたって上げることもあれば、下げることもある。そうしたさまざまな局面を同じ投資法だけで乗り切ることができるのか。筆者の自問を真摯に受け止めて歴史から学ばなければならないのは、われわれ日本の投資家も同じではないか。あの有名な『証券分析』(パンローリング)を書いたベンジャミン・グレアムは、よくこう言って嘆いたという。「ウォール街の人々は何も学ばないし、すべてのことをすぐに忘れてしまう」
本書の邦訳出版を決断された後藤康徳(パンローリング)、編集・校正の阿部達郎(FGI)の両氏には心よりお礼を申し上げたい。
2006年3月
関本博英
1982〜1999年の長期上昇相場が2000年以降のあまり報われないチョッピーな局面(はっきりしたトレンドがなく、上下に大きく変動する相場)に移行したと言うと、皆さんはがっかりされるだろう。そして現在のこの局面は一時的な小康状態、それとも(平均以下のリターンまたはマイナスのリターンしか見込めない)長期下降相場に入ったのかと問われるだろう。その答えは本書のなかで徐々に明らかにしていく。株式市場の歴史と株式相場のトレンドを形成する基本的な要因を検証・分析すると、2000〜2010年はもとより、それ以降の10年間も株式投資のリターンは平均以下にとどまる可能性が高い。1980〜1990年代の異常な株高局面のあとに低調な相場が続いても何ら不思議ではない。
株式市場では株価が相対的に高い時期と安い時期が交互に到来する長期サイクルを繰り返してきた。そして株安期のあとには高いリターン、株高期のあとには低いリターンがもたらされた。歴史的に見ると株式の長期平均リターンは債券のそれを上回っているが、株式がいつでも債券のリターンを上回っているわけではない。株式が債券よりもアンダーパフォームであった時期もある。しかし、好天を待ち望んでいるときに、干ばつに甘んじている必要はない。現在の株式市場が干ばつの時期であるならば、投資資金をもっと多くの実りが見込まれるアセットクラスにシフトすればよい。本書では株式市場の現況とこのマーケットを動かす主な原動力を理解し、またどのような相場環境でも利益を上げられる方法を紹介する。
以下の各章では株式市場のダイナミックな歴史と現況、将来の見通しなどについて広範で詳細なリサーチデータを駆使して検証した。ときに地質学的な比喩を交えながら、切り立った断崖のような株式市場の大変動、揺れる山脈のような金利変動の現実を分析するとともに、経済と株式市場に特有な要因によって引き起こされる相場の形成プロセスにも焦点を当てた。一方、株式と債券投資のリターンをもたらすファンダメンタルな関係のほか、「フィナンシャルフィジックス(Financial Physics)」と呼ばれるクレストモント社の株価評価モデルを使って、さまざまな経済原則と株価との関係についても分析した(金利と株価を動かす主な原動力はインフレ動向であることなど)。
株式投資のアプローチは相場のトレンドに乗る方法と、ファンドマネジャーの腕で利益を勝ち取るという2つの手法に大別される。前者は株式のトレンドがリターンを決定するという伝統的な投資法で、長期の忍耐が求められる相対リターン手法である。これまでは長期にわたって上昇トレンドが続いたので、この手法を使えば損失よりも多くの利益が上げられた。この投資法のベースとなっているのは現代ポートフォリオ理論(MPT)と資本資産評価モデル(CAPM)の理論で、投資のリスクは友である。すなわち、痛みなくして利益なしという投資哲学である。一方、もうひとつの投資法は株価の上昇局面でなくても、ファンドマネジャーの腕で利益を稼ぎ出すというアグレッシブなアプローチである。絶対リターン手法と呼ばれるこの投資法では、そのときの相場トレンドとは無関係に利益を追求する、すなわちコンスタントなリターンを目指している。ここではリスクは敵であり、何としても回避しなければならない。この手法の投資哲学はパフォーマンスがすべてであり、ファンドマネジャーが手にするのは成功報酬のみである。
現在、投資界は新しい時代に向けて目覚めつつある。リスクマネジメントのツールは簡単に入手できるようになったので、投資家はこれまでのように相場の変動に冷や汗をかきながら利益を追求する必要もなくなった。今では賢明な投資家はリターンとリスクの関係をコントロールするリスクマネジメント手法を駆使して、リスクを抑えながら安定した利益を上げている。相対リターン手法と絶対リターン手法の融合も着々と進んでおり、おそらく今後10年間に投資家はリスクをコントロールしながら期待リターンをほぼ確実に手にすることができるだろう。
今の投資家はマーケットという大海を航行する船乗りのようなものである。追い風のときはバイ・アンド・ホールドという「帆走」、向かい風のときは絶対リターン手法という「舟漕ぎ」で利益を上げることができる。1980〜1990年代には強い追い風が吹いていたので、伝統的なバイ・アンド・ホールドがベストの投資法であった。1990年代後半の株式バブルで長期の大強気相場は成層圏まで駆け上がったが、2000年のバブル崩壊でそれまでの帆走期は終わりを告げた。今では手に汗を流す舟漕ぎによってしか利益を上げることはできない。
今の相場環境はかつての相場界のパイオニアたちが直面した1930年代初めの状況と類似しているが、それら先人たちの貴重な知恵は新しい投資時代と希望を吹聴するスローガンにかき消されてしまった。希望に満ちた投資家が今の株価水準で投資に乗り出しても、次々と嵐がやって来るというのが現実である。すなわち、平均以上のリターンが得られた株式投資の時代は、平均以下の収益しか得られない時代に移行してしまったのである。
本書は6つの部から成っている。「始めに」と題する第1部では、それ以降で検討する基礎知識としてのコンセプトや原則について説明する。「マーケットの歴史」と題する第2部では、株式と債券市場のヒストリカルなリターンと変動性、この2つのマーケットの相関関係について検討する。「長期サイクル」の第3部では、長期サイクルの観点から第2部の内容を分析し、それらを構成する要因や現在の株式サイクルなどについて分析する。ここまでは株式市場の歴史的な検証と長期サイクルの性質などに焦点を当てたが、「フィナンシャルフィジックス」と題する第4部では株式相場を動かすさまざまな要因について分析するので、これを理解すれば一般投資家でも株式専門家などの間違った意見にだまされることはないだろう。また2000年代の残りの期間の株式投資リターンがどのようになるのかについて合理的な予測を行った。株式市場の歴史と現況の検討に続く第5部(「投資哲学」)では、リスクを許容するこれまでの相対リターン手法とファンドマネジャーのスキルがすべてを決める絶対リターン手法について説明し、相場の局面に応じてこの2つの投資法を使い分ける必要性を訴えた。続く第6部(「投資戦略」)では、いっそう厳しさを増す今の相場環境で求められる投資テクニックを紹介したあと、投資マネジメントの進化、伝統的な相対リターン手法とアグレッシブに利益を追求する絶対リターン手法の融合の可能性について検討した。
投資知識を学ぶということは山頂に向かって登山道を一歩ずつ歩くことに似ている。登山者が重力に打ち勝って山頂に立てば、周りの山脈が一望に見渡せるように、投資家も従来の投資の考え方から脱却しなければ、現在の株式市場の現実をはっきりと見極めることはできない。株式投資で成功するには、変わることのないマーケットの原則を踏まえながら、今の状況に見合った投資戦略とツール、そして最新のテクノロジーを駆使する必要がある。株式投資の目的は利益を上げることであるが、単なる願望はそのための戦略とはならない。
本書は株式市場の基本的な要因、将来のリターン、現在の相場環境をどのように乗り切るのかなどを理解するためのロードマップ(道路地図)である。投資家の前には合理的な投資法やランダムなやり方などさまざまな選択肢があるが、自らの投資人生をきちんと律するには、合理的な投資原則を身に付けなければならない。なお、本書に掲載されたリサーチデータやチャートの最新版を見たいときは、クレストモント社のウエブサイト(http://www.CrestmontResearch.com/)にアクセスしてください。
『わが子と考えるオンリーワン投資法』 |