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ウィザードブックシリーズ Vol.260

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とびきり良い会社をほどよい価格で買う方法 とびきり良い会社をほどよい価格で買う方法

著 者 チャーリー・ティエン
監修者 長尾慎太郎
訳 者 山口雅裕

2018年2月発売
定価 本体2,800円+税
四六判 上製 334頁
ISBN978-4-7759-7230-4 C2033

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目次

投資の天才の銘柄選定プロセスを定量的なスクリーニングで完全再現!
投資の達人と同じように投資できる!
グルの投資手法ををまねる!

 バリュー投資で名高いウォーレン・バフェットは、「私はほどよい会社をとびきり安く買うよりも、とびきり良い会社をほどよい価格で買いたい」と事あるごとに言っている。バフェットに巨万の富をもたらしたのは、この単純明快な経験則だった。そして、これは今や優れたバリュー投資法として世に知られている。この種の投資戦略で富を築くための重要なカギは、株価と企業の質を正確に測ることだ。本書はその両方を1冊で解決する情報源である。

 グルフォーカス・ドット・コムの創設者であり、CEO(最高経営責任者)であるチャーリー・ティエンが著したこの革新的な手引書は、投資歴が短い人にも長い人にも優れたバリュー投資で富を築く方法を示してくれる。グルフォーカスに毎月、何千人もの新規ユーザーを引きつけているのと同様の率直で親しみやすい説明で、どの企業が良い投資対象かを判断する方法や適切な市場価格の評価法を順を追ってもれなく教えてくれる。第1部では、最も低リスクで高い利益を得やすい企業の探し方を示す。問題が起きそうな兆候や、飛躍しそうな兆候を見つけるための具体的なアドバイスを含めて、一般に公開されている事業報告書を使うだけで、企業の真の健全性をいかに明らかにできるかを示す。本書で示された考えや原則が実際にどう現れるかをリサーチや自らの実践例によって示してあるため、読者はそれらを安心して利用できる。資産管理に不慣れな人も、今使っている戦略を改良したい人も、成功し続けるために必要な次のことが本書から得られる。

●企業や株価を効率的に評価するための実践的なツールと便利なチェックリスト
●手痛い判断ミスを避け、気づきにくい失敗の兆候を見つけだし、バリュートラップを避けて利益を最大にするための手引
●長期にわたって頼りになる投資リターンを得るための、世界中で用いられている上質なバリュー投資戦略の完璧な入門書であり、腕利き投資家にとっての手引

 持続可能で健全なリターンをもたらしてくれるのは優良企業だけだ。そして、本書を読めば、そうした企業の見つけ方が分かる。


■本書への賛辞

「カリスマ投資家のように投資したければ、この本を読むことだ。投資ですべきこと、すべきでないことの洞察や注意が満載だ」――ビタリー・N・カツェネルソン(インベストメント・マネジメント・アソシエーツのCIO兼『ザ・リトル・ブック・オブ・サイドウエーズ・マーケッツ[The Little Book of Sideways Markets]』の著者)

「チャーリー・ティエン博士は偉大な投資家たちの仕事ぶりを長らく観察してきた。そして、そこで得られた教訓を貴重なチェックリストにまとめた。長期にわたって利益率が高く、利益を再投資に回せる企業の株式を適正な株価で買えば、投資リターンも長期にわたって複利で増えていくうえに、節税にもなる。彼はそれを明らかにするツールを提供している」――トーマス・A・ルッソ(ガードナー・ルッソ・アンド・ガードナーのポートフォリオマネジャー)

「本書は向上心を持って銘柄選びをする人すべてにとっての貴重な情報源であり、初心者にとっても経験豊富な投資家にとっても魅力的な本だ。ティエンはウォーレン・バフェットやピーター・リンチのような伝説的投資家、それにあまり知られていないが同じように成功した投資家の手法を巧みに分析している」――スコット・フィアロン(『デッド・カンパニーズ・ウオーキング[Dead Companies Walking]』の著者)

「ティエン博士は最高のバリュー投資家たちが書いた本をすべて読み込んで、彼らの賢明な知恵を本書で簡潔にまとめている。野心的なバリュー投資家はぜひとも読むべきだ!」――ウェスリー・R・グレイ博士(アルファ・アーキテクトのCEO兼『ウォール街のモメンタムウォーカー【個別銘柄編】』[パンローリング]の共著者)


■著者紹介

チャーリー・ティエン(Charlie Tian) チャーリー・ティエン博士はバリュー投資のウェブサイトである https://www.gurufocus.com/ の創設者であり、CEOである。彼はウェブサイト上で公開されているバリュー銘柄のスクリーニングや戦略、リサーチ用のツールの考案者。それらは1カ月で50万人以上の投資家に利用されている。また、世界中の100以上の大学の教授や学生も利用している。ティエン博士はフォーチュン、フォーブス、バロンズのなどで取り上げられ、グルフォーカスを立ち上げる前は物理学者であり、アメリカで30以上の特許を取得している。
■立ち読みコーナー(本テキストは再校時のものです)

■目次

監修者まえがき
謝辞

はじめに
第1章 カリスマ投資家たち
第2章 ディープバリュー投資とその問題点
第3章 優良企業だけを買う!
第4章 再び、優良企業だけを買う――そして、それらをどこで見つけるかを知る
第5章 優良株を適正価格で買う
第6章 優良株を買うためのチェックリスト
第7章 失敗、判断の誤り、バリュートラップ
第8章 パッシブ運用、キャッシュの水準、パフォーマンス
第9章 企業をどう評価するか
第10章 相場サイクルと市場のバリュエーション
終わりに


■監修者まえがき

  本書は中国人物理学者で、バリュー投資家向けのサイト(グルフォーカス・ドットコム)の主宰者でもあるチャーリー・ティエンの著した“Invest Like a Guru : How to Generate Higher Returns At Reduced Risk With Value Investing”の邦訳である。ティエンはピーター・リンチやウォーレン・バフェットといった株式投資のグルたちの手法について調査を行い、彼らの銘柄選定プロセスを定量的な銘柄スクリーニングのみで再現しようとしたのである。その試みはかなりの精度で成功しており、研究結果はグルフォーカス・ドットコムのスクリーニングツールにも反映され、多くの投資家に利用されている。

 ここで、一般に商業サイトの運営者が書いた相場書というと、単に商材の宣伝がしつこく繰り返されているだけで中身はカラッポかデタラメであるというのがお決まりのパターンだ。読者はその点を懸念されるかもしれないが、本書に関してはそういった心配はまったくいらない。これは著者が学者として真摯に課題に挑み、可能なかぎり知的に誠実に研究を行った結果の報告書なのである。読者としての私たちに残された宿題としては、グルの投資手法のうち、明示的なルールとして表現できない部分について、どのように自分の投資プロセスに取り込んでいくかということだけである。

 ところで、ファイナンスとは縁のない世界で生きてきた著者が、にもかかわらず質の高い知識を獲得することができたのは、成功者であるグルに学んだことのほかに、もうひとつ明確な理由がある。私の個人的な研究によれば、優れた投資家たちにはその環境において共通点が存在する。彼らは投資手法はバラバラだが、全員が等しく持つ唯一の因子は、各々が投資に関する社会的なコミュニティに属しているということである(逆に、いくら努力しても投資で成功しない人は社会的に孤立しているケースが多い)。別の表現をすると、金融市場はどんなに優秀な人であっても個人が単独で攻略しようとするにはあまりにも手強く、それを克服できるのはネットワークの力を賢明に利用して社会的学習を行った人間だけなのである。本書にも書かれているとおり、グルフォーカス・ドットコムに備わった参加者同士の情報交換を可能にするソーシャルネットワーク機能がティエンの効率的で正しい学習を大いに助けたのだ。

 翻訳にあたっては以下の方々に心から感謝の意を表したい。まず山口雅裕氏には正確で読みやすい翻訳を、そして阿部達郎氏は丁寧な編集・校正を行っていただいた。また本書が発行される機会を得たのはパンローリング社社長の後藤康徳氏のおかげである。

 2018年1月

長尾慎太郎

■はじめに

 アメリカにやって来る前は、自分が株式市場の熱狂に巻き込まれて、そのせいで経歴をすっかり変えてしまい、まったく異なる人生を歩むことになるとは思いもよらなかった。私は物理学が大好きで、それを何年も研究していたので、いつか物理学の教授になろうと考えていた。それまで、株式市場にかかわったことは一度もなかった。

 一九九八年の夏は、テキサス州ということを割り引いても暑かった。私は物理学部のなかでも「ホットな」光ファイバー分野で働くために、テキサスA&M大学に来ていた。当時はインターネットと電器通信産業の画期的な成長期であり、テクノロジーの急拡大に関連するすべてが人気になり、光ファイバーにかかわるものなら何でももてはやされた!

 私はすでに北京大学で、レーザーと光学分野の物理学博士号を取っていた。私は無限の可能性を秘めていそうな分野で働くことに心が躍っていた。また、私のような人材に対する需要は大きかった。二年とたたないうちに、私は上場間近の光通信会社に雇われた。事業は絶好調だった。会社は事務所を一気に拡張して、何百人ものエンジニアを追加で雇った。人々がこの会社で働こうと考えた最大の理由はストックオプションがあるからだった。私はストックオプションが何なのかはまったく知らなかった。ただ、大金の値打ちがあるということだけは知っていた!

 だれもが株とストックオプションについて話していた。自分に言い聞かせた。面白そうだ! これでお金が儲かるのだ! 私も株を買わないと。買うべき株は光ファイバー関連だ!

 私は自分にはエッジ(優位性)があると思っていた。何と言っても、私は光ファイバー分野で長年働いてきた。私は多くの研究論文を発表して、最終的にはこの分野で三二の特許を取ることになっていた。私は光ファイバーがどういう働きをするかを正確に知っていた。

 光ファイバー企業についても知っていた。仕事でそれらの製品を使っていたが、それらに対する需要は極めて旺盛だった。インターネットの通信量は急増していて、回線容量と光ファイバー網は年率一〇〇〇%で成長すると見込まれていた。グローバル・クロッシングなどの通信会社は海底に光ケーブルを敷いていた。ワールドコムは刺激的なテラバイト・チャレンジなるものを主催していた。これは一本の光ファイバーに毎秒一テラバイトの帯域幅を押し込もうという試みだった。光ファイバー網に対する需要はいつまでも急拡大を続けるように見えた。

 一兆ドルの市場では、だれも負けようがない、とアナリストは書いていた。光ファイバー企業の株は三カ月で二倍になると言われていて、株式公開をした光ファイバー企業はすべて実際にそうなった。

 私は株を買いまくり始めた。二〇〇〇年に光ファイバー企業のニュー・フォーカス、オプリンク、コーニングを買った。コーニングは老舗企業だが、光ファイバーの新技術を取り込んで、光ファイバー網で使われる光ケーブルを製造していた。この株は私の期待を裏切らなかった。すぐに株価は二倍になり、さらにもう少し上昇した。コーニングでは非常にうまくいった。実際、この株は三対一の分割をした。それはうれしかった!

 しかし、あとになって気づいたのだが、当時の私が株を買うお金をあまり持っていなかったのは幸いだった。  

大暴落

 お祭り騒ぎはそれほど長く続かなかった。しかも、私はそこに加わるのが遅かった。  いつの間にか、私が勤める会社は業績が悪化していた。二〇〇〇年末には、会社は下請けや派遣社員をひそかに切っていた。会社の最大の得意先であるワールドコムとグローバル・クロッシングがそれぞれ抱えている問題のせいで、器材の購入を打ち切ったからだ。

 そして、九月一一日に同時多発テロが起きると、すべてが行き詰まった。私が勤めている会社の売上高は前年よりも八〇%落ち込み、ワールドコムは破綻寸前だった。新製品の開発はすべて止まり、会社では従業員が容赦なくクビにされていた。二年としないうちに、会社は従業員の七五%以上を切って、どうにか生き延びていた。私も含めて、そこでまだ雇われていた人々は、仕事があるだけでも運が良いと思っていた。ストックオプションについて話をしている人はもうだれもいなかった。会社のIPO(新規株式公開)計画はずっと前に棚上げにされていた。

 それで、私が買った光ファイバー関連株はどうなっただろうか。図I−1のチャートは二〇〇〇年一月から二〇〇二年末までのコーニングの株価を示している。私が二〇〇〇年一月にこの株を買ったとき、株価は約四〇ドル(分割調整済み)だった。それから九カ月ほどで、三倍近くになり、一一〇ドルまで上昇した。そこから、下げ始めた。含み益はまだ相当にあったので、私はしばらく何もしなかった。もちろん、株価は一気に下げたわけではない。上げ下げを繰り返したのだ。そうした変動のせいで、私はまだ希望を捨てていなかった。きっと元の株価に戻る、と自分に言い聞かせ続けた。しかし、二〇〇一年には通信サービス業界に関する悪いニュースが相次ぎ、下げ足を速めた。二〇〇一年の半ばには、株価は投資したときの半値になっていた。それでも、私は急落して底を打つまでしがみついていた。

 オプリンクはもっとひどかった。私はその株をIPOのときに買った。ウォール街では三カ月で二倍になると予想されていて、それを鵜呑みにしたからだ。そんなことは一度も起きなかった。オプリンクの株価が公開価格を上回ることはほとんどなかった。もちろん、その株価もまた上げ下げを繰り返したので、私は望みを抱き続けた。

 証券口座の残高を見るのはつらかったので、確認するのをやめた。代わりに、『ピーター・リンチの株式投資の法則』(ダイヤモンド社)を読み始めた。すると、それらの光ファイバー関連株がいかにひどい投資対象かが次第に分かってきた。そこで、二〇〇二年第4四半期に負けを認めて、九〇%以上の損を出して売ってしまった。ところが、そこがまさに大底で、第2章で説明するように、それらは実際には非常に良い投資対象になっていた。

 ナスダックは二〇〇〇年に付けた高値まで戻るのに約一五年かかった。そして、二〇一六年六月現在、長い年月がたっているのに、ダウ通信株指数は二〇〇〇年に付けた高値の五〇%をわずかに超えている程度だ。

 一つの業界が急拡大したあと、不況に陥った。バブルがはじけたのだ。私が後に学ぶように、この種の好況と不況の循環は歴史を通してたびたび繰り返されてきた。  

バブル

 『バブルの物語』(ダイヤモンド社)で、ジョン・K・ガルブレイス経済学教授は、一六〇〇年以降に起きた投機的バブルをすべて検討している。彼は金融市場に関する世間の記憶は「恐ろしく短い」と言い、バブルを、新しいものが登場して、いくらでも借り入れができるときに、人々の投機によって生じる状況、と定義した。

 マーク・トウェインは、「歴史は繰り返すのではなく、韻を踏むのだ」と言った。結局、光ファイバーのバブルはそれまでにも生じたバブルのもう一つの「韻」にすぎなかった。

 記録に残る最初のバブルは、一六三〇年代後半にオランダで起きたチューリップバブルだった。絶頂期には、どんなチューリップの球根でも熟練工の数十年分の収入に等しい価格で売れた。人々は土地や家を売って、チューリップ相場に賭けるありさまだった。歴史上の大バブルのもう一例は、南海会社の株にまつわるものだ。この会社は一八世紀初期に設立されて、イギリスの戦時公債を引き受けることを条件に、南海での貿易独占権を得た。投資家は独占という言葉の響きがとても気に入り、株価は上げ始めた。どんなバブルでも同じだが、上げは上げを呼び、アイザック・ニュートン卿でさえこの投機に興味をそそられた。一七二〇年に、ニュートンはわずかな金額を南海会社に投資した。数カ月すると、株価が三倍になったので売った。だが、株価はさらに上げ足を速めた。友人たちがあっという間にお金持ちになるのを見て、売ったことを後悔するようになった。それで、株価が売ったときの三倍になっているのに有り金をつぎ込んだ。株価はしばらく上げ続けたが、やがて暴落した。彼は一七二〇年末に大損をしてすべてを売った。この劇的な投機熱は一年と続かなかった。そして、彼は二万ポンドを失った。それは老後のための蓄えだった。

 歴史に残る賢人であるニュートンでさえ、バブルが生んだ暴落から逃れられなかった。彼はリンゴが頭に落ちてきたときのひらめきから、古典物理学の理論のすべてを作り上げたが、強欲と恐怖感には勝てなかった。彼は後に、「私は星の動きは計算できるが、人間の狂気は計算できない」と書いている。

 私の専門とする研究分野の創始者が、株式市場のバブルで私と同じように大損をしたと知ると、思わず頬が緩んだ。だからといって、私の気分が良くなったわけではない。

 何か新しいことが起きるとそれで儲けられそうだと欲を出す人々が現れたことや、金余りでいくらでも借り入れができる状況だったという点で、光ファイバーのバブルも過去に起きたすべてのバブルに似ていた。それまでのバブル同様、インターネットが爆発的に広がると、投機も一気に熱を帯びた。光ファイバー網に対する需要が急増すると、人々はその敷設で多額の利益が得られると期待した。ワールドコムやグローバル・クロッシングといった企業は光ファイバー網を構築するための資金を借り入れて、至るところに光ファイバーを敷設していた。そのため、光ファイバー網に必要な装置の需要も急増した。ノーテルやアルカテル、それに私がかつて働いていた装置サプライヤーのような事業は急成長していた。そうした事業を行う企業は商品開発と製造能力の拡大に多額の資金を投入し、光学部品の需要はさらに高まった。その結果、シリコンバレーには光学部品関連の会社が何百と出現した。

 資金はいくらでも集まった。パワーポイントを使って提案をすれば、数千万ドルの資金が手に入って、起業することができた。私が二〇〇一年前半に光ファイバー通信会議に出席したときには、無料のボールペンを山ほどもらえた。好きなだけ取ってかまわなかったのだ! どの企業もブースを通り過ぎる人に、さまざまなおしゃれグッズを配っていた。これは二〇〇一年三月の話だ。ナスダック指数はすでに前年の高値から六〇%以上下げていたが、光ファイバー関連企業の株式はいまだにお祭り騒ぎの状態だった。

 収入がなかったインターネット関連企業とは異なり、光ファイバー関連企業には収入があった。オプリンクの二〇〇一年の売上高は一億三一〇〇万ドルだった。もっとも、二五〇〇万ドルの赤字だったが。回線容量に対する需要はそれほど急速には伸びなかった。過剰投資と私のような技術者たちによる通信技術の革新のせいで、インターネット通信は必要量をはるかに上回る処理能力を持つに至った。インフラの過剰設備と大規模建設によって、データ通信のコストは劇的に下がった。私たちは一本の光ファイバーでそれまでよりもはるかに多くの処理ができるようにした。そのせいで、敷設された光ファイバーは過剰になっていた。データの転送料は暴落した。光ファイバーの九七%は使われないままだった。ワールドコムやグローバル・クロッシングは債務を返済できずに、破産に追い込まれた。この業界全体が崩壊した。二〇〇二年には、オプリンクの売上高は三七〇〇万ドルに落ちて、七五〇〇万ドルの赤字を出した。私が雇われていた会社は売り上げが八〇%以上落ちた。それ以降の年には、通信機器関連企業の多くが倒産した。それはチューリップバブルさながらで、この業界は二度と回復しなかった。  人類は過去のバブルから学ぶはずだと思うかもしれないが、バブルの発生がやむことはなかった。バブルの拡大局面では、四つのタイプの参加者が繰り返し現れる。

 一.平均的な人々 彼らは新しいアイデアに心を奪われるだけでなく、相場経験も比較的浅い。彼らはすごいことに気づいたと思い、友人や隣人がお金持ちになっているので、自分も乗り遅れるべきでないと考える。私も彼らの一人だった。そして、アイザック・ニュートン卿もだった。彼は同時代の人々のなかで最も賢いと広く認められていたが、株式市場に関しては並みの人物にすぎなかった。

 二.目先が利く人々 彼らは何かがおかしいことに気づいているが、自分はいつバブルがはじけるか分かると考えている。天井まで相場に乗るが、真っ先に降りる。ウォーレン・バフェットが二〇〇七年の年次報告書で冗談を言ったように、二〇〇〇年代初めにインターネットバブルがはじけたあと、シリコンバレーでは、「神様、お願いです。もう一度だけバブルを」というバンパーステッカーがはやった。まもなく、もう一度バブルが発生した。今度は住宅バブルだった。そして、その結末は私たち全員が知っている。

 三.空売り筋 彼らはおかしなことが起きていて、この状況は長く続かないと認識している。株価があまりにも高すぎるからだ。そこで、彼らは株を借りて空売りをし、大きく下げたところで買い戻すか、倒産するようであれば持ち続けようと考える。だが、そこから彼らの苦しみが始まる。株価の上昇は止まらず、売り方の含み損は膨れ上がっていく。経済学者のジョン・ケインズが指摘したように、「市場は私たちの支払い能力が尽きるよりもはるかに長く不合理であり続ける」。この状況に陥ったのが、最も有名な投資家の一人で、イングランド銀行を破綻に追い込んだ男、ジョージ・ソロスだ。ソロスが率いるファンドは一九九九年の初めに、インターネット関連株の暴落に大きく賭けていた。彼はバブルが形成されていくのを見て、インターネットブームはひどい結末で終わると考えた。しかし、このブームはさらに勢いを増して、一九九九年半ばにはファンドの資産は二〇%減っていた。彼はITバブルがはじけるのは分かっていたものの、借り株を買い戻してポジションを手仕舞った。だが、それにとどまらなかった。パフォーマンスを上げなければならないというプレッシャーから、分かっていたこと――正しい行為――に背を向けて、次に述べるタイプのバブル参加者になった。すなわち、買わざるを得なくなった人々だ。

 四.買わざるを得なくなった人々 彼らはバブルに乗ることを強いられたプロの投資家たちで、ほとんどは短期で利益を出すしかないというプレッシャーにさらされていた人々だ。有力新興企業に投資しないために時代遅れと見られて、仕事か顧客を失いかねない状況に直面していた。ジョージ・ソロスはインターネット関連株の売りポジションを手仕舞ったあと、自分ではそれらの株式は買えないと感じて、彼に代わってそれができる人を雇った。そのため、彼のポートフォリオは嫌っていたインターネット関連株だらけになった。それだけでなく、新しく雇った人は従来型産業の株式の空売りもしていた。それはうまくいった。一九九九年末には、ソロスのファンドは資産額を回復させて、この年の運用実績は三五%の上昇で終えた。問題は、ITバブルははじけるというソロスの予測がそれから数カ月後に現実となり、再び負ける側に立たされたことだ。

 バブルに気づき、そこには近づかずに投資機会を待とうと決めた人々が、当時も今も真に賢明な投資家だ。だが、それで彼らの生活が必ずしも楽になったわけではない。彼らが他人のお金を運用していた場合はなおさらだった。ウォーレン・バフェットは「もはやすご腕ではない」とみなされた。ヘッジファンド界の伝説的投資家であるジュリアン・ロバートソンのファンドからは資金が流出した。彼がインターネット関連株を避けたために、投資家たちが彼のファンドから資金を引き揚げていったからだ。彼はちょうどバブルがはじけ始めたころにファンドを解散した。最も合理的なバリュー投資家の一人、ドナルド・ヤックマンは運用資金の償還請求をされて、ファンドの資産の九〇%以上を失った。ファンドの役員会は彼を追い出したがったが、委任状争奪戦に勝てたおかげで彼の名を冠したファンドにどうにか残ることができた。FPAクレセント・ファンドの優れた若手マネジャーのスティーブン・ローミックはもっと幸運だった。ファンドの資金の八五%が引き揚げられたが、彼の考えでは株主の残り一五%が「ファンドに投資しているのを忘れていた」おかげで、クビにならずに済んだ。

 厳しい時期でも信念が揺るがなかった人々が、私の考える真の投資界のカリスマだ。インターネットと光ファイバーのバブルがはじけたあと、私はそれらの株式市場の師匠たちが書いた本をすべて読んだ。彼らの教えのおかげで、事業と投資についての私の考えは根底から変わり、投資家として成長できた。  

グルフォーカス・ドット・コム

 ピーター・リンチのことをどうやって知ったのかは思い出せないが、私がウォーレン・バフェットと彼の師であるベジャミン・グレアムについて知ったのはリンチの本を通してだった。それから、私はバフェットが過去四〇年に株主と共同経営者に送った年次報告書のすべてを読んだ。それらを読み終えると、ぐったりした。空腹の男が人生で初めてフルコースの食事をしたような気分だった。私は思った、これこそまさに正しい投資法だ、と!

 投資で成功するカギは知ることと努力を惜しまないことにあると悟った。一生、学び続けることだ。ほかにどんな秘訣もない。学ぶことを通してしか、自信を持って投資できるようにはなれない。知識と自信があれば、独力で理性的に考えることができる。特にそれらが最も要求される時期――市場に動揺や浮かれ気分が広がっている時期――には、そう言える。都合の良いことに、それらは学習によって身につけることができる。

 私は自分が学んだことを伝えるために、二〇〇四年のクリスマス休暇中にグルフォーカスを立ち上げた。それ以降、おそらくグルフォーカスのユーザーが学んだことよりも、私が彼らから学んだことのほうが多かっただろう。私がどれほど多くのことを享受したかはいくら説明しても、し足りない。もちろん、私は努力を惜しまなかった。三時間だけ眠って朝の四時に起きると、八時までの四時間、自分の仕事をした。そして、朝食を取ったあと、光ファイバーの会社に出勤して常勤の仕事をした。午後六時に家に戻ると、またすぐにグルフォーカスの仕事に取りかかった。週末と休日は一日中働けたので、大好きだった。

 二〇〇七年に、私は常勤の仕事を辞めて、ウェブサイトにすべての時間と精力をつぎ込んだ。そして、グルフォーカスで働くためのソフトウェア開発者、編集者、データアナリストのチームを作り上げていった。私たちは銘柄スクリーニング用のツールをたくさん作り、カリスマ投資家たちのポートフォリオや企業の内部関係者、業界情報、企業の財務諸表に関するデータをたくさん収集していった。私はまず自分自身の投資のために、これらの銘柄スクリーニングやバリュエーション計算用のツールを構築した。私たちはそれらを、知識が豊富なユーザーからのフィードバックに応えながら改良し続けている。これらは今や、私が投資決定で利用する唯一のツールになっている。

 一方で、私は自分のお金を株式市場に投資し続けながら、判断を誤ってはそれらの失敗から学んできた。私は自分が投資家としてかなりうまくなったと思う。私は自分の子供たちに伝えるのに十分なほど多くの経験をし、たくさんの教訓を学んできた。彼らは私が犯したような間違いをしないで済むだろう。彼らは将来、投資分野の仕事には就かないかもしれない。だが、自分たちのお金を運用するようになったとき、正しい方向に導いてあげたい。それがこの本を書いた理由だ。投資についての知識があまりない人々でも、本書から多くを学ぶことができる。

 本書は三部構成になっている。第1部は低いリスクで高い利益を生み出せそうな企業をどこで見つけるかに焦点を当てる。第2部では、それらの企業を評価し、問題を抱えていないかどうかを見つけ、間違いを避けるための方法について説明する。第3部では株式と市場全般のバリュエーシン、それに利益についてさらに検討する。本書では、分かりやすい事例研究や実際に起きた例を数多く使っている。


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