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ウィザードブックシリーズ Vol.99

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アルゴリズム
トレーディング入門

トレーディングシステムの開発と検証と最適化
オーバーフィッティングの健全な解決方法を求めて

2006年1月16日発売
ISBN4-7759-7063-1 C2033
定価本体5,800円+税
A5判 上製本 286頁

著 者   ロバート・パルド
監修者   長尾慎太郎
訳 者   山下恵美子


著者紹介 | 目次 | 読者のご意見 | 著者から学ぶトレード戦略 New

まだカンに頼って、トレードしますか?

過去を検証しないで、あなたはトレードできますか?
トレーディングシステムを開発しようと思っている人、必読の書!

 ロバート・パルドは長年にわたってトレーディングシステムの最適化問題に取り組 んできた。汎用テストプログラム「アドバンスド・トレーダー(Advanced Trader)」 の作成者として知られ、数々のトレーディング戦略の開発者でもある彼は、1990年代 初めから最適化プロセスを、開発、テスト、結果の検証というあらゆる面から考察す るのに必要なすべての資質を備えた人物と言えるだろう。

 最適化手法は一見、「勝てるトレーディングシステム」を見つけるための理想的な 方法であるかに思えるが、本書を読めば、それが難しい意思決定を伴うものであるこ とが分かってくる。

 テストを行う目的は、そのルールと数式(つまり、戦略)を使って過去にトレーデ ィングを行っていたならば、どんな成果を上げていたかを知るためである。どんなシ ステムでもそのほとんどが、過去を検証することで構築されることを考えれば、過去 に起こったことを正しく認識しているかどうかを確認したいと思うのは当然だ。自分 の戦略が、勝てるのか、どれくらいのリスクにさらされているか、そして理想的な結 果を得るためにどれくらいの資金が必要なのかも知らずにトレードすることほど危険 なことはない。

 しかし、テストには落とし穴もある。コンピューターの性能向上によって、パター ン、ルール、公式のあらゆる組み合わせをテストすることが可能になり、成功すると 思える戦略は確実に見つかるようになったと思われがちだ。しかし、経験によれば、 こういった方法による戦略はリアルトレーディングでは利益を出せないことが分かっ ている。「オーバーフィッティング(こじつけ)」と呼ばれるこの現象は、トレーデ ィングプログラムの開発者たちを悩ます難題である。ロバート・パルドは本書でこの 問題を詳しく解説するとともに、正しい解決方法を提示している!

 最適化結果の評価もまた統計学的に健全なものでなければならない。結果を正しく 解釈できなければ、最良の解決策を導き出すことはできない。最適化は正しく行わな ければ意味のある結果を導き出すことはできないこと、正しく行わなければ信頼度の 低い結果しか得られず、引いてはそのシステムが損失につながることをパルドはよく 理解したうえで、初心者にも分かるように詳しく解説している。

 トレーディングシステムをこれから開発しようと思っている人、または、すでにあ るシステムを検証したいと考えている人は、本書を読んで内容をしっかり理解するこ とから始めることをぜひもお勧めする。



■目次

監修者まえがき
謝辞
ザ・トレーダーズ・アドバンテージ・シリーズに向けての序文
はじめに

第1章 最適化について

  コンピューターテストの利点
  最適化の利点
  本書の構成

第2章 トレーディングシステムの開発

  ステップ1――トレーディング戦略の具体化
  ステップ2――戦略を構成するルールの明文化
  ステップ3――トレーディング戦略のテスト
  ステップ4――トレーディングシステムの最適化
    簡単な最適化の例/ウォークフォワード分析/簡単なウォークフォワードテストの例
  ステップ5――システムでトレーディング
  ステップ6――リアルトレーディングパフォーマンスとテスト結果との比較
    システムがうまく機能しない理由/粗雑なテスト/不利な状況/結果が利益になる場合
  ステップ7――トレーディング戦略の改良

第3章 トレーディングシステムの構成

  トレーディングシステムを用いる理由
    定量化能力/検証能力/客観性/一貫性
  エントリーとエグジット
  リスクマネジメント
    エントリーリスク/エントリーリスク/オーバーナイトリスク/トレーディングリスク/利益目標/オーバーナイトギャップが利食い注文に及ぼす影響/トレーリングストップ/オーバーナイトギャップがトレーリングストップに及ぼす影響/エントリーフィルター/マネーマネジメントルール/アドバンスト戦略
  まとめ

第4章 シミュレーションのルール

  シミュレーションを正確に行うことの重要性
  現実に即したシミュレーション
    取引コスト/サーキットブレーカー/オープニングギャップ/オーダーのチェック/執行命令/重大な日
  価格データ
    株価/現物市場/先物市場/一代足/つなぎ足/修正つなぎ足/データのマージ処理(データの融合)/まとめ
  テストウィンドウのサイズ
    統計学的条件/サンプルサイズと誤差/トレードサンプル数はどれくらい必要か/安定性/自由度/トレーディング頻度/モデルの寿命
  市場のタイプ
    ブル相場/ベア相場/周期的相場/保ち合い相場/効率的市場
  適切なデータの使用

第5章 サーチと評価

  サーチ法
    グリッドサーチ法
  優先ステップサーチ法
    直系サーチ法/遺伝学的サーチ法/サーチ法全般における問題点
  評価法の重要性
    どういった評価法を用いるべきか/複数の評価基準を用いる評価法/複数モデルの平均を用いる評価法/テストランの評価/パフォーマンス分布/テストスペースの形状

第6章 テストの実行

  予備テスト
    計算/トレードリスト/まとめ
  理論チェック
  パフォーマンスチェック
  多市場多期間テスト
    バスケットの選択/期間の選択/データのセグメント化/テストの実行

第7章 トレーディングシステムの最適化

  最適化
  最適化の枠組みの設定
    パラメータの選定/スキャンレンジの選定/サンプルデータの選定/モデルの評価基準の選定/テスト結果の評価基準の選定/まとめ
  多市場多期間最適化
    最適化に対するモデルの反応/パフォーマンスの向上とは/意思決定マトリックス
  ウォークフォワードテスト
    ウォークフォワードテストの目的/ウォークフォワードテストの設定/ウォークフォワードテストの例
  ウォークフォワード分析
    ウォークフォワード分析の目的/ウォークフォワード分析のまとめ/ウォークフォワード分析の例/堅牢なモデルか/どれくらいのリターンを期待できるか/リスクについて/まとめ/ウォークフォワード分析の評価

第8章 パフォーマンスの評価

  投資手段としてのトレーディングモデル
    先物取引におけるリスクの大きさ/ほかの投資手段との比較
  リスクの評価
    必要資本
  利益の評価
    リワード・リスク比率/資本利益率/モデル効率
  トレーディングの一貫性
    損益分布/トレード分布
  最大ドローダウン
  最大連勝

第9章 オーバーフィッティングのさまざまな側面

  オーバーフィッティングとは
    オーバーフィットした予測モデルのケース/オーバーフィットしたトレーディングモデルのケース/オーバーフィットしたトレーディングモデルを見分けるためのコツ
  オーバーフィッティングの要因
    自由度/データサイズに基づく自由度/自由度と信頼度/サンプルサイズ/トレードの評価/最適化の評価/プロフィットスパイク/オーバースキャン/スキャンレンジの縮小化
ウォークフォワードテスト
  まとめ

第10章 リアルトレーディングの評価

  投資収益率
    貧弱な戦略/市場の縮小
  最大損失
    資本の保護
  リアルトレーディングパフォーマンスとテストパフォーマンスとの比較
    テスト特性とトレーディング特性との比較/テスト特性を理解しよう
  パフォーマンスのパターンとゆがみ
    予期せしない利益/連敗/小康状態
  まとめ

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原書
Design, Testing, and Optimization of Trading Systems



著者紹介

ロバート・パルド(Robert Pardo)
パルド・キャピタルの社長。トレーディングモデルの構築と検証を可能にした最初の ソフトウエアであるスイングトレーダーやグラフィック表示を組み込んだアドバンス ド・トレーダーなどの商用テストプログラムを開発し、ゴールドマンサックスや大和 證券のためにマネーマネジメントを請け負っていた。また、その業務に関連して、現 在、チェース実物商品指数として知られる指数の開発した。その後、パルド・キャピ タル社を設立し、1999年6月以来、300%を超えるリターンを上げ、フューチャーズ誌 の年間運用成績ランキングの5位以内に6回入り、2001年にはトップに立った。

著者からアルゴリズムトレードを学ぶ!
指数先物トレーディング戦略 Ranger

本書の著者であるロバート・パルド氏が個人投資家向けに株価指数先物トレーディング戦略の提供を開始しました。

Ranger

ゴールドマンサックス、トランスワールド・オイル、大和証券でコンサルタントを勤め、最大手CTAであるダン・キャピタルとも提携関係にあるロバート・パルド氏から直接アルゴリズムトレードについて学ぶことができる滅多にないチャンスです。

現在パルドキャピタルが提供しているのはSIポートフォリオ(Stock Index Portfolio)でEミニS&P500先物、Eミニナスダック先物、Eミニダウ先物のポートフォリオです。システムアルゴリズムはトレードステーション10プラットフォームで実際に稼働します。

バックテスト上ではなく、将来に渡って利益を生む正しいシステムの開発法とウォークフォワード分析の実務を学ぶことができます。 SIポートフォリオは、パルドキャピタルでの運用で実際に使われているストラテジーの1パートを構成しています。

ご興味のある方は、こちらより直接パルド氏までコンタクトをお願いします。 英語力や金融知識よりもやる気のある方を歓迎します。



■監修者まえがき

 本書は、トレードシステムの構築法の基礎を解説した『Design, Testing, and Optimization of Trading Systems』の邦訳である。この本のなかで著者のロバート・パルドは、読者がシステムトレードの構造を、段階を追って理解できるよう多くの例を引きながらガイドしている。順次読み進んでいけば、この分野の造詣が深くない方でも、自然に初歩的な知識を身につけることができるであろう。

 さて、システムトレード、あるいはメカニカルトレードなど、呼び名はいろいろあるものの、いわゆる運用者である人間の裁量を一切介さない売買の多くは、過去のデータを確率統計的な観点から分析し、そこから得られた帰結に基づいて、システムがマーケットをウオッチしながら適宜売買を行うという構図になっている。この手法は原則として、人間の心理的なバイアスを受けることなく売買が行われるために、精緻なリサーチを行い、堅牢なツールを作り込みさえすれば、ほとんどの条件下では期待値どおりのリターンが得られるというメリットがある。まさに現代のマーケトにおける「聖杯」だと言えよう。

 このアプローチは、うまく扱える人間にとってはあまりにも容易に結果が出るために、日本のマーケットにおいても近年非常な勢いで利用者が伸びている。私は仕事柄、さまざまなマーケットの運用者と意見を交換する機会が多いが、個人投資家、機関投資家を問わず、トレードシステムの具体的な構築法に対する関心が最近非常に高いことを実感している。とくに個人投資家においてはその傾向が顕著であり、現に私の周囲では、多くの個人投資家がシステムトレードを利用して驚くべきパフォーマンスを達成しているのである。近い将来、日本の株式市場や先物市場において、利益を得ることを目的にマーケットに参加する資金のかなりの部分は、こうした冷静で感情を持たないコンピューターによって売買されるようになる(あるいはすでにそうなっている)と、私は確信している。

 だが、ここでひとつ面白いのは、同じマーケットで売買しているにもかかわらず、各々のトレードシステムは設計者の個性を色濃く反映するという点であろう。メカニカルなアプローチといえども、その構築の過程で設計者のマーケットにおける知識や経験がボトルネックになることが多いためである。読者におかれても、本書の内容を理解し、自分なりのシステムを生み出したあとでも、日々の売買の実践からフィードバックして、改良を重ねられるようにお勧めしたい。私の知るかぎりシステムトレードにおける成功者は、皆そういった道程を歩んできているからである。読者の成功を祈る。

 最後に、翻訳にあたっては以下の方々に心から感謝の意を表したい。山下恵美子氏には、正確な翻訳をしていただいた。そして阿部達郎氏にはいつもながら丁寧な編集・校正を行っていただいた。また、本書のようなマニアックな書籍が発行される機会を得たのは、採算性に目をつぶっても良書を世に出したいというパンローリング社長の後藤康徳氏の熱意のおかげである。

 2005年12月

長尾慎太郎



■ザ・トレーダーズ・アドバンテージ・シリーズに向けての序文

 ザ・トレーダーズ・アドバンテージ・シリーズは、先物、オプション、株式市場をはじめとする世界中の経済市場を活動の場とするトレーダーやアナリストたちに役立つ書籍を出版しようという新しいコンセプトに基づくものである。本シリーズの特徴は、各書籍がそれぞれ1つの概念にのみ焦点を当てている点である。内容を理解するのに必要な基礎的情報以外は、長々とした前置き、先物取引、清算会社、オーダーエントリーといった用語の定義などは一切省き、論題のみを集中的に議論する構成になっている。

 先物・オプション業界はすでに揺籃期を脱し、成熟期に入ろうとしている。つまり、開拓マシンとしての役割りを終え、最もアクティブな世界市場の中心的存在へと変貌しつつあるということである。通貨市場におけるEFP(現物と先物のポジションを交換する)取引の導入によって、現物市場も先物市場も当事者にとって利便性の高いものになると同時に、先物市場は世界穀物の正式な値決めの基準に使われるようになった。株式ポートフォリオのヘッジ、クロスレートの設定、スワップ取引、インフレ指数連動債の購入も、今やトレーダーや投資マネジャーは電話1本で実行可能だ。古くから存在した制度間の違いも、ほとんど消えつつある。

 しかも、これはほんのプロローグにすぎない。伝統的なオープンアウトクライ市場にも電子の波は確実に押し寄せ、今現在でも、ピットでの取引から事後処理に至るまでのすべてがコンピューターで行われている。「プログラムトレーディング」は、コンピューター化されたティッカーテープを分析し、自動的に売買を執行する手法であるが、これもまた避けることのできない変革プロセスの氷山の一角にすぎない。注文執行がすべてコンピューター化され、執行に関してだれにも苦情を言えなくなる日は、もう目前まで来ている。やがては、オーダーさえ出さなくてもすむ日がやって来るだろう。

 市場の変革に伴って、市場関連の書籍もまた進歩した。しかし、トレーディングについて書かれた書籍の多くは入門書の域を出ない。高度な読者向けに書かれたものさえ、取引についての細々とした記述や市場のメカニズムについての説明を含むものが多い。経験豊富なプロのトレーダーやアナリスト向けの内容に焦点を絞り込んだ書籍が少ないのが現状だ。こういった状況のなか、ザ・トレーダーズ・アドバンテージ・シリーズはまさに、彼らの待ち望んだ書籍を提供するものである。

 本シリーズの書籍はすべて、その道のプロと優れたリサーチアナリストの手によって書かれたものだ。内容は主として先物、現物、株式の各市場を対象とするものだが、価格予測にも応用可能である。本シリーズで扱う題材にはトレーディングシステムと各種テクニックも含まれるが、これらはすべて、価格予測とトレーディング技術を磨くうえで不可欠なものばかりであるため、本シリーズに含めた。

 クリエイティブで最先端の内容を扱う本シリーズは、新しいテクニック、既存のトレーディング手法の徹底分析、未解決問題への新たな取り組み方を提示するものである。本シリーズでは、概念は明確で分かりやすく説明し、例題と図表をふんだんに取り入れるという一貫した姿勢が貫かれている。また、不必要な基礎的資料を含んでいないため、ボリュームは薄く、要点を明確に述べているのがシリーズ全体の共通点である。読者には注意深い読みと考察が求められるが、本シリーズを読破することで、市場分析と市場予測のあらゆる分野に対する理解は、類書とは比較にならないくらい高まるだろう。

 1992年7月、バミューダにて

ペリー・J・コーフマン



■はじめに

 本書の著者ボブ・パルドは長年にわたって最適化問題に取り組んできた。汎用テストプログラム「アドバンスド・トレーダー(Advanced Trader)」の作成者として知られ、数々のトレーディング戦略の開発者でもある彼は、最適化プロセスを、開発、テスト、結果の検証というあらゆる面から考察するのに必要なすべての資質を備えた人物と言えるだろう。

 最適化手法は一見、勝てるトレーディングシステムを見つけるための簡単で理想的な方法であるかに思えるが、本書を読み進めるにつれて、重大で難しい意思決定を伴うものであることが分かってくるはずだ。

 テストを行う目的は、そのルールと数式(つまり、戦略)を使って過去にトレーディングを行っていたならば、どんな成果を上げていたかを知るためである。どんな手法でもそのほとんどが、過去の状態(非常に特殊な状態であろうと、一般的な状態であろうと)を検証することで構築されることを考えれば、過去に起こったであろうことを正しく認識しているかどうかを確認したいと思うのは当然のことである。アイデアをバックテストすることは当たり前のことと言ってもよいだろう。戦略を、成功するかどうかも、どれくらいのリスクにさらされているかも、そして望む結果を得るためにどれくらいの資本が必要なのかも知らずにトレーディングに用いることほど危険なことはない。

 ところが、テストには落とし穴もある。コンピューターによる計算能力の向上によって、パターン、ルール、公式のありとあらゆる組み合わせをテストすることが可能になり、成功すると思える戦略は確実に見つかるようになったと思われがちだ。しかし、経験によれば、こういった方法による戦略はリアルトレーディングでは利益を出せないことが分かっている。最近になって「オーバーフィッティング(こじつけ)」と呼ばれるようになったこの現象は、トレーディングプログラムの開発者たちを悩ます難題である。ボブ・パルドは本書でこの問題を詳しく解説するとともに、正しい解決方法を提示している。

 最適化結果の評価もまた統計学的に健全なものでなければならない。結果を正しく提示・解釈できなければ、最良の解決策を導き出すことは不可能だ。最適化は正しく行わなければ意味のある結果を導き出すことはできないこと、正しく行わなければ信頼度の低い結果しか得られず、ひいてはトレード損失につながることを本書の著者はよく理解したうえで、詳しく解説している。

 トレーディング手法をこれから開発しようと思っている人、あるいはすでにある手法を検証したいと考えている人は、まずは本書を読んで内容をしっかり理解することから始めることをぜひもお勧めする。

 1992年7月 バミューダにて

ペリー・・コーフマン



■第1章 最適化について

 メカニカルなトレーディングシステムは市場とほぼ同じ長さの歴史を持つ。また、テクニカル手法やトレーディングシステムに対する人々の関心は、市場そのものに対する関心に左右されるため、市場に対する関心が高まれば高まり、低下すれば低下する傾向がある。この10年間を見てみると、トレーディングシステムに対する人々の関心は劇的に上昇した。これは主として演算処理能力の爆発的な向上と、高度な演算処理が廉価で実行可能になったことによるところが大きい。高度な演算処理を廉価で行えるようになったことで、高度なトレーディング用ソフトウエアおよびテスト用ソフトウエアの開発・普及にも拍車がかかった。こういった時代のなかで、テクニカルトレーディング手法もまた革新的な進歩を遂げていった。

 演算処理の向上と低価格化、高度なソフトウエア開発、トレーディング手法の進歩という時代背景の下、聡明な一般投資家は今やトレーディング戦略の設計からテストまで、プロの投資会社と互角に張り合えるだけの力を持つに至った。事実、テスト用ソフトウエアと486コンピューターという武器を手にした今の一般投資家の能力は、1975年当時のプロのシステムアナリストのそれをはるかに凌ぐ。またテクニカル手法についても、種類、性能のいずれを見ても1975年当時のものなど足元にもおよばないほど優れたものが、簡単に手に入る時代になった。

 しかし、メカニカル戦略の正しい設計とテストに対する理解は、演算処理能力、ソフトウエア、テクニカル手法の急速な進歩についていけていないのが現状だ。トレーディング戦略は、アイデアに始まり、利益を出してそのライフサイクルを終えてこそ、成功したとみなされる。本書では、メカニカル戦略の設計からテスト、最適化、トレードに至るまでの各ステップに必要なテクニックを紹介する。

 正確にテストされたメカニカル戦略から得られるものは、利益である。一方、正しくテストされなかった戦略からは失うものが多いが、その最たるものが損失だろう。しかも、長時間にわたる重労働の挙句の果てに損失とくるわけだから、それに伴う挫折感と絶望は相当なものである。

 テクニカル分析とメカニカルなトレーディングシステムの使用は広く普及し、今なお拡大を続けている。こういった数値的アプローチはその性質上、コンピューターテストに向いた手法と言える。テストは正確に行えばトレーディング戦略に莫大な付加価値をもたらすが、正確に行わなければ即、リアルトレーディングでの損失へとつながる。コンピューターテストは、間違ったときの悲惨な結果を考えれば、正しくやらなければやる意味などまったくないのである。

 トレーダーのなかには、正しいテスト手順を知らないがためにコンピューターテストに失望する者も存在し、そのためテストや最適化などやっても無駄だとして、ないがしろにしてきたトレーディングサークルもある。

 本書では、トレーディング戦略を正しくテストし最適化することで、その習得に費やされた努力が十分に報いられるほどの利益が得られることを示すとともに、トレーディング戦略の正しい具体化方法、テスト、最適化方法を詳しく解説する。事実関係を明確にするため、本書では最適化(=正しいテスト)とオーバーフィッティング(=正しくないテスト)とをはっきりと区別する。ここで本書の流れをざっと概観しておこう。各項目は分かりやすく解説し、意味・定義などは明確化し、事例による説明も行う。

  • トレーディング戦略の設計、テスト、最適化、評価方法
  • トレーディング戦略の正しい最適化方法
  • オーバーフィッティング(こじつけ)の見極め方とそれを防ぐためのガイドライン
  • リアルトレーディングでトレーディングモデルを使うことの意義
  • ヒストリカルテストのパフォーマンスに対するリアルトレーディングパフォーマンスの評価方法
 本書はトレーディング戦略を成功に導くために必要な手法に焦点を当てたものであり、トレーディングにメカニカルな戦略を取り入れたいと考えているいかなる人にとっても役立つ内容である。

 戦略テストの徹底検証のなかで特に重要なのは、利益とリスクの測定である。トレーディング戦略の価値は、利益とリスクという相互関係にある2つの側面から評価する必要がある。トレーディングのパフォーマンスを決めるこれら2つの対極にある要素は別々には評価できず、相互関係を通してのみ評価できるものである。

 言い換えるならば、トレーディング戦略を正しく評価するためには、利益とリスクの正確な測定が絶対不可欠ということになる。そして、利益とリスクを測定するのに必要なのが、コンピューターによる網羅的なテストなのである。こういった事実に鑑みれば、トレーディング戦略のコンピューターテストの必要性をますます実感していただけるのではないだろうか。

 本書では、具体化したトレーディング戦略の正しいテスト方法を事例を使って説明するとともに、その改善方法も提示する。したがって、コンピューターを駆使したトレーディングを行っているトレーダーにとって価値ある書物であるのは言うまでもないが、コンピューターを使わないトレーディングを行っているトレーダーにとっても、そういったトレーディング手法のメリットをとりあえずは実感できるという意味で、役立つものである。

 しかし特に本書をお奨めしたいのは、コンピューターテストした戦略を使っているにもかかわらず、トレーディングで利益を上げていない人と、これから戦略のテストを始めようと考えている人である。本書に提示されたガイドラインをじっくり考察することで、欠陥のある戦略、間違ったテスト手法、リアルトレーディングにおける誤った解釈といった失敗の原因を特定し、それらを解決するのに役立つだろう。

 多少の厚かましさは覚悟のうえで申し上げるが、本書はこれまでトレーディングで利益をあげてきたコンピュータートレーダーの方々にも役立つ内容であると考えている。本書では数多くのテストガイドラインを紹介するが、これらについて書かれた本はまだない。特に、ウォークフォワード分析についての詳細な説明は、利益をさらにアップさせたいコンピュータートレーダーにとってはまさに目から鱗となること請け合いである。

コンピューターテストの利点

 トレーディング戦略をテストする第一の理由は、それがうまく機能するかどうかを確かめるためである。とはいえ、トレーディング戦略を正しくテストするには複雑な手順が必要であり、戦略がリアルトレーディングで「使える」かどうかを確認する作業にも、ある程度の複雑さは付き物だ。本書では、勝てるシステムトレーディングに不可欠なこれら2つの決定をどのように行えばよいのかを説明する。
 戦略をテストする第二の理由は、潜在的利益とリスクを正確に測定するためである。トレーダーがトレーディングを行う目的は利益を上げることにあることは言うまでもないが、この利益を達成するためにはどれくらいのコストがかかるのかを知る必要がある。それを教えてくれるのが、リスクの大きさなのである。

最適化の利点

 リアルトレーディングをいったん開始したならば、用いている戦略は常に現状にマッチするようにアップデートし、絶えず監視する必要がある。トレーディングでは、市場の変動は避けようもない事実である。市場だけでなく、トレンドも変化すれば、ボラティリティや流動性も変化し、市場の状態は刻一刻と変化し続ける。リアルトレーディングのパフォーマンスはこういった諸々の変動の影響を受ける。最適化の目的の1つは、こういった絶えず変化し続けるトレーディング環境のなかで、トレーディング戦略のパフォーマンスを最大に維持することにある。最適化のもう1つの目的は、リアルトレーディングのパフォーマンスを評価するのに必要な統計量の測定である。

 最適化は、トレーディング戦略をさまざまな市場向けに調整するのにも役立つ。どの市場もそれぞれに独特の特徴を持つ。ある市場では特定のパラメータ値でうまくいったトレーディング戦略が、別の市場ではそれと同じ数値ではうまくいかないこともある。最適化を使えば、それぞれの市場に合ったパラメータ値を求めることができる。  またトレーダーは、運用資金も持ち時間も、利益目標も、リスク性向も各人によって異なる。最適化は、トレーディング戦略をそれぞれのトレーダーのニーズにできるだけ合うように調整するのにも役立つ。

本書の構成

 人間が創造するすべてのものは、アイデアからスタートする。アイデアの段階では漠然としているものも、それを発展させていくと次第に明確さを帯び、やがては1つの具体的な形となって現れる。アイデアは具体的な形として表現されてはじめて、現実のものとなり得るのである。

 トレーディング戦略についてもまったく同じことが言える。第2章では、トレーディング戦略の具体化から、テスト方法、そして最終的にリアルトレーディングで使えるようになるまでの7つのステップについて説明する。メカニカルなトレーディング戦略とは、その名が示すとおり、トレーダーの主観を一切入れない客観的なルールの集まりを意味する。成功するトレーダーは例外なく、一貫したルールを採りいれている。トレーディングルールの採用は、リスク管理には不可欠である。

 第3章は大きく2つの内容に分けられる。前半ではトレーディングシステムの原理とそれを用いることの利点について説明する。そして後半では、メカニカルなトレーディング戦略の7つの重要な要素とその用途について説明する。賢明で現代的なトレーダーであれば、トレーディングシステムのパフォーマンス評価は、実際に資金を運用してみるよりも、コンピューターシミュレーションを使った方が安上がりで、しかも簡単であることが直観的に分かるはずである。

 トレーディング戦略を評価するには、多数の異なるステップを順序だてて実行することが必要になる。第4章では、正確で現実に即したトレーディングシミュレーションを実現するために解決しなければならないさまざまな問題点について考える。トレーディングシミュレーションの成果は、何を選択するかに左右される。「軽率なことはするな。報いがくるぞ」という古い諺があるが、シミュレーションのことをこれほど的確に言い当てた言葉はないだろう。シミュレーション作業はその性質上、コンピューターにどっぷりと依存するものだ。そのため、シミュレーションにかかる処理時間を短縮するために、莫大な数のシミュレーションのなかからベストなものをサーチするさまざまな方法が開発されてきた。

 第5章では、サーチ法および評価法の違いによってテスト結果がどう左右されるかについて検証するとともに、それぞれの手法の長所と短所について見ていく。  第6章では、トレーディング戦略を評価する第一ステップとして行う予備テストについて解説する。このステップでは、用いようとしている戦略が適正かどうかをチェックする。そして次のステップでは、その戦略を異なる市場および異なる期間に対してテストする。もちろん、そのトレーディング戦略に変数(パラメータ)が含まれていなければ、最適化の必要はない。

 トレーディングシステムの多くはそれぞれに特有のルールと公式があり、それらは市場の種類や状態によって変わってくる。一般に、最適化が有効なのはこういったトレーディングシステムである。そのシステムに含まれるパラメータの適正値を最適化によって決定するのである。

 第7章では、トレーディングシステムの正しい最適化の方法について説明する。最適化は2つのステップに従って行う。第一ステップでは、トレーディングシステムを異なる市場および異なる期間について最適化する。そして最適化の締めくくりとして、アウトオブサンプル・トレーディングに基づいてトレーディングパフォーマンスを網羅的に評価するウォークフォワード分析を行う。

 トレーディング戦略のテスト、最適化、ウォークフォワード分析が終了したら、ほかのトレーディング戦略との比較と、投資手段としてのメリット、つまりほかの投資手段と比較して、莫大な資産を投じるだけの価値があるかどうかを評価しなければならない。さらに、その戦略の内部構造に基づくパフォーマンス評価も必要である。これら2つの重要なトピックについては、第8章で議論する。

 一般に、正しいテスト手順と最適化手順はトレーディングコミュニティーではあまりよく知られていないため、最適化=オーバーフィッティングといった間違った認識がはびこり、最適化をないがしろにしてきたサークルもある。

 第9章では、テストと最適化が正しく行われなかった場合に発生する、トレーディング戦略のヒストリカルデータに対するオーバーフィッティングという問題を取り上げる。この問題はきわめて重要であるため、第9章では全章を使って、テストと最適化の間違ったやり方によって生じるこの現象を見極めるための方法について説明する。

 いかなる戦略も、その目指すところは利益を上げることにある。トレーディング戦略の評価――つまり、戦略の具体化、テスト、最適化、ウォークフォワード分析、評価――が無事に終わると、次はいよいよリアルトレーディングである。

 これまでコンピュータートレーダーたちを悩ませてきた問題は、リアルトレーディングのパフォーマンスを評価する正しい手法が分からなかったことである。リアルトレーディングのパフォーマンスは、正しく行われたテスト結果を基にした予測によってしか評価することはできない。

 第10章では、コンピューターテストによって利益とリスクが既に分かっていることを前提として、リアルトレーディングのパフォーマンスを評価するためのガイドラインについて説明する。

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