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投資の成功は大脳辺縁系で決まる

失敗の投資法
バリー・リソルツ著『失敗の投資法』

 人間の感情や行動や長期的な記憶(その他の機能も含む)を支配しているのが大脳辺縁系である。感情を処理する大脳辺縁系の一部に扁桃体がある。小さく、アーモンドのような形状で、脳の内側の深部にある偏桃体は、記憶や学習や感覚と感情を結び付ける。

 脅威を検出すると、視床下部にコルチゾールやアドレナリンを含むホルモンを生み出すように指示を出す。これについては非公式の名称のほうがなじみがあるだろう。つまり、ファイト・オア・フライト(闘争・逃走反応)だ。

 これは投資家にとって非常に重要である。

「投資での成功は、大脳辺縁系の非常に素早く機能する感情的なシステム1を制御することでもたらされる。それを制御できなければ、貧しいままに一生を終えることになる」

 これは、医師であり、引退した神経科医であり、資産運用会社エフィシエント・フロンティア・アドバイザーズのプリンシパルで、投資に関する何冊ものベストセラーの著者でもあるウィリアム・J・バーンスタイン博士の言葉である。

 『ザ・デリュージョンズ・オブ・クラウズ』で彼は、人間の脳が進化したために、われわれが現代の金融市場で誤った方向にかじを切ってしまうことを説明している。

 彼の考えでは、「人間はストーリーを語り、他人のマネをし、そしてステータスを求めるサルである」。これこそが、最終的に集団のダイナミズムにつながり、誤りであることが分かるまで暴走するような信念体系が集団全体に深く刻み込まれている。

 現代において、金融市場ほど、人間の感情的な行動の影響が明白に見られる場所はない。われわれの感情は、謙虚であるべきときに自信過剰になったり、慎重であるべきときにパニックになって、自分が昔から持っている信念を否定するような情報ではなく、その信念をより強化するような情報を追い求めてしまう。

 その結果は、魔女狩りから経済的破綻まで幅がある。現代では、この集団的行動が誤ったナラティブを信用することやミーム株の上昇、そして最終的にはバブルと市場の崩壊につながる。

 なぜそうなるのか。

 バーンスタインによれば、人間は複雑な分析的思考ではなく、シンプルなナラティブに頼る「認知的な倹約家」ということになる。ナラティブが魅力的なほど、われわれの分析能力を蝕む。最も魅力的な二つのストーリーが黙示録の「終末の日」と「労せずお金持ちになる」ミームだ。これらは感情を動かす非常に効果的なトリガーなので、ソーシャルメディアにも宗教的なナラティブにも広く見られる。これらは、群衆による信じられないような妄想を頻繁に生み出す。

 進化論の観点からは、われわれが行うパターン化、つまりパターンが存在しないところにパターンを見いだしても(素人のテクニカルアナリストたちはこれを行うことで知られている)ほとんど害はない。巨大なヘビのように見える蔓を見て道から飛び出すのは、せいぜい恥ずかしい思いをするだけの偽陽性である。だが、実際には最も危険な毒ヘビである蔓を無視する偽陰性には、究極の進化的コストがかかる。おそらくこれが、われわれが前向きな展開を無視する一方で、悪いニュースに非常なまでに注意を払う理由の説明となる。

 存亡の危機はわれわれの大脳辺縁系にとって非常に重要なものである。投資家は、人間がサバンナで生き残り、適応するのに役立った進化的特徴が、今日では高く付く誤りにつながることを理解する必要がある。

 この進化的な障害をわれわれ皆が抱えている。なぜ現代においても、いまだそれほど影響があるのだろうか。われわれはこれを乗り越えて進化しなかったのだろうか。

 簡潔に言えば、われわれはそのようには創られていない。

 その理由を、コロンビア大学ビジネススクールのファイナンス論の非常勤教授で、モルガンスタンレー・カウンターポイント・グローバルのコンシリエント・リサーチ部門長であるマイケル・J・モーブッシンは見事に説明している。彼は、われわれが現代の資本市場のリスク・リワード分析を行うようにはできていない理由を説明している。

 「脳は、ベイズ分析を理解することよりも、『狩猟採集を行うこと』に向いているのだ」
(「ベイズ」という言葉を目にしたら、「確率論」を意味すると思えばよい。つまり、どのような理論であっても、その仮説が正しいとどの程度確信しているかを最も正確に表す確率はどれほどかということである)。

 モーブッシンはバーンスタインと同じような結論に達している。

ほとんどの人々は、市場で長期的に優れたパフォーマンスを上げるために必要な感情的隔離と規律を欠いている

 ホモサピエンスとして知られる霊長類は200万年ほど前から存在する。現代の金融はほんの数十年の歴史しかない。人類の歴史を24時間の時計で測れば、今日、われわれが理解しているような投資はたった過去2秒ほどのことである。

 モーブッシンは人類に次の質問をしている。「過去2秒間に何を学んできたのか」

 残念ながら、その答えは「不十分……」ということになる。

 次は、サバンナで生き抜くには適切なタイミングでパニックになる一方、優れた投資家になるには誤ったタイミングでパニックに陥るのかについて説明しよう。


暴落時にすべきこと


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