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人間の脳は投資には向いていない

 われわれがこの地球の人新世を支配することを可能にした大きくて優秀な脳は、現代の世界ではわれわれに不利に働く。

 われわれは、ダニングクルーガー効果、ナラティブの誤謬、新近性効果、サンクコストの誤謬、損失回避、保有効果、後知恵バイアスといった認知的な問題がわれわれの意思決定にどのような影響を及ぼすかを見てきた。それらのせいで、われわれはひどい判断を下し、お粗末な行動を取り、最終的にそれがわれわれのポートフォリオに不利に働く。

 投資家として自分の行動をより良くコントロールするために、われわれには自分の脳を出し抜く何らかの戦略が必要である。その方法を幾つか見ていこう。

自分の信念を反証する

 われわれ生来の確証バイアスに対抗するには、元の信念の反証となる情報を探せばよい。強制的に反対の視点を探し、理解するようにするのだ。これが信じられないほどイライラする作業だと思うかもしれない(自分と異なる意見を持つ者はみな明らかにバカだ)が、最終的に思考を研ぎ澄ませることになる。  模擬裁判はロースクールで行う興味深い授業の一コマだ。皆さんは、事実と適用する法律とともに一つの裁判を行う。裁判の準備をする時点では、自分が弁護側か検察側のどちらに付くか分からない。どちらの側も十分に理解しておかなければならない。反対側の強みと弱みを分かっていれば、はるかに効果的に賛成や反対の主張ができる。こうすることで、ほとんどの弁護士や投資家に影響を及ぼす確証バイアスを避けることができる。

 株式市場の天井を予測する予測屋たちは、上昇が数年間続く理由を説明できるはずである。経済成長は力強いものになると主張する評論家たちは、目の前の景気後退のリスクを見分けられるはずである。

自分のフィルターバブルを吹き飛ばせ

 皆さんは同じ種族の一員である。バリュー投資家だろうがグロース投資家だろうが、アメリカン・マッスルのファンだろうがイタリアのスポーツカーのファンだろうが、リベラルであろうが保守であろうが、皆さんは同じ種族に属している。皆さんのグループは同じメディアを読み、同じような考えや価値観を持つ者たちと付き合う。

 これによって自分の信念や保有銘柄への支持を強化するフィルターバブルが生まれる。自分の投資を客観的にとらえるのではなく、これによって盲点が生まれ、それがご想像のとおり、高く付く誤りにつながる。

 自分の世界をもっと広げるべきだ。ほかの有効な情報源を見つけなければならない。取引を行うには買い手と売り手が必要である。自分の見方と異なる合理的な見方を見つけるのはそれほど難しくない。

 物理学者のカール・セーガンはかつて「途方もない主張には途方もない証拠が必要だ」と述べた。

 自分と同じ種族の信念には気をつけるべきだ。

逸話よりもデータを選べ

 データを評価するのは難題ともなる。数字では異なる行動が示されていても、魅力的なナラティブは簡単にわれわれを動かす。スポーツファンや特定の政党を支持する者たちは特定の結果に深い関心を持っているので、単純に現実を客観的に判断する能力を失っている。

 逸話は一つのデータである。直近の出来事よりもトレンドを選ぶべきである。ナラティブが魅力的なのは、良い奴と悪い奴、分かりやすい衝突、満足できる解決といった具合に分かりやすいからだ。

 われわれは証拠にかかわらず、信じたいことを信じる。資本市場では、そのようなアプローチはとても高く付く可能性がある。

視点を変えろ

 これまでに視点を変える思考実験を行う幾つかの方法を書いた。ときどき第一原理に立ち戻り、自分の信念体系を再検討すべきであることは何度も書く価値がある。

 1990年代から2000年代にかけて、私は母が不動産のエージェントだったので、さまざまな不動産のデータを記録していた。ウォール街ではだれもやっていなかった。2005年までに、何かがかなりおかしくなっていることが明らかとなった。さまざまな視点から経済データを調査していなかったら、私はほかのすべての者たちと同じように迫りくる危機を見落としただろう。

 世界をちょっと違った角度から見ることで大きな洞察が得られる。

感情の認識

 感情がどのようにわれわれの思考や行動に影響を与えるかを多く見てきた。

 自分が興奮して物事を見ているかもしれないことに気づけば、誤りを克服できる可能性がある。だが、このような自己認識をどれほど追い求めても、感情はわれわれを惑わす。

 ラドヤード・キップリングは息子に次のようにアドバイスした。

周りにいる皆が冷静さを失い、お前を非難しているときに冷静でいられれば、
だれもがお前を疑っているときに自分を信じることができて、
彼らの疑いも許すことができれば、
地球とそこにあるものすべてはお前のものだ

 これはわれわれすべての者たちにとっても素晴らしいアドバイスだ。

 ここまでの3部では、すべての投資家を傷つける「誤った考え」「誤った数字」「誤った行動」を見てきた。優れたアドバイスと銘打った第4部では、ひどい結果につながる誤りを回避する戦略を紹介する。

 さあ、始めよう。


爬虫類脳は何を考えるのか

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失敗の投資法

失敗の投資法

2026年3月発売/四六判 672頁
著 者 バリー・リソルツ
訳 者 藤原玄

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