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神経経済学 爬虫類脳は何を考えるのか

 行動経済学から自然と発展したのが神経経済学である。これはわれわれが判断を下すときに発生する生理学的プロセスを同定しようとするものだ。この分野では多くのことが発見され、潜在意識が意思決定の多くを左右することを示している。

 カリフォルニア工科大学で行動経済学と経済学を教えるコリン・キャメラー教授は、ウォートン・ニューロサイエンスの特別上席研究員でもある。彼は行動ゲーム理論の考案者として知られている。

 仮想バイアスという問題を回避するためには、「人に聞くな、脳に聞け」とキャメラーは提案している。人が回答した発言に頼らず、彼らが判断を下しているときに脳で何が起きているかを調べるのだ。fMRI(磁気共鳴機能画像法)、EEG(脳波)、アイトラッキング、血液化学分析、ガルバニック皮膚反応などの技術は、すべて内受容感覚(体内の信号を認識する能力)を助ける。

 一連の巧妙な実験を通じて、キャメラーは、われわれの意識決定にはミリ秒単位で行われるものもあることを発見した。つまり、われわれが意識的に認識する前に判断が下されているのだ。映画の1フレーム(フィルムでは1秒当たり24フレームが使われる)に当たるたった30ミリ秒間の恐ろしい映像に反応して、扁桃体の活動が活発になることをfMRIは捉えた。われわれが脅威を意識的に認識する以前に、われわれの脳はすでに行動方針を決めているのだ。

 現代人の知性と祖先たちの知性の違いを生んでいるのが脳の前頭葉である。われわれの脳の深部にある高速に反応する部分は古代からのものだ。そこに、われわれの脳の弱点がある。

 ダニエル・カーネマンの著書『ファスト&スロー』のタイトルから引けば、われわれの爬虫類脳はとても速く(ファスト)、そしてゆっくり(スロー)考えるのだ。

 脳の神経細胞の1%にも満たないドーパミン作動性ニューロンが、われわれの神経系のドーパミンの主たる放出源である。セックスや飲酒や食事やギャンブルなどの行動をすると、このような神経伝達物質が脳の報酬系回路をドーパミンであふれさせる。喜びや満足ややる気などの感情はその結果である。

 神経科医のアンナ・レンブケは、幾つかの贅沢な行動が基準レベルを超えるドーパミンの生成をどのように高めるかの研究をしている。チョコレートは50%、セックスは100%、ニコチンは150%のドーパミンを増大させる。これは、喫煙者にとってはセックスよりもセックス後の一服のほうが喜ばしいことを示唆している。

 われわれの意思決定のプロセスには、われわれが意識的に把握していないことがたくさんある。特定の判断を下す理由が分からなければ、どのようにして改善できるのだろうか。われわれの脳は、われわれが興奮し、恐れを感じ、嫉妬し、渇望し、恐れおののくと、ホルモンで満たされることを知ることはこのプロセスの最初の一歩にすぎない。

 自分のスキルをどのくらい正確に評価できるだろうか。あとで分かるように、それほど正確ではない。「メタ認知」と呼ばれるダニングクルーガー効果が、皆さんが実際よりも正しく評価できると考えてしまう理由である。その理由を見ていく。


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