ウォール街のプロが新型コロナでパニックの一方、個人投資家は買う
批評家たちがパッシブ運用は失敗する運命にあると語るような状況があったとすれば、2020年がそうだった。つまり、史上最速の弱気相場が起きた年である。新型コロナのパンデミックが市場に外部要因をもたらしたことで、ボラティリティは著しく高まり、市場はリーマンショック以来最悪の下落を示した。
30歳に満たない若者たちにとっては、2020年3月はおそらく投資人生で最悪の時期だっただろう。2020年2月〜3月までの4週間に、市場は34%も暴落したのだ。
アクティブ運用が輝く機会があったとしたら、このときだった。
だが、そうはならなかった。パニックを起こしたのはウォール街のアクティブ運用のファンドマネジャーたちで、メインストリートの働き手たちではなかった。おそらく、これを示す最も興味深い指標となるのが、プロの投資家たちが用いた投資先と個人投資家たちが好んで利用した投資先の違いだろう。

SPDR S&P500 ETF(SPY)

iシェアーズ・コア S&P500 ETF(IVV)

S&P500 ETF(VOO)
世界で最も大きい三つのS&P500のインデックスファンドについて考えてみよう。つまり、ステート・ストリートの SPDR S&P500 ETF か SPY(Spyder)、ブラックロックのiシェアーズ・コア S&P500 ETF(IVV)、そしてバンガードの S&P500 ETF(VOO)である。
プロたちはステート・ストリートのスパイダーを選ぶと言われている。これは主要なインデックスETFの第一号で、最も流動性が高い。登録投資アドバイザーや個人投資家はブラックロックやバンガードの商品を好む。これらのファンドはすべて同じものに投資していることに注意してほしい。つまり、ETFの運用会社が異なるだけだ。
パンデミックによる暴落の間、ブラックロックとバンガードの顧客たちはすべての日で買い越した。一方で、ステート・ストリートの顧客たちは売り越した。
言い換えれば、下落時にウォール街のプロたちはパニックになって売った一方で、個人投資家たちは落ち着いて買っていたのだ。これは投資家とトレーダーの時間軸、短期と長期の時間軸が異なることに一因がある。
だが、私はこの一部は心理学で説明できると考える。つまり、プロたちはボーナスやさらには職までも危険にさらしているが、個人投資家は株価の下落を利用しようとした。
バンガードグループのデータがこの現象を裏付けた。同社が計測した資金フローによると、2020年2月と3月第一週のすべての日で、株式の買い越しとなった。
これは、バンガードのウィリアム・マクナブ元会長兼CEO(最高経営責任者)がリーマンショックのときに語ったことによく似ている。「プロは売り、素人は買った」
個人投資家はダム・マネーだろうか。数十年前ならそうだったかもしれない。だが、今日ではどうだろうか。それほどでもない。
今日、ほとんどの運用資産はいまだアクティブに運用されている。だが、2017年に書いたように、資産運用業界のアクティブ運用の部分は縮小し続けている。もっと正確に言えば、適正な規模になってきている。アクティブ運用の世界はリーマンショック後に発生したこの大きな変化にいまだ気づいていない。
パッシブ運用やETFは、パニック売りをするアクティブのトレーダーたちのカウンターウエートとなった。次に、だれかがパッシブ運用の危険性を警告していたら、これを思い出してほしい。
失敗の投資法
2026年3月発売/四六判 672頁著 者 バリー・リソルツ
訳 者 藤原玄
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