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大切な会社や事業、店舗を人に譲渡する。それは苦渋の決断を要するものです。だからこそ、会社や従業員、顧客を守ってくれる信頼に足る相手先に譲りたい。しかし、オーナー自らが相手先を見つけ出すのは容易ではありません。本書ではそんな、買い手側と売り手側をつなぐM&Aについて現役アドバイザーの立場から、M&Aとは何かという基本的な説明や締結までの流れと次なるステージ、薬局M&Aの成功・失敗事例や注意点、相談者となるアドバイザーのレベル診断まで幅広く解説しています。
日本ではM&Aの仲介業を行うにあたり、資格や制度などがまだ確立されていません。現状では、やったもの勝ちです。なかでも本書がテーマとする薬局M&Aは、雑誌やテレビでも数多く特集が組まれるほど急増しました。それは同業界の成り立ちから業界再編などが深く関係してきた結果です。しかし急増したばかりに、M&Aを単なる手数料稼ぎとして、売り手が手にする以上の破格な金額を要求するアドバイザーが後を絶ちませんでした。
本書は、今後の日本の事業承継や顧客保護において重大な役割を果たすM&Aについて、正しい知識を広めたい。そんな思いが詰め込まれています。まずはどこに相談すればよいのか。相談料や成功報酬などはいくらが妥当なのか、いずれM&Aを考えるときまでに何を準備しておけばよいのか、売り手として薬局の価値を高めるにはどうするべきか、買う側は何を注意すればよいのか、どんなところに落とし穴があるのかなどなど、それらを細かく解説していきます。
さらに、介護サービス事業などを行うシンセリティグループ株式会社を一代で築き、6億円超で売却された元代表取締役社長の西浦誠二さんの特別インタビューも掲載。M&Aまでの波乱万丈な歩みを通して、幸せなM&Aとは何かをご紹介します。
M&Aを終えたあとも、その先の人生が輝かしいものになるように、ぜひ、本書を参考にしてください。
世界的なM&Aの状況 ・日本のM&A、海外との大きな違いは何か ・「仲介」は日本独自のもの ・なぜ、調剤薬局に注目するのか
我が国の人口減少・後継者問題 ・「人口減少国 日本」に起きている変化 ・薬局を「家業」にできない理由 ・サラリーマン志向と独立志向 ・商いとしての薬局運営
M&Aは売り手市場か? ・一対一〇の法則 ・アドバイザーに課された任務 ・企業価値の評価(バリュエーション)
狙われた調剤薬局業界 ・調剤薬局M&Aマーケットの形成 ・M&Aの仲介しやすさが狙われる ・誰も彼もがM&Aに参入 ・M&Aが盛んになるのはどんな業界か
調剤薬局のビジネスモデル―大手、中堅、小規模薬局 ・ドラッグストアの台頭 ・敷地内薬局を容認 ・中堅薬局とパパママ薬局の苦悩 ・地域を支えるドクターの高齢化 ・処方箋と薬価 ・就職先はドラックストアの調剤か病院か ・薬剤師一人につき処方箋四〇枚の規定 ・管理薬剤師不足 ・人材紹介会社の活用
旧態依然の限界―意識改革と今後の流れ ・地域連携薬局はマストになる ・電子処方箋 ・二四時間、在宅対応
タスクシフトと大きな脅威 ・書店と同じ道をたどるか…… ・タスクシフト
M&A仲介業者 ・ワンクリック広告で一万円を支払えるM&A仲介会社 ・他業種からの営業のプロ ・仲介会社手数料とアドバイザー ・規制改革担当大臣からの苦言
M&A成立までの流れ―何に注意すべきなのか ・M&Aにおけるプロセスとアドバイザーの関わり方 フェイズ① 準備・決断―初回相談からアドバイザリー契約の締結まで ・仲介会社と個別面談 ・仲介会社を決定 フェイズ② M&A戦略の具体化―買い手候補マッチング ・買い手候補との流れ フェイズ③ M&A契約―クロージング ・デューディリジェンス(DD) ・仲介会社に支払う料金には何があるか ・買収監査(DD)はなぜ必要なのか ・DDの種類
株式譲渡と事業譲渡―譲渡後の会社とのかかわり方 ・条件交渉においては、どちらが優位か ・株式(一〇〇%)譲渡 ・事業譲渡 ・薬局M&Aでは事業譲渡が多い
漏洩防止に専任契約? ・専任契約か非専任契約
紹介先はどの仲介会社も似たり寄ったり ・買い手の情報をどこまで知っているかが鍵 ・処方元クリニックの内情も把握しているか ・訴訟やトラブル
売れる薬局の条件とは ・薬局の規模と候補先
売れない薬局とは ・コンプライアンス違反 ・医療機関との関係性
薬剤師の確保とエリア視点 ・地域別に見る薬剤師の状況 ・ランニングコストで考える店舗運営 ・薬局の生き残り戦略と地域のスモールM&A
買うべき薬局の条件とは ・買収後の将来性 ・持続可能な薬局とは ・お客さんとしての視点 ・見てわかるダメな薬局とは ・買い手も様々、目的も違う
売れる薬局にするため
一.即応でアウトレット価格を狙う―すぐに動ける体制を作る 二.調剤報酬改定のタイミングと価格変動 三.意向証明書を見て考えよう 四.レーマン方式の計算に注意 五.持続可能なM&Aとは―誠意をもって譲受してもらえるかが基準 六.アドバイザー・担当者のレベルを見抜く方法とは ・アドバイザーを評価する ・アドバイザー・担当者レベル診断のポイント 七.反社を介入させない方法
M&Aは「売ったら終わり」ではない ・アドバイザーはコンサルティングもする買い手の伴走者
中小企業庁の支援活用 事業承継・引継ぎ支援センター 登録制度とトラブル相談窓口 補助金や財務サポート 譲渡=引退ではない
特別収録インタビュー 「幸せなM&A そうでないM&Aとの違いは何か」 元シンセリティグループ㈱代表取締役社長の西浦誠二氏に聞く
あとがき
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大道一馬(だいどう・かずま) 株式会社バシラックス 有限会社あおば調剤薬局 有限会社原田薬局 代表取締役社長 薬剤師 法務博士 大学院卒業後、薬剤師として勤務していた時代に、おばあちゃん薬剤師から薬局の譲渡を受け創業。初めての起業で、売り手・買い手のみならず関係者を含めた4方向にWinが発生したM&Aによって、事業承継の魅力と地域医療の維持に対する使命感がわく。その後、薬局運営を堅実に続けながらも自分と同じように独立を希望する薬剤師を支援するためにM&A仲介業務に参画。現在では、病院やクリニック、介護、美容、ITなど多岐にわたる業界のM&Aを数多く成立。業界は違えど、関係者全員がWinとなるM&Aを目指し、日々邁進中。また、業界の健全化に精を出す一方、現役の薬学生とも積極的に交流をはかり、若者支援にも取り組んでいる。