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オルタード・カーボン 下 オルタード・カーボン 上

オルタード・カーボン

2019年8月発売
定 価 本体各1,000円+税
著 者 リチャード・モーガン
訳 者 田口俊樹

上巻
ISBN978-4-7759-4211-6 C0097
四六判 並製 368頁
下巻
ISBN978-4-7759-4212-3 C0097
四六判 並製 352頁


目次訳者あとがき

好評発売中
タケシ・コヴァッチ・シリーズ

ブロークン・エンジェル

ウォークン・フュアリーズ

NETFLIXで配信中。人気ドラマシリーズの原作本。
フィリップ・K・ディック賞受賞。

 イギリスのSF作家、リチャード・モーガンの代表作「タケシ・コヴァッチ・シリーズ」の全3タイトルが順次発売。第1弾は、2002年に発表された作者のデビュー作。人間の魂がデータ保存できるようになった27世紀のベイ・シティ(サンフランシスコ)を舞台に繰り広げられるヒューマンドラマ。発表直後から多くのフォロワーをみだし、根強い人気を誇っている。シリーズの主人公、タケシ・コヴァッチは日本人と東欧人の血を引く元エンヴォイ・コーズ(特命外交部隊)の隊員。強盗をはたらき、100年以上の保管刑に服していた彼が地球で目覚めるところから物語ははじまる。サイバーパンクとハードボイルド、ミステリが絶妙に絡み合うフューチャー・ノワールの最高傑作。2003年、フィリップ・K・ディック賞受賞。2018年、NETFLIXより本書を原作とした同名のドラマシリーズ(シーズン1)が配信開始され、世界じゅうで反響を呼んでいる。2019年に続編(シーズン2)配信予定。ブーム再燃で新たなステージへと躍進する名著の最新版。リチャード・モーガンによる2018年の序文を収録。

 ――テクノロジーの発達によって命の定義が変えられたこの時代、人間の意識は、今や脳に保存され、新しい肉体(スリーヴ)にダウンロードできるようになった。その結果、死などレーダー上の小さな輝点にすぎなくなった。元特命部隊隊員タケシ・コヴァッチは何度か殺されたことのある男だが、最後の死はことさら苦痛をともなうものだった。その後、ベイ・シティで新たなスリーヴをまとって再生した彼は、怪しげで暗く大きな謀略のど真ん中に放り込まれる。その謀略は存在が売買可能となった社会の標準に照らしても、邪悪この上ないものだった。タケシにとっては胸に銃弾を食らい、風穴をあけられたことさえただのはじまりにすぎなかった。

・巻末解説 北上次郎


■著者紹介

リチャード・モーガン(Richard Morgan)
1965年、ロンドン生まれ。処女作の『オルタード・カーボン』でフィリップ・K・ディック賞受賞。著書に、『ブロークン・エンジェル』『ウォークン・フュアリーズ 』(パンローリングより近刊)、『Market Forces』(ジョ ン・W・キャンベル記念賞受賞)、『Thirteen』(アーサー・C・クラーク賞受賞)、『The Steel Remains』 『The Cold Commands』『The Dark Defiles』などがある。イギリス在住。

訳者紹介

田口俊樹(Toshiki Taguchi)
1950年奈良市生まれ。早稲田大学英文科卒。『ミステリマガジン』で翻訳家デビュー。訳書にローレンス・ブロック『八百万の死にざま』(ハヤカワ・ミステリ文庫)、ジョン・ル・カレ『パナマの仕立屋』(集英社)、トム・ロブ・スミス『チャイルド44』(新潮文庫)、リチャード・モーガン『ブロークン・エンジェル』『ウォークン・フュアリーズ』 、ドン・ウィンズロウ『ザ・ボーダー』(ハーパーBOOKS)など多数。

■本書への賛辞

「群を抜く人物造形、めまぐるしいアクション、巧みなプロット。どれを取っても一級品で、たっぷりと堪能させられる。すごいぞ」――北上次郎(本書解説より)

「このすばらしい処女作でモーガンには他の追随を許さない将来が約束された。『オルタード・カーボン』は……ウィリアム・ギブソンがSFをふたたびクールなものにして以来、新たな読者を最も多く獲得する作品になるだろう」――マイケル・ラウリー

「昔ながらのサイバーパンクへのオマージュ……『オルタード・カーボン』は読者をハイパーモダンなヴァンパイア小説を読んでいるような気持ちにさせる」――ガーディアン紙

「とびきりのSFノワール……真に特筆すべき作品。不作法で暴力的で、超知的で、超愉しい。モーガンは初舞台で観客を完璧にノックアウトした」――SEレヴュ誌

「グルーヴ感とウィット、緻密なプロットとその背景。カーボンのように黒いこのノワールは読者にもう一発続けて“打ちたい”という強烈な思いを残さずにはおかない」――ケン・マクラウド

「驚くべき傑作……すばらしいSF的アイディア」――ピーター・F・ハミルトン

「テンポのよさ、肌理こまかな質感、印象深さ、タイミングのよさ」――パブッリシャーズ・ウィークリー


■目次

(上巻)
はじめに
プロローグ
第1部 到着(ニードルキャスト・ダウンロード)
第2部 反応(侵入による衝突)
第3部 同盟(アプリケーション・アップグレード)
(下巻)
第3部 同盟(アプリケーション・アップグレード) 承前
第4部 説得(ウィルス汚染)
第5部 ネメシス(システム・クラッシュ)
エピローグ
謝辞
訳者あとがき
解説(北上次郎)


以下続刊『ブロークン・エンジェルス』『ウォークン・フュアリーズ』(各上下巻)


■訳者あとがきより

 21世紀、世の中はどんなになっているだろう?
 世代による差こそあれ、誰しも子供の頃にきっと一度は思ったはずだ。たいていの仕事をロボットがこなすようになり、宇宙旅行も可能になっているにちがいない、などと訳者も思い、そう思うだけでわくわくしたものである。そんな夢の世紀に突入してすでに5年、幼い夢は一部現実となって、その現実をいつしか当然のことのように思っている自分がいる。それでも、林立する超高層ビル群や二重三重に交差する都心の高速道路の威容をまのあたりにし、まさに子供の頃に思い描いた想像の世界――アニメの『鉄腕アトム』が初めてテレビ放映されたときにタイトルバックに描かれていたような未来都市――が現前していることに、何か不意を突かれたかのように驚かされることがある。たかだか数十年の隔たりなのに、当時と今では文字どおり隔世の感がある。この変化のおびただしさ、この速さ、このめまぐるしさ。

 その一方で、ふと立ち止まってみると、何も変わってはいないではないか、と思うこともないではない。いきなり大仰なことを言うようだが、たとえば人の生死。人はいつかは死ぬ。あたりまえと言えばあたりまえ、現代医療の急速な進歩で生と死の境はずいぶんとあいまいになったけれども、それでも今でも人は死ぬ。これは永遠の真理だ。いや、“永遠の”とはいずれ言えなくなるのだろうか。本書を読むかぎり、27世紀には不老不死が可能になっているところを見ると。

  デジタル人間(ヒューマン)。作者リチャード・モーガンによれば、このことばは自身の発明ということだが、まさにコロンブスの卵で、人間の頭脳をデジタル化することが実現可能なら、人工細胞などつくらなくても、かぐや姫に秘薬をもらわなくても、不老不死など案外簡単に手にはいりそうに思えてくる。利己的な遺伝子よろしく、乗りもののようにただ次々と肉体を乗り継ぎさえすればいいのだ。

 しかし、作者モーガンは誰も彼もが不老不死を享受する世界として27世紀を思い描いていない。頭脳のデジタル化は誰にも施されるものの、スリーヴ(肉体)を取り替えるにも、自らのクローンを貯えておくにも、少なからずコストがかかり、不老不死はあくまで大金持ちの特権なのである。文字どおり地獄の沙汰も金次第というわけだ。一方、主人公タケシ・コヴァッチの口からは次のような27世紀の現実も語られる――“歳を取るというのは、いくら反老化処置を施そうと、それは疲れる仕事だということだ。だから、2度目のスリーヴィング(肉体の乗り継ぎ)は最初のスリーヴィングよりつらくなる。このさきどういうことが待っているか、予測できるからだ。だから、3回以上試みるだけの根性を持っているやつはそう多くはいない”。このちょっと皮肉な未来観、そして人間観が本書の精緻な虚構空間を支える屋台骨で、読者は多くの場面でにやりとさせられるはずである。また、今から600年後、永遠の真理が真理でなくなる時代が来ても、人間にはやはり変わらないものがあった、というのが本書のひとつ大きな読みどころだが、それまた最後には読者のほろ苦い笑いを誘うこと請け合いだ。ネタばらしになるのでここで明かすわけにはいかないが、ひとこと言っておくと、永遠に変わらないもの、それは愛、などという麗しくも能天気なものではない。それだけは断っておこう。

――(中略)―― 

 それやこれや、くすぐり満載の一冊と言えるが、かかる予備知識がなければ愉しめないかと言うと、そんなことはまったくない。なんだか自明の理のように思われ、書くのが遅くなったが、本書は掛け値なしの傑作である。歯切れがよく深みのある文体といい、精緻なプロットといい、豊かなサスペンスといい、エスプリの利いた会話といい、そこここで語られるアフォリズムといい、さらに笑いあり涙あり、どこを取っても超一流エンターテインメント作品だ。これがつまらなかったらもう読む小説なんてないよ、と本屋さんになり代わって言いたいくらい。本書の売りはそれこそ売るほどある。それでも、この小説の一番の手柄はタケシ・コヴァッチという見事な主人公を現出させたことだろう。かっこいいったらない。いわゆるダーティ・ヒーローながら、ダーティにしてビューティフル、このバランスがすばらしい。また、長々しい履歴書ではなく、ひとことふたこと語られるタケシの生い立ちのエピソードがよく利いていて、キャラクターに深みと厚みだけでなく、説得力も与えている。このあたり、実にうまい。

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