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ウィザードブックシリーズ Vol.279

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ダンドーのバリュー投資 実践 ディープバリュー投資
専門知識不要でできる企業分析

著 者 イェルン・ボス
監修者 長尾慎太郎
訳 者 藤原玄

2019年4月発売
定価 本体2,800円+税
A5判 上製 240頁
ISBN 978-4-7759-7252-6 C2033

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目次監修者まえがき序文まえがき序章

「日本市場はディープバリュー銘柄の宝庫!」
世界のバリュー投資家の合言葉は「ネットネット銘柄は日本株で探せ!」
バランスシートを見よ!
企業の専門的知識を必要としないディープバリュー投資!

 本書は、ディープバリュー投資の秘訣を余すところなく明らかにしている。長きにわたる卓越したトラックレコードを持つ投資家が執筆した本書は、だれよりも先に、高い潜在力を持った割安株を見いだすための一部始終を初めて公開している。

 ディープバリュー投資とは、長期にわたって桁外れのリターンをもたらす真の割安銘柄を見いだすことである。それは、たとえ明日廃業したとしても、十分に割安であるため、その資産だけでも利益が出るような企業である。だが、事態が好転すれば、そのリターンは何倍もの大きなものとなる。

 それらは、『賢明なる投資家』(パンローリング)の著者であるベンジャミン・グレアムお気に入りの銘柄群でもある。グレアムが記した古典と、時に「割安株」「ネット・ネット」と呼ばれる優れたバリュー株を見いだしてきた彼の長い実績に触発されたイェルン・ボスは次のことを明らかにしている。

 ディープバリュー投資は、市場に対するほかのいかなるアプローチよりも優れたトラックレコードを残している。それでいて、企業に関する詳細かつ専門的な知識を必要とせず、また利益や時に非現実的なものとなる将来予測に固執することもない。

 すべては貸借対照表(バランスシート)と忍耐力の問題なのだ。時間や手数料を無駄にすることなく、株式市場から目を見張るようなリターンを手にしたいと思う読者には、パーフェクトな投資手法を習得する絶好の機会となるだろう。

■本書への賛辞

「真剣に取り組んでいるすべての投資家の書棚に加わるべき1冊だ」――リチャード・ギル(T1PS・アセットマネジメント)

「素晴らしいの一言である」――トッド・ウエニング


■著者紹介

イェルン・G・ボス(Jeroen G. Bos)
オランダ人投資家であるイェルン・G・ボスは1978年からイギリスに在住している。サセックス大学で経済学を修め、主にシティ・オブ・ロンドンの金融サービス業界でキャリアを積んできた。ボスは長年にわたり証券会社のパンミュア・ゴードン・アンド・カンパニーに勤務したが、バリュー投資への興味を持ったのもそのときである。1987年10月の株式市場の暴落がその興味をさらに強いものとし、そのとき彼はベンジャミン・グレアムの
『賢明なる投資家』(パンローリング)から刺激を受けることになる。2003年末、ボスはチャーチ・ハウス・インベストメント・マネジメントに加わり、CH・ディープ・バリュー(バハマ籍)の運用を行う。このファンドは2012年3月にイギリス籍のディープ・バリュー・インベストメンツ・ファンドとなる。彼はサセックスに居住し、妻と3人の息子に恵まれている。イェルン・ボスはCH・ディープ・バリュー・インベストメンツ・ファンド、エンテック・アップストリーム・PLC、ハイドロゲン・グループ・PLC、レコード・PLCに出資している。


■目次

監修者まえがき
第2版に寄せた序文
初版に寄せた序文
第2版のまえがき
初版のまえがき

序章 ディープバリュー投資家たること

第1部 ディープバリューの哲学
 第1章 ディープバリュー投資
 第2章 ディープバリュー投資はどのように機能するのか

第2部 ディープバリューの成功例
 第3章 スプリング・グループ
 第4章 モス・ブロス
 第5章 アーマーグループ・インターナショナル
 第6章 モアソン・グループ
 第7章 ハーバード・インターナショナル
 第8章 ベロシ
 第9章 ブルームズベリー・パブリッシング
 第10章 B・P・マーシュ・アンド・パートナーズ
 第11章 バラット・ディベロップメンツ
 第12章 MJグリーソン
 第13章 パンミュア・ゴードン・アンド・カンパニー
 第14章 三信電気

第3部 ディープバリューの失敗例
 第15章 RABキャピタル
 第16章 アビークレスト
 第17章 フレンチ・コネクション
 第18章 ノルコン

第4部 明日のディープバリュー株
 第19章 エンテック・アップストリーム
 第20章 ハーグリーブス・サービセズ
 第21章 ランプレル
 第22章 ハイドロゲン・グループ
 第23章 レコード

エピローグ
謝辞

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■監修者まえがき

  本書は、ディープバリュー銘柄への投資を専門とするファンドマネジャー、イェルン・G・ボスの著した“Deep Value Investing : Finding bargain shares with BIG potential”の邦訳である。世にバリュー投資を標榜するファンドは多いが、真に各企業のバリューに着目した投資スタイルを採用するファンドは少なく(多くは投資戦略にバリューファクターを使っているにすぎず、これは狭義のバリュー投資とは似て非なるものである)、さらにそれがディープバリュー投資のファンドとなると数えるほどしかない。なぜなら、この投資スタイルにおいては高い忍耐力と信念が要求されることに加え、ディープバリュー銘柄の多くは時価総額が小さいゆえにアナリストカバレッジから外れており、また流動性にも劣ることから、純資産総額の大きなファンドでの運用対象には向かないからである。この傾向はMiFID供並萋鷦ゞ睛讃ι併埔貉慘瓠砲筌侫Д◆Ε妊スクロージャー・ルールの影響によって、今後はさらに顕著になると考えらえる。

 このため、ディープバリュー投資は、本来は賢明で思慮深い個人投資家の世界である。だが、少数ながらディープバリュー投資を専門とする機関投資家もおり、彼らは特異に優れたパフォーマンスを残してきた。本書はそうした運用者の銘柄選択の考え方を分かりやすく示したものである。

 内容としては、第2章の終わりにあるような、著者がモメンタムに言及している箇所なども大変興味深いが、私たち日本の投資家にとってなによりの朗報は、日本市場はネットネットのディープバリュー銘柄の宝庫だと著者が述べているところにある。それらの銘柄についてはもともと情報量が少ないうえに、それが日本語でしか手に入らないことも多く、したがってそれらを適切に売買するには日本語が分かることが極めて有利な条件になるからだ。実際、グローバルな投資家にとって日本市場は、中国市場やロシア市場と並んで、現地語が収益獲得の見えない障壁となっている最後の領域である。ほかの言語(フランス語やスペイン語など)圏においては、英語でも同時に情報がリリースされるか、もしくは高精度な機械翻訳によって内容が瞬時に世界中に伝播してしまう。

 しかし、マシンによるNLP(自然言語処理)ができる日本人にとっては、逆に言語による見えない堀の存在が、日本市場におけるディープバリュー投資を競合者がほとんどいないブルーオーシャンにしていることになる。さらに機械が運用するのであれば、忍耐力や信念の高さが問題になることはそもそもない。金融市場におけるAI(人工知能)開発者の立場から言うと、一見するとまったく対極にあるように思える先端技術とディープバリュー投資とのマッチングが非常に良いという事実の示唆は、本書から得られる最大の収穫である。これからも多くの国の人が本書を読むことになると思うが、おそらく最大の利益を受ける読者は日本の個人投資家とデータサイエンティストである。

 翻訳にあたっては以下の方々に心から感謝の意を表したい。まず藤原玄氏には正確で読みやすい翻訳を、そして阿部達郎氏は丁寧な編集・校正を行っていただいた。また本書が発行される機会を得たのはパンローリング社社長の後藤康徳氏のおかげである。

2019年3月 長尾慎太郎  



■第2版に寄せた序文

              メリン・サマーセット・ウエッブ

 職業柄、多くのファンドマネジャーに出会う。新参者もいれば、古株もいる。大手の企業を飛び出して、自ら創業する者もいる。彼らはみんな同じ話をするものだ。つまり、実際の価値よりも低い価格で株式を買うという簡潔極まる方法で、平均的なファンドマネジャーよりも多くのお金を稼ごうというのだ。

 素晴らしい計画だ、と私は答えるだろう。だが、どうやってそれを見いだすのだろうか。

 その答えはさまざまであるが、自分たちは市場のほかの者たちにはない千里眼を持っているのという人が多い。彼らは、世界的な金融政策や経済成長がどのような結果になるかを、ほかのファンドマネジャーよりも明確に見通すことができる。彼らは、テクノロジーが将来の生産性をどのように左右するのか、またどのようなものとするのかをより正確に理解することができるのだ。彼らは過大なバリュエーションと思えるものをそうでなく見せる特別な方法を持っている。もしくは、彼らはほかの者たちが用いていない、将来をより正確に予測することができる新たなバリュエーション手法を編み出したのであろう。

 これらは、チャーリー・マンガーが現代の投資における「ナンセンスでいい加減なコンセプト」として一蹴したものの典型である。しかし、それらが有効であることもあるのだ。実際に将来の予測を得意とするファンドマネジャーもおり、彼らはそうすることで富を築いている。それでもまだ、かなりの努力が無駄であるように感じざるを得ない。なぜだろうか。それは、苦労をして将来を予想しなくても、実際の価値よりも低い価格で株式を買うことはほぼ確実に可能であることを投資の歴史が教えているからである。

 ディープバリュー投資の祖ベンジャミン・グレアムは、1949年に著した『賢明なる投資家』(パンローリング)でそのことを伝えている。グレアムは、「無視または偏見」ゆえに客観的な本源的価値よりも低い価格で取引されている株式もあると述べている。そのような状態が「不便なまでに長い期間」続くことがあるが、長期的な時間軸を持つ者たちは、そのようなPER(株価収益率)の低い割安株を買って、待ちさえすればよいのだ。彼の研究はこれが完璧に機能することを描きだした。1937年から1969年までの期間に、ダウ・ジョーンズ工業株平均に投じられた1万ドルは2万5300ドルとなった。しかし、割安銘柄に投じられた1万ドルは6万6900ドルまで増大したのである。

 ジェームス・P・オショーネシーは、著書『ウォール街で勝つ法則――株式投資で最高の収益を上げるために』(パンローリング)のなかでさらに驚くべき数字を示している。2003年までの52年間で、高PER銘柄に投じられた1万ドルは79万3558ドルまで増大した。これはこれで素晴らしい。だが、低PER銘柄に資金を投じていたとすると、リターンはさらに素晴らしいものとなっていた。つまり、818万9182ドルとなっていたのである。PBR(株価純資産倍率)の低い銘柄を買っていたら、2003年末には資産が2200万ドルも増えていたのである。本当に素晴らしい。

 では、これらの数字があるにもかかわらず、なぜ世界中の長期的投資家は過去50年間にバリュー株を買い、それによってこの優位性を最終的に生かすことをしてこなかったのだろうか。答えは簡単である。それはあまりに簡単で、かつあまりに難しいからである。容易なように思えるし、本書でのボスの説明でもそれは裏付けられている。しかし、忍耐力が必要なのだ。見るからに魅力のない銘柄の本当の価値に市場がいつ気づくかなど、だれにも分からない。コントラリアン的な物の見方が求められるのだ。つまり、市場のほかの者たちが好感していない銘柄に投資するのは容易ではないが、単なる「バリュー」株ではなく、ディープバリュー銘柄を追い求めているのであれば、それをしなければならないのだ。楽観的であることも求められる。つまり、ほかのすべての者たちがその銘柄または銘柄群に終わりなき悲観論を唱えているときに、正反対の主張に目を向けることが必要となる。また、旧態依然とした分析もある程度必要となる。つまり、アナリストがカバーしているディープバリュー銘柄などほとんどないので、自分で貸借対照表の分析を行わなければならないであろう(幾つかの例外もある。ボスによる住宅メーカーのケーススタディを参照されたい)。そして、長い長い時間軸が必要となる。顧客であるイギリスの投資家の大多数が、自分たちのファンドマネジャーにそうさせていると口では言っているが、実際はそうではない。これらの性質を併せ持つことは難しく、そのようなファンドマネジャーや一般の人々はほとんどいないのだ。

 ここ最近、バリュー投資は投資家の間で流行していない。これまでにないほど長期にわたってグロース株に比してアンダーパフォームしており、2017年初頭に一時的な回復を示しはしたが、金融危機以降、バリュー株(MSCIワールド・バリュー・インデックスで定義した)はグロース株(MSCIワールド・グロース・インデックス)に比べて大幅にディスカウトされたままである。10年前、イギリスのファンドマネジャーのおよそ40%は、客観的なバリュー投資にティルトしていた(イクスポージャーを傾けていた)。今日、その数値は14%を若干上回る程度である(モーニングスターまたはシュローダー)。これはセクターについても同様である。ほとんどすべての投資家が同じようなバイアスを抱いており、それによって今日、ディープバリュー投資家はいつも以上に厳しく(本当に寂しい)、また容易で、競争がほとんどない環境に身を置いている。しかし、市場の平均回帰性を考えれば、バリュー投資が再び日の目を見る日は近いと言えるかもしれない。MSCIワールド・グロース・インデックスのPTBV(株価有形純資産倍率)が今や、2000年のハイテクバブル時の高値よりも高いことに留意されたい。金利はここ3000年で最も低くなっており、また投資家は高値を付ける「クオリティ」株の成功例と考えている銘柄に過剰な価格を支払うことにやかましく言わなくなっているので、「本書」の新版はまさにタイムリーな存在となることであろう。ボスのケーススタディを読み、知的にも、感情的にもディープバリュー投資が性に合っていると感じた者たちは、そうではない者たちよりも、知らない間に向こう数十年にわたる投資の心構えができているのかもしれないのだ。

2017年12月 エジンバラにおいて  



■第2版のまえがき

  本書の初版が出版されたのは2013年11月であるが、2017年の今、私は第2版のまえがきをしたためている。大幅な変更があったから新版を出すのではない。筋金入りのこの投資手法には新しいアプローチなど不要であるし、ディープバリュー投資の機会は日々市場にあふれている。今回は、初版の出版時に取り組んでいた投資に関する進捗リポートを提供し、またこの間に行ったディープバリュー投資に関する興味深いケーススタディを幾つか紹介していく。

 例えば、初版でバラット・ディベロップメンツについて記した。最終的にわれわれは2016年に同社の保有株を652ペンスで売却したが、当初の取得価格である1株当たり90ペンスに対して素晴らしいリターンを上げた。ほとんど見限られていたセクターにあって、その力強い回復は驚くべきものであった。2016年に行われたEU(欧州連合)離脱を巡るイギリスでの国民投票によって幾つかの投資機会は生まれたにせよ、住宅建築セクターのバリュエーションはもはやかつてのように魅力的なものではなくなっていた。しかし、潜在的な投資対象はそこかしこにあふれているのだ。

 90ペンスから652ペンスということは、リターンにすれば624%という計算になる。いつものことながら、ごく一般的な企業に対する投資でこれほどのリターンが上がることに私は驚いている。しかし、ディープバリュー投資においてはあり得ることなのだ。ディープバリュー投資の投資哲学は、投資家に極めてバリュエーションが低い資産を見いだす機会をもたらすものである。そのような資産のすべてが報いをもたらすわけではないが、要素(その詳細は本書に記してある)がすべて整っているならば、たいていの場合、投資家は喜ばしい驚きを味わうことになる。すべてのダイバーと同じように、宝物を引き上げるまではそのプロセスを繰り返さなければならない。しかし、宝物はそこにあるのだとの確信が必要である。

 もちろん、リスクのない投資など存在しない。株式が安値で取引されていることはまことに結構なことであるが、安値であるのはそれ相応の理由があるものなのだ。ディープバリューのダイバーは残骸のなかを探索しなければならない。まずは主要な比率から始めることが重要である。それゆえ、関連するプレスリリースに目を通し、公表された業績に楽観できるパターンが見られるかどうかを探ることが重要となる。資産の構成要素に目を向け、さまざまな科目を検証すればよい。やがて何が本当に有望で、何が有望でないかが分かるようになる。本書において、大量の詳細なケーススタディを通して私が実際に行っていることをお伝えすることで、そのプロセスと、ディープバリュー投資家にとって何が有効で何が有効でないかを示し、読者がより多くの成功を手にすることを願っている。

 新しいケーススタディはできるかぎりバラエティに富んだものにし、本書のしかるべき章に配置した(ご覧いただけるとおり、ケーススタディを成功したもの、失敗したもの、現在投資しているものに分類している)。固形燃料と原料輸送を行うハーグリーブス・サービセズという企業に関する新たな章を設けている。同社の長期にわたる株価チャートを見れば、見込みがないものと考えることであろう。しかし、この手の企業を見るとジェームズ・ボンドを思い出す。つまり、悪人(すなわち市場)がどれほど望み、けしかけようと、けっして死なないのだ。同社は、固定資産を一部売却する企業の例に含めた。それによって企業の見通しが変化し、また、構造的変化に対応する余地が多分に生まれた。株価は、それらの発表に力強く反応したのだ。

 また、日本のネット・ネット株である三信電気に1章を割いている。同社は、一度保有し、売却していたが、ネット・ネットとなったときに改めて取得したのである。日本市場は現在、ネット・ネット株の肥沃な猟場であり、われわれもこれまでのところ良好な成果を上げている。われわれが最初に取得したのは、スポーツグッズメーカーのヨネックスだ。投資成果はとても素晴らしいものであったが、残念ながらわれわれが売ったあとにさらに上昇したのだ。

 人材派遣会社も常ながらお気に入りで、スプリング・グループ(初版で取り上げた)同様に、ハイドロゲン・グループにも1章割り当てている。ネット・ネット株として再度取得したのだが、同社は離陸準備が整っている兆候を示している。

 住宅建築メーカーに関しては、バラットに関する章で十分だと考えているので、新たな章は設けていない。しかし、初版の出版から数年がたち、この分野における数多くのディープバリュー投資が流行となった。メディアの影響については下心を持つ人が多く、また折に触れ、その影響があることは疑うべくもないが、メディアは投資家に機会をもたらすことに大いに役立つ。2016年の夏にイギリス国民がEU離脱の意志を示したあと、住宅建築メーカーでとてつもない投資機会が生まれた。われわれは、最も割安であったボビス・ホームズ・グループとテルフォード・ホームズを喜んで取得した。国民投票の結果を受けてこれらの銘柄がクラッシュしたことは、今もってミステリーである。住宅建築メーカーはわれわれの知るかぎり最も強気な市場環境にある。つまり、金利が低く、住宅ローンの利用度が高く、雇用が改善しているのだ。しかし、メディアの語り手たちはこのセクターをEU離脱の「明白な被害者」と見なしていたのだ(不動産セクターも同様で、われわれはそこでも買いを入れた)。

 数日のうちに、われわれはボビスとテレフォードをネット・ネットの水準で取得できた。これは、前回のリセッション時に初めてバラット・ディベロップメンツやMJグリーソンを買ったときと同じ水準である。今回、このセクターは厳しい経済環境にはなかった。これらの株価を押し下げたのは、メディアのコメンテーターたちによる即席の分析だけである。ある意味では前回よりもはるかに良い。なぜならリスクファクターが大幅に少ないのだ。住宅需要は多く、住宅ローンも利用しやすく、失業率も下がっていた。われわれがネット・ネットとなる価格で取得した住宅建築メーカーは安定した市場で操業しており、収益性も高く、配当も支払い、また余剰資本を還元してもいた。両社の株価はその後、50%以上上昇したのである。あるとき、ボビスは買収のターゲットとなりそうであったが、幸運にも何事も起こらなかった。というのも、私は、経営陣が資産の生産性を向上させることで株価は上昇を続けると期待していたからだ。これら2つの銘柄が数年前のバラットとグリーソンと同じ距離の旅をするとは思わないが、私はその機会に感謝している。

 私は自分がMiFID IIの導入を待ち望んでいる数少ない者のひとりではないかと思う。これは、新たな金融の規制であり、2018年1月に本書が出版されるまでには発効していることであろう。これはバリュー投資家のチャンスを増大させるものと私は考えている。それにより証券会社は取引と調査に対する手数料をそれぞれ別個に課さなければならなくなるので、小型株の調査は彼らにとってますます非経済的なものとなるであろう。私はこれを惨事ではなく、歓迎すべき機会だととらえている。なぜなら、われわれの池で釣りをする者がさらに減るのだ。初版同様に、読者が投資で幸運に恵まれることを祈っている。

2017年11月 サセックスにおいて イェルン・ボス  



■序章 ディープバリュー投資家たること

 本書から得られること

 本書は、大きなリターンをもたらす高い潜在力を持った銘柄を見いだす方法を一歩ずつ示すことを目的としている。株式投資からより大きなリターンを手にする確率を劇的に高めたいと思っているならば、本書はその目的にかなうものであろう。

 本書で説明している方法論は、大きな潜在的可能性を持った銘柄を見いだす一助となろう。例えば、バラット・ディベロップメンツを取り上げてみよう。本書で説明している方法を用いてこの銘柄を見いだしたとき(2011年11月)、株価は90ペンスであった。初版をしたためていた2013年5月、株価は240ペンスであった。2年間で270%の上昇である。そして、第2版を記している2017年11月には、株価は657ペンスとなった(われわれは2016年に652ペンスで売却している)。

 本書では、レコード、アーマーグループ・インターナショナル、ハーバード・グループといった、同じように株価が大きく上昇した企業の例をたくさん紹介している。さらに、やがて株価が上昇する前にこの手の企業を見いだす方法を伝えるものでもある。

 本書を読めば、適切なタイミングでディープバリュー株を見いだし、株式市場への投資からより良い結果を得られるようになるはずである。

 孤独な企業を見つける

 私が本書で紹介するディープバリューの手法を初めて開発し、実際に用いるようになったのは、ブラックマンデーの暴落があった1987年秋のことで、当時はロンドンのシティにあるパンミュア・ゴードン・アンド・カンパニーで株式のブローカーとして働いていた。

 この投資手法を利用し始めた当初は、素晴らしい打率を安定して残すことに成功し、H・ヤング・ホールディングス、アムストラッド、タイム・プロダクツといった企業で素晴らしい投資機会を見いだしたものである。その後、チャーチ・ハウスで自身のファンドを運用するまでにはまだしばらく時間がかかるのだが、一方で私の業績は向上し、全体の投資リターンを毀損させる本物のガラクタの類を回避する術も学ぶことができた。

 私の投資手法は、多くの人々とは異なる方法で株式を分析するものである。つまり、大多数の株式投資家が無視している要件に焦点を当てているのだ。私が追い求めている銘柄は、レーダーから漏れ、もはやどのアナリストも支持しておらず、たいていは株価のグラフも長引く失望のストーリーを語っている傾向にある。時価総額は減少し、まさに孤独な存在となっていた銘柄である。それを欲しがる者などいなかったのだ。

 市場の95%が無視しているこの手の銘柄のなかから信頼に足る企業を見つけることができれば、私は株式のブローカーとしてユニークな営業ができたのである。これは重要なことで、すべての株式ブローカーと同様に、私は歩合で報酬を得ていたのである。

一流の投資家とチームを組む

 だが、私はこの投資手法に興味を抱く可能性のある投資家の一群を見いだしたかった。そして、カナダの「一流投資家」であるピーター・カンディルに出会う。

 残念ながら2011年にこの世を去ったカンディルは、1970年代にカンディル・バリュー・ファンドを立ち上げ、以来、株価指数を大きく上回る投資リターンをもたらしてきた。彼はグローバルに投資していたが、たいていの場合、その年の株式市場のリターンが最も悪かった市場に目を向けていた。なぜなら、そのような市場では「最大の掘り出し物が手に入る可能性」があったからである。

 私がピーター・カンディルの名前に出会ったのは、多くの割安企業の株主名簿においてである。カンディルが潜在的な顧客となり得ると考えた私は、割安であり、同時に彼の名前が株主名簿にない企業を見つけなければならなかった。やがてそのような企業を見つけ、カナダのバンクーバーにあった彼のオフィスに出し抜けに電話をかけた。

 大多数の人々は営業の電話を嫌うのだが、私は十分な準備をしており、その銘柄とそれが割安であることを示す幾つかの特徴を説明すれば、彼の興味を引くことができるとの自信があった。電話のあと、その企業の簡単なスプレッドシートを彼にファクスすると、直後にその銘柄を買うよう指示を受けたのである。幾つかの小型株でこのようなやり取りを続けたあと、1990年にアムストラッド・PLCを見いだすことになる。

スイートピック

 当時、アムストラッドは貸借対照表上の現金残高よりも低い価格で取引されており、運転資本については言うまでもなかった。実際に、アムストラッドの株式は理論上、全社を買い上げ、すべての事業を停止し、あらゆる債務を支払っても、当初株式を取得するために支払った価格を上回る現金が手元に残るような価格で取引されていたのである。

 アムストラッドは1980年代に創業者のアラン・シュガー(後に卿の称号を得る)が上場させたものであった。かつて同社は株式市場の人気者であったが、私が1992年の夏に出合ったときには何度も利益予想を下回っており、堕天使のようになっていた。同社の見通しは不確実で、シティはアムストラッドとアラン・シュガーの魔法から覚めていたのだ。株価は異常なまでに低かった。当時、シュガーは同社の筆頭株主であった。

 私はピーター・カンディルに電話をかけ、アムストラッドについて語った。この会話から間もなく、カンディルは同社で大量保有に該当するだけのポジションを構築することを決断し、数カ月後、アラン・シュガーは1株30ペンス(50%のリターンに相当する)で同社を買い戻そうとした。シュガーの計画が棄却されると株価は回復し、1993年には146ペンス、1994年には220ペンスの高値を付けることになる。最終的に同社は2007年に買収された。

 シティとコネクションのあったカンディルは、自身のアムストラッド株の取引にメディアの興味を引きつけ、当時幾つかの新聞記事でそれを取り上げさせることを得たのだ。

 これも結構なことで、私の勤務先が株式取得のほとんどを取り扱っていたし、投資機会を見いだした私への報酬でもあった。しかし、この時初めて、このような原理に基づいた自分自身の投資ファンドを運用したいと考えるようになったのだ。

 それから私がCH・ディープ・バリュー・インベストメンツ・ファンドを運用するようになるまでは長い物語があるのだが、ここでは手短に記そう。幸運なことに、2003年に友人であるマーク・ヘンダーソンがチャーチ・ハウス・インベストメント・マネジメントのCIO(最高投資責任者)であるジェームズ・マホンを紹介してくれたのである。彼自身優れたバリュー投資家であったマホンは、バリュー投資に対する私の考え方を即座に理解してくれた。

 そして彼は私にチャンスをくれたのだ。ちなみに、よく言われるように、その後の話はだれもが知るところ、である。

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