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ウィザードブックシリーズ Vol.282

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先物市場の高勝率トレード 市場分析、戦略立案、リスク管理に関する包括的ガイドブック
先物市場の高勝率トレード
市場分析、戦略立案、リスク管理に関する包括的ガイドブック

著 者 カーリー・ガーナー
監修者 長岡半太郎
訳 者 井田京子

2019年5月発売
定価 本体3,800円+税
A5判 上製 464頁
ISBN 978-4-7759-7248-9 C2033

トレーダーズショップから送料無料でお届け


著者紹介 | 目次 |  ◆立ち読みコーナー 監修者まえがき ・ 第14章 (本テキストは再校時のものです)

市場分析、戦略立案、リスク管理に関する包括的ガイドブック

実践的な戦略とヘッジテクニックが満載
高勝率トレードの秘訣はリスク管理とヘッジ!
目からウロコの高勝率手法!

本書は、予想のつかない商品先物市場やFXや株価指数の世界を、かつてない方法で案内してくれる。そして、トレードの勝率を高めるために、従来のトレード本でほとんど取り上げられることのない項目に独自の見方で光を当てている。

本書は、商品市場の分析、戦略の立案、リスク管理やヘッジのテクニックに関するガイドブックとして、マーケットに関する新しい概念と慣例にとらわれない見方を紹介していく(例えば、オプションの売り戦略、オプションを使った先物のヘッジ、価格変動を正確に測定するためのファンダメンタルズ分析とテクニカル分析と季節性とセンチメント分析を組み合わせた手法など)。

カーリー・ガーナーは、ジム・クレーマーが司会を務めるCNBCのマッド・マネーに商品アナリストとして頻繁に登場している。また、先物とオプションのブローカーとしては、商品トレーダーの栄光と挫折を最前線で10年以上見続けてきた。

ガーナーには、複雑な商品トレードの概念を楽しい読み物として描く才能がある。本書を読めば、先物市場とオプション市場をよりよく理解できるだけでなく、普通は何年もかかって得られる教訓を、マーケットに高い授業料を取られることなく学ぶことができるのである!

本書への賛辞

「商品トレードの理論と実践をマスターするために、これ以上の本はない。本書は、初心者も経験者も読むべき本だ。しかも、ここにはあまり知られていないテクニックや戦略も紹介されている。私が商品トレード関連でデスクに置いているのは、本書だけだ」
――ロブ・ブッカー(『FXトレーダーの大冒険』[パンローリング]の著者)

「商品トレードの初心者にもベテランにも役立つ本。ガーナーは、必須の概念を分かりやすく説明することで、だれでも商品トレードが始められるようにするという一見不可能に思えることをやってのけた。彼女は、厳しい現実と、熱くなりすぎた投機家が直面する悲痛な思いにもしっかりと言及している」
――ジョン・ナジャリアン(ナジャリアンファミリーオフィス・ドット・コム共同設立者)

「私は金融市場で30年の経験があるが、本書からたくさんの新しい戦略やアイデアを学んだ。ブラボー!」
――トービン・スミス(トランスフォーミティ・メディアのCEO兼創設者、フォックス・ニュースのブルス・アンド・ベアスの元出演者)

「すべてのレベルのトレーダーの役に立つ優れた参考書。商品市場に共通するいくつもの問題を取り上げている。本書があれば、この業界の新人トレーダーや新人投資家は素晴らしいスタートを切ることができるだろう」
――ダニエラ・キャムボーンタウブ(キッコ・ニュースの編集責任者兼アンカー、ザストリート・ドット・コムやフォーブス誌への寄稿者)

「本書で紹介されているさまざまなタイプのテクニカル分析は、チャートの解釈やパターン認識の疑問点のいくつかを解決する助けになる。また、先物トレードには大きなメリットとともに、大きなリスクがあるということも頻繁に思い出させてくれる。実践と商品の基本的な知識を重視する爽快な読み物」
――ジム・イオリオ(CNBCにも登場するマーケット歴30年のベテラン)

「先物トレードの新しいバイブル。ガーナーは、商品トレードのあらゆる側面を非常にうまく説明している。マージン、スプレッド、季節性のパターン、テクニカル分析、投機筋やコマーシャルズなど、必要なことはすべて網羅してある。また、実践的な戦略も紹介されており、そのうちのいくつかは私のような古株でも新して技として使ってみたくなった」
――ダン・ディッカー(リアルマネー・ドット・コムやオイルプライス・ドット・コムの上級寄稿者、『シェール・ブーム・シェール・バスト[Shale Boom, Shale Bust]』の著者)

「先物市場について1冊しか読まないつもりならば、これにすべき」
――フィル・フリン(フォックス・ビジネスへの寄稿者、ザ・プライス・フューチャース・グループのシニアマーケットアナリスト)

「ガーナーは、先物業界で長年、尊敬を集めてきた。彼女が市場分析やトレードやトレード教育を成功させてきた手法は、マーケットに関する知識を継続的に吸収し、マーケット分析とトレードの基本に従うといった優れた準備と研究のたまものである。これは、過去125年間に最も成功したトレーダーやアナリストがしてきたことでもある」
――ジム・ワイコフ(ジムワコフ・ドット・コムのアナリストで30年の経験を持つベテラントレーダー)

「本書は、ファンダメンタルズ分析と季節性分析とテクニカル分析をうまく組み合わせたまれなケースだ。ガーナーの最新作は、商品トレードや商品オプションを検討している人にとって必携である」
――ラッセル・ローズ(公認証券アナリスト、CBOEオプションズ・インスティチュートの教育部長)

「私は、商品市場とデリバティブ市場に深くかかわってきた者として、この仕事を始めた1989年からトレードに関する本をかなりたくさん読んできた。また、幸運にも複数の世界有数のトレーダーから直接学ぶチャンスに恵まれ、業界のさまざまな変化も目にしてきた。経験豊富なトレーダーでも、常に進んで学び、変わり続けるマーケットに適応していかなければならない。商品市場は常に進化し続けているのだ。ガーナーは、この市場に関する堅実で、教育的で、楽しくて、洞察と助言と戦略にあふれた教材を生み出してくれた。彼女はそれを、簡潔に、分かりやすく、それでいて押しつけがましくなく説明しているが、これは高いレベルのトレード本としては非常に珍しいことだ。ここには、商品トレードを始めたばかりの人でも、経験豊富なプロのトレーダーでも、何かしら得るものがある。本書が、より賢く、より情報に基づいて、願わくはより利益が高い判断を下すための洞察を与えてくれていることは間違いない。ここに書いてある情報は、すべてが今日すぐ役立つわけではないかもしれないが、商品トレードの世界のどの段階においても必要なことである。すべてのトレーダーに本書をぜひ読んでほしい」
――ケビン・S・カー(カー・トレーディング・インターナショナル社長、ビジネスニュースにも多数出演)

「近年、商品トレードに関する優れた本が出てこなかったなかで、ガーナーが『勝率を高める』ための概念とテクニックをまとめた素晴らしい本を書いてくれた。私は、商品ブローカーとトレーダーとアナリストの経験を積んできた者として、まず彼女の誠実さに感銘を受けた。彼女は、商品トレードの魅力についてだけでなく、リスクについても正直に綴り、そのうえで現実的なリスク管理について洞察を与えてくれている。ガーナーの書き方には、ブローカーというよりも、生徒の成功を願う知的で精通した先生のような視点を感じる。本書は新人にも経験者にも勧めたい。この業界に長い人でも何かしら学んだり、学び直したりできるだろう」
――ジェリー・トプキ(ムーア・リサーチ・センター編集者)

「私は商品と先物を20年以上トレードしてきたが、トレードを始めたばかりの人でも経験豊富な人でも、この本は役に立つ。私が知るかぎり、この分野で最も包括的な1冊と言ってよい。ガーナーは、トレーダーが知っておくべきことを、重要な指標、季節性、COTレポート、デイトレード、ポジショントレード、そしてオプションまですべてカバーしている。個人的には、VIX先物の投機に関する章が最も気に入っている。そして、この本の何よりも良いところは、商品トレードのすべてをカバーしながら、読みやすくて、実践的な戦略やヒントやテクニックが満載されていることである。要するに、買うべき本だ」
――マーカス・ハイコッター(先物のベテラントレーダー)


■著者紹介

カーリー・ガーナー(Carley Garner)

ゼナー・グループ(ネバダ州ラスベガス)傘下のデカーリー・トレーディングに所属する経験豊富な商品ブローカー。『ア・トレーダース・ファースト・ブック・オン・コモディティース(A Trader's First Book on Commodities)』『カレンシー・トレーディング・イン・ザ・フォレックス・アンド・フューチャース・マーケット(Currency Trading in the FOREX and Futures Markets)』『コモディティース・オプション(Commodities Options)』の著者で、ストックス&コモディティーズ誌でも毎月コラムを執筆している。ネバダ大学ラスベガス校卒業後、2004年の初めにオプションと先物業界に飛び込み、すぐに頭角を現した。ガーナーの商品市場の分析は、ジム・クレーマーが司会を務めるCNBCのマッド・マネーでよく紹介されている。また、ザストリート・ドット・コムや同社が運営するリアル・マネー・プロにも定期的に寄稿している。
ツイッター@carleygarner、フェイスブック@DeCarleyTradingCommodityBroker、インスタグラム@decarleytrading。


■目次

監修者まえがき
謝辞

第1部 商品先物分析と投機の概論

はじめに――レバレッジが商品トレーダーと投機家の分かれ目になる
商品と株・債券の違い
トレードと投資の違い
商品先物はトレードか、それとも投資か
商品トレードではほとんどの人が負けているのだから、常識の逆を行くべき
無限の資金があれば、商品トレードはほぼ負けない
白や黒ではなく、ほとんどがグレー

第1章 商品市場のおさらい
現物市場とは
先物取引とは
ピットのトレードと電子トレードの違い
ビッド・アスク・スプレッドとは
オプションとは何か
証拠金とは
注文の種類
先物とオプションの取引所

第2章 商品先物のテクニカル分析
テクニカル分析とは
テクニカルオシレーターと指標
チャート用ツール

第3章 商品市場のファンダメンタルズ分析
ファンダメンタルズ分析とは
エネルギー市場のファンダメンタルズ
穀物市場のファンダメンタルズ
ソフト商品のファンダメンタルズ分析
貴金属市場のファンダメンタルズ
通貨市場のファンダメンタルズ
金利市場のファンダメンタルズ
時間と手間を省くために

第4章 商品先物と金融先物の季節性
商品市場の季節性の分析
金の季節性
エネルギー市場の季節性
通貨の季節性
畜産物先物の季節性
季節性を使ったトレードの限界
季節性分析はどこで見つかるのか

第5章 「その他」――COTリポートとマーケット間の相互関係
マーケットセンチメントと群衆心理を知っておく
COTリポートを分析する
マーケット間の関係

第2部 商品先物のトレード戦略を立てる

第6章 先物のポジショントレード
スイングトレード
分割売買
トレンドトレード
ファンダメンタルズトレード

第7章 先物のデイトレードとアルゴリズムトレード
先物市場のデイトレード
アルゴリズムトレードシステム

第8章 先物のサヤ取り
先物市場のデイトレード
アルゴリズムトレードシステム
商品内サヤ取り
異種商品間サヤ取り
先物のサヤのクオートとチャートとトレード
季節性によるサヤ取り

第9章 オプションのトレード戦略
オプションの買い戦略
短期のオプション戦略
オプションのスプレッド戦略

第10章 マネージドフューチャーズと商品ポートフォリオの構築
マネージドフューチャーズ
商品先物のポートフォリオを構築する

第11章 ポートフォリオと運用リスクを先物とオプションでヘッジする
ヘッジとは何か
より良いヘッジ方法はあるか

第3部 既成概念にとらわれずに投資商品を選び、戦略を開発し、リスクを管理する

第12章 商品市場の隠れた宝
Eマイクロ金
Eマイクロ通貨
ミニ穀物
ミニの活用法――ドルコスト平均法
小口の先物契約で心理戦に勝つ
Eマイクロ先物はすべてのトレーダーの可能性を広げる

第13章 VIX先物のトレードは万人向けではない
VIXは投資ではなくトレードするもの
VIXはS&P500と逆比例している
VIX先物はVIX以上に時間による劣化が大きい
VIXは商品ではないが、「コンタンゴ」はある
VIXは上げるのは速いが下げるのは遅い
VIXをトレードする前に自分がしようとしていることを知っておく
VIXのポイント

第4部 学んだことを実行に移す

第14章 生死を分けるヒントと技
結論

第15章 トレードコストの影響を理解する
商品ブローカーのタイプ
ブローカーのサービスのレベルを選ぶ
ブローカーは、手数料ではなく、自分に必要なサポートで選ぶ
先物とオプションのデータ料について知っておくべきこと

第16章 リスク管理――商品市場のレバレッジを理解し、適切に使い、ヘッジする
先物市場のレバレッジの程度を理解する
レバレッジと運命は自分でコントロールする
レバレッジを侮ってはならない
リスク管理のために損切り注文を使う
オプションの買いと売りでリスクを管理する
リスク証拠金(SPAN)の基となる標準的なポートフォリオ分析を利用する
デルタを使ってオプションの証拠金を調整する
証拠金比率

第17章 商品市場のボラティリティを利用する――平均回帰とデルタニュートラルトレード
平均回帰を利用したトレード
平均回帰のチャートとトレード
カウンタートレンドのオプションの売り
レシオスプレッド戦略
平均回帰戦略を助けるカバードコールとカバードプット
ボラティリティが高いときのデルタニュートラル戦略

第18章 結論――商品トレードは心理戦……にならないようにする
必ず自分の性格に合う戦略を選ぶ
戦略よりも忍耐
唯一分かっていることは何も分からないということ


■監修者まえがき

 本書は、商品先物ブローカーのカーリー・ガーナーの著した“Higher Probability Commodity Trading : A Comprehensive Guide to Commodity Market Analysis, Strategy Development, and Risk Management Techniques Aimed at Favorably Shifting the Odds of Success”の邦訳である。本書が対象とする商品先物取引の世界は近年大きく変化している。まず、かつて盛んだったピットでの取引は消滅し、売買は電子取引によってほぼ絶え間なく行われることになった。この結果、取引所の登記上、あるいは物理的な所在地は重要ではなくなってしまった。この影響でグローバルに取引の寡占化が進み、中小の先物取引所は経営上の困難に遭遇することになった。実際、多くの取引所の吸収合併が行われ、先物取引所は実質的にはCME(シカゴ・マーカンタイル取引所)とICE(インターコンチネンタル取引所)の大手2グループに集約されてしまったのである。

 一方で、投資家の観点からは、いつでもどこからでも各市場にアクセスすることが可能になり、必要な証拠金もまとめておけるようになったことから、先物取引の利便性や意義は飛躍的に高まることになった。

 また、普段から業務で先物市場においてトレードを行っている立場から言うと、現在の先物市場には、『赤いダイヤ』(パンローリング。これはこれで大変面白い相場小説だが)に見られるような、昭和前期のダークなイメージはまったくない。今日の先物市場は、実体を伴い私たちの経済活動に深い関係があるリアルな商品(原油や銅、トウモロコシなど)に加え、金融先物(株式、債券、為替など)も幅広く上場されており、世界中の投資家や実需者・流通者が投資・投機、あるいはヘッジを行う極めて洗練された金融取引の場なのである。

 さらにその社会的役割も大きく、1987年のブラックマンデーの際には、NYSE(ニューヨーク証券取引所)をはじめとする現物の証券取引所が次々と機能を停止するなかにあって、レーガン大統領の懇請を受けたシカゴの先物取引所は単身で未曽有の危機と戦うことを決断する。彼らは流動性確保とヘッジの場を社会に提供し続けることで米国、ひいては世界経済を破滅の淵から救ったのである。なお、CME会長(当時)のレオ・メラメドはこのときの英断と功績に対して、後に日本政府より旭日重光章を贈られている。

 本書は日本で久しぶりに出版される先物取引の教科書である。内容は先物だけではなく、関連するオプションにも及んでおり非常に実践的で素晴らしい。これほどまでに良心的な入門書をブローカーが書けること、またそうしたしっかりした知識や経験を持った業界関係者が金融サービスの提供者として存在するということなど、米国の金融市場の健全性とそれを取り巻く業界の質の高さは羨ましいかぎりである。もし読者が先物取引をまだ体験したことがないのであれば、まことにもったいないことである。本書にあるように、先物やオプションを使えば株式や債券といった有価証券よりもはるかに多彩でスマートな取引が可能である。本書をガイドとして、この素晴らしい世界にぜひ足を踏み入れてもらいたいと思う。

 翻訳にあたっては以下の方々に心から感謝の意を表したい。まず井田京子氏には正確で読みやすい翻訳を、そして阿部達郎氏は丁寧な編集・校正を行っていただいた。また本書が発行される機会を得たのはパンローリング社社長の後藤康徳氏のおかげである。

 2019年4月

長岡半太郎


■第14章 生死を分けるヒントと技

 私は長年をかけて、トレードですべきこととすべきでないことをまとめてきた。これらが、破滅的な感情を寄せ付けないための役に立つと信じている。聖杯と言える戦略や、トレード利益を保証する手法などは存在しないが、これから紹介する単純な指針がトレード結果を大きく改善する助けにはなると思う。

 マーケットを追いかけない

 私は商品先物ブローカーをしながら、自分を含めて多くの人が間違いを犯すのを見てきた。なかでもひときわ多いのがマーケットを追いかけてしまうことだ。最大の問題は、これがストレスと間違った判断につながる感情的な行動で、それがトレードのしすぎにつながることである。
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「何もしないことは、ひどく難しい」――オスカー・ワイルド
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 人間は、不確実なことを嫌う。しかし、トレードや投資などは、どのマーケットでも、将来起こることはほぼ分からない。それでも、多くのトレーダーが、仕掛ける前に何らかの確認を取ろうとする。そのため、多くの人がマーケットが力尽きかけたあとに強気になり、価格が下げきってから弱気になる。買う前に高値を追いかけ、売る前に安値を追いかけてしまうのだ。そして、やっと仕掛けを決意したあとにトレンドが反転したら、結果は悲惨なことになる。

 高く買ってより高く売りたい、または安く売ってさらに安く買い戻したいという行動の背後には、トレンドが継続するという考えがある。ほとんどのトレード本には、「トレンドはフレンド」という言葉が出てくるから、私たちは価格を追いかけてしまうのかもしれない。多くの人にとって、大事なお金を賭ける前にマーケットが望む方向に動いていることが分かっているほうがずっと安心できる。しかし、それをすれば、高く買って安く売るという明らかに望ましくない行動になりかねない。第2章「商品先物のテクニカル分析」でトレンドトレードのデメリットについて述べたとおり、トレンドの確認に時間がかかれば、もっとも安心して買えるときは、まさに売ることを考えるか、少なくとも傍観すべきときである可能性が高い。この残念なサイクルは、あらゆるタイプのマーケットで何度となく繰り返されている。有名なケースをいくつか挙げると、2006年の不動産バブル、2009年のS&P500の底、2011年の金と銀の高騰、そして、最近では2014年の原油価格暴落がある。この先も同じような例が出てくることは間違いないだろう。マーケット参加者は、強欲に目がくらんでしまうようだ。

 価格を追いかける人にとっては皮肉なことだが、商品先物市場はなぜだか分からないが、多くのトレーダーが最高の痛みを被るタイミングで反転する。人は大きな利益を狙おうとすると、感情が論理を上回ってしまう。2015年7月に、主要な株価指数が史上最高値に迫っていたとき、強気のセンチメントが屋根を突き抜け、買いの資金がマーケットに流れ込んだ。反対に、8月に中国の株価下落の話題が広まると、小口トレーダーは強気のポジションを清算して、すでに300ポイント(10%超)近く下げていたEミニS&P500先物を、ほんの2〜3日で売り始めた。しかし、そのあとすぐマーケットはほぼ回復した。遅めに参入して、高値近くで買い、安値近くで売った人が被った痛みを想像してほしい。実際に何が起こったかを知ることはできないが、プライスアクションを観察し、CFTC(米商品先物取引委員会)のCOTリポートを見れば、多くのトレーダーがこのような状況に陥っていたと考えられる。

 歴史的な水準まで達してから参入すること(例えば、2015年8月にEミニS&P500を買う)の問題点は、それほどの高値に達するまでに価格がすでにかなり動いているということだ。そこまで行くと、強気の人はみんなすでに行動を起こし(買い)、弱気の人はすでに降参している(売りポジションを手仕舞っている)。価格はいずれ頂点に達し、そこに買い手は残っていない。つまり、トレンドが劇的に反転する可能性が広がっている。先に紹介したS&P500の例でも、まさにこれが起こっていた。そして、「ミニクラッシュ」とも呼ばれている出来事が起こった直後には、反対に売りが枯渇し、価格が上昇に転じたのである。

 業界のチャットやトレード関連のフォーラムなどを見ていると、大勢のトレーダーが下落時に売りトレードで身動きがとれなくなったり、奇跡的な復活劇のなかで弱気トレードにつかまったりしていることが分かる。チャートを見れば、彼らの痛みは明らかだ。下げているときは、追証やパニック売りによって価格が劇的に下がるが、騒ぎが収まると、上昇の見通しのなかで売りポジションを抱えた人が困惑することになる。上昇はゆっくりではあるが、証拠金は必要で、その苦しみを終わらせようとすると、価格はさらに上がる(新たな買いによってではなく)。S&Pは上昇するときも、下落するときも、同じような人たちを破綻させているのである。

 結局、商品に関するエピソードや意見が広まったときには、先物市場はすでにそれを反映して天井や底に達している。トレードは、ウォール・ストリート・ジャーナル紙の記事に基づいてトレードすれば成功するほど簡単なことではない。新聞やニュースで報道されていたり、友人が話したりしている時点では、便乗するには遅すぎる。そのときは間違った方向に仕掛けるよりも、見送ったほうが痛みははるかに小さくなる。2015年8月に中国の成長が鈍化したニュースを聞いて、Eミニを1800台で売った人に聞いてみれば分かる(第5章、図33)。

 トレンドの反転を狙うならば、少し待ってみる

 その一方で、マーケットを追いかけない人は、トレンドの反転を見越して仕掛けるのが早すぎることもよくある。マーケットの反転を正確に予想できるなどと考えるのは合理的ではないが、スイングトレーダーはそれをしようとしている。仕掛ける前に確認がとれるまで過度に待つ人たちと違い、スイングトレーダーは早すぎるリスクや、もっと悪ければまったく間違っているリスクをとる。もちろん、どちらのシナリオももどかしいし、高くつくことになりかねない。そのため、ここはしっかりと計画を立てて行動しなければならない。例えば、ヘッジをする(オプションの買いか売り)、間違う余地が大きい作戦にする(オプションを売ったり、マイクロ先物を使ったりする)などといったことが、投機を成功させるためには必要だ。スイングトレーダーのなかには、せっかく逆張りしても、その動きに十分乗り切らなかったり、負けトレードを長く保有しすぎたりするという有害な間違いを犯す人があまりにも多い。皮肉なことに、それをすると必然的に最悪なタイミングでトレードを終えることになる。このようなときにすべきことは、ウォーレン・バフェットの「みんなが強欲になっているときは恐れ、みんなが恐れているときは強欲になれ」という言葉に尽きる。ただ、私たちの感情が、その逆をさせようとする。

 私たちはマーケットの動きは支配できないが、マーケットの動きにどう反応するかは自分で決めることができる。賢い判断を下すためには、恐怖や準備不足で早々に逃げ出すのではなく、トレードを最後まで全うできるような戦略を立ててほしい。

 手に入った以上を望まない
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「参入し、うまくやり遂げ、撤退する」――ドナルド・トランプ
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 勝ちトレードについて、何時間もかけて商品チャートや統計や資料を調べた結果だと言うのは簡単だが、現実的に言えば、良いトレードには多少なりとも運がかかわっている。価格の動きを正確に予想できる人はいないが、その代わりに、私たちは知識に基づいてマーケットを打ち負かすための推測をしている。ただ、その確率が必ずしも有利ではないことは分かっている。そのため、正しいときに正しいところにたまたまいて、短い時間で素晴らしく有利な動きをとらえることができたときは、普通は即座に利食って逃げ出したほうがよい。少なくとも、その利益を守るための行動をとるべきだろう(例えば、先物ならばトントンのところに損切りを置いたり、自分のポジションと反対方向のオプションを売って、幸運な利益が減り始めた場合のクッションにしたりする)。

 エゴはまだまだ儲かると主張するが、実際のマーケットは利益を与えるのと同じか、それよりも素早く奪い取ってしまう。そのため、ポジションについてぐずぐず考えていないで、利食ったらすぐに立ち去らなければならない。2008年の暴落のとき、私はあるトレーダーがEミニS&P500のディープ・アウト・オブ・ザ・マネーのプットを買って1万ドルのトレード口座を何週間かで約50万ドルまで増やしたのを実際に見た。彼がプットを買ったとき、私は彼が1万ドルを宝くじよりも多少マシな、勝率の低い賭けに投じたと思ったが、結局、彼が予想した前例のない株価暴落が的中した。残念なのはそのあとで、彼はその利益どころか最初の投資額まですぐにマーケットに返すことになった。これは極端な例かもしれないが、残念ながら似たようなケースはいくらでもある。ラスベガスでブラックジャックをするならば、勝ったところでテーブルを離れるべきだが、それと同様に、マーケットでも運良く大金が手に入ったときは、すぐに撤退しなければならない。

 勝ちポジションと反対方向のオプションを売る

 トレーダーのなかには、利益を確定するのが苦手な人がいる。まだ利益チャンスが残っている間に手仕舞うのが耐えられないのだ。しかし、現実的には最高の水準で仕掛けて、最高のところで手仕舞うことなどできない。つまり、手仕舞うのは少し早めか少し遅めになる。しかし、勝ちトレードと反対方向のオプションを売れば、いいとこ取りができる。そうすれば、潜在利益に上限がつくが、その代わりにプレミアムが入って、それ以降に逆行してもクッションとして機能してくれる。勝ちトレードの逆のオプションを売ることは、カバードコール戦略と似ていなくもない。無限の利益をあきらめる代わりに、プラスでトレードを終えるか、少なくともそのポジションを持ち続けるリスクをかなり減らすことができるという安心感が手に入る。この戦略は、勝ちトレードを負けトレードに転換しないという考えに基づいている。

 このテクニックは、オプションの買いや先物の買いや売りにも使える。例えば、金先物を1200で売った場合を想像してほしい。もし今の価格が1150ドルだとすると、利益は50ドル、1枚当たり5000ドルになっている(金は1ポイントが100ドルなので50ドル×100ドル)。トレーダーは、この金先物を買い戻して利益を確定してもよいし、利益を確定できるところに損切りを置いて、さらに下げるのを待ってもよい。

 もちろん、損切り注文に伴うリスクや問題はみんな分かっている。そこで、もう1つの選択肢として、相場が急転換したときに利益を守るため、コールオプションを買うという方法がある。ただ、前述のとおり、この種の保険は高くつくこともある。私は、トレンドが続けば潜在利益がさらに増えるポジションを守るための最善策は、マリードプットだと思う(カバードコールと同じ戦略だが、先物の売りとプットの売りを組み合わせる)。金の場合、ボラティリティによってはアット・ザ・マネーのプットを40〜50ドル(1枚当たり4000〜5000ドル)のプレミアムで売ることができる場合もある。今回の例では、アット・ザ・マネーのプットは行使価格の1.150ドルで、受け取ったプレミアムが収入になるだけでなく、先物ポジションのリスクバッファーにもなっているウィンウィン戦略なのである。

 この例で、仮に1150ドルのプットオプションを50ドル(1枚当たり5000ドル)で売れたとしたら、先物で得た利益の50ドルは確定する。もし金が反転して満期日に仕掛けた1200ドルに戻ったとしても、5000ドルの利益は確定しているのだ(取引コスト別)。先物の利益はすべてマーケットに返すことになっても、ヘッジのために売ったオプションのプレミアムが先物の利益をヘッジしているからだ。しかし、もし金が下げ続けてプットの行使価格の1150を下回ったら、満期時にトレーダーは1万ドルの利益を手にしている。先物が1200ドルから1150ドルに下げたことによる利益の5000ドル((1200−1150)×100ドル)と、プットオプションのプレミアムの5000ドルの合計である。ただ、1150ドルを下回って下げても利益が増えないのは、売ったプットの本質的価値が価格の下げに合わせて上がっていくからだ。簡単に言えば、1150ドルを過ぎると、先物の売りで得た利益と、プットの売りの損失が相殺されていく。しかし、受け取ったプレミアムは利益として確定している。このオプションの本質的価値は高まっていくが、時間的価値は満期にはゼロになる。具体的に言えば、もし満期時に金が1100ドルならば、プットオプションの本質的価値は5000ドル((1150−1100)×100ドル)だが、時間的価値はゼロになる。そのため、トレーダーは外因性プレミアムの恩恵を受けるが、本質的価値が上がるリスクは先物の売りポジションと相殺される。このことは、金が満期時に1100ドルでも、100ドルでも変わらない。プットを売って5000ドルの追加的な利益を得ることで、リスクを緩和できるのは、なかなか魅力的な提案だと思う。

 もちろん、もし金が1200ドルを上回れば、ヘッジとして売ったプットはメリットがなくなるため、先物のポジションはネイキッドの売りになる。それでも、もし金が満期日に1200ドルならば、トレーダーは5000ドルを手にしている。先物の売りはトントンに戻ったが、5000ドルで売ったオプションの価値はなくなっているからだ。
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正しいタイミングで行えば、含み益が出ているオプションの買い手はその反対方向のオプションを売ることで、リスクフリーのトレードに転換できる。
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 マーケットが急転換すると、先物の売りポジションにヘッジがなくなってしまうため、勝ちトレードと反対方向のオプションを売ってプレミアムを得るテクニックのほうが、リスクを限定したオプションの買いのポジションを守るためにはより大きな効果がある。先の例のトレーダーが先物を売る代わりにアット・ザ・マネーのプットを買えば、利益はかなり減る代わりに、ポジションをリスクフリーに転換することができる。もし1200ドルのプットを50ドル(1枚当たり5000ドル)で買って、先物が1150に下がれば約3000ドルの利益が上がると想定できるが、満期まではかなり期間がある。そうなったとき、オプションの価値は80ドル(1枚当たり8000ドル)になる。ここまで読んで、先物を売れば5000ドルの利益が出たのに、なぜ3000ドルなのかと思う人がいるかもしれない。これは時間的価値が劣化したことと、プットオプションのプレミアムを支払ったからである。

 プットの買い手は、単純にこのオプションを売って3000ドルの利益(手数料別)を確定することもできるし、1150のプットを5000ドルで売って、ベア・プット・スプレッドを実質的にゼロにすることもできる。ベア・プット・スプレッドは、プットをアット・ザ・マネーの近くで買うと同時に、行使価格から離したプットを売ることである。このようなスプレッドによって、リスクもリワードも限定されるため、これはオプションの買い戦略に分類されている。

 1150ドルのプットを売ると、そのプレミアムで最初のオプションに支払った5000ドルを十分カバーできる。そうなれば、少なくともトントンになることは保証されているし、何らかの利益が出る可能性が高い。もし金が1200ドルを超えれば、どこまで高騰しても、オプションの買いとオプションの売りが満期になるときには無価値になっているため、トントンで終わる。それに対して、先物トレードでプットオプションをクッションにしたものの、金が1200ドルを大きく超えれば理論的には無限のリスクがある。もし金の価格が満期を迎えたときに1150ドルを下回っていれば、5000ドルの利益が上がる。これは、行使価格からスプレッドを仕掛けるコスト([(1200−1150)−0]×100ドル=5000ドル)を引いた値になる。この例では、以前に1200ドルのプットを買ったときと同じ価格で1150ドルのプットを売ることができるため、スプレッドを仕掛けるコストは通常の取引コストのみとなる。ちなみに、金の価格が1200〜1150ドルの範囲ならば、利益は1150ドルのプットの本質的価値と同じになる。

 この戦略は、運が良ければ安いオプションを買って(たいていはディープ・アウト・オブ・ザ・マネー)、一世一代の動きの正しいサイドにいた場合は最高の結果につながる。そのようなときは、行使価格が遠いオプションを売って、利益が保証されたベア・プット・スプレッドに転換することもできる。1200ドルのプットを、金が1200ドルに下がるはるか前に500ドル(プレミアムは5ドル)で買っていたらどうなるか想像してほしい。1150ドルまで下げれば、7500ドルの利益(オプションの価値が8000ドル、支払ったプレミアムが500ドルとして)が手に入る。このトレードでは、1150ドルのプットを5000ドルで売って、金価格がどうなっても最低4500ドルの利益を確保している。最高のシナリオは、満期時に金先物が1150ドルを下回った場合で、そうなれば全体で9500ドルもの利益が上がる。その内訳は、プットオプションのプレミアム収入と本質的価値を合わせた1200ドルから、このプットに支払った500ドルを引いた値である。 ([(1200−1150)+50−5]×100ドル)=9500ドル(手数料別)

 傍観も選択肢の1つ
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傍観していれば損失は出ない。
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 小学生が小遣いをもらうとすぐに使いたくなるように、トレーダーも口座に資金があると、すぐに使いたくなる。私たちは資金があれば常に投資しておかないと機会損失だと思うようにできている。しかし、それは真実とはまったく違う。実際には、トレード口座や普通口座やそれ以外にある資金は、特別のチャンスが訪れたときに、即座に使うことができるお金なのである。傍観することには、いくつかのメリットがある。マーケットを客観的に見ることができるし、マーケットが大きく動いたときに行動する自由がある。マーケットでポジションを持っている人は、分析にバイアスがかかる。そして、ボラティリティが高くなると、攻撃よりも防衛に力を入れる。また、マーケットが大きく動いたときに、すでにポジションを持っているとあわててリスクを管理することになるが、傍観している人にとっては割安で買いを仕掛けたり、割高で売りを仕掛けたりできるチャンスとなる。

 簡単に言えば、傍観することはチャンスを逃すことではない。これは資金を守り、高勝率のトレードチャンスが来たときに備えているのである。

 我慢ができないならばやめておく

 気難しいシェフのゴードン・ラムゼイが、テレビ番組の「ヘルズ・キッチン」で「お前なんかオーブン入っててくれたら楽なのに」と言い放ったことがある。私はこれを、「熱さに我慢できないならば、料理なんかやめてしまえ」ということだと解釈した。トレードも同じだ。これは機転と精神の安定が求められる戦いだ。医療現場では血を見ても動揺しない人が求められるのと同じで、トレードもそのストレスを受け止められる人でなければやっていけない。もし損失を被ったり利益が上がったりしたときに冷静さを保ち、合理的に考えることができない人は、トレードには(少なくとも大金を賭けるのには)向いていないのかもしれない。

 商品市場での先物やオプションのトレードは、だれにでもできることではない。実際、私も商品ブローカーになって10年間以上たってからも、ときどきなぜこんなことを自分に課しているのかと思うことがあった。幸い、そのような日はたまにしかなく、今ではほとんどの時間、仕事を楽しんでいる。ただ、それでも商品先物市場でのトレードは簡単ではないと確信している。トレードをするときは、最も堅実で、賢くて、裕福な人でも、忍耐と自信と財力が試されることになる。商品市場は別れた配偶者と同じで、人の最悪の面を引き出す力があるのだ。トレードに伴う感情の乱れを受け入れることができないならば、この苦しみに身を投じるべきではない。
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「連敗したときは、トレードを減らすことで対処している。少し時間を置くのだ。連敗しているときは精神的に打ちのめされている。そんなときに取り返そうとしてトレードしたら、致命的な結果を招くことになる」――エド・スィコータ
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 さらに言えば、自分の資金や理性の限界を超えてトレードしてはならない。それをすれば、誤った判断を下し、お粗末な結果を招くことになる。また、自分が睡眠が足りていないとか、不合理な考えや不合理なトレードをしていると感じるときは、ポジションをマルにして、パソコンから離れてみるとよい。

 はっきり言って、マーケットは意地悪だ

 商品先物市場の性質を表すもっと軟らかい言い方があればよかったのだが、「意地悪」よりもぴったりくる言葉が見つからない。商品市場には、ほとんどの人に大惨事をもたらす才覚がある。マーケットでは、損切りが流れ、証拠金不足で強制的に清算され、胃がよじれるようなボラティリティに見舞われることがある。長年トレードしていれば、マーケットに泣かされることもあるし、筋肉隆々の男性や大金持ちが文字どおりむせび泣くのを実際に見たこともある。もちろん、落胆は金銭的な損失もあるが、間違ったことによる痛みが感情に打撃を与えることも多く、それがトレーダーを追い詰める。また、レバレッジを乱用していたり、本当の意味でリスクキャピタルではない資金でトレードしていたり、単純に間違ったタイミングで間違ったポジションを持っていたりすると、商品トレードが結婚生活や人生や老後の備えを破綻させることにもなりかねない。マーケット参加者1人ひとりが自分がしようとしていることを理解して、責任ある方法でトレードを計画する必要がある。資金を株式市場やスポーツくじに投じたり、ポーカーをしたりするのと違って、商品トレードではある程度のリスクをとることになるため、きちんと管理しなければ傷を負うことになる。ただ、自分の資金の範囲でトレードしていれば、破綻は避けることができる。
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「われわれが最も誇りとしているのは、けっして失敗しないことではなく、失敗してもそのたびに立ち上がっていることである」――孔子
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 トレードによる精神的な苦しみを緩和するには、トレード1つひとつに最悪の結果を想定して仕掛けたうえで、最善の結果を願うとよい。これは、リサーチをしないで不注意に仕掛けるなということではなく、最も健全なファンダメンタルズ分析とテクニカル分析に基づいて仕掛けても、将来のことは分からないという事実を認識すべきだということである。市場価格は感情で動く人間に支配されている。そして、ある出来事に対してみんながどう反応するかを、絶対的な自信を持って予想できる戦略など世界のどこにもない。例えば、天然ガスの在庫に関する強気の報告書が出たのに売られたり、雇用統計の数字が下がったのに株価指数先物が買われたりすることは珍しくない。市場価格を見ただけでは、良いニュースなのか悪いニュースなのか見分けがつかないこともある。結局、マーケットはニュースが示唆することではなく、マーケットが望む方向に動いているだけなのだ。

 トレードを仕掛ける前に、主要な支持線と抵抗線、損切りの場所、オプションのプレミアムなどを調べて、最悪のシナリオを想定してほしい。もし最悪のケースを考えるだけで胃が痛くなるのならば、そのトレードはあなたには向いていないのかもしれない。

 おしゃべりはやめて調べる
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「本当の実力は、危機に陥ったときに初めて分かる」――マーティン・シュワルツ
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 戦略を立て、市場の意見を分析し、仕掛けや手仕舞いのタイミングを決めるときには、自分で調べないと精神的な安定を保つのが難しくなる。「マーケットのカリスマ」や、ニュースレターやシグナル提供サービスをあまり信用してはならない。高い料金をとっていても、メディアで人気を誇っていても、彼らの状況は私たちとさして変わらない。私たちはみんなマーケットを打ち負かそうと思っているが、みんな自分が間違う可能性と必然性には弱い。そこで、少なくとも、第三者の意見や推奨の裏付けがあると、利食ったり、損切りしたりする判断を下しやすくなる。しかし、このような判断を他人に委ねていると、いずれ失望し、腹が立ってくる。「私は自分のブローカーよりも詳しい」「なぜこんな人に顧問料を支払っているのか」などと考えるのは自然なことだが、それが判断力に悪影響を及ぼすのだ。しかし、自分で調べて同じ結論に至るか、少なくとも使っているサービスに同意できるならば、結果を受け入れることができる。

 他人の推奨に基づいてトレードを仕掛けている人は、過度に満足する傾向がある。しかし、彼らのポジションに対する安心感は、たいてい根拠がない。他人の能力を非現実的に信頼していると、莫大な損失を被る可能性があるのだ。あなたが信頼する自己主張の強いトレーダーがときどき間違えていると気づいたときには、もうあなたのトレード口座は手遅れかもしれないということだ。ほとんどの小口トレーダーは、トレード推奨サービスが勧める金額よりも少ない額でトレードしている。言い換えれば、トレードサービスの多くは、相手が平均的なトレーダーよりも多くの資金を持ち、リスク許容量も大きいものとして助言を行っている。そのため、助言に従ってトレードを続けていればいずれ利益が上がる場合でも、その前に大きなドローダウンに見舞われたり、それによって破綻したりしてしまう人が多くいるのである。

 他人の推奨に従ってトレードする場合に最もよくある落とし穴は満足感だが、なかにはその逆の問題を抱えている人もいる。彼らは信頼することができないために、仕掛けるのが遅くなったり、早めに手仕舞ったりしてしまうのだ。しかし、このようなタイミングのずれは、トレード結果に悪影響を及ぼしかねない。

 結局、カリスマの助言に従うならば、それは有利かもしれないが、保証はされていないということを理解しておく必要がある。執行するトレードは、すべて自分の考えや分析によって確認しなければならない。そして、もしそのトレードの根拠に同意できなければ、執行すべきではない。同意できていないと、仮にそれが勝ちトレードだったとしても、自らそれを阻むような行動をとってしまうかもしれないからだ。

 地に足をつけ、現実を直視する

 悪いときも冷静さを保ち、良いときも浮かれないのが、形成を逆転できる人である。これまで繰り返し書いてきたとおり、儲かる人と損する人の違いは、分析技術よりも心理によるところが大きい。忍耐や冷静さがない人は、マーケットを追いかけて勝率の低いトレードを仕掛けたり、自分の選んだ戦略の成否を見届けなかったりする傾向がある。安く買って高く売ることを目指しているのに、感情を抑制できないトレーダーは、結局はその逆をしてしまうことが多い。
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私たちは自分の感情もマーケットもコントロールすることができないが、自分の状況や環境はできる。
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 商品先物トレードで成功するための安定した精神を生まれながら備えている幸運な人も、少数だがいる。しかし、ほとんどの人はそれを経験を通じて学んでいかなければならない(しかもみんなができるわけではない)。多くのトレーダーが先物やオプションをトレードする精神力を身に付けることができないのは、そのスキルを鍛えるために十分な授業料をマーケットに支払うことができない、あるいはしないからだ。残念ながら、悲惨な状況において論理的な判断を下すための方法を教えてくれる本やビデオはない。しかし、ストレスの軽減を促す環境を作り出すことで、効率的にトレードするために必要な手段が身に付く確率を上げることは可能なのである。

 経験不足を補うことはできないし、自分の性格を変えることもできないが、自分の環境とストレスにさらされる量を変えることはできる。私は、次のような簡単な指針を使えば、精神の過度な緊張や感情的な判断の影響を驚くほど減らすことができると思っている。

●十分な睡眠をとる。疲労は、私たちの体にも心にも負担になる。
●適切な食事と栄養をとる。トレード画面の前でコーヒーをすすり、ドーナッツをかじってばかりいたら、行きすぎた判断を下すようになるのは間違いない。
●体操は心にも体にも良い。積極的に体を動かすよう心掛ける。商品市場はほぼ24時間開いているが、あなたがトレードデスクにずっと張り付いている必要はない。
●トレード数を減らし、傍観するのを恐れず、時にはマーケットから離れる時間をとるのもよい。
●複数のトレードはストレスを倍増させる。トレードは少ないほど効果が高い。
●感情を抑制する速くて簡単な方法は小さいサイズでトレードすること。「小さい」の意味はトレーダーによって違い、1枚かもしれないし、ミニ1枚、マイクロ1枚かもしれない。小さいサイズのトレードは時間の無駄ではない。1日に50ドルの利益が上がれば、年収は1万2000ドルになる。そして、複数のトレードをしなくても、良いタイミングで1回仕掛けることができたら50ドルの利益は十分出る。
●怒っているときや、参っているとき、落ち込んでいるとき、何か気がかりなことがあるときは、トレードしない。マーケットはなくならないのだから、あなたがもっと良い状態のときにトレードすればよい。

 賭けはするが、現実を理解する

 レバレッジをかけたトレードは確率の勝負だが、勝率が高くても必ず勝てるわけではない。広範囲の分析をきちんと行って魅力的なチャンスに賭ける最高のトレーダーでも、結果的に間違ったサイドに行ってしまうこともある。時には、もっとも可能性が高い結果にならずに、大きな損失につながるシナリオが展開することもある。マーケットには、季節性もファンダメンタルズ分析もテクニカル分析も関係ない。このことが分かっていると、現在や将来のトレードの損失による精神的な打撃の影響を緩和することができる。マーケットをコントロールすることはできないが、自分の反応の仕方だけはできるのだ。

 成功するトレーダーの多くは、勝率が平均50%を下回っている。オプションの売り手はもう少し勝率が高いかもしれないが、トレンドトレーダーの勝率はもっと低いかもしれない。ただ、トレードは最終的にはゼロサムゲームだ。勝者がいれば敗者がいるし、その逆も言える。そのため、商品市場の活動は、どれも現実的な期待とともに行わなければならない。トレーダーの約半分が損失に終わっているが、損失は明日もトレードが続けられる範囲に抑えなければならない。
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きょうの有利な勝率が、明日も同じだと思ってはならない。勝率は、現在のシナリオに基づいているが、現実はこのトレードが終わる前にまったく変わってしまうかもしれない。
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 今日のテクノロジー主導の世界では、戦略や特定のトレードの勝率を計算するためのトレードソフトが普及している。しかし、その人気とは裏腹に、その有効性に私は疑問を感じている。それは、瞬時に変わる条件に基づいて答えを出しているからだ。オプションの勝率計算機の多くは、ディープ・アウト・オブ・ザ・マネーだと勝率が非常に低く出る。これは明らかに正しいが、この結論は、その時点のマーケットのボラティリティやセンチメントに基づいているため、来週のニュースの影響や、その翌週の自然災害の影響まで織り込むことはできない。要するに、今日の現実が必ずしも明日の真実ではないということである。

 98%成功するつもりで特定のオプションを売っている人は、損失の可能性がわずか2%しかないと信じて、含み損が合理的な水準を超えてもそのポジションを呑気に保有し続けるかもしれない。しかし、同じ計算機が、何か形成を一変するファンダメンタルズ的な出来事のあとにはまったく違う確率を示すこともある。私は、90パーセンタイル後半で満期には無価値になると言われていた50ドル未満の原油オプションが、ほんの数時間の間に数百ドルに跳ね上がって、無価値になる確率も50パーセンタイルに落ちたケースを実際に見たことがある。

 いつまでもつもり売買を続けるのは非生産的

 世の中には、つもり売買ばかりしている人がたくさんいる。私にはそういう人たちから、究極のトレード手法を開発したから私や私のブローカーの顧客のために「2+20」(管理費2%、成功報酬20%、第10章参照)で運用したい、という電話やメールがたくさん来る。しかし、私が質問を始めると、彼らの多くが一般向けの運用サービスを勧誘する場合に義務付けられているNFA(全米先物協会)の登録すらしていないことが分かる。そのうえ、この黄金の手法を実際の資金で運用していない人も多い。彼らはその代わりに、複数年のつもり売買の結果を見せようとする。おそらく、彼らは自分の口座で試して失敗したか、「確実」だと断言している手法を試すためのリスクキャピタルを持っていないのだろう。いずれにしても、このような状況で交渉がまとまるわけがない。前者ならば、そのシステムは相当額の資金をリスクにさらさなければうまくいかないのだろうし(つもり売買の口座には無限の資本がある)、後者ならば少額の資金を貯めて実際の商品トレード口座を開設するという正しい決断すらできていないため、他人の資金を運用するのに適した人ではないと思われる。

 このような「プロのつもり売買トレーダー」は、空想上の口座で7桁の資金を運用しているが、現実の世界で利益を上げる方法は分かっていない。これは、つもり売買の場合、トレードで成功するための最大の要素である精神的な安定という点をほぼ完全に無視しているからである。言い換えれば、つもり売買はビデオゲームのようなもので、負けても実害がない。私は、2〜3週間以上つもり売買をするのは時間の無駄だと思っている。

 つもり売買は、新人トレーダーが商品先物やオプションを学ぶために短期間行うのは価値があると思う。トレーダーはつもり売買をすることで、マーケットの傾向やボラティリティに慣れ、先物取引や限月、チャート用のツール、注文の種類や出し方を学び、損益が素早く蓄積していく感覚を得ることができる。また、つもり売買は、新しいトレード戦略やシステムや理論を試す絶好の方法でもある。新しいトレードプラットフォームに慣れるためにも使える。しかし、メリットはそこまでだ。

 私は、数週間以上つもり売買をするよりも、第12章で紹介したリスクの低いEマイクロの先物(例えば、通貨や金)や、ミニ先物(例えば、穀物や通貨)をトレードしてみるほうがメリットは大きいと思っている。このようなトレードサイズだと、リスクやリワードはわずかだが、それでもフルサイズでトレードする場合の何分の一かでも感情的な側面を経験することができる。そして、自信を持ってトレードできるようになったら、ミニを卒業してフルサイズのトレードに進めばよい。つもり売買の目的は、感情を抑制する練習だということを忘れないでほしい。そのためにマイクロでトレードする必要があれば、そうするだけだ。

 負けトレードに増し玉するのを恐れてはならない

 トレード本の多くは、「負けトレードに増し玉しない」というマントラを強調する。しかし、それこそが最も論理的な行動かもしれない。もちろん、増し玉するためにレバレッジ過多になるのならば、それは大きな間違いだが、十分なリスクキャピタルがあり、ドルコスト平均法が有利に働く状況ならば、よく考えて増し玉してもよいのである。

 結論

 本章で紹介したヒントは、売買のタイミングの判断の助けにはならないが、地に足をつけてトレードする役には立つと期待している。アメフトの勝敗を決める20ヤードのキックを任されれば、普段は簡単なキックでもプレッシャーで潰れそうになる。私たちは自分で望むほど感情をうまくコントロールできない。そのため、望ましい行動をとるためには、自分を望ましい状況と正しいシナリオに置く必要がある。良いときも悪いときも一定のパフォーマンスを上げられることは、どんなシステムや分析テクニックよりも価値があるのだ。
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「優れたトレーダーには3つの特徴がある。_浸も額面どおり受けとらない、何でも疑ってかかる、8虚――である」――マイケル・スタインハルト
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