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ウィザードブックシリーズ Vol.314

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株式投資 完全入門 「銘柄→潜在力→財務→事業評価」がわかる銘柄選択の極意 株式投資 完全入門
――「銘柄→潜在力→財務→事業評価」がわかる銘柄選択の極意

著 者 ジョシュア・パール/ジョシュア・ローゼンバウム
監修者 長岡半太郎
訳 者 藤原玄

2021年5月発売/四六判 350頁
定価 本体 2,800円+税
ISBN978-4-7759-7283-0 C2033

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著者紹介目次

個人投資家のための高クオリティー銘柄発掘の全プロセス公開
プロの銘柄発掘法を個人投資家に伝授!

 お気づきであろうが、世の中には膨大な数の投資本が存在する。それらの多くは世界で最も偉大な投資家たちが著したものである。では、なぜわれわれの著書を読むべきなのだろうか。証券口座、ETF(上場投資信託)、投資信託、または年金積立制度などを通して、直接・間接を問わず、株式投資は今まで以上に多くの人々に普及している。それにもかかわらず、ほとんどの個人投資家は銘柄を選択する方法についてまったく訓練を受けていない。そして、今日に至るまで、個人投資家の助けになるような、容易に入手できて理解しやすい情報源が存在してこなかったのだ。本書はこの真空地帯を埋めるために書かれたものである。

 われわれの銘柄選択の枠組みが持つ簡潔さと使いやすさは本当に独特なものだと思っている。実際の例やウォール街でプロたちが利用しているモデルを用いて、極めて論理的な進め方で一歩ずつ銘柄選択の方法を伝授していく。われわれの目標ははっきりしている。つまり、最良のリスク管理手法をもってポートフォリオを守りながら、クオリティーの高い銘柄を見つけるために必要なスキルを伝えることである。

 われわれの実践的なアプローチは、ともすれば威圧的ともなりかねない投資プロセスを分かりやすく説明する一助となることを目指している。このトレーニングによって、ほとんど目を閉じて飛んでいるような多くの投資家たちから抜きん出ることができるようになるであろう。

 航空機のパイロットはライセンスを得る前にいろんな訓練をしなければならない。医師は医学部を卒業後に何年も研修に励む。投資アドバイスを提供するプロたちでさえ認証を取る必要があるのだ。だが、まったくトレーニングを受けていなくてもだれでも株式を買うことはできるのである。直感で株を買い、そして祈りの言葉を捧げても、生命の危険こそないかもしれないが、確実に自らの資金をリスクにさらすことになるのだ。


本書への賛辞

「多くの者たちの考えに反するが、投資は必ずしもランダムウォークになるとは限らない。市場に打ち勝ちたい将来のストックピッカーたちに向けて、本書はその目的の達成に大いに役立つプロセスを分かりやすく教えてくれる」――スタンレー・ドラッケンミラー(デュケイン・ファミリー・オフィス創業者兼CIO)

「2人のジョッシュが簡単明瞭な投資ガイドを生み出した。彼らは投資における最も複雑なコンセプトを、容易に理解し、利用できる枠組みへと昇華させた」――ネルソン・ペルツ(トライアン・ファンド・マネジメントCEO兼共同設立者)

「本書は、賢明かつプロ並みの方法で銘柄を選択し、ポートフォリオを構築する方法を学ぼうとしている投資家にとっては価値ある手引書である。筆者たちは、アイデアの創出に始まり、企業業績、銘柄のバリュエーション、そして潜在的なリスクの分析へと重要なステップを分かりやすい方法を提供している」――アビー・ジョセフ・コーエン(CFA兼ゴールドマン・サックス・アドバイザリー部門ディレクター兼上級投資ストラテジスト)


著者紹介

原題:
The Little Book of Investing Like the Pros: Five Steps for Picking Stocks (Little Books. Big Profits)
The Little Book of Investing Like the Pros
ジョシュア・パール(Joshua Pearl)
ロングショートの株式運用を行うブラフマン・キャピタルのマネジングディレクター。彼はファンダメンタルズに基づいた手法を用いて公開株やスペシャルシチュエーションに特化した運用を行っている。それ以前にはUBSの投資銀行部門のディレクターとして高利回り債の組成やLBO、リストラクチャリングに取り組んだ。UBSに勤務する以前にはモーリス・アンド・カンパニー、ドイチェバンクに勤務していた。インディアナ大学ケリー・スクール・オブ・ビジネスで修士号を修得している。また、『インベストメント・バンキング(Investment Banking: Valuation, LBOs, M&A, and IPOs)』の共著者でもある。

ジョシュア・ローゼンバウム(Joshua Rosenbaum)
RBCキャピタル・マーケッツのマネジング・ディレクターであり、同社のインダストリアル&サービセズ・グループの責任者。彼はM&Aやコーポレートファイナンス、資本市場取引の組成や助言を行っている。それ以前はUBSの投資銀行部門や国際金融公社に勤務していた。彼はハーバード大学で文学士を、またハーバード・ビジネス・スクールでMBAを修得、ベーカー・スカラーを受賞している。『インベストメント・バンキング』の共著者でもある。

レイモンド・アジジ(Raymond Azizi、編集担当)
ワイス・マルチストラテジー・アドバイザーズのファンドマネジャーで、株式のロング・ショート・ポートフォリオを運用している。ラトガース大学で経営学士を、ペンシルベニア大学ウォートンスクールでMBAを修得。『インベストメント・バンキング』の共著者。

ジョセフ・ガスパッロ(Joseph Gasparro、編集担当)
クレディ・スイスのキャピタル・サービス部門のバイス・プレジデントで、オルタナティブ運用を行うファンドマネジャー向けに資金調達やオペレーションの助言を行っている。ゲティスバーグ大学で学士号を、ラトガース大学ビジネススクールでMBAを修得。『インベストメント・バンキング』の共著者。


目次

監修者まえがき
まえがき ハワード・マークス
謝辞
免責事項

序章 本書は他の投資本とどこが違うのか
本書の構造
 ステップ1 アイデアを創出する
 ステップ2 最良のアイデアを見いだす
 ステップ3 事業と財務のデューデリジェンス
 ステップ4 バリュエーションとカタリスト
 ステップ5 投資判断とポートフォリオ管理

第1章 ステップ1
アイデアを創出する――どのようにして投資アイデアを見いだすのか

スクリーニング
ボトムアップのアプローチ
財務パフォーマンス/合併買収(M&A)/スピンオフ・事業売却/リストラクチャリング・事業再生/自社株買い・配当/IPO/インサイダーによる株式買い付け・株式保有/実績ある投資家・アクティビストの追跡
トップダウンのアプローチ
サイクル、ブーム、バスト/経済学・地政学/長期的変化/産業の変曲点
重要なポイント

第2章 ステップ2
最良のアイデアを見いだす――投資アイデアのリストを手にしたら、次は何をするべきか

投資アイデアを見直す枠組み
一.投資テーマ/二.事業の概況/三.経営陣/四.リスクと留意事項/五.財務とバリュエーション/類似企業/予備評価
重要なポイント

第3章 ステップ3 事業と財務のデューデリジェンス――最良の投資アイデアをさらに掘り下げる
事業のデューデリジェンス
 一.その企業は何をしているのか
 二.どのようにしてお金を稼いでいるのか
 三.モートや競争上の立場はいかなるものか
 四.顧客と供給業者の関係はどれほど強いか
 五.事業の主たるリスクは何か
財務のデューデリジェンス
 一.企業の現状はどのようなものか
 二.将来どのようになるか
 三.バランスシートは健全か
 四.安定したフリーキャッシュフローを生み出しているか
 五.経営陣はどのように資本を配分しているか
重要なポイント

第4章 ステップ4
バリュエーションとカタリスト――株式にどのような価値があるか

バリュエーション
市場評価と本源的価値によるバリュエーション
類似企業比較/ディスカウントキャッシュフロー/まとめ/サム・オブ・ザ・パーツ/純資産価値
バイアウトバリュエーション
前例分析/LBO分析/LBOではどのようにリターンが生み出されるか/EPSの希薄化分析
カタリスト
決算/投資家説明会/M&A/スピンオフ・事業売却/リストラクチャリング・事業再生/自社株買い・配当/借り換え/経営陣の刷新/アクティビスト投資家/新製品・新顧客/規制/カタリストがデルファイの株価にどのような影響を与えたか
目標株価を設定する
重要なポイント

第5章 ステップ5
投資判断とポートフォリオ管理――引き金を引くべきときだろうか

投資判断を下す
買い/空売り/要観察/見送り
投資を監視する
四半期業績
ポートフォリオ構築
投資目的/リスク許容度/ポジションの規模/セクターと地域/投資テーマ/為替/コモディティ/金利/レバレッジの水準/ポートフォリオのまとめ
ポートフォリオとリスク管理
イクスポージャー制限/損切り/利益確定/リバランス/ヘッジ/ペアリング/オプション/ストレステスト/パフォーマンス評価
重要なポイント

事後検証――デルファイ・オートモーティブ
スピンオフ後、二〇一九年、そしてその後
セクター/アプティブ(親会社)/デルファイ・テクノロジーズ(スピンアウトした企業)

参考文献と推薦図書

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■立ち読みコーナー(本テキストは再校時のものです)

監修者まえがき

 本書は、ジョシュア・パールとジョシュア・ローゼンバウムの共著である“The Little Book of Investing Like the Pros : Five Steps for Picking Stocks”の邦訳である。見かけとは少々異なり本書は初心者向けの入門書というよりも本格的な解説書であり、資産運用のプロフェッショナルと同じプロセスで株式投資を行う方法が記されている。こうした切り口はとても斬新なものだが、ここでの著者らの姿勢は至って謙虚で、投資プロセスを簡略化して考察することについても、「議論の余地はあるのかもしれない」と述べている。しかし、この形式での解説は実際とても良くできていると感心せざるを得ない。

 本書では、.▲ぅ妊△鯀禄个垢襦↓∈芭匹離▲ぅ妊△鮓つける、事業と財務のデューデリジェンス、ぅ丱螢絅─璽轡腑鵑肇タリスト、ヅ蟷馮獣任肇檗璽肇侫リオ管理――に分けて投資プロセスが記述され、汎用の解説と実際の投資例であるデルファイのケースを提示することで分かりやすく話が進んでいく。

 おそらく、ほとんどの一般投資家は(実はかなりの割合の機関投資家も)、これらすべてをきちんと明示的に意識して実行できてはいないだろう。これら五つのステップはそれぞれがとても重要で、しかも互いに独立して検討・実行すべき内容を含んでいるが、人は自分の興味のあるところや得意なところ(例えば、アイデアの思いつきや銘柄選定)には時間や労力を割くが、そうでないところは意識が及ばないか、あえて無視をする。

 だが、本当のプロフェッショナルとアマチュアを分けるのは、事業評価(企業評価)の側だけではなく、その資本構造に基づいて事業キャッシュフローの分配について考えることや、投資対象群をポートフォリオとして管理していく技術などにある。本書では、そういった一般的にはあまり光が当たらないが、実は資産運用において極めて重要な過程について、投資書籍としては珍しくきちんと言及されている。

 最後に、翻訳にあたっては以下の方々にお礼を申し上げたい。藤原玄氏には正確な翻訳を行っていただいた。そして阿部達郎氏には丁寧な編集・校正を行っていただいた。また、本書が発行される機会を得たのは、パンローリング社の後藤康徳社長のおかげである。

 二〇二一年四月

長岡半太郎


まえがき
ハワード・マークス

 二〇一一年、私は『投資で一番大切な20の教え――賢い投資家になるための隠れた常識』(日本経済新聞出版)という本を書いた。投資においては最も重要なことが一つだけということはないので、私は題名に幾ばくかの皮肉を込めたつもりであった。あらゆる投資判断には無数の要素が考慮されなければならず、そのプロセスも詳細かつ広範にわたるもので、系統的でもあり創造的でもあるべきだ。

 では、投資を志す者たちはどのようにしてこれらすべての要素について学び、それを自らの方法論に落とし込むことができるのだろうか。ジョシュア・パールとジョシュア・ローゼンバウムによる本書はその点で大いに参考になる。本書によって株式投資を志す者たちはあっという間に学習曲線を駆け上がり始めることであろう。

 簡潔に言って、本書ほど投資のプロセスについて完全かつ思慮に富んだオリエンテーションを提供する本を目にしたことがない。本書は、投資家が知っておかなければならないことに関する明快かつ論理的で、きちんと整理された簡潔な入門書である。本書はまず、投資候補を見いだし、その潜在力を評価することから始めている。そして、当該企業の財務状態を調査し、その事業の潜在力の評価へと進む。

 次に、見いだされた特性が株価に過大に反映されているか、それとも割安となっているかを評価するという重要な要素へと進む。

 さらに、投資家のポートフォリオにおいて株式が担い得る役割を見極める方法についての考えも示されている。本書は全体を通じてこれらの教訓を企業の実例を挙げて説明しているのだ。

 本書は、投資というシンプルとは程遠い分野のシンプルな入門書であると思う。投資という競争の厳しい分野において優れたパフォーマンスを上げるためには、最も経験豊富な投資家たちが熟知している基礎的な要素を押さえ、投資家がだれよりも深く理解する場合にのみ成功へとつながる多分に感覚的な事柄に精通することが求められる。

 読者はこの前者への取り組み方を学ぶことで、後者について自由に思いを巡らせることができるようになる。本書がやがて読者の進歩を促すであろうことを喜ばしく思っている。本書は下すべき判断を紹介するという素晴らしい仕事をしている。優れた判断を下す術を学ぶことは生涯を通じた魅力的な研究であることに気づくであろう。

(オークツリー・キャピタル・マネジメント共同創業者兼共同会長)


序章 本書は他の投資本とどこが違うのか

 お気づきであろうが、世の中には膨大な数の投資本が存在する。それらの多くは世界で最も偉大な投資家たちが記したものである。では、なぜわれわれの著書を読むべきなのだろうか。

 証券口座、ETF(上場投資信託)、投資信託、または年金積立制度などを通して、直接・間接にかかわらず、株式投資は今まで以上に普及している。それにもかかわらず、個人投資家の大部分は銘柄を選択する方法についてまったく訓練を受けておらず、基本的な金融リテラシーについては言うまでもない。そして、今日に至るまで、彼らの助けになるような、容易に入手でき、理解しやすい情報源が存在してこなかったのだ。本書はその真空地帯を埋めるために認められたものである。

 われわれの銘柄選択の枠組みが持つ簡潔さと使いやすさは本当にユニークなものだと考えている。現実世界の例やウォール街でプロたちが利用しているモデルを用いて、極めて論理的な進め方で一歩ずつ銘柄選択の方法を教授していく。われわれの目標ははっきりしている。つまり、最良のリスク管理手法をもってポートフォリオを守りながらクオリティーの高い銘柄を見つけるために必要なスキルを伝えることである。

 われわれの実践的なアプローチは、ともすれば威圧的ともなりかねない投資プロセスを分かりやすく説明する一助となることを目指している。このトレーニングによって、ほとんど目をつむって飛んでいるような多くの投資家から抜きん出ることができるようになるであろう。

 航空機パイロットはライセンスを得る前に広範な訓練が求められる。医師は医学部を卒業したあと、何年もの研修期間が必要となる。投資アドバイスを提供するプロたちでさえ認証を取る必要があるのだ。だが、まったくトレーニングを受けていなくてもだれでも株式を買うことはできるのである。直感で株式を買い、祈りの言葉を捧げても、生命の危険こそないかもしれないが、確実に自らの財政状態をリスクにさらすことになるのだ。

 ベストセラーとなった前著『インベストメント・バンキング(Investment Banking : Valuation, LBOs, M&A, and IPOs)』では、バリュエーションとコーポレートファイナンスに関する極めて実践的なことを書いた。段階を追って進めるわれわれのアプローチは幅広い読者の共感を呼び、二〇万部以上を売り上げ、今でも人気を誇っている。一冊目の本は主に投資銀行家に向けたものであったが、プロの投資家からも注目を集めたのだ。

 また、ウォール街のバリュエーション技術を理解したいと考えていた初心者投資家からも好意的な反応があった。人気銘柄について家族や友人から意見を求められない日はほとんどなかった。つまり、総体でFAANGと呼ばれる、フェイスブック(FB)、アマゾン(AMZN)、アップル(AAPL)、ネットフリックス(NFLX)、グーグルまたはアルファベット(GOOG)などについてである。人気の質問は、一株当たり一八四八ドルで取引されているAMZNと二〇五ドルのFBとの比較といったもので、株価がより安いFBは割安なのなのではないか、といった具合である。

 これは一つの例にすぎないが、この手の考え方が蔓延していることも本書を認めるもうひとつのインスピレーションとなった。ここで注意。AMZNとFBを利益やビジネスモデル、業績のトレンドやその他主たる指標ではなく、株価に基づいて比較する理由がよく分からない人にとって、本書は間違いなくふさわしいものである。そしてある程度は理解できるとしても、われわれの枠組みは次なるレベルへと成長する一助となろう。

 本書では、数多くの経験豊富な投資家の助けを借りて、銘柄選択のための簡潔な五つのステップを展開した。つまり、投資アイデアを集め、最良の機会を見いだし、デューデリジェンスを行い、バリュエーションを割り出し、そして最終的に実行か中止かの判断を下すわけだ。また、ポートフォリオ構築とリスク管理に関する主たる技術も織り込んでいる。成長の一助となるよう、われわれのウェブサイト(https://investinglikethepros.com/)に、現実世界のバリュエーションや財務モデル、ポートフォリオ管理のテンプレートを掲載している。

 われわれの五つのステップの枠組みは十分に反復可能で、ファンダメンタルズに基づくさまざまな投資スタイルに応用できる。最も注目すべきは、バリュー投資、グロース投資、GARP(妥当な価格のグロース株。魅力的なバリュエーションと終始市場の水準を超えるグロースの特性を示している企業群)、ロングオンリー、ロングショート、イベントドリブンまたはスペシャルシチュエーション、そしてディストレスにも適用できることだ。これらすべての投資戦略には、大きな上昇の可能性を秘めながらも、その多くが市場で誤解され、無視され、または過小評価されている銘柄を掘り起こすという共通の目的がある。

 投資プロセスを簡略化しようとするわれわれのアプローチは、議論の余地はあるのかもしれないが、今日これまでにないほど条件が平等になっていることに支えられている。歴史的に、情報の入手に関して機関投資家と個人投資家との間には大きな障壁があった。概して個人投資家は必要なデータをどこで、どのようにして入手するのかを知らなかったのだ。

 今日、より厳格な情報開示要件とテクノロジーの発展のおかげで、すべての投資家はこれまでにないほど容易に情報に接することができる。情報を確認し、調査し、そしてそれに基づいた投資判断を下すための強力なツールが一般に出回っているのだ。しかし、それらの使い方について適切な訓練を受けることが重要である。そこにこそわれわれの本の存在意義がある。言うなれば、市場で取引されている何千もの上場会社から機会を見いだすための枠組みである。

 われわれのテクニックをうまく適用するためには、現実世界で投資判断を下す経験を積みながら微調整を行うことが必要となる。時間をかけて独自のスタイルやアプローチを開発することになるだろうが、必然的に自らの職業人生や個人的な生活からアイデアを借りることになる。往々にして素晴らしい投資アイデアは日々の考察や夢中になっていることからヒントを得るものなのだ。やがて構築されるポートフォリオは、自らの教育や業界での経験、仕事以外の関心事や趣味を反映したものとなることであろう。では、特定の業界での経験があるだろうか。関心のある話題や業界または流行はあるだろうか。

 もちろん、これは一連のプロセスの始まりにすぎない。投資家として成功するまでの道のりはけっして容易ではない。次なるステップに進めるかどうかは、自らの多大な努力、判断、そして分析力にかかっている。また初めのうちは間違いを恐れてはならない。結果ではなく、プロセスを改善することに焦点を当てるべきだ。プロたちでさえ、うまくいった投資よりも失敗に終わったそこから貴重な教訓を学んでいる場合が多いのだ。

 パッシブ投資華やかなりし世界においては、アクティブ投資の美徳を見直す価値は十分にある。パッシブ投資とはまさにその名のとおり、善かれあしかれ、市場やセクターと同じパフォーマンスを上げることだ。このような投資目的は多くの者たちにとって好都合である。それゆえ、パッシブ投資が常にそこにあるものとなったのだ。だが、投資家の多くがより優れたパフォーマンスを求めており、それにはアクティブ運用が必要となるのである。

 パッシブ運用では、インデックスファンドやセクターETFに資本を配分するにあたり優れた銘柄もひどい銘柄も等しく取り扱う。常識に従えば、市場を上回るリターンを上げるためには勝者に照準を定め、敗者を回避しようとするのが優れたアプローチとなる。例えば、eコマースの発展を前に従来型の小売業は姿を消し始めているが、S&P五〇〇に連動するETFによってアンダーパフォームしているセクターに投資し続けることになる。それなら、なぜ自然な好奇心や知性、そして本書で紹介するツールを用いてより良い成果を上げようとしないのだろうか。

 ここで話を進める前に簡潔なただし書きを。われわれは複雑極まる投資の世界から要点を抽出しようとしているが、われわれにできるのは簡略化だけである。途中、基本的な用語でありコンセプトについては独自に調査したり、復習してもらう必要がある。これは基本的な会計や財務計算についても同じである。適切な投資は相当な努力が必要となるものであり、全力を挙げて取り組むことが求められる。しかし、潜在的な報酬は努力するだけの価値があるものだとわれわれは考えている。

本書の構造

 本書は、われわれの枠組みの五つのステップに合わせて五つの章からなっている。全体を通じて現実世界の例を用いることで、そこでのコンセプトに生命を吹き込んでいる。

●5つのステップ

  1. アイデアを創出する
  2. 最良のアイデアを見いだす
  3. 事業と財務のデューデリジェンス
  4. バリュエーションとカタリスト
  5. 投資判断とポートフォリオ管理

 われわれの主たるケーススタディは世界的な自動車部品メーカーのデルファイ・オートモーティブを軸としている。現在同社は二〇一七年一二月(二〇一七年一二月、デルファイ・オートモーティブはパワートレイン部門を非課税でスピンオフし、二つの独立企業へと分割された。パワートレイン部門はデルファイ・テクノロジーズと改名している。電装全般および電子部品部門とセキュリティシステム部門はアプティブと改名された。詳細は後述する)に行った非課税のスピンオフによって二つの会社に分割された。今日、それぞれアプティブ(APTV)とデルファイ・テクノロジーズ(DLPH)として別個に取引されている。

 本書を通じ、二〇一一年一一月のデルファイ・オートモーティブのIPO(新規株式公開)で投資家が直面した投資機会に焦点を当てている。当時から投資していた者たちは二〇一七年に同社が分割されるまでに資金を五倍近くに増やしている。われわれの枠組みを用いながら、時を戻し、この銘柄を発見し、分析し、価値評価し、そして祝福する一助となるプロセスを実証していきたいと思う。

 デルファイは、リストラクチャリングと事業再生の投資機会の教科書である。二〇〇五年に破産申請する以前、同社のビジネスモデルはバラバラで、費用構造も競争力がなく、また多額の負債にあえいでいた。デルファイは破産プロセスを生かして、製品ラインを合理化し、競争力のない事業を売却し、製造拠点をコスト効率の最も高い国(BCCs)へと移転したのである。デルファイの主要株主であったシルバー・ポイント・キャピタルとエリオット・マネジメントがこの再生劇で主たる役割を演じ、同社を生まれ変わらせるべくロッド・オニールCEO(最高経営責任者)や経営幹部たちと協力したのである。「新デルファイ」の再構成された戦略は技術、そして「安全、環境への配慮、相互接続(Safe, Green and Connected)」の三つのコアテーマを軸としていた。

 破産を脱したデルファイは集中特化した製品ポートフォリオ、世界的にも競争力のあるコスト構造、そして再建されたバランスシートを呼びものとしていた。また同社の株主は、価値創出の追及に極めて積極的な層が多かった。時間の経過とともに、これら主要な株主はデルファイの株式が上昇するにつれて自然と売り手に回ることになった。

 彼らの価値創出計画の一環として、これら主要株主たちは、上場会社のCEOたちや自動車業界のベテラン、そして経験豊富な領域専門家(例えば、テクノロジー、人事、資本市場、そしてM&A)からなる世界にも通用する取締役を召集した。デュポンの元会長にしてジャック・クロールCEOが取締役会会長に任命され、重要な役割を果たすことになる。タイコー・インターナショナルの筆頭取締役として同社の企業再建を成功裏に導いた彼の経験が、主要株主たちが彼を会長に選出した主たる要因であった。彼と同僚の取締役たちは経営陣と協力し、資本配分やIPOの準備、投資家との対話などの戦略を練っていった。

 また、デルファイは納税地がイギリスとなったために、税制面でも競争力を得ることになった。長期的な景気循環の追い風、堅牢なモート(堀)、改善された財務状態、そして魅力的なバリュエーションなど、要するに投資家が勝つための道筋が幾重にも存在したのである。もちろん考慮すべきリスクもたくさんあった。それでも何を求め、どのように取り組むかが分かれば良かったのだ。

 二〇一一年後半、デルファイは一株当たり二二ドルで公開した。その戦略はその後数年にわたって機能し続け、二〇一五年にオニールがその地位をCFO(最高財務責任者)のケビン・クラークに譲るまで続いた。その間、株主に大きな価値を創出すべく数多くの戦略的措置が取られ、最終的に二〇一七年に同社のパワートレイン部門が非課税でスピンオフされることとなった。

 デルファイが二つの会社に分かれる直前の二〇一七年末までに、同社株式は一株当たり一〇〇ドルを超えていた。デルファイのIPOでチャンスをとらまえた投資家は三七五%のリターンを得たことになる。これは、S&P五〇〇が一三%であった時期に年利三〇%を得た計算となる。

 銘柄選択に向けたわれわれの五つのステップは次なるデルファイ・オートモーティブを見つける一助となることを目指している。また、株式のポジションを管理する役に立つことを目指してもいる。例えば、二〇一八年、自動車市場は景気後退の兆候を示し始めた。後知恵での議論ではあるが、新たにスピンアウトしたパワートレイン事業のデルファイ・テクノロジーズは、その地理的転換に関連して自縄自縛に陥ることになった。われわれの初期警戒信号と能動的な監視システムはこのような落とし穴を回避する一助となるよう構築されている。ポジションを手放す、または縮小すべき時期を知ることは、いつポジションを取るか、また拡大するかを決定することに劣らず重要なのである。

ステップ1 アイデアの創出

 第1章のステップ1はプロの投資家がどのようにして投資アイデアを集めているかに焦点を当てる。このプロセスには多大な忍耐と規律が求められる。クオリティーの高い投資機会を見いだすまでに何十、いや何百もの企業を見直すことなど珍しいことではないのだ。  本書はボトムアップの投資、つまり魅力的な銘柄を見いだすために企業を第一とするアプローチに焦点を当てている。まずは個別企業に取り組み、そのビジネスドライバー、財務パフォーマンス、バリュエーション、そして将来の見通しと徹底した分析を行う。また、マクロ経済(マクロ)または特定のテーマに基づいて投資機会を探るトップダウンのアプローチについても議論する。主たるトップダウン戦略では、グローバル市場・国内市場やビジネスのトレンドやサイクルを見いだし、そこから利益を得る企業を買うことを主眼としている。反対にその被害者となる企業を回避したり、さらにはショートしたりもする。

 経験豊富な投資家は、自らのアプローチでボトムアップとトップダウンの要素を統合している傾向がある。ボトムアップの投資家についていえば、重要なマクロや大局的なトレンドに十分な注意を払わないことは危険である。同様に、成功するトップダウンの投資家が個別企業のファンダメンタルズ分析を無視することはない。

 ステップ1では、プロの投資家がアイデアを収集する一次情報源について議論する。われわれはまず財務面に改善の余地がある、またはより高いバリュエーションが得られるような割安な企業から始める。次に、合併買収(M&A)、スピンオフや事業売却、リストラクチャリングや事業再生、自社株買いや配当支払い、IPO、さらにはインサイダーによる株式買い付けなど、価値を増大させるようなコーポレートアクションに取り組んでいる企業に焦点を当てる。最後に、新しいアイデアを収集する役に立つよう、実績ある投資家を追跡する方法について説明する。

ステップ2 最良のアイデアを見いだす

 最初の調査ではたくさんの潜在的投資機会が出てくることが多い。第2章のステップ2では最良の投資アイデアを見いだすために広範なリストを解析する方法を説明する。ここでは、「コア」なポジションとなるアイデアに焦点を絞るために、個別銘柄を徹底して検証することになる。強力なポートフォリオを船出させるためにはクオリティーの高い銘柄が幾つかあれば十分なのだ。

 この選別作業には個別のアイデアを迅速かつ系統だった方法で高度に調査することが必要になる。そのために役に立つ枠組みを提供する。そこでは、投資テーマ、ビジネスモデル、経営陣、リスクと留意事項、そして財務とバリュエーションが中心となる。偽物と「本物」を見分けるためにはこの予備的な分析が必要なのだ。

 また、個別銘柄の調査を管理するのに役立つ投資メモのテンプレートも提供する。このテンプレートはわれわれのステップ2の枠組みを視覚化し、複数の企業を容易に比較することが可能となる。

 ステップ1で生み出された投資アイデアが多ければ多いほど、精査する作業は難しくなる。時には、一つのアイデアがポートフォリオのゲームチェンジャーとして飛び出してくるかもしれない。だが、たいていの場合、上昇する可能性が最も高いアイデアはそれほどはっきりしたものではない。明らかな外れ値を除外したら、残りの銘柄の徹底的な分析に取り掛かれることになる。

ステップ3 事業と財務のデューデリジェンス

 第3章のステップ3ではいよいよ選抜プロセスを生き残る投資機会をさらに掘り下げていくことになる。初期段階の投資に先立ち、さらに徹底的に事業と財務を調査する必要がある。言い換えれば、これは重要なデューデリジェンスの段階である。

 事業面については、企業のクオリティーが高いかどうか、または高いクオリティーを持つかどうかを判断する方法を説明する。これには、コアとなる強みだけでなく投資テーマを台無しにしかねないリスクの検証も含まれる。この作業の多くが定性的なもので、健全な判断と洞察力が求められる。ここでは、特定のビジネスモデルや業界での経験や知識がとりわけ役に立つ。個人的な興味や見立てもまた役に立つかもしれない。

 財務面では、企業のトラックレコード、健全性、そして見通しを判断するために主要な財務諸表を徹底的に洗う必要がある。この分析では主要な財務数値を観察し、正当な答えを求めることがその多くを占めることになる。さらに、成長性や利益率、フリーキャッシュフロー(FCF)またはバランスシートに関連する重要な弱点を正確に把握することが求められる。また、財務計画モデルの構築方法を示すが、これは第4章のステップ4のバリュエーション作業の基礎となるものである。

 もし事業や財務面に安心できないのであれば、その投資はおそらく不適切なのだ。それはそれで問題ない。理解できない、または信頼できない事業に投資したいとは思わないであろう。そして、劇的な改善が望めない脆弱な財務状態の企業に投資したいとは思わないであろう。

ステップ4 バリュエーションとカタリスト

 第4章のステップ4では、投資プロセスの主たる構成要素といえるバリュエーションに目を向ける。ここでは、どの企業に価値があるか、割安か割高か、再評価の「カタリスト」となるものがあるかどうかを判断する必要がある。事業と財務のテストを見事通過した銘柄もバリュエーションのテストには失敗するかもしれない。言い換えれば、現在の株価水準では割高すぎて魅力的なリターンが生み出せないかもしれないのだ。これは「会社は良いが、株式は悪い」罠である。

 この章では、あらゆる株式分析のコアとなる主要なバリュエーション手法を教授する。それには、類似会社法や割り引きキャッシュフロー法といった、市場価値や本源的価値の算出方法が含まれる。また、前例分析、LBO(対象企業の資産を担保とした借入金による買収)分析、または希薄化分析などのM&Aに関連するバリュエーション手法についても議論する。サム・オブ・ザ・ザーツや純資産価値といったもっと微妙な手法もスキルセットの締めくくりとして紹介する。

 これらツールの組み合わせを用いることで特定の銘柄の目標株価(PT)が定まるわけだが、それが最終的な投資判断を下すうえで重要となる。さらに、株式の隠れた価値を解き放ち、再評価を促し得る一般的なカタリストについて概説する。進展する経営戦略の一部のような内生的なカタリストもあれば、株主によるアクティビズムや規制の変更が引き金となる社内の出来事がカタリストになるかもしれない。カタリストの主たるものには、予想を上回る業績、M&A、資本還元、借り換え、CEOの変更、そして新製品の導入などがある。

ステップ5 投資判断とポートフォリオ管理

 魅力的な投資アイデアを見いだし、デューデリジェンスを行い、当該企業にどれだけの価値があるかを検討した。これらすべてによって最も重要な目標株価が判明した。いよいよ、最終的な投資判断を下すときである。その銘柄は買いか、売りか、要観察か、もしくは見送りか。

 買いか売りかの判断を下しても、仕事はそれで終わりではない。引き続き、ポジションを継続して監視しなければならない。新たな展開によって当初の投資テーマが善かれあしかれ大きく変わってしまうかもしれないのだ。効率的な監視を行うには、定期的な見直し、分析、そして基調となる事業に影響を与えかねない出来事の演繹的推理などが必要となる。

 安定したポートフォリオを構築するために必要となるスキルは銘柄選択にとどまらない。特定の投資目的、戦略、そしてリスク許容度に合わせた銘柄群を選び出さなければポートフォリオ構築は成功しない。つまり、適切な規模のポジションを取り、またそれに優先順位をつけるということである。全体のクオリティー、値上がり期待(可能性のあるカタリスト含む)、そして確信度という点でほかの銘柄よりも上位にランクされる銘柄で大きなポジションを取ることになる。

 規律ある投資家はリスク管理手法を用いることで自らのポートフォリオを最適化し、下落リスクをヘッジしている。その主たる手段としては、イクスポージャーの水準に上限を設けること、また損切りや利益確定の基準を設けることなどがある。イクスポージャーの水準では、とりわけ個別のポジションの規模、セクターの集中度、地理的な集中度などに目を向けることになる。またヘッジやポートフォリオのストレステストに関する基本的なテクニックも教授する。


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