『トレードシステムの法則
検証での喜びが実際の運用で悲劇にならないための方法』
2014年4月発売/A5判 ハードカバー 366頁
ISBN978-4-7759-7186-4 C2033
定価 本体7,800円+税
著 者 キース・フィッチェン
監修者 長尾慎太郎
訳 者 山下恵美子
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著者キースフィッチェンの 開発した売買システム 「アベレーション」の成績
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このことをだれよりも理解しているのは、トレードシステム開発の第一人者であるキース・フィッチェンだ。彼が開発した不動の人気を誇るアベレイションシステムは、『フューチャーズ・トゥルース』誌の「史上最高のトレードシステムトップ10」の常連だ。25年以上にわたり実績のあるシステムを開発し、彼自身それらのシステムを使って活発にトレードしてきたフィッチェンは、トレードの豊富な経験を読者のみなさんと共有したいという思いで本書を執筆した。
本書は、トレード戦略によってどういったことが達成可能かという現実的な話から始まる。世界の最も優れたマネーマネジャーたちの過去5年にわたるパフォーマンスに始まり、トレード戦略のパフォーマンスを最もよく特徴づける統計量、個人的なリスク許容量に合った「トレーダブルな戦略」を構成するものは何かを定義するうえで手助けとなる一連の質問のほか、戦略開発における最大の問題の1つであるカーブフィッティングについても議論する。さらに、「Build, Rebuild, and Compare」(構築、再構築、比較)、またの名をBRACテストとも言う独特の手法も紹介する。BRACテストは戦略開発におけるカーブフィッティングの度合いを知るための方法だ。
本書の後半では2つのトレーダブルなシステムを開発する。1つは株式用の短期スキャルピングシステム、もう1つは商品用の中期トレンドフォローシステムだ。これらのシステムを開発しながら、仕掛け、手仕舞い、トレードフィルターについても議論する。これら2つのシステムは両方とも現状のままでも「トレーダブル」だが、株式や商品の大口口座から小口口座まで、さまざまなリスク・リワード特性に合わせて調整するためにはあるテクニックが必要になる。それがマネーマネジメントテクニックだ。また、株式戦略や商品戦略を単独でトレードするよりも一緒にトレードしたほうが効果的であるため、両方の戦略を一緒にトレードするためのマネーマネジメントも開発する。 本書の戦略についてもっと詳しく知りたい人は、両方のシステムのトレードをウェブサイト(http://www.keithstrading.com/)で閲覧できる。
真剣なトレーダー向けに書かれた本書は、BRACテストからバースコアリングまで、ほかでは入手不可能な情報が満載だ。本書を読めば優れたリターンを達成するうえで優位な立場に立つことができるはずだ。
序文
第1章 トレーダブルな戦略とは何か
第2章 バックテストと同様のパフォーマンスを示す戦略を開発する
第3章 トレードしたい市場で最も抵抗の少ない道を見つける
第4章 トレードシステムの要素――仕掛け
第5章 トレードシステムの要素――手仕舞い
第6章 トレードシステムの要素――フィルター
第7章 システム開発ではなぜマネーマネジメントが重要なのか
第8章 バースコアリング――新たなトレードアプローチ
第9章 「厳選したサンプル」のワナに陥るな
第10章 トレードの通説
第11章 マネーマネジメント入門
第12章 小口口座のための従来のマネーマネジメントテクニック――商品
第13章 小口口座のための従来のマネーマネジメントテクニック――株式
第14章 大口口座のための従来のマネーマネジメントテクニック――商品
第15章 大口口座のための従来のマネーマネジメントテクニック――株式
第16章 株式戦略と商品戦略を一緒にトレードする
付録A――各種公式
付録B――先物
付録C――つなぎ足
付録D――カーブフィッティングの例
まず、ファンダメンタルズアプローチの運用手法では演繹法によってその確からしさが主張されている。アカデミックな経済理論などに基づく少数の公理から出発して推論を展開し、その運用手法の正しさを聞き手に納得させようとするのである。それらの公理は人々にとってなじみのあるものなので、その正当性が疑われる機会はあまりない。疑義が生じるのは、その戦略を使ってもまったく儲からないことが判明してからである。また、仮説的推論による論証は、ヘッジファンドをはじめ一部の機関投資家によって近年利用されている強力な論証法である。この成功例は、『続マーケットの魔術師』(パンローリング)に登場する運用者たちにいくつも見ることができるが、初心者がいきなり取り組んで簡単にできる種類のものではない。
一方で、帰納法による論証は、プロセスとしてはそれほど複雑ではない。マーケットのデータと統計解析の知識さえあれば、だれにでもすぐに取り組むことができる。だが、残念ながらこれまでのところ、データマイニングや過去の検証といった方法を用いて信頼できるシステムの構築に成功した例は、トレンドフォロー手法などの一部の例外を除いて存在しない。ここで、システムが正しいことを帰納法によって証明しようと思えば、あらゆる環境下・条件下で普遍的にそれが正しいことを示す必要がある。それは厳密には神にでもならなければできないことである。またすべてのトレードシステムは、必然的に最適化を伴う。このため、多くの解説者は自分のシステムに都合の良い事例のみを数点取り上げることで正しさを示したつもりになってきた。もちろんそれが真に正しいはずもなく、そういった欠陥のあるシステムをドローダウンやアンダーパフォームの時期を乗り越えて使い続けることは、製作者自身にもできないことであった。
したがってこれまでは、信頼できる方法論としては、「帰納法による新事実の発見」と「経験則による演繹法」を組み合わせた方法があるのみであった。だが、フィッシェンは、本書において、先行研究のレビューと網羅的な検証を組み合わせることで、かなりの程度まで帰納法による論証に成功している。こうしたスタイルによるトレードシステムの解説は、一般投資家を対象にしたものとしては非常にまれなものであるが、「アベレイション」の大成功はこの新しいアプローチの堅実さと革新性を示していると理解してよいのではないか。
翻訳にあたっては以下の方々に心から感謝の意を表したい。山下恵美子氏は正確かつ迅速な翻訳を行っていただいた。そして阿部達郎氏にはいつもながら丁寧な編集・校正を行っていただいた。また、本書が発行される機会を得たのは、パンローリング社の後藤康徳社長のおかげである。
カーブフィッティングは少なすぎるトレードサンプルで戦略を開発しようとするときに発生する。カーブフィットしたシステムはトレーダブルなシステムの2番目の特徴に影響を及ぼす。つまり、カーブフィットしたシステムは現実の世界ではバックテストのときほどうまくいかないということである。あなたが購入するシステム開発ソフトのほとんどはワンチャートパラダイムを内包している。つまり、1つの
チャート上のただ1つのトレーダブルな商品から多くのデータを抽出し、それをもとにその商品をトレードするための戦略を開発するということである。開発した戦略が何百というトレードを生みだしても、それは大きくカーブフィットされた戦略以外の何物でもない。第2章ではカーブフィッティングをより詳しく検証し、カーブフィッティングを最小化するために十分なトレードを生成するための方法を示していく。これには事例と統計学を使いる。また、システム開発においてカーブフィッティングの度合いを知るための簡単なプロセスを紹介する。ほとんどの戦略は過度にカーブフィットしているため、失敗するか市場平均を下回るパフォーマンスしか上げられない。成功を目指すのなら、カーブフィッティングを最小にする方法を知ることが重要だ。
本書の後半では2つのトレーダブルなシステムを開発する。1つは株式のための短期スキャルピングシステムで、もう1つは商品のための中期トレンドフォローシステムだ。これらのシステムの開発とともに、仕掛け、手仕舞い、トレードフィルターについても詳しく解説する。これらのシステムは2つとも現状のままで「トレーダブル」なものだが、これらのシステムをさまざまなリスク・リワード特性に合わせて調整するためにはマネーマネジメントが必要になる。マネーマネジメントについては5つの章にわたって説明する。私は小口口座のトレーダーと大口口座のトレーダーとは区別する。小口口座のトレーダーはほんのわずかでも逆行トレードを出せば、追証が請求される。1枚以上のリスクをとれば口座サイズの10%あるいは20%にもなるため、彼らは資産の成長を最適化するサイジングテクニックを活用することができない。小口口座のトレードテクニックを使った株式システムと商品システムのためのマネーマネジメントは2つの章にわたって解説する。同様に、大口口座のトレーダーのためのマネーマネジメントについても2つの章にわたって解説する。最後に2つのシステムを一緒にトレードするときのマネーマネジメントについて解説する。表P.1は株式戦略と商品戦略を一緒にトレードしたときのパフォーマンスを示したものだ。
本書にはほかでは見られない情報が満載だ。特に注目してもらいたいのがバースコアリングで、これについては第8章で解説する。バースコアリングはそれぞれの足の潜在的利益をユーザー定義の基準に基づいて特徴づける面白くて斬新な方法だ。
第9章と第10章は文献でよく見られるトレードにおける主張とトレードの格言について見ていく。
本書で開発したシステムのトレードステーションのイージーランゲージのコードと日々のシグナルについては関連するウェブサイトから入手可能だ。
監修者まえがき
本書は、トレードシステムの「アベレイション」(Aberration trading system)の考案者として有名なキース・フィッシェンが著した “Building Reliable Trading Systems”の邦訳である。一般的にトレードシステムの開発においては、その過程で、システムが拠って立つ考え方が正しいことの論証が必要である。それが製作者の単なる思い付きや虚語でないことが確認できなければ、継続して使用することはできないからである。そして、通常その論証の方法は、(1)演繹的方法(Deduction)、(2)帰納的方法(Induction)、(3)仮説的推論(Abduction)――の3種類しかない。本書は、このうち帰納法による論証を試みためずらしい相場書なのである。
2014年3月
序文
本書はトレーダブルな戦略の開発方法について書かれたものだ。トレーダブルな戦略とは、自分のリスク・リワード目標に一致し、実際のトレードでもバックテストと同様のパフォーマンスが得られる戦略のことを言う。しかし、さまざまな落とし穴が待ち受けているため、トレーダブルな戦略を開発するのは容易なことではない。私たちは貪欲で、大きなリターンが見込まれるものをトレードしたがる。大きなリターンを得るためにはドローダウンという名の大きなリスクを伴うことは百も承知だと私たちは思っているが、実際はというと、20%のドローダウンに耐えられるトレーダーはほとんどいない。現実的なリスク・リワード目標を設定するために、第1章では世界で最も優れたトレーダーたちの過去5年にわたる実際のパフォーマンスを提示する。第1章を読んだあと、あなたにとってのトレーダブルなシステムの特徴を書き出してみることをぜひともお勧めする。まずは、最大ドローダウン、平均年次最大ドローダウン、資産が高値を更新してから次に高値を更新するまでの最長期間という形でリスクを考えてみよう。最初の落とし穴は貪欲だ。貪欲は戦略開発のあらゆる段階で姿を現す。あなたは、たとえそれがリスクを高めるルールであっても、利益を高めるルールであれば採用したいと思うはずだ。しかし、さらに大きな落とし穴はカーブフィッティング(こじつけ)である。
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