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ウィザードブックシリーズ Vol.311

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ウォール・ストリート・ストーリーズ ウォール・ストリート・ストーリーズ
投機家たちのオンリーイエスタデー

著 者 エドウィン・ルフェーブル
監 集 長岡半太郎
訳 者 田中陸

2021年3月発売/四六判 254頁
定価 本体 1,800円+税
ISBN 978-4-7759-7275-5 C2033

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著者紹介目次

ルフェーブルのデビュー作『欲望と幻想の市場』外伝
なぜ人は相場に魅了され、翻弄されるのか?
19世紀の相場師の悲喜こもごも!

本書は、希代の相場師ジェシー・リバモアの一生を描いた『欲望と幻想の市場』(東洋経済新報社)の著者、エドウィン・ルフェーブルのデビュー作である。20世紀最初の年に刊行された本書は、のちの投資フィクション界に金字塔を打ち立てた『欲望と幻想の市場』の文学的素養を十二分に感じさせるものとして、今でも多くの人に読み継がれている。

本書は、19世紀末のウォール街を彩った実在の人物をもとにした8つの物語から成る短篇集である。当時の投資業界の習慣、仕手戦、インサイダー取引、株価操作など、何でもありだった時代の内情が、一流の金融ジャーナリストによる筆と、投資家としても成功していたルフェーブルの深い取材力によって見事によみがえっている。

本書に登場する架空の人物は、投資家兼取引所会長兼馬主のジェームズ・ロバート・キーン、銀行家兼ブローカーのエルバートン・R・チャップマン、投機家から絶大な支持を集めたニューヨーク州知事兼下院議員のロズウェル・ペティボーン・フラワー、鉄道会社や証券会社の役員を務めたあと鉄道株の仕手筋として活躍したダニエル・ドリューたちで、実際の本人に極めて近いポートレートになっている。彼らは皆、当時のウォール街では有名な大物相場師で、現代で言えば、投資に興味のない人でも知っているウォーレン・バフェットやジョージ・ソロスやカール・アイカーンやジェームズ・シモンズやジュリアン・ロバートソンたちのような投資家たちである。

本書を読み終えたとき、まもなく訪れる1920年代の熱狂とその後のバブル崩壊による大恐慌の萌芽が、20世紀初頭のウォール街にすでに存在していたことを、鋭い読者なら感じ取るだろう。


著者紹介

エドウィン・ルフェーブル(Edwin Lefevre, 1871〜1943)
アメリカ人のジャーナリスト、作家、外交官で、ウォール街に関する著作で知られる。パナマ生まれ。19歳でジャーナリストとしてのキャリアをスタートし、金融ライターとして活躍した。のちに株の仲買人になった。父親の遺産を受け継ぎ、投資家としても活躍した。ジェシー・リバモアを描いた『欲望と幻想の市場――伝説の投機王リバモア』(東洋経済新報社)は投資本のなかでも高い評価を得て、各国で翻訳されている。

目次

女性と債券
テレビン油の暴落
予想屋
情け深いささやき
勝った男
失われた機会
山の頂上か破滅か
神学的な予想屋

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立ち読みコーナー

■山の頂上か破滅か

 金髪でバラ色の頬と女の子のような青い目をした彼がトレイシー&ミドルトン・バンカーズ・アンド・ブローカーズの求人募集に応募したとき、まだ一七歳だった。彼の名前はウィリス・N・ヘイワード。二〇人の「応募者」から選ばれて電話係になったときは実に誇り高き少年だった。

 午前一〇時から午後三時まで、彼は証券取引所のフロア(立会場)にあるトレイシー&ミドルトンの電話のそばに立ち、オフィスからの連絡―主に顧客のための株式の売買注文―を受け、同じ連絡を会社の「取引所会員」のミドルトン氏に伝え、ミドルトン氏の報告をオフィスに電話した。彼は柔らかくて繊細な声で話し、青い目をした彼がブースの同じ列にいる他社の電話係たちに無邪気に笑いかけるため、彼らはブースを路(アレー)地に見立て、昔から歌われていた「サリー・イン・アワー・アレー」から彼にサリーというあだ名をつけた。

 興奮してあちこちへと急ぐ不安そうな人々、必死に振られる手、さまざまなポストの注文を執行するブローカーたちの叫び、そして彼らが売買した株の価格を書き留めるときに突然正気に戻る様子―これらすべてが、寄宿学校を出てから数カ月しかたっていない若きヘイワードにとっては鮮烈な出来事の連続だった。彼らがどのように仕事をしているのかを理解できなくても、驚きはなかった。しかし、彼がもっとも強い印象を受けたのは、この騒いだり身振りを交えたりしているブローカーたちが実際に大金を稼ぐということを同僚たちが教えてくれたことだった。彼は、「サム」・シャープがサブアーバン・トローリーで一〇万ドル儲けたことや、「パーソン」・ブラックがウエスタン・デラウェアで一〇〇万ドルを当てたという有名な話を聞いた―裏づけとして、背の低い白髪の男のことも教えてくれた。しかしそのあと、彼はアラジンと魔法のランプやジャックと豆の木のことも聞いた。

 ウォール街で働く多くの少年がそうであるように、彼も真綿が水を吸い込むように仕事を覚えた。彼が質問をすればすぐに答えが返ってきたが、だれも彼への助言として進んで情報を与えようとはせず、彼は自分を守るためによく観察し、ほかの人々がどのようにしているかを見て、その結果に気づくようにしなければならなかった。彼が耳にするのは、さまざまな形の「張れ! 張れ!」という声、つまり同じ意味を持つたくさんの言葉だった。それはすべて株の買いか売り―あっという間に大金を稼ぐことができるという、強い明確な望み―だった。取引所では、だれも儲けの話しかしなかった。親しい友人たちは始業時に会っても「おはよう」とも何も言わず、前置きもなしにこの世で唯一のテーマ(投機)に取り掛かった。そしてそのうちの一人が遅れてやって来ると必ず、「相場はどうだ?」とすぐ尋ねた。彼のいなかった間に不正が行われたのを恐れているかのように、しきりに心配して尋ねるのだった。株の買いや売りを促す数えきれないほどの「耳寄り情報」のせいで、ほとんど呼吸ができないほどだった。ブローカーも顧客も職員も取引所の門衛も、ウォール街の人々はみんな、ニュースを確かめるためではなく、株価に影響を与えそうな、もしくは影響を与えるはずの、あるいは影響を与えるかもしれない情報を探すために朝刊を読んでいた。神の代わりにティッカーテープが存在し、ブローカーがその予言者だった。

 サリーの周りにいたのは、自分の相場観を持って帰り、それと一緒に食事をし、そして眠り、その夢を見ているような何百人もの人々だった。それは毎日繰り返され、変わることがなかった。そして、彼は至るところでその「ゲーム」の熱狂を見た。その場の空気は彼にも気づかないような影響を与え、彼の考えに影響を及ぼし、ある種の幻想を引き起こした。彼は仕事を覚えるにつれて、多くの若者たちや相場を張らない大衆と同じように、株式市場の動きはルーレット盤の周りを回る象牙の球にすぎないと信じるようになった。無数の取引技法やインサイダーの偽情報の利用、株式市場の操作の原理は、彼にとって謎以外何ものでもなかった。彼が聞いたのは、一八歳の仲間が木曜日にブルー・ベルト・ライン二〇株を六〇ドルで買い、土曜日に三と八分の三ドル高く売ったという話や、スチュアート&スターンの電話係のミッキー・ウェルチが大物ルームトレーダーの一人から「情報」を得て、競馬に「賭け」たりトランプの赤と黒に「賭け」たりするように、大胆にそれに「賭け」、一週間もしないうちに一二五ドル儲けた話や、「二ドル」ブローカーのワトソンがサザン・ショアを売って「良い動き」をとらえたという話だった。そのほかには、ニューストリートの門衛の一人であるチャーリー・ミラーが「サム」・シャープのブローカーであるアーチー・チェイスが友人にペンシルベニア・セントラルが一〇ドル上がる方向に向かっていると「雇い主」が言っている、と話すのをたまたま小耳に挟んだあとにその株を買ったが、実際には七ドル下がって二三〇ドルを失ったという、痛快な損失話を聞いた。少年はいつも、偶然に正しい予測ができた人々の儲け話や、「正しい予言」ができずに損失を出した人々のいいかげんな「上昇」と「下落」についての話を聞いていた。相場特有の言葉には、賭博場の専門用語のような雰囲気があった。

 時間がたつにつれて、そのゲームの魅力は失われていった―彼の罪悪感と同じように。彼の雇い主と顧客―だれもが紳士的で感じの良い人々だった―は毎日投機売買をしており、だれも彼らに文句をつけることはなかった。それは罪ではなく、正規の商売だった。そして、「良いこと」があると、彼はいつも電話係の「投機プール」に一ドルを「賭け」、あとでその資金で一〇株までの範囲でニューストリートの闇取引業者で取引を行った。彼の資産は少なく、給料は週にたったの八ドルだった。そして彼はよく、もう少し資金があればもっと大きく張って、それに比例して利益を出すことができるのにと考えていた。もしもこれまで一株買っていたのを二〇株買うことができていれば、三カ月で四〇〇ドルも稼ぐことができていたと彼は胸算用していた。

 少年がそのように考え始めたころ、ほかのことに関心が移っていた。投機に対する罪の意識がなかったため、彼の問題は「投機は悪いことなのだろうか」ではなく、「利益を目的として張るためにはどうするべきだろう」ということになった。彼がこのように考える段階に達するまでに四カ月近くかかった。多くの少年たちと共にこの疑問を持ち、三週間のうちに満足のいく解決策が見つかった。しかし、ヘイワードは例外的に立派な男だった。

 さて、電話係の仕事は機転が利くだけでなく、信頼できる人物に任される必要があるという点で、とても重要だった。第一に、電話係は彼の会社がある株を買っているのか売っているのかを知る立場にある。電話係が注文を受けたときに、たまたま会社の取引所会員がいなければ、彼はその発注について判断しなければならない。

 例えば、インターナショナル・パイプが一〇八ドルで売られているとする。それを一〇四ドルで五〇〇株買ったトレイシー&ミドルトンの会社にいる人物が、利食いをしたいと考えている。彼は仮に「成り行き」で、つまりそのときの市場価格でその株式を売るように会社に注文を出したとする。トレイシー&ミドルトンはすぐに証券取引所につながる専用回線で、「インターナショナル・パイプを成り行きで五〇〇株売るように」と取引所会員に電話で伝える。電話係はその連絡を受け、ミドルトンの番号を「掲示」する。つまり、ニューストリートの壁のフリーズにある色とりどりのチェック柄の帯に、ミドルトンの番号である六一一が電子機器を介して現れる。

 ミドルトンは、自分の番号が「上がって」いるのを見ると、何が求められているのか確かめるために電話ブースへと急ぐ。ここで、ミドルトンが番号に反応するのに遅れると、電話係は彼が不在であることを知り、いつも注文を探してブースの周りをうろついているブラウニングやワトソンのような「二ドル」ブローカーに注文を出す。ミドルトンがほかの注文を執行するのに忙しいときや、注文をすぐに執行する必要があると判断したときも、彼は同じようなことをする。二ドルブローカーはアレン&スミスにインターナショナル・パイプ五〇〇株を売り、その取引についてトレイシー&ミドルトンのことを「打ち明ける」。

 つまり、彼はトレイシー&ミドルトンの代理をしているということを買い手に通知し、アレン&スミスはその会社(実際の売り手)に買った株式を求めなければならない。このサービスでトレイシー&ミドルトンが雇ったブローカーは一〇〇株当たり二ドルを受け取る一方で、もちろんトレイシー&ミドルトンはいつもどおり顧客に八分の一%の手数料、つまり一〇〇株当たり一二・五〇ドルを請求する。

 若きヘイワードは仕事に熱心に取り組み、ミドルトンがフロアにいないときや忙しいときは、会社が電話で伝えてきた売買の注文を二ドルブローカーたちに公平に割り振った。トレイシー&ミドルトンは実際、とても良い手数料商売をしているのだ。ヘイワードは容姿も振る舞いも良い、かわいげのある男だった―清潔感のある顔をしていて、礼儀正しく、親切だった。ブローカーたちは彼が好きで、クリスマスには彼に贈り物をした。最高の記憶は、彼に二五ドルくれた「ジョー」・ジェイコブスが持ってきた話で、彼はトレイシー&ミドルトン以上のものをこの会社に対してしたいと思った。


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