テレビの催眠術では、被験者を催眠に誘導して「あなたは自分の名前を忘れる」という暗示を与えると、被験者は自分の名前を思い出せなくなります。
それなのに、恋人にフラれて立ち直れなくなっている女性に「あなたの記憶から彼の思い出がすべて消えてなくなります」といった暗示を与えても、一瞬だけそんな気持ちになるだけで、彼の思い出が消えてなくなることはありません。
これはなぜでしょうか…?
もちろん、テレビの催眠術がヤラセというわけではありません。
この、テレビの催眠術やステージ催眠のような、催眠の上辺だけを利用したパフォーマンスと、相談者の問題を解決する本当の催眠療法では本質的な部分がまったく違っているのです。
正しい催眠療法を行うためには、催眠の本質を理解する必要があります。
ただ、著者が正しい催眠を主張すると、「催眠に正しいも間違っているもない。いろんなやり方があっていいんだ」と言う人がときどきいたりします。でも、催眠は技術ですから、正しいやり方がちゃんと存在しているのです。
正しく誘導しなければ催眠に導入できる確率が著しく落ちますし、催眠療法で誤った施術をしてしまうと、相手を傷つけてしまったり、壊してしまうことだってあるのです。交通ルールの知識が間違っている人や、運転技術の未熟な人が公道で車を運転すると事故に遭う可能性が高くなるのと同じです。
現在、世の中に広まっている催眠療法(ヒプノセラピー)は、催眠の本質を無視したやり方になっており、相談者を催眠状態に誘導して、悩み事を解決する暗示を与えれば、たちまち問題が解決するといった、いわばテレビの視聴者目線の催眠が蔓延しているのです。
生き辛さに悩まされている相談者に、「あなたは楽に生きる自分を創造主からダウンロードします」などと暗示を与えても効果などありませんし、不安症の相談者に、「あなたは安心して毎日を過ごせます」などと暗示を与えても安心して過ごせるようになることはないのです。本当の催眠療法はこんなふうに催眠を使ったりはしません。
では、なぜこのような間違った催眠療法が世界中に広まってしまったのでしょうか…?
それは、催眠の先進国の団体が、資格ビジネスやフランチャイズビジネスのために、セリフを暗記するだけのセラピストの育成教育を行っているからです。
催眠療法は理論と技術を学べば誰でも習得できますが、セリフを覚えるだけの練習で催眠療法士になることなどできないのです。
そもそも、催眠状態で与えた暗示は、一時的なパフォーマンスを引き起こすだけで、相談者が抱える問題を解決することなどできません。催眠療法には正しい催眠の使い方があるのです。
また、催眠療法は、スピリチュアル的なものではなく、人間の心と脳の自然な働きであり、心理学と脳科学に裏付けされたれっきとした心理技術です。前世療法などといった、極めて危険なものとは一線を引くものです。
すべて「外国の大きな団体が教えている催眠だから」という理由だけで、疑いもなく、間違ったやり方が世界中に拡散されているのです。
最近では、天才催眠療法士とうたわれた、あのミルトン・エリクソンの催眠までもがビジネスに利用されている始末です。これも「催眠の先進国の団体が教えている催眠だから」というだけでまかり通ってしまうのです。
催眠の間違った使い方をしていては催眠療法士としては務まりませんし、催眠の本質を知らずして相談者の問題を解決することなど絶対にできません。
本書は、世界中に広まる間違った催眠の使い方と危険性に警鐘を鳴らし、正しい催眠療法のやり方を解説しています。
第1章では、催眠状態や催眠の全体像を把握していただき、読者に本物の催眠を身につける準備をしていただきます。
第2章では、催眠誘導の方法を古典催眠と現代催眠に分けて、どちらも習得できるように解説しています。催眠術のかけ方においては、初学者に対する基本から、すでに催眠を身につけている人へのアドバイスまで、催眠の導入技法を詳しく解説しています。
第3章では、催眠にかかる場合と、かからない場合は何が影響しているのか? その要因をひとつずつ詳しく説明していきます。催眠の成否を分ける要因を知ることで、催眠を成功させるためのスキルアップになるはずです。
第4章では、催眠療法の代表的なメソッドの数々を実例を挙げて解説していますので、実際に結果を出す催眠療法がどのようなことを行っているのか把握できると思います。
第5章では、生きづらさをうったえるクライアントにどのようなアプローチをしているのか、いくつかの手法を紹介しています。この章により、催眠の知識がなかった人も、すでに催眠療法士として活動している人も、その使い方と催眠療法に対する視野が大きく広がることでしょう。
第6章では、現代催眠の父と云われたミルトン・エリクソンの臨床例を基に、いままで難解とされてきたエリクソン催眠の実態について述べています。
本書は、催眠療法士や催眠術師の方にとって、実践を根本から見直すきっかけとなるでしょう。催眠に興味を持つ一般の方には、催眠の奥深さと本当の力を知る機会となるはずです。過去に催眠療法で効果を感じられなかった方には、「本物の催眠」を知ることで新しい希望が見えてくるかもしれません。
本書は、初学者にとっては安全で現実的な出発点となり、経験者にとっては既存の常識を疑い、すでにお持ちのスキルを効果的に適応させる方法を知るきっかけとなるはずです。
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