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ウィザードブックシリーズ Vol.317

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パーフェクト証券分析 パーフェクト証券分析
株式投資でリターンを向上させるための基本ガイド

著 者 ポール・D・ソンキン、ポール・ジョンソン
監修者 長岡半太郎
訳 者 藤原玄

2021年7月発売/A5判 574頁
定価 本体 5,800円+税
ISBN978-4-7759-7286-1 C2033

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著者紹介目次

企業の本質的価値算出の最高の解説書
グレアムが教え、バフェットが学んだコロンビア大学流株式投資のススメ
完璧な銘柄の選択法!

 ウォール街では基本的に調査アナリストのトレーニングというものは存在せず、その結果、新人のアナリストは試行錯誤の苦難のプロセスを通じて自らの専門性を磨き上げなければならないという「厳しい試練」を強いられる。ソンキンとジョンソンは、この欠陥を補うために、投資のプロとしてのキャリアを歩み始めた者たちに向けた究極の「サバイバル」ガイドを著した。

 サバイバルで最も重要な要素の1つが、恐怖を払いのけてくれる知識を充実させることである。そしてウォール街では、幸運は用意された心のみに宿るのだ。本書は学習のプロセスを早め、大学やMBA(経営学修士)の学生たちが就職面接で投資アイデアの提案をするにせよ、銘柄選択コンテストに参加するにせよ、成功するために必要となるエッジ(優位性)をもたらしてくれる。

 また、ソンキンとジョンソンは考え方が柔軟で、経験豊富な投資のプロたちを居心地の良い場所から引っ張りだし、よく知られたコンセプトを考え直すよう挑発もしている。最も成功しているベテランでさえ、後輩のファンドマネジャーに出し抜かれることを心配しなければならない業界において、本書は最高投資責任者や調査部長に新しいツールを提供し、彼らの分析プロセスを引き締め、組織内のコミュニケーションと効率性を劇的な改善を可能にしてくれるだろう。

 本書は、ファンドマネジャー、アナリスト、銀行家、企業経営者、セールスパーソン、学生たち、そして個人投資家に自らのパフォーマンスをより早く改善させる方法を伝える唯一の書である。つまり、本書は株式市場で勝つためには欠かせない基本ガイドである。


著者紹介

Pitch the Perfect Investment : The Essential Guide to Winning on Wall Street by Paul D. Sonkin and Paul Johnson
ポール・D・ソンキン(Paul D. Sonkin)
GAMCOインベスターズおよびガベリ・ファンドのアナリスト兼ファンドマネジャーで、TETON・ウエストウッド・マイティ・マイツ・ファンドの共同ファンドマネジャー。ソンキンは25年以上にわたり、小型株、マイクロチップ、ナノキャップの調査を行っている。GAMCOで株式やスピンオフ、超小型株銘柄の分析を行う前は、14年にわたり、ザ・ハミングバード・バリュー・ファンドとターシア・ナノキャップ・バリュー・ファンドのファンドマネジャーを務めていた。コロンビア・ビジネススクールでMBA(経営学修士)修得し、コロンビア・ビジネススクールの非常勤教授として16年間、証券分析とバリュー投資の講義を担当。2001年の刊行の『バリューインベスティング(Value Investing)』(第2版はパンローリングより近刊予定)の共著者である。

ポール・ジョンソン(Paul Johnson)
ニクサ・インベストメント・アドバイザーズの経営者。ペンシルベニア大学ウォートン校でファイナンスのエグゼクティブMBAを修得。コロンビア・ビジネススクールとガベリ・スクール・オブ・ビジネス、フォーダム大学の大学院で証券分析とバリュー投資の講義を40学期にわたり担当。ハワード・マークスの『投資で一番大切な20の教え』(日本経済新聞出版)の脚注を担当、『ゴリラゲーム』(講談社)の共著者である。


本書への賛辞

「面白くて、ためになり、洞察力にあふれる金融関連の本を手にすることはめったにない。ソンキンとジョンソンは本書で3つの偉業を成し遂げたのだ」――アスワス・ダモダラン(NYUスターン・スクール・オブ・ビジネス教授兼『資産価値測定総論』『企業に何十億ドルものバリュエーションが付く理由』[ともにパンローリング]著者)

「投資リサーチについて思慮深く語ることはアートと科学の双方の要素が必要であるが、ソンキンとジョンソンは本書においてそれを見事にやってのけた」――ジョン・ミハルジェビック(『バリュー投資アイデアマニュアル』[パンローリング]の著者)

「銘柄提案は魔術のようなものだ。入念な調査に始まり、冷徹かつ論理的な分析を行い、明確な判断を下す。それが魅惑的なものへと変わるのだ。ソンキンとジョンソンはこの秘術を見事に説明している。彼らは金融界での成功の扉を開く、今までにない秘密を本書に組み込んだのだ。完璧な銘柄を売り込むことが、職を得て、生きながらえるうえで最も大切なことである」――ジェフ・グラム(バンデラ・パートナーズのファンドマネジャー兼『ディア・チェアマン[Dear Chairman]』の著者)

「数十年に及ぶ自らの経験に照らしても、銘柄提案はウォール街で成功するためには必須のスキルである。ソンキンとジョンソンになる本書は金融界に新たに足を踏み入れた者たちがこのスキルを習得するうえで有利なスタートを切ることを可能にしてくれた」――レジーナ・ピタロ(GAMCOアセットマネジメント機関投資家向け営業部長兼『ディールズ・ディールズ・アンド・モア・ディールズ[Deals…Deals…and More Deals]』の著者)

「ソンキンとジョンソンによる市場の効率性、大衆の知恵、そしてバリュエーションの説明は明確さと実用性の点で手本となるものだ」――スコット・E・ページ(ミシガン大学レオニード・ハービッツ・カレッジ教授兼『「多様な意見」はなぜ正しいのか』[日経BP]の著者)

「本書は自らの分析に自信を持ち、またそれがどのように実行されるかを明確にするためのツールを提供するものだ。ソンキンとジョンソンは正確かつ説得力ある原則を念頭に置いた自らの忠告に従っている。本書によって、ファンドマネジャーに銘柄提案するときの恐ろしい要素は和らげられ、アナリストたちは輝くことができるようになるであろう」――ブルース・ゲラー(DGHM社CEO)


目次

監修者まえがき
まえがき
序章

第1部 完璧な銘柄
第1章 資産の評価方法
第2章 事業を評価する方法
第3章 競争優位と成長の価値の評価方法
第4章 株式の本源的価値の考え方
第5章 市場の効率性についての考え方
第6章 大衆の知恵に対する考え方
第7章 行動ファイナンスの考え方
第8章 リサーチによる付加価値の付け方
第9章 リスクの評価方法

第2部 完璧な銘柄提案
第10章 銘柄の選び方
第11章 メッセージの内容の組み立て方
第12章 メッセージの伝え方

謝辞
アーティストたちへの謝辞
著者について

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■立ち読みコーナー(本テキストは再校時のものです)

監修者まえがき

 本書は、金融業界、特に資産運用分野での経験が豊富なポール・D・ソンキンとポール・ジョンソンによる“Pitch the Perfect Investment : The Essential Guide to Winning on Wall Street”の邦訳である。2人は実務のかたわらコロンビア大学のビジネススクールにも属し、ベンジャミン・グレアムを祖とする有価証券投資の安全性分析やバリュー投資戦略の講座で長年教鞭を執っている。本書の内容もそれに沿ったもので、前半は企業価値評価の機序を極めて明快に示しており、この分野のガイドブックとして出色の出来栄えだ。こうしたロジカルで分かりやすい解説はアメリカ人の実践家ならではのもので(日本人はそれを理解できても、他者にうまく説明することができない)、この本があれば既存の類書はもう必要ないのではないか。

 また後半は、アナリストがファンドマネジャーに銘柄提案を行う際の手引きとなっている。企業価値評価の技能にとどまらず、投資にかかる知識や技術を自分の経験のみに依拠して高めていくのは容易なことではなく、それには批判や指摘を含む他者とのコミュニケーションを通じて自己の所見を洗練させ表出化すること、そしてそれを実践した結果のフィードバックを受けることが不可欠である。

 ゆえにまともな資産運用組織であれば、個々人の能力や限定合理性の制約を超えるための方略として、業務の専門化や分業の推進と並行して、プラトン哲学に準じた対話の知を促進する仕組みや場を有している(もし「ウチの会社にはそんなものはない」という機関投資家の方がいれば、その組織に今後もとどまるべきかどうかを再考したほうが良いだろう)。

 一方で、他者とのインタラクティブな連繋など自分には関係ないと思う個人投資家の方もいるかもしれない。だが、実はこれこそがプロとアマチュアとの分水嶺なのである。個人投資家が成功を収めるか否かを分ける因子について調べた学術研究によれば、学歴や性別や出自や年齢といった属性は投資活動の成否にはほとんど関係がなかった。しかし、違いを有意に説明する因子が2つだけ発見された。そのなかの1つは自己の投資アイデアが第三者の目で冷静に客観視される機会があるかどうかであった。

 よって、個人投資家が投資で成功しようと望むならば、社会的に孤立すべきではなく、自分の考えをまとめ、それを信頼できるだれかに評価してもらう場を何らかの形で持つべきなのである。本書の後半で説かれているように、企業価値評価の分析結果を体系的に整理し、他者に如才なく説明することはその第一歩である。

 本書が職業人としてのアナリストやファンドマネジャーだけではなく、それを目指す学生や社会人や有価証券投資に関わる学究、さらには安全性を考慮した株式投資を行う個人投資家など、幅広い方に読まれることを心から願うものである。

 翻訳にあたっては以下の方々に心から感謝の意を表したい。まず藤原玄氏には正確で読みやすい翻訳を、そして阿部達郎氏は丁寧な編集・校正を行っていただいた。また本書が発行される機会を得たのはパンローリング社社長の後藤康徳氏のおかげである。

 2021年7月

長岡半太郎


まえがき

「絵はあらかじめ思い描かれるわけでも、イメージが固まっているわけでもない。描いている最中にも考えが変わるに従って変化するのだ。そして、完成しても、それを見る人の心理状態に従って変化し続ける。絵には生き物と同じように生命があり、われわれの日々の暮らしにもたらされる変化にさらされているのだ。それはまさに自然そのもので、絵はそれを見る人間を通してのみ生き続けるのである」――パブロ・ピカソ(Conversation with Christian Zervos, 1935, reprinted in Picasso on Art, ed. Dore Ashton[New York : Viking, 1972])

 このピカソの言葉は本書に対するわれわれの感情を表現している、つまり本書を認めるためにかかった3年の間、われわれの考えは大きく変わったということだ。辛抱強い編集者のビル・ファルーンに三度の締め切りを守れない理由を説明するにあたり、われわれはこう言って彼を安心させた――「でも当初約束したものとまったく違う、はるかに優れた本になるよ」と。

 やっと本が出来上がり、作品が「野に放たれた」ときに何が起こるか楽しみにしている。ピカソの絵と同じように、われわれの本はそこで提示されたコンセプトが評価・検証され、ある者には取り入れられ、またある者には反論されることで、独自の命を持つようになるのだ。われわれのアイデアのなかには、読者がそれに依拠したり、または却下したり、創造的破壊(「厳密ではない科学……葬儀の連続である」とはポール・サミュエルソンの言葉である)のプロセスを通して置き換えられたりするなかで、さまざまに変化するものがあることは分かっている。われわれはそのいずれをも歓迎する。証券分析とファンダメンタルズに基づく投資の分野において人々を教育し、その能力を高めることがわれわれの望みである。ピカソの絵と同様に、本書が読む人々を通して長く生き残れることを願っているのだ。

 ソンキンは好んでこう口にする。「共著者として名前が載るのと、自分で本を書くことはまるで違う」。われわれ2人は過去に共著者として名前が載ったことはあるが、本書はわれわれが実際に書いた最初の本である。2人とも本を書きたいと何年も考えていたのだが、日々の暮らしに忙殺され、その考えを追及する時間を見つけることができなかった。2013年の夏、ソンキンは友人のアレハンドラに大きな刺激を受け、ついに本を書くことを決意したのだ。

 人生における多くの出来事と同じように、このコラボが生まれたのは偶然であった。2013年10月4日金曜日、ニューヨーク市のピエール・ホテルで開催された第23回グレアム・ドッド年次朝食会の閉会後、ソンキンとジョンソンの会話のなかで、ソンキンは本を書く計画なのだと語った。ジョンソンは「題名はどうなるの」と尋ねた。「ザ・パーフェクト・ピッチ(The Perfect Pitch)」とソンキンが答えると、ジョンソンはこう返した。「おかしなもんだね、僕はザ・パーフェクト・インベストメント(The Perfect Investment)という本を書こうと常々考えていたんだ」。その日の午後も遅い時間にオフィスに戻ったあと、互いにeメールをやり取りするようになり、われわれは自分たちの本が補完的であることにすぐに気づいた。ソンキンは投資アイデアを取り上げてもらうために銘柄提案が担う役割に興味があったのだが、ジョンソンは提案すべき適切なアイデアを見つけることに重点を置いていたのだ。2つの本は同じコインの裏表であることがますます鮮明になり、われわれが協力して1つの本を書き上げることが明らかになった。

 相互に補完的な考えを持っていたことに加え、われわれは20年来の知り合いであり、投資に対するアプローチも似ていて、互いを大いに尊敬していた。その後数週間で本が形を成し始め、出版社へのわれわれの提案も具体化し、タイトルは「ピッチ・ザ・パーフェクト・インベストメント(Pitch the Perfect Investment)」に落ち着いた。

 われわれの友情は、1994年9月、当時コロンビア・ビジネススクールの学生であったソンキンがジョンソンの主催する証券分析の講義を受講したときに始まる。ソンキンとおよそ20人の学生たちはジョンソンの講義の内容とその教授手法が大好きで、彼らは次の学期も続きの講義をしてくれるようジョンソンを説得したのだ。ソンキンがその講義についてジョンソンに申し入れたとき、ジョンソンは「もうすべての教材は教えたよ」と言った。そこでソンキンは「もう一度同じ内容を教えてくだされば結構ですよ」と答えた。もちろん、ジョンソンは新しい教材を作成し、講義は大成功を収めたのだ。

 次の夏、ソンキンはジョンソンの証券分析の講義を手伝いたいと申し入れ、1995年の秋に彼のティーチングアシスタントに就任した。翌1996年春、ソンキンは非常勤講師となり、その後16年間、コロンビア・ビジネススクールで教鞭を執り、最終的にのべ450人以上の学生を指導したのだ。本書執筆時点で、ジョンソンは25年にわたって非常勤講師を務めており、投資に関する講座は40回を超え、受講した学生数も2000人を上回る。

 ソンキンにしてみると、本書執筆の旅路は、1995年5月に大学を卒業し、伝説的なマイクロキャップのバリュー投資家チャック・ロイスの下でリサーチアナリストとして働き始めたときに始まった。職場での初日、彼は仕事の準備が十分にできていないことに不意に気づいた。調査のプロセスは見事にこなしていると感じてはいたが、ファンドマネジャーに自らの推奨を、説得できるような方法で伝える準備ができていなかったのだ。彼は自分のクラスメートの多くが同じような状況にあることをすぐに発見した。ソンキンはかつてのクラスメートの1人が電話でこう言ったのを覚えている。「初出社の日、上司が挨拶に来て、僕が一息ついたのを見ると、デスクに年次リポートを放ってよこして、こう言うんだ。『どう思う』って。何も聞く間もなかったんだぜ、どうすりゃいいんだよ」

 この準備不足に対処するために、ソンキンは1996年春のアドバンスト・セミナー・イン・ファンダメンタル・リサーチ・テクニークスと銘打った最初の講義で、証券アナリストとして仕事をするうえで必要な基本的なスキルを学生に伝えることを自らの目標とした。講義の初日、彼は学生たちにこう伝えたのだ。「溶接の方法を学ぶためならエーペックス・テクニカル・スクールに行けばいい。このクラスではリサーチアナリストになる方法を教える。仕事の仕方を教える職業訓練なのだ」。ソンキンは当初、ファンダメンタルズ調査のテクニックを教授すべく講義を組み立てたが、各学生は講義の最後に20分の時間を与えられ、学期中に調査した株式のプレゼンテーションを行うことになっていた。プレゼンテーションは痛ましいほど退屈で、5歳のときにADHD(注意欠陥多動性障害)と診断されていたソンキンにとって、その時間の間中座り続けていることはただただ耐え難い経験であった。我慢できない彼は、1〜2分すると学生のプレゼンテーションに割って入り、質問を浴びせ始めるのだ。

 この経験をしたソンキンは講義の構成を完全にひっくり返した。最後にプレゼンテーションを行うのはそのままだったが、今度は銘柄提案を裏付けるための調査を行うのであって、その逆ではなかったのだ。学生が自らの提案を裏付け、弁護できるとしたら、それは彼らが十分な調査を行ったことを示していると彼は考えた。この講義は、優れた投資推奨の支えとなるのは銘柄提案であるというソンキンの信念を確たるものとした。

 ソンキンのこのような講義の組み立てに影響を与えたことがもう1つあった。1995年秋、ソンキンはパット・ダフのアドバンスト・セキュリティ・アナリシス・コース(アドバンスト・セキュリティ・アナリシスは当初ジム・ロジャーズが教えていたのだが、その後ポール・ダフ、ジョン・グリフィン、そしてデビッド・グリーンスパンへと受け継がれた)を聴講したのだが、そこでは学生たちは業界を割り当てられ、その業界の銘柄をダフが講義に招いたファンドマネジャーたちに提案することが求められていたのだ。伝説的な投資家ディック・ギルダーなどのファンドマネジャーたちは無慈悲なまでに学生たちのプレゼンテーションの欠点を指摘していた。ソンキンは、次に証券分析の講義を担当するときにこの組み立てを採用した。そして、1999年春、ソンキンはデフの講義と、ブルース・グリーンワルドのバリュー・インベスティングの講義(ソンキンは数年間、ブルース・グリーンワルドのティーチングアシスタントを務め、期末リポートの評価を行い、ブルースが研究休暇に入った1997年にはジョンソンとともに教鞭を執った)とを組み合わせ、新しい講座とすることを思いついた。そして、アドバンスト・セミナー・イン・アプライド・バリュー・インベスティングと銘打ち、その後13年にわたって教鞭を執った。新しい講座では、学生にバリューの規律を持った投資アイデアを提案させることに焦点が当てられた。アプライド・バリュー・インベスティングはコロンビア・ビジネススクールでも最も人気のある講座の1つとなり、毎学期、複数回にわたって開講された。

 ジョンソンの旅路は異なるものであった。ジョンソンは、クレディ・スイス・ファースト・ボストンで一緒に働いていたチャーリー・ウォルフの推薦で1992年の秋にコロンビア・ビジネススクールの非常勤教授に就任した。ウォルフは1996年からコロンビアの終身教授となり、債券市場やクレジット関連証券の講座を担当していた。1956年にベンジャミン・グレアムが引退したとき、コロンビアで証券分析を教えはじめたロジャー・マレーは1978年に引退した。証券分析の講座がないまま数年が経過したあと、ビジネススクールはウォルフに講義を引き受けてくれるよう依頼した。ウォルフは51歳のとき、株式アナリストがどのように仕事をしているかをさらに学ぶために研究休暇を取り、ファースト・ボストン・コーポレーション(後にクレディ・スイスに買収される)で新人アナリストとして働いた。ウォルフのウォール街でのキャリアはアップル・コンピュータという名の小さなハイテク企業の調査リポートを書くことから始まったのだ。彼はウォール街のアナリストという職に魅了されるあまり、教授としてのキャリアをあきらめ、二度と大学に戻ることはなかった。ウォルフは非常勤教授として秋学期に証券分析を教え、また春に同じ講座を担当するウォール街の別のアナリストを採用することで大学と合意した。1992年の秋に講義を行えなくなったウォルフは、ジョンソンのオフィスに立ち寄り、代わりに講義を行うことに興味があるかどうかを確認しようとした。その会話があったのが8月の上旬で、秋学期は4週間後に始まる予定であった。ジョンソンはいつの日か教鞭を執るという考えは受け入れていたけれども、秋学期までの準備期間が十分でなく、また1学期を通して講義を行うだけの十分な教材もないことを懸念していた。さらに、春にMBA(経営学修士)を修得したばかりで、経験が不足しているので、トップクラスのビジネススクールでMBAの学生に投資を教えることなどできないのではないかと少し懸念してもいた。だが、ウォルフに説得されたジョンソンは講義を行うことに合意した。ジョンソンはこの経験を愛し、その後25年にわたって断続的ながら講義を続けているのだ。

 ジョンソンは、講義ノートを作成することと、示唆に富んだ投資本を書くことには大きな違いがあることは認識していたが、いつの日か自らの講義資料を出版したいという願いから本を書くことには関心があった。ジョンソンは、キャリアを追及し、また家族を養っていきながら自らのノートを本に作り変えるための時間を見つけることが大きな問題であることは分かっていた。だが、2013年後半にソンキンに背中を押され、事が進み始めたのである。  煎じ詰めれば本書はわれわれの欲求不満の産物なのだ。われわれが講義で教える主だった話題のすべてをカバーしている指定図書が存在しなかったので、その状況を改善したかったのだ。ベンジャミン・グレアムの『賢明なる投資家』、ジョエル・グリーンブラットの『グリーンブラット投資法──M&A、企業分割、倒産、リストラは宝の山』、ハワード・マークスの『投資で一番大切な20の教え――賢い投資家になるための隠れた常識』(日本経済新聞出版)、セス・クラーマンの『マージン・オブ・セーフティー(Margin of Safety)』の海賊版、バフェット・パートナーシップの出資者に向けた手紙のコピーなどもあるが、1冊で教室での講義と宿題とを補強できる書物はない。実際に、ジョンソンは学生に「膨大な」必読資料を配布するのだが、それは400ページにも上り、書物の一部や学術論文、調査リポートや新聞の切り抜き、また彼がキャリアのなかで収集した面白い出版物のコピーなどが含まれている。

 われわれは長年にわたり、何千もの本、学術論文、その他出版物を読んできた。ソンキンは450人以上の学生を教え、ジョンソンに至ってはその数は2000人を超える。われわれは学生だけでなく、企業幹部やIR(投資家向け情報提供)担当者、金融機関の営業マンたちから文字どおり何千回もの銘柄提案を聞かされてきた。そして完璧な銘柄を提案するために必要となる要素を学び、この知識と経験を1冊で、理解しやすい本にまとめようとしてきたのだ。

 当初われわれはさして考えもせず、この本をウォール街の実務家向けに書こうと計画していた。しかし、書き進めるに従って、真の読者は自分たちの学生であることを認識した。経験豊富な実務家のほとんどはわれわれが提供したいと考えている知識をすでに学んでいるので、彼らはより若く、経験も乏しい業界の新参者たちほどには本書に価値を見いだせないであろうことに気づいた(これは、経験豊富な実務家は信じられないほど頑固で、自分の方法に凝り固まっているということを礼儀正しく表現したにすぎない。言い換えれば、老木は容易に曲がることはできないのだ)。そこで、われわれはもっぱらこの層に注意を向けるようになったのだが、それによってわれわれが教えている、若きアナリストたちが学ぶべき最も重要な課題を浮き彫りにすることができるようになったのである。

 新人のリサーチ・アナリスト向けのトレーニングは基本的にウォール街には存在しない(実際に、スティーブ・コーエンはウォール街の「人材不足」ゆえに自らポイント72大学を立ち上げた)ので、投資のプロとしてのキャリアを歩み始めた者たちへの「サバイバル」ガイドを記すことがわれわれの目的となった。これまでに何百万部も売り上げたジョン・「ロフティ」・ワイズマンの『最新SASサバイバル・ハンドブック』(並木書房)がわれわれのモデルであった。ワイズマンの本は包括的で、さまざまな天候や都市や荒野や陸上や海上など多くの災害状況に対応している。著者は序章でこう記している。「サバイバルは基本的な原則を環境に適用させることができるかどうかにかかっている」。そして、サバイバルに必要な3つ要素、つまり生きようとする意志、知識、そして「キット」について議論しているのだ。

 ウォール街でのキャリアを歩み出そうとしているのであれば、非常に厳しく、日ごろから生き残る意思を試されるようなキャリアに身を投じようとしているのであるから、生きようとする意志を持たなければならない。キットについてワイズマンは「最小限に留め、その用途と機能に精通すべし」と述べている。ウォール街では、自分のコンピューター、電話、キャピタルIQやファクトセット、ブルームバーグなどの情報源へのアクセス、さらにセルサイドの調査や同様の情報源などがキットとなる。

 サバイバルでは知識を身につけることが重要な要素である。ワイズマンのガイドにあるように、「知識が多いほどサバイバルは容易になる。知識は恐れを一掃する。地元民に目を向け、彼らがどのように生き延びているかを考えなさい。耐え忍んでいる人々と対話し、彼らの経験から学ぶのだ」。ワイズマンはさらにこう述べる。「私や同僚たちが経験を通じて得たサバイバルの知識を共有することで、あなたがたが正しい判断を下す役に立つことを目指している。これらの方法やスキルによって私たちの命は救われてきたし、あなたがたが生き残る一助となるであろう」

 この精神を胸に、本書はウォール街のアナリストとして生き残る、そして成功するために必要な知識を提供する。

 『SASサバイバル・ハンドブック』は膨大なページに及ぶのだが、われわれの出版社はこの手の本の理想的な分量はおよそ320ページだと教えてくれた。われわれがこの目標を外したのは言うまでもなく、本書の原書では496ページにもなるのだが、その何倍にもなる本を書くことはいくらでもできたと思う。ページ数の制限によってわれわれは「サバイバルガイド」で最も重要だと思われる要素に内容を絞らざるを得なかった。この選定の過程においては、本書を通してコンセプトの説明を一貫させることを心がけた。例えば、初期の原稿ではEBITDAが持つ限界を5ページにわたって記していた。内容は素晴らしかったのだが、その章でわれわれが伝えようとしていることからすればやりすぎで、議論を相応に割愛した。われわれが議論する話題の多く、実際にはそのすべてはもっと伝えることがあることをぜひとも肝に銘じておいていただきたい。

 それゆえ、考えるすべてのシナリオに対応しようとした『SASサバイバル・ハンドブック』とは異なり、われわれは、あらゆる例外やニュアンス、また起こる結果について説明しようとするのではなく、最も一般的な状況を解説しようとしている。教えていてイライラすることのひとつが、あらゆる講義で「あの野郎」と思える人間がいることである。彼(たいていは男だ)はわれわれのほとんどすべての発言に異議を唱えようとしているようで、どうやら教授やクラスメートの前で賢く見せようとして自分の声しか聞こえていないようなのだ。ソンキンはジョンソンのティーチングアシスタントをしているときに出会った、とりわけしつこい学生を覚えている。ジョンソンが学生たちに「なぜみんな株を買うのだろうか」と尋ねた。答えは「それが上がることを期待しているから」である。損をしようと思って株を買う者などいないのは明らかだ。だが、その学生は、どういうつもりか分からないが、ジョンソンが間違っていることを証明するために「コーナーケース」(コーナーケースとは正常な範囲を超えたパラメーターが発生する状況、具体的にはいくつもの変数が異常値を示したことで発生する状況のことである)を探すよう主張したのだ(この学生がフィリップ・フィッシャーの『株式投資で普通でない利益を得る』を読んでいないのは明らかで、そのなかで著者はこう述べている。「いかなる理由にせよ、どのような方法であろうと、お金を稼ぐために株を買うのである」)。その学生は10分間にわたってジョンソンに食い下がり、お金を稼ぐこと以外の理由で株を買うようなシナリオを次々に挙げていった。ジョンソンはそのすべてを悠々とかわし、間違いであることを証明して見せたが、やがてその学生は、例外とも思える複雑なオプションによるヘッジを含んだケースにたどり着いた。技術的にはその学生が正しいように思えたが、ほとんどの場合投資家は株が上昇することを期待して株を買うのであるから、この議論は全くもって時間の無駄であるように思えた。

 この例は、質量は不変であるとする物理学では標準的なアプローチのようである。この常識はたいていの場合は正しいのだが、実際のところ質量は速度に従って増大するので真の法則ではない。ただ、その変化は速度がおよそ時速58万キロを超えなければ感知されないのである。この極端な速度を説明するならば、SAKO TGR-42 .338ラプアライフルから発射されたおよそ16グラムの弾丸が時速3291キロであり、地球からの脱出速度が時速4万0236キロで、スペースシャトルは地球の重力圏から出ると時速2万8163キロで順行する。それゆえ、極端な速度について説明しなくても質量は不変であると言うことはできるのだ。同様に、われわれはコーナーケースでは正しくないかもしれないが、たいていの場合は正しいコンセプトを議論しているのだ。

 われわれが本を書こうと思ったもう1つの動機は、主に学術論文に含まれる大量の情報はあまりに複雑すぎて、たいていの投資家は容易に利用することができないことにある。例えば、われわれは市場の効率性、行動ファイナンス、リスクといったコンセプトを、重要なニュアンスを維持したままで理解しやすい言葉に置き換えようとしている。だが、残念ながら、主流をなす投資コミュニティーに浸透しているコンセプトの多くをより広範な読者に「伝えよう」とすると、「伝言ゲーム」に悩まされることに気づいた。メッセージは遺憾ながら著者本来が意味したことからゆがめられてしまうのだ。また、多くのコンセプトは大衆に訴えるために簡略化されると、その重要性の多くを失ってしまう。その最たる例が、CNBCでユージン・ファーマが効率的市場仮説を30秒に要約してくれるよう頼まれたときのことである。ファーマがノーベル経済学賞(本書でノーベル経済学賞に何度も言及しているが、正式名称は「アルフレッド・ノーベル記念経済学スウェーデン国立銀行賞」であり、1969年から2016年の間に48回、78人に授与されている)を受賞した研究をほんの短い時間で要約することなどできないのは明らかだ。

 情報が複雑であることに加え、その総量はまさに圧倒されるほどであり、選定プロセスをさらに困難なものとしている。われわれは膨大な量の本や学術論文を読んできたが、そのなかで有効で、重要な知見を提供しており、極めて重要な指摘をしているか、純粋に興味深いと思える文章や段落やページは限られたものである。無理難題のように感じることも多かったが、われわれはこれらの知見をまとめ、簡潔に1冊の本として提供しようと考えてきた。だが、この目標を達成しようとするとニュアンスを犠牲にしなければならないことがあった。正確性と明瞭さ、そして簡潔さの繊細なバランスを取ろうと最大限努力したが、われわれの判断の粗が目につく読者もいることであろう。精度は明瞭さや理解の敵となることが多いということを受け入れてくれることを願うばかりである。

 われわれはバックグラウンドも経験も考え方も異なるのだが、ともに筆をとった3年間にわたり、本書のコンセプトに関して活発な議論を数え切れないくらい行ってきた(より正確に記すならば、「大立ち回り」を演じてきた)。話題の多くは概念化するのが困難で、説明が難しいことも多いという事実に合わせ、議論の的となったいくつかの章は40回余り原稿を作成し、まるっきり書き直したことも何回もあった。また、たくさんの資料が編集室の床に積み上がりもした。最終的に出来上がった本書はこのような努力の恩恵を大いに受けているとわれわれは信じている。

 ADHDという「才能」に恵まれた多くの人々と同じように、ソンキンは多くの例えを用い、また独創的かつ視覚的に考える。ジョンソンにとってはこの創造力がプロセスを困難にすることが多く、またイライラすることもあったが(ジョンソンにしてみれば、「イライラすることもある」という表現は上品かつ控えめな表現だ。おそらく、このときの感情をより適切に表現するなら次のようになろう。ジョンソンにしてみれば、ソンキンのグチャグチャな思考や頑固さに一度ならず電話口で首を絞めてやりたいと思ったことであろう)、常に有益で、最終的には非常に実り多い経験であった。ソンキンが「突飛な考え」を思いつき、ジョンソンがそれを現実世界に引き戻すわけだ。

 この過程で、ソンキンは極めて隠喩的な思考をするので、彼は文章に書き起こそうとする前に、自ら説明しようとしているさまざまな問題を整理するために図やチャート(本書を通して目にすることだろう)を用いた。彼はこれらの図をジョンソン宛てのeメールに添付して送り、しばしこう記すのだ。「僕は不思議の国に陥っているかもしれない。このアイデアを君に預けるから、このスレッドに時間をかけすぎる前に僕が間違いなく正しい方向に進むようにほしい」。われわれが数多くのとらえどころのないコンセプトや重要な知見に関して議論し、討論し、反論し、そして最終的に明確にしていくうえで図式化は有効な方法であった。

 文章で明確するよりも、視覚化することでコンセプトをうまく説明できることが多かったことは本書作成の作業のなかでも興味深いことであった。説明の一部としてこれらの視覚教材を掲載すべきだとすぐに認識したが、それは読者にとっても有効であろうと思ったからである。ソンキンは認知負荷というコンセプトに関する本を読んでおり、絵や図はコンセプトを説明するうえで言葉よりも優れているだけでなく(1枚の絵は百聞は一見に如かず)、グラフィックイメージは読者の脳を休ませ、認識負荷を軽減しもするという事実を知っていたのだ。

 われわれ自身で図を作成したのだが、2人ともアーティストではない。そのため、本書を通して一貫した印象を持たせる必要があると考えていたので、イラストの使い方が重要な問題となった。この目標を達成する唯一の方法は、一貫したイメージを作り出せるイラストレーターを見つけることだと考えた。2016年3月、ソンキンはインスタグラムでイラストレーターのチャーリー・ペンダーグラフト(@drawmecharlie)を偶然見つけた。彼は非常に創造力にあふれ、また価格も妥当だったのだ。ペンダーグラフトは1年の間に300以上の画像を作成したが、それをわれわれは本書で用いている。

 図表は、複雑な金融のコンセプトを読みやすく、理解しやすい形で提示しているという点において本書をユニークなものにしていると思う。ダサさとうまさは紙一重だと思うし、本書の図がどのように評価されるかは分からない。最終的な評価は読者それぞれの心のうちにあるであろうが、前者とされるものもあれば、後者とされるものもあると思う。

 デレク・トンプソンは著書『ヒット・メーカーズ(Hit Makers)』のなかで、新製品や新曲、または新しいコンセプトがどのように人気を得るかについて議論している。例えば、工業デザインでは、レイモンド・ローウィが生み出した「先進的ではあるが、ぎりぎり受け入れられる」と呼ばれる概念の結果としてヒットするものもある。この見解は「慣れ親しんだ驚き」、つまり親しみやすさとあいまった、幾ばくかの「新しさ」とも考えられよう。本書の表現形式は新しいものであるが、すべてのコンセプトは自然科学、または厳格な金融理論に根差しているので、その内容自体はよく知られたものなのだ。

「私が彼方を見渡せたのだとしたら、それは巨人の肩の上に乗っていたからだ」――アイザック・ニュートン

 本書にあるアイデアのほとんどはわれわれ独自のものではないことを強調しておかなければならない。多くの場合、われわれは十分に吟味されたコンセプトをより利用しやすいと思えるフォーマットに組み直しただけである。われわれは、レゴを用いてユニークなものを作り上げたとは考えているけれども、本書でレゴそれ自体を発明したわけではないのだ。  本書は大きく2つのセクションに分かれている。アナリストには2つのまったく異なる役割があるので、われわれはこの構成を選択したのだ。アナリストの第一の仕事は優れた投資対象、つまり市場価格と本源的価値とに大きなスプレッドがある銘柄を見つけることである。このプロセスにおいてアナリストは株式の本源的価値を算出し、本物のミスプライスがあるかどうかを見定め、株価と本源的価値とのギャップを埋め、株価のミスプライスを修正することになるカタリストを見いだすことが求められる。

 第二の仕事は、その投資アイデアをファンドマネジャーに提案することである。この段階ではまったく異なるスキルセットが必要となる。これに応じてわれわれは本書を図P.1にあるような構成としたのである。

 最初の4章では企業の本源的価値を算定するプロセスを説明している。まず、第1章にあるDCF(割引キャッシュフロー)法を用いた資産評価から説明を始め、次に第2章でこの方法を用いて事業を評価する。競争優位を評価することは成長の価値を見定めるうえで重要なので、第3章でこれらの話題を徹底的に議論する。第4章では、これらのツールを用いて有価証券の評価を行う。

 これら4つの章は、ウォーレン・バフェット、アスワス・ダモドラン、デビッド・ドッド、マリオ・ガベリ、ベンジャミン・グレアム、ブルース・グリーンウォルド、セス・クラーマン、マイケル・モーブッシン、ロジャー・マレー、ジョン・バー・ウィリアムズが書き残してくれたものを基礎としている。

 次にわれわれは投資家がどのように株価を付けるかを説明するが、これは必然的に市場の効率性に関する詳細な議論へとつながる。まず第5章において、市場が株価を付けるときに従う規則を確立したユージン・ファーマの効率的市場仮説を検証する。第6章では大衆の知恵について議論し、これらの規則がどのように市場で実践されているかを示していく。それから、第7章では行動ファイナンスについて議論し、これらの規則がどのようにゆがめられたり、破られたりしているかを示していく。

 これら3つの章の礎となったのは、ジョン・ボーグル、ノラン・ダッラ、ユージン・ファーマ、フランシス・ゴルトン卿、ベンジャミン・グレアム、ダニエル・カーネマン、アンドリュー・ロウ、マイケル・モーブッシン、ロジャー・マレー、スコット・ページ、ウィリアム・シャープ、ロバート・シラー、アンドレイ・シュライファー、ネッド・スミス、ジェイムズ・スロウィッキー、エイモス・トベルスキー、ロバート・ビシュニーの著作である。

 第8章では、調査を通じて価値を付加する方法を議論する。株価が本当にミスプライスであることを主張できるようになるために投資家は情報の優位性、分析の優位性、そして取引の優位性を確立しなければならないことを示していく。投資家は、ほかの投資家が間違っている理由を見いだし、自分が正しい理由を示し、自らが手にしている優位性を明確にすることができなければ、本物のミスプライスを見いだす可能性は低くなるであろう。第8章は、株価と自ら算定した本源的価値とのギャップを埋めるきっかけとなる出来事としてカタリストを定義することで幕を閉じる。この章は主にユージン・ファーマとマイケル・スタインハルトに由来する。

 第9章では、リスクと不確実性は同義ではないことを説明し、ほとんどの投資家が誤解しているその違いを示していく。それから、投資リターンの要素に光を当て、ほとんどの投資家は自ら算定した本源的価値に重きを置いているが、しばし見落とされている時間も重要な要素であることを強調する。本源的価値と投資期間の予測の双方で正確さと精度を高めることで、投資家はどのようにリスクを縮小させることができるかを説明する。本章は主にハワード・マークスとナーシム・ニコラス・タレブの著作に基づいている。

 これまでの段階で、われわれは完璧な銘柄に賭ける方法を示したことになる。次は、その銘柄をファンドマネジャーに提案するうえでの重要な要素について議論する。

 第10章で説明するのは、提案する適切な銘柄を選択しなければならないアナリストとしては、ファンドマネジャーの銘柄選択の要件を把握しなければならない、ということである。ファンドマネジャーは自分の投資要件に合致しない投資アイデアは採用どころか、聞く耳も持たないということを説明する。第11章では、そのインパクトを最大化するために銘柄提案の内容をどのように組み立てるかを示す。最後に、第12章で、外部要因の影響を最小化しながらも、プレゼンテーションの効果を確かなものとするために必要となるその他の要素について議論する。

 これら3つの章は、ミロ・フランク、マリアン・ラフランス、ジョン・T・マロイ、アルフレッド・メラビアン、スティーブン・トゥールミンの著作を礎としている。

 その他にも具体的に礎にしたとするには及ばないが、その著作物やアイデアがわれわれの思考過程を形づくるうえで役に立ち、または純粋に考えを広げてくれた人々もいる。パー・バク、ソネット・ディディエ、デビッド・ドレマン、ナンシー・デュアルテ、ポール・エックマン、デビッド・エプスタイン、D・クレイグ・フェセル、フィリップ・A・フィッシャー、リチャード・ガブリエル、マルコム・グラッドウェル、スティーブ・ジョンソン、ゲーリー・クライン、コール・ヌスバウマー・ナフリック、マリア・コニコバ、ピエール・シモン・ラプラス、ダニエル・J・レビティン、ティム・ロックラン、ダグラス・S・レビン、デビッド・マツモト、アルフレッド・ラパポート、アントニン・スカリア、ネート・シルバー、キース・E・スタノビッチ、フィリップ・E・テトロック、リチャード・セイラー、クリス・ボス、ダンカン・ワッツ、ホーリー・ホワイト、ティモシー・D・ウィルソンといった面々だ。

 ほかの方々の著作を自分たちの手柄にしようなどとは思っていない。ここで挙げた人々は、われわれが本書で提示するコンセプトを理解するうえで大きな役割を果たしたのだ。前述のすべての方々に加え、その他にもわれわれが本書で取り上げた知見や細かな機微を与えてくれた人々はたくさんいる。本文中や脚注で言及している場合もあるが、無意識のうちにそれを省いてしまっている場合もあろう。あらゆる見落としは意図せざるものであり、注意が足らなかったことをあらかじめお詫びしておく。われわれが本書を認めるにあたり有効かつ重要であったと思う書物や学術論文のリストを作成することで、徐々にではあるがこの不備を正していきたいと思っており、そのリストはわれわれのウェブサイト(https://www.pitchtheperfectinvestment.com/)で閲覧できるようにするつもりだ。

 サミュエル・ジョンソンをまねたジャッド・カーンの言葉を借りれば、「本を書き終えることなどない、ただ書くのをやめただけだ」。もっと書けることはあったのだが、どこかでやめなければならなかったのも事実だ。われわれは本書を決定版だとは思っていないことを覚えておいてほしい。むしろ、議論を進め、入手可能な投資関連本のモザイクを増やしていきたいと思っている。われわれにとって本を書くことは回答よりも多くの疑問を心のなかに生み出すものであり、刺激的ではあるが、恐ろしくもある。世界を両側にドアのついた恐ろしく長い廊下だと考えることもできる。われわれはそのなかを見ようとドアの1つを開くたびに未知の世界に放り出されたように感じたのだが、それは刺激的なことであった。恐ろしいことは、廊下にはわれわれには時間がなくて開くとすらしなかったたくさんのドアが存在することに気づいたことである。

 われわれが本書で公平に取り扱わなかった話題もたくさんあり、そのなかには将来それについて書いてみようかと思っているものもある。信号検出理論、認知心理学、シチュエーションアウェアネス、情報フォレージング、法定技術、さらには意思決定、情報理論、ストーリーテリングなど多くの分野がある。乞うご期待だ。

 筆者たちは、皆同じ色の血が流れており、それゆえ平等であるという立場を取っている。だが、環境的な理由(次の段落で説明する)、紙面の都合、また一貫性ゆえに、主に男性形で記した(アメリカのファンドマネジャー全体のうち女性はたった11%にすぎない。過去20年にわたりこの数字が変わらないことを知ってわれわれは驚いた。女性は概して男性よりも投資家として優れていることを学術研究が示しているので、この少なさは残念なことである)。本書を通して単一の代名詞を用いたかったであるのが、残念ながら、英語にはその選択肢が存在しない。

 この判断を評価するにあたって、読者には環境的な利点を重く見ていただきたい。われわれの計算では(われわれは「フェルミ推定」を利用した。この方法の古典的な例はシカゴにいるピアノ調律師の数を推定する、といったものである)、「彼(he)」や「彼を(him)」ではなく、「彼または彼女(he or she)」や「彼または彼女を(him or her)」とすると、本書はおよそ4ページ長くなる。仮に本書が紙媒体で通算10万部売れる(おそらく楽観的な数字だろう)とすると、この判断によって印刷枚数は20万枚(両面印刷で)増える結果となる。それら各ページはおよそ1.8グラムであるので、追加のページ全体でおよそ363キロとなる。シエラクラブの計算に基づけば、これら追加のページはおよそ4本の木に相当する。一般的な木1本で二酸化炭素を1年に22キロ(固形二酸化炭素であるドライアイス22キロの塊を想像してほしい)ほど吸収し、酸素をおよそ118キロ生成する。1本の木が平均75年生きながらえ、4本の木を守るとしたら、われわれの判断は二酸化炭素で6532キロ、酸素で3万5380キロに等しいわけだ。時に自分たちの判断に思い悩むこともあったが、環境的な理由からそれを正当化した。これ以上優れた認知的不協和は思いつかなかったのだ。

 いくつか「整理整頓」をしたい。紙面の都合のため、われわれは議論の対象とするいかなる金融資産も主に「株式」と表現している。しかし、債券やオプション、建物や不動産、金(ゴールド)や切手、または珍しいスノーグローブに限らず、いかなる有価証券(ついでながら、いかなる資産)とも読み替えが可能である。同じ理由によって、たいてい株式を「購入する」または「買う」と表現しているが、「売却する」または「ショートする」と読み替えることもできる。脚注では、https://www.youtube.com/watch?v=pz6ZwIlGfw4 といったリンク先を掲載するのではなく、「グーグルで『Clarence fifth Beatle』と検索すればインタビュー全体を見ることができる」といった書き方をしているところもある。このようにしたほうが、リンク切れや転記の誤りも減り、読者にとっても簡単だろうと考えた。表や図のなかの数字の合計値が合っていない場合もある。これらの「間違い」はケアレスミスではなく、四捨五入の結果なので、ご安心いただきたい。この手の問題は、本書全体をセント単位にすることで回避できたかもしれないが、「精度」を高めても、すでに複雑な計算を不必要に乱雑にするだけだと考えた。

 われわれの社会は訴訟好きなので、次のような免責条項を掲載せざるを得ない。本書で表明される見方、意見、解釈は著者のそれであり、必ずしも彼らが所属する企業、引用した個々人、または彼らが関係するいかなる企業の見方を意味するものではない。

 最後に、しきたりに従い、本書にある数多くの誤謬脱漏の責任はすべてわれわれにある。

 新たに投資業界に足を踏み入れる読者にとって、本書がこれから遭遇することへの備えとなることを期待している。あなたは終わりなき旅路を歩み始めたばかりなのだ。シートベルトを締めて、ドライブを楽しんでほしい。


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