ワイコフが本書で伝えようとしたのは、株式の長期保有を目的とする「株式投資」ではなく、相場の短期的変動から収益の蓄積を狙う「株式トレード」の極意である。そこには「大恐慌の悲劇が繰り返されないように」という強い思いがあった。事実、1929年の高値から33年の安値まで、ダウ平均は87%ほど暴落し、回復するまでに約20年を要したのだ。
ワイコフ自身の血肉である「相場に取り組む姿勢」や「相場哲学」は、現代でも十分に通用する含蓄に富んだものが多い。とくにトレードの初学者には「耳寄りな噂や秘密情報をあてにせず、値動きそのものを分析する姿勢」について集中して読んでもらいたい。
著者/リチャード・D・ワイコフ(Richard D. Wyckoff)
19世紀末から20世紀始めのアメリカで活躍した株式トレーダー、投資コンサルタント、ジャーナリスト。株式トレードで輝かしい成功を収め、その経験を基にアドバイスと啓蒙活動に貢献した。特にマガジン・オブ・ウォールストリート誌の創刊者・編集者として有名。ダウ、リバモアなど当時の一流理論家、高名相場師の理論と実践にも通じており、独自の投資システムを確立した。テクニカル分析の先駆者のひとりであり、その著書は株式トレーダーのバイブルとも評されている。後代に影響を与えたトレーダーとして5本の指に入ると言われている。
本書は、ロロ・テープ(Rollo Tape)の著作として発表されたが、それはワイコフのペンネームである。
■スプリング反転パターン 『究極のトレーディングガイド』(ジョン・R・ヒル著) P.161より
スプリングやアップスラストという概念はR・D・ワイコフが最初に提唱したもので、スプリングとは、買いが売りを上回ることを意味するもうひとつの表現である。この概念に従ってできるかぎりトレードを機械的なものにするために一連のルールが考案された。その基本ルールとは、�_然覆�先の安値を割り込んで新安値をつけ、すべてのストップを一掃する、��売り物で尽くしのところに玄人筋の買いが入ると値が大きく飛ぶ、��これが直近2日間の終値を上回る長大陽線となる――というものである(左図参照)。
※スプリングのルールやアップスラストの詳細等については、『究極のトレーディングガイド』をご覧ください。
■ラリー・ウィリアムズも読んだ!! 『ラリー・ウィリアムズの短期売買法【第2版】』(ラリー・R・ウィリアムズ著) P.212より
スマッシュデイを利用した別のパターンを見てみよう。この概念を創案したのは、1930年代に株のトレーディング講座の教科書を書いたリチャード・ワイコフである。私は彼の仕事にかなりの親近感を持っている。1966年と1967年、私はカリフォルニア州カーメルの図書館のちょうど真向かいで働いていた。カーメルに住んでいたワイコフはいろいろな本を書き、のちにそれをその図書館に寄贈した。何の巡り合わせかは分からないが、ある日の昼休みに図書館に行き、彼の寄贈した本を偶然見つけたのだ。その翌年はランチを取りながら彼の本を読むのが日課になった。