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ウィザードブックシリーズ Vol.134

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新版 魔術師たちの心理学
トレードで生計を立てる秘訣と心構え

2008年1月上旬発売
ISBN 978-4-7759-7100-0 C2033
定価2,940円(本体2,800円+税5%)
A5判 上製本 662頁
著 者 バン・K・タープ
監修者 長尾慎太郎 / 訳者 山下恵美子


目次

「秘密を公開しすぎた」ロングセラーの大幅改訂版が読みやすくなって(全面新訳!!)新登場
旧版に比べて50%の大幅増加、《新刊に等しい第2版》の待望の刊行

儲かる手法(聖杯)はあなたの中にあった!!
あなただけの戦術・戦略の編み出し方がわかるプロの教科書!
「勝つための考え方」「期待値でトレードする方法」「ポジションサイジング」の奥義が明らかになる!
本物のプロを目指す人への必読書!

 マーケットを瞬時にして支配するためのシステムはだれにでも手に入れることができることを明らかにした『魔術師たちの心理学』の待望の第2版がついに登場! 現在のマーケット環境に照らし、今の時代にマッチした内容に大刷新されたこの第2版はさらにパワーアップ、成功するトレーディングに対するあなたの考え方を根底からくつがえすに違いない。並みのトレーダーや投資家から大飛躍を目指す人の必読書になること請け合いだ。

 第1版からの主な変更個所は、

 『新版 魔術師たちの心理学』では、効果が実証されたタープ博士の14のステップモデルとどんなマーケットでも勝てる最新の手法とテクニックをメーンテーマに、超長期のメジャーなブルマーケットとベアマーケットや、マクロ経済に関する章とトレーディングシステムをR倍数(リスク・リワード・レシオ)で考え、評価する方法を提示する章が新たに加わった。さらに、儲かるトレーディングにとって最も重要であるにもかかわらずほとんど理解されていない概念である「期待値」と「ポジションサイジング(トレードする量)」の説明にも力を注いでいる。

 マーケットにおける聖杯は各トレーダーによって異なるが、素早く発見できて、いかなるトレーディングプログラムにもすんなりと適用できるもの――それが聖杯だ。これもまたパフォーマンス重視の本書が最も伝えたいテーマのひとつである。真の成功を手に入れられるかどうかは、丹念に設計・検証したシステムがあなたのスタイル、目標、性格に合っているかどうかが決め手となる。

 利益の大幅アップを目指すために不可欠な情報とは、

 他人の推奨に従ってトレードする場合、事前にパフォーマンスと結果を評価することが重要。本書で行った実際のニュースレターの分析・評価結果を見れば、それは一目瞭然だ。本書の完全理解を目指して何回もじっくり読んでほしい。そうすれば、明るい未来への扉が開かれることは間違いない!


本書への賛辞

「トレーディングを行ううえでの確かなアドバイスと自分自身のトレーディング手法を開発するうえで役立つアイデアをふんだんに提供してくれる本だ。これまでの書籍に何か物足りなさを感じていた人――本書はそんなあなたに打ってつけの書である」 ――ジャック・シュワッガー(『マーケットの魔術師』『新マーケットの魔術師』『マーケットの魔術師【株式編】増補版』の著者)

「勝つための考え方とアプローチ、正しくあることは忘れて期待値でトレードする方法、ポジションサイジングの達人になる方法――プロフェッショナルトレーディングの核心にずばり触れた本書はトレーダーを目指す人の必携の書である」――エド・スィコータ(伝説的なウィザードのひとり)


原書
Trade Your Way to Financial Freedom
by Van K. Tharp

著者
バン・K・タープ博士(Van K. Tharp)

国際的に知られたコンサルタントおよびトレーディングコーチで、バン・タープ・インスティチュートの創設者兼社長でもある。これまでにトレーディングや投資関連の数々のベストセラーを世に送り出してきた。講演者としても引っ張りだこで、世界中の大手銀行やトレーディング会社向けのセミナーや通信講座も開設している。また『フォーブス』『バロンズ・マーケット・ウィーク』『インベスターズ・ビジネス・デイリー』などに多くの記事を寄稿している。著書は『魔術師たちの投資術――経済的自立を勝ち取るための安全な戦略』(パンローリング)、『ファイナンシャル・フリーダム・スルー・エレクトロニック・デイ・トレーディング』などがあるほか、DVDに『魔術師たちの心理学セミナー』(パンローリング)がある。


目次

監修者まえがき
序文   チャック・ホイットマン
第2版序文
日本語版へのまえがき(初版)
序文(初版)
謝辞


第1部 成功するために最も重要な要素――それはあなた自身

第1章 聖杯伝説
 聖杯のメタファー
 トレーディングにとって本当に重要なこと
 マーケットの天才のモデル化

第2章 意思決定バイアス――市場をマスターするのが多くの人にとって困難なワケ
 トレーディングシステムの開発に影響を及ぼすバイアス
 トレーディングシステムの検証に影響を及ぼすバイアス
 システムによるトレード方法に影響を及ぼすバイアス
 まとめ

第3章 目標の設定
 目標の設定――あなたのシステムの最も重要な部分
 トム・バッソ、目標設定について語る
 あなた自身の目標を設定する
 1.資質の一覧の調査
 2.先入観にとらわれることなくマーケットの情報を収集せよ
 3.目標を定める


第2部 システムの概念化

第4章 システム開発の手順
 4.どういった概念でトレードするのか
 5.大局観を把握せよ
 6.トレードする時間枠を決める
 7.あなたのトレーディングにおいて最も重要なものとは何か。そしてその測定方法は?
 8.初期1Rリスクの決定
 9.利食いストップを加えてシステムのR倍数分布と期待値を決定する
 10.R倍数分布の精度を決定する
 11.システム全体の評価
 12.ポジションサイジングによる目標の達成
 13.自分のシステムを改良する方法を決める
 14.最悪の事態に備えたメンタルリハーサル

第5章 うまくいく概念を選ぶ
 トレンドフォロー
 ファンダメンタル分析
 バリュートレーディング
 バンドトレーディング
 季節性
 サヤ取り
 アービトラージ
 市場間分析
 宇宙には秩序が存在する
 まとめ

第6章 大局観に合ったトレーディング戦略
 私が思い描く大局観
 要因1――米国の債務状況
 要因2――超長期のメジャーなベアマーケット
 要因3――経済的要因のグローバル化
 要因4――投資信託の影響
 要因5――規則、規制、税制の改正
 要因6――人間には負ける経済ゲームをやりたがる傾向がある
 考慮すべきそのほかの要因
 出来上がった大局観はどう監視すべきか
 まとめ

第7章 優れたトレーディングシステムの開発に不可欠な6つの要素
 あなたの選んだ変数
 雪合戦の暗喩
 拡大鏡を通して見た期待値
 機会と期待値
 予測――恐ろしいワナ
 実際のトレーディングへの応用
 あなたのシステムのパフォーマンスの評価方法
 まとめ

第3部 システムの重要な要素を理解する

第8章 セットアップを使ってシステムの適用時を知る
 仕掛けを構成する5つの要素
 ストーキングのためのセットアップ
 フィルター対セットアップ
 よく知られたシステムで使われているセットアップ
 まとめ

第9章 仕掛け(マーケットタイミング)
 ランダムな仕掛けを打ち負かすための試み
 よく使われる仕掛けのテクニック
 自分の仕掛けのシグナルを設計する
 ポピュラーなシステムで用いられている仕掛け手法の評価
 まとめ

第10章 抱え込むべきときを知れ――あなたの資産を守るには
 ストップとは何か
 適切なストップを用いる
 よく知られたシステムで使われているストップ
 まとめ

第11章 利食いの方法
 利食い手仕舞いの目的
 ストップと利益目標のみを用いる
 シンプルさと複数の手仕舞い
 やってはいけないこと
 よく知られるシステムで使われている手仕舞い
 まとめ


第4部 学習してきたことをひとつにまとめ上げる

第12章 金はみんなに行き渡る
 7人のトレーダーのアプローチ
 7人のトレーダーの5つの銘柄に対するアプローチ
 6週間後の結果
 R倍数で見た結果
 まとめ

第13章 システムの評価
 可能なアプローチ
 エクスペクチュニティ――機会数を織り込んだ期待値
 トレード機会コスト
 最大ドローダウン
 ニュースレターの推奨をサンプルシステムとして用いる
 まとめ

第14章 ポジションサイジング――目標を達成するためのカギ
 基本的なポジションサイジング戦略
 モデル1――資産一定額当たり1単位モデル
 モデル2――均等分配モデル(株式トレーダー向け)
 モデル3――パーセントリスクモデル
 モデル4――パーセントボラティリティモデル
 モデルのまとめ
 ほかのシステムで使われているポジションサイジング
 まとめ

第15章 結論
 過ちを回避する
 本書で語らなかったこと――タープ博士へのインタビュー

用語解説
推薦図書


監修者まえがき

 本書は、バン・K・タープ博士がトレードに関する彼の考え方を著した“Trade Your Way to Financial Freedom”の新版の邦訳である。 タープ博士といえば「新マーケットの魔術師」にも登場するトレードにまつわる心理的な実証的分析の権威であるが、同時にトレーダーに対するコンサルタントとしても有名である。

 彼は心理学者ゆえの独特の視点を持ち、さらにもう少しで最初の「タートルズ」の一人に選ばれかけたくらい、トレードに対する深い造詣を持っている。そして彼の業績はその名に恥じず、本書の旧版は米国でも日本でも驚きを持って迎えられ、今もって多くの投資家やトレーダーたちの支持を集めている。今回の新版は、旧版で一部に見られた誤謬を訂正し、さらにその後の研究成果を反映した、より充実した内容となっている。

 さて、タープ博士が本書で語るトレードに関する概念のうち、斬新な主張として有名なのは、「トレードの勝敗は仕掛けではなく手仕舞いによって決まる」と「最終的に運用の結果を左右するのは、使用するシステムのアルゴリズムの良し悪しではなく、ポジションサイジングである」の二つである。たしかに、これらの重要性を個人投資家向けに公に指摘したのは、米国人ではタープ博士が最初である。そして、事実としてこの両者に関する適切なルールなくして、一貫性を持ったトレードは難しい。

 もちろん、タープ博士自身が本書内で指摘しているように、トレーダーが何らかのエッジを持ったトレード手法をすでに持っていることがその前提であるが、エントリーに関しては同じアルゴリズムでも、適切な手仕舞いとポジションサイジングを行った場合とそうでない場合とでは、結果はまったく異なるものになる。

 さらに、洗練されたポジションサイジングは、それを用いる投資家やトレーダーに対し、運用に当たっての安心感を持たせる効果をもたらし、結果として、一番大切な事項、つまり長期にわたる一貫した運用を可能にする。

 ここにおいて、一般投資家に対してこの分野の重要性に目を見開かせたと言う意味では、タープ博士の業績は非常に大きいと言えよう。 また、この辺りの考察に関しては、ラルフ・ビンスが書いた『投資家のためのマネーマネジメント――資産を最大限に増やすオプティマルf』(パンローリング)を併せてお読みいただければ、より理解が深まるものと思う。

 最後に、翻訳にあたっては以下の方々に心から感謝の意を表したい。山下恵美子氏には、正確で分かりやすい翻訳をしていただいた。そして阿部達郎氏には丁寧な編集・校正を行っていただいた。また、本書が発行される機会を得たのは社長である後藤康徳氏のおかげである。  なお、私の知るかぎり、日本人で「トレードの勝敗は仕掛けではなく手仕舞いによって決まる」と最初に指摘したのは後藤氏であり、それはタープ博士の原書が出版されるはるか以前のことである。

 2007年12月

長尾慎太郎


序文      チャック・ホイットマン

 わが社では、本書を新人トレーダーの必読書に指定している。バン・タープ氏の書籍のなかでも、本書は彼のセミナーと通信教育講座の内容が集約されたものであり、新人トレーダーが彼の投資法を学ぶうえで格好の書と思ったからだ。申し遅れたが、私はチャック・ホイットマンで、シカゴ商品取引所内のトレーディング会社、インフィニウム・キャピタル・マネジメント(Infinium Capital Management)社のCEOを務めている。今現在、わが社の従業員数は90人で、15の取引所を通じてあらゆる資産クラスのオプションとその原資産のトレードを行っている。実は私は個人的に本書を大量に購入したのだが、その話に入る前に、私とバン・タープ氏との関係について話しておこう。

 私が初めて彼の投資法のことを知ったのは1998年のことである。当時、私の師であるブルースはバンの通信教育講座を2つ(『ピーク・パフォーマンス・コース・フォー・トレーダーズ・アンド・インベスターズ(Peak Performance Course for Traders and Investors)』と『ディベロッピング・ア・ウィニング・システム・ザッツ・フィッツ・ユー(Developing a Winning System That fits You)』)受講していた。のちにバンのシステムセミナーにも出席したブルースは、その内容と出席者の質の高さに深く感銘を受けたことを私に話して聞かせてくれた。

 当時、私はトレーディングキャリアを通じて何度か訪れたスランプのひとつの真っただ中にいた。前年の1997年は最高の年だった。だから1998年は全身全霊を傾けて可能なかぎりベストなトレーダーになろうと決意していたというのにである。敗因はたったひとつのアプローチしか知らなかったことにある。私の知る唯一のアプローチとは、利益目標を達成するために「トレード量を増やす」ことだった。それがオーバートレードへとつながり、大きな利益が出たかと思えば大きな損失を出すという不安定なトレードに一喜一憂する羽目に陥ったのは言うまでもない。1998年の秋、大きなトレードに打って出た。理論的には申し分のないトレードだった。ところがトレード管理を誤ったために、そのトレードは瞬く間にトレーディングキャリアのなかで出した最大損失トレードのひとつになってしまったのだ。今振り返れば、そのとき私は数多くの過ちを犯していた。これはバンの言うところの、「自分のルールに従わない」という過ちである。トレードの前に起こり得るシナリオを想定することもなく、リスク・リワード・レシオは最悪で、損失が出れば感情的になり、損失を出さないようにするためには何だってやった。バンの言葉を借りるならば、「ロス・トラップ」にはまっていたわけである。小さな損を取ることを嫌がり、損を出さないようにあがいていたわけである。しかし、あがけばあがくほど事態は悪化した。損失は次第に拡大し、損失が拡大すればするほどますます損を取れなくなる。そしてついには痛みに耐えかねてトレードを投げ出す。トレードの清算と同時に、私はある誓いをたてた。過ちから学ばなければならない、その過ちを繰り返さないために。思えばこのときが私のトレーディングキャリアの大きなターニングポイントであった。

 トレーダーとして成長するためには何をしなければならないのか。それを知るために、私は自分の評価を始めることにした。そのときにブルースから借りたのが『ピーク・パフォーマンス・コース』だった。この本のある章に「ロス・トラップ」の話が出てきた。まさに私がやっていたそのものではないか。ああいう場合はこうすればよかったのか。私は目からウロコが落ちる思いでその章をむさぼり読んだ。その章には、例のトレードで私が犯した過ちがすべて記述されており、私のトレーディング手法についての記述もあった。私はその本がすっかり気に入り、すぐに注文した。

 1999年1月、膝の手術を受けたため10週間のベッド生活を余儀なくされた。当時フロアトレーダーだった私はその期間を利用して、「フロアの外」で考案したトレーディングアイデアのいくつかをテストしてみようと考えていた。それと同時に『ピーク・パフォーマンス・コース』も読み始めた。読み始めるや否や私は考えを改めた。この期間にやるべきことは、市場から離れて頭の中を整理し、心理面を鍛えることだと気づいたのだ。タープ博士がその教材の最初に述べていた言葉――あなたが最もやりたくないことが、おそらくあなたにとって最も必要なこと――をヒントに、教材の練習問題を一つひとつやってみることにした。毎日4〜6時間、10週間続けた。このプロセスを経ることで、それ以降の私のトレーディングの基礎になる、それまでとはまったく違った心理状態のトレーダーへと私は生まれ変わった。

 これを機に、私はタープ博士のセミナーのひとつに出席することにした。講師はバンと、『金持ち父さん貧乏父さん』(筑摩書房)の著者として知られるロバート・キヨサキ氏だった。『ピーク・パフォーマンス・コース』が私の心理を変えたときのように、このセミナーは富と富の創出に対する私の考え方を根底から変えた。タープ博士は第2版序文で「経済的自由」の意味を説明することで、ごく一部とはいえセミナーの内容を第2版にも取り入れている。これは私にとってはうれしいかぎりである。大学の経済学の授業では富とは限りある資源であると教わったが、富とは限りある資源ではなくアイデアであることを私はタープ博士から学んだ。成功するために最も重要な要素は自分自身であること、そして時間は金よりも貴重であることを悟った。その瞬間から、私はこの新たな認識に基づき、生産性の向上と学習を重視した意思決定を行うようになった。金を使うことで生産性を高められ、より多くの学習ができるのなら、そうしよう。セミナー終了後、私はトレーディングと富に対する認識を新たにトレーディングへと復帰した。そして次の4週間で、私はそれまでに稼いだ合計額以上の金を稼いだ。

 その後はトレーディングのペースを落としてパートタイムベースでのトレーディングに切り替え、自分のトレーディング会社を設立して一流の投機家になるという長年の夢の実現に向けて準備を開始した。それからの2年間は、学習とリサーチ、トレーディングプラン作りに専念した。プランは、バンのトレーディング原理を基に作成した。当時読んだバンの本は、本書の初版と『ファイナンシャル・フリーダム・スルー・エレクトロニック・デイトレーディング(Financial Freedom Through Electronic Day Trading)』だ。また、バンのほかのセミナーにも出席し、5つの基本原理を基にトレーディング会社を設立した。そのうちの4つの原理はバンから学んだものだ。これらの基本原理は会社設立以来変わっていない。以下がその5つの基本原理であり、バンの教えた順序で列挙している。

  1. 心理

    世界で最高の機会と資源を手に入れることができたとしても、正しい心理状態になければ、それらを有効に活用することはできない。自分の現実を生み出し発現させるものは自分自身なのである。例えば世界が問題を抱えていると思えば、われわれの目には問題だらけの世界しか映らない。だから世界はそういうものとして現れる。しかし、この世は何と豊かなのだろうと思えば、この世の豊かさを実感させられるものに自然と目が向くため、世界はそういうものとして現れる。わが社では、新入社員の雇用から教育、企業の発展に至るまですべての面でこの点を最も重視している。この『魔術師たちの心理学』(パンローリング)第2版では、この考え方が随所に織り込まれている。あなたの得られる結果はあなた自身が生み出すものなのである。つまり、あなたのトレーディングがうまくいくかどうかは、あなた次第ということである。得られた結果が意図しないものであれば、どこかで過ちを犯したはずだ。だからその過ちを正せばよい。

  2. ポジションサイジング

    最高のトレーディングプラン、情報、発注システムがあったとしても、トレードサイズが大きすぎればすべては気泡に帰す。この第2版でバンが指摘しているように、ローリスクのアイデアとは、長期にわたって、たとえ最悪の事態が起こったとしてもそれを乗り切ることができるようなリスク水準でトレードすることで、そのシステムの長期的な期待値を達成することができるようにするようなアイデアを意味する。これはトレードで成功するためのキーポイントのひとつだ。この点を確実に理解できるまで本書を繰り返し読むことだ。損失も出るだろうが、重要なのは損失を一定の範囲内に抑え、最大限の利益を目指すことである。ポジションサイジングはトレードで最も重要な要素であるにもかかわらず、その重要性を説く者はほとんどいない。システムのこの部分こそがあなたの目標を達成するうえできわめて重要な部分なのである。本書を読むときには、ぜひこの点に留意していただきたい。

  3. 市場の選択

    この原理は、第4章で紹介されているタープ博士のモデルを基に私が追加したものだ。どの市場でトレードするかは、どうトレードするかよりはるかに重要だ。私はトレーディングキャリアを通じてこの原理の重要性を実感してきた。1990年代の終わりから2000年代初頭にかけて、ストックオプションで大金持ちになった連中がいたが、彼らは自分たちのやっていることがまったく分かっていなかった。彼らのなかにはそれから何年もしないうちに、わが社にアシスタントの職を求めてやってきた者もいる。一方、手堅いトレードで低迷する市場を生き抜いた素晴らしいトレーダーもいた。彼らは市場が活発でありさえすれば、伝説的人物になっていたはずだ。これで私の市場に対する考え方は固まった。最も活発に取引され、ボラティリティが最も高い市場を見つけて、それらの市場に集中せよ。「石油のあるところに行け」とはアメリカの石油王ジョン・ポール・ゲティがよく言っていた言葉だが、この第2版では、まず世界を取り巻く全体像をとらえたうえで、その全体像にフィットする市場と戦略を見つけることについての章が付け加えられたのはうれしいかぎりだ。

  4. 手仕舞い

    市場で儲けられるかどうかは、手仕舞いの仕方にかかっている。自分の間違いに気づいたら負けトレードはすぐに損切りして損失を制限することが重要だ。これについては第10章で詳しく説明されている。また勝ちトレードについては利を伸ばすことが大切だ。これについては第12章で説明されている。私がこれまでに見てきた最高のトレーダーは、自分の間違いを潔く認め、エゴを捨ててだれにも気づかれることなく素早くポジションを手仕舞いすることのできる人々だ。

  5. 仕掛け

    トレードではランダムに仕掛けても勝つことができる。これは第9章で説明されている。第9章では、タープ博士のランダムな仕掛けシステムとそれによる儲け方についても解説されている。エゴを捨ててトレードできる健全な心理状態にあり、損失を最小限に抑え(1R以下の損失)リスク・リワード・レシオの良いトレード(勝ちトレードの初期リスクに対する倍率が高いほどよい)を行うことで達成される期待値が正のシステムを持ち、最良の市場で、目標を達成できる適正なポジションサイズでトレードすれば、仕掛けは問題ではない。これらの原理はこの第2版のいたるところで論じられている。

 ここで紹介した5つの原理は、私のビジネスの中核をなすものである。したがってわが社の新入社員はもちろんのこと、全従業員にも徹底的にたたき込んでいる。これに対して、一般トレーダーのほとんどに共通する次の考え方は今述べてきた5つの原理と好対照をなすものだ。  一般トレーダーが最も重視しているのは正しい株を正しいタイミングで選ぶことであり、成功するのに本当に必要なことは完全に無視されている。だから本書が必要なのである。

 第2章では、多くの人にとって成功することが難しい理由が説明されている。原因は、意思決定にバイアス(先入観、偏見、思い込み)を持ち込むことにある。タープ博士はこれを「意思決定ヒューリスティック」(合理的判断を誤らせる簡便法)と呼んでいる。皮肉にも、ヒューリスティックのことを知っている人ほど市場を予測しようとする。これに対してわが社では、損をするのは非効率的な意思決定が原因だと説くバンの考え方を採用している。つまり、成功するためには意思決定を効率的に行えばよいということである。

 冒頭で述べたように、本書はわが社の新人トレーダーの必読書である。バンの書籍はすべて貴重な情報の宝庫だが、本書はそういった貴重な情報がコンパクトにまとめられたものである。本書は、あなたの信じることに合致するトレーディングシステムを開発し、目標を設定する方法を学ぶうえで、大いに役立つはずだ。さらに本書を何度も読み返すことで、わが社の企業運営哲学にもなっている5つの原理に対する理解はより深まるはずだ。

 タープ博士の哲学を学ばなければ私の今の成功はなく、わが社の多くのメンバーとも成功の喜びを分かち合うことはなかっただろう。私がタープ博士と偶然出会い、彼から学ぶ機会を得たことは、神のご意思だと思っている。わが社の立ち上げに際しては、彼の哲学は何度も真価を問われたが、その都度試練を乗り越えた。わが社が目覚しい発展を遂げたのは、ひとえに彼の哲学のおかげである。  読者のみなさんも、本書から得られる素晴らしい教訓を基にトレードを成功に導き、目的のある人生を送られることを願ってやまない。   (インフィニウム・キャピタル・マネジメント社CEO[イリノイ州シカゴ])


第2版序文

本書を通じで経済的自由を手に入れよう

 まずは本書のタイトルから説明したいと思う。原題に含まれる「financial freedom(経済的自由)」を見て多くの人は、誇大広告なんじゃない? と思ったようだ。ジャック・シュワッガーでさえ初版のコメントで、「経済的自由は約束できないが、トレーディングを行ううえでの確かなアドバイスと自分自身のトレーディング手法を開発するうえで役立つアイデアをふんだんに提供してくれる本であることだけは約束できる。これまでの書籍に何か物足りなさを感じていた人――本書はそんなあなたに打ってつけの書である」と書いたほどだ。

 そこで、誤解のないように私の意味する経済的自由について説明しておきたい。詳しくは拙著『魔術師たちの投資術――経済的自立を勝ち取るための安全な戦略』(パンローリング)の第1部に譲るとして、ここではその要約を述べるにとどめる。

 経済的自由とは、金についての新しい考え方である。ほとんどの人は、金とツールを最も多く持つ者がマネーゲームの勝者になれると信じている。これはあなたを欺くために他人が作った法則である。この法則に従えば、あなた以外の人がマネーゲームの勝者になる。理由は簡単だ。世界一の金持ちは世界にたったひとりしかいない。したがって、自分は億万長者だと思っていたとしても、あなたがゲームの勝者になれる確率はきわめて低い。

 また最も多くのツールを持つ者がゲームの勝者になれると考えているとすると、おそらくあなたは借金まみれになるだろう。今は頭金と月賦額が少なければどんなツールだって買える時代だ。月賦で好きなだけツールを買うとどうなるか。待っているのは、借金地獄と経済的奴隷生活だけであり、(私の意味する)経済的自由とはどんどん無縁になっていくばかりだ。

 私にとって経済的自由とは、いろいろなマネールールを採用してマネーゲームの勝者になることを意味する。これらのルールに従い、ゴールを目指してひたすら努力し、過ちから学べば、本書を通じて経済的自由が得られることを私はあなたに約束する。経済的に自由であるとは、今ある元手から月々の支払いに必要な額を上回る金を稼ぎ出すことを意味する。例えば、月々の出費額が5000ドルとすると、今ある元手から5000ドル以上の金を稼ぎ出すことができればあなたは経済的に自由ということになる。

 あなたの金をあなたのために働かせる数ある方法のひとつが、トレーディングであり投資である。本書を通じて、それほど労力を必要とせず(1日せいぜい数時間の労働で)、月々の支払いに十分な額の金を生み出すことができる方法を編み出すことができれば、あなたは経済的に自由になれる。例えば、30万ドルの口座で年に6万ドルのトレード利益(つまり20%のリターン)を出し、日々の労働時間がわずか数時間なら、あなたは経済的に自由ということになる。だが、経済的自由を手にいれるための基盤づくりには何百時間、あるいは何千時間もの時間が必要だろうし、自己の向上を図ることなく20%もの高いリターンを維持することはできないことだけははっきり申し上げておきたい。しかし、いったんこの基盤さえできてしまえば、経済的自由を手に入れることは可能だ。


トレードできるのは自分が信じていることだけ

 本書の初版が出版されたのは1999年だ。それ以来大勢の読者から、トレーディング、投資、市場へのアプローチの考え方が根本的に変わったという言葉をいただいた。

 トレードするのは市場ではない、というのが私の基本的な考え方だ。トレードできるのは、市場について自分が信じていることのみである。例えば、あなたは市場が上昇する(あるいは、長期的に見て上昇する)と信じており、トレンドフォローがうまくいくと思っているとすると、トレンドフォロー手法を使うだろう。つまり、上昇している株を買うということだ。逆に、市場は過大評価されているので下落するだろうと信じていれば、上昇している株を買えば自分の考えに反することになるので上昇している株は買わないはずだ。

 初版で述べたことはすべて、市場について私が信じていることと、執筆した時点においてトレードで成功するために必要だと私が思った事柄である。しかし、信じていること=現実ではない。人は自分のフィルターを通過したものだけを受け入れ、それが自分の現実になる。そのフィルターの役目をするのが自分の信ずることなのである。このことはずっと以前から知っていたので、私が教えることは市場と成功するトレーディングについて私が今最も有益だと信じていることを反映したものにすぎないと常々言ってきた。

 長い年月のうちには、もっと有益だと思える考えがふと頭をよぎることが時折ある。初版が出版されてからのこの7年、私の脳裏には前よりももっと有益な新しい考えが続々と誕生した。根底にある概念は変わってはいないが、初版執筆当時よりも考え方はより進化した。この第2版の執筆を決意したのはそのためである。

 私の今の考え方を反映して初版から大きく変更した点は以下のとおりである。

 大きな変更点は以上だが、これ以外にも、より優れたトレーダーや投資家になるために重要な小さな変更点が第2版には多数含まれている。初版については多くの読者から好評をいただいたが、この第2版もより一層読者のお役に立てることを願っている。
 2006年8月

バン・K・タープ博士


日本語版へのまえがき(初版)

 私は1948年から1951年まで、年齢で言えば2歳から5歳まで日本で生活していたことがある。記憶は定かでないが、住んでいたのは北海道だったと思う。両親に連れられて、当時は外国人が訪れたことのないような地方を旅行した。また、幼少期に3人の日本人女性が私の世話をしてくれたことを覚えている。そのひとりがミチで、彼女は私にとって第二の母親である。やがて私は日本を去ることになったが、そのとき、かなり日本語が分かるようになっていたということだった。日本は私にとって第二の故郷であったし、ミチと別れるのは大変寂しかった。ミチは10年ほどして他界したと聞いたが、私にとってこれ以上の悲しみはない。

 1990年から1993年にかけて私は二度日本を訪れた。一度目は『マーケットの魔術師』(ジャックシュワッガー著、パンローリング刊)の日本語版が出版された機会に短期間の講演旅行をするためだった。私は幼少期の体験から日本に対し、深い親近感を持つことができた。そして日本文化や日本人に大きな親しみを感じることができた。こうしたことで滞在中は大変くつろいだ気分になれた。

 数年後に私は再び日本を訪れた。これは、日本の建設会社のオーナーが私にコンサルティングを依頼してきたためである。通訳つきで10日間ほどコンサルティングを行い、私が主催している「トレーダーと投資家のためのピーク・パフォーマンス・コース」のほぼ全体を個人教授した。コンサルティングが終わったあとにオーナーは「タープ博士の手法は投資に役立つばかりでなく、私のビジネス全般にも役立ちます」と言ってくれた。それは彼にとって絶好のタイミングだった。翌年、日本は空前のベアマーケットに突入し、市場と彼のビジネスに大きな影響を与えたからである。私と日本とのかかわりを思い返すと、本書が日本語で出版されたことは大変光栄に感じている。本書が日本語で出版されることに私が光栄を感じるのと同じ程度に、読者が本書によって強いインパクトを受けることを望むものである。

 多くのクライアントが、本書に収めたある特定の部分について、本書には掲載しないでほしいと言ってきた。私が「あまりにも秘密を公開しすぎる」と言うのである。しかし私の仕事はトレーダーや投資家が最高のパフォーマンスが上げられるようにコーチの役割を果たすことである。そしてパフォーマンスを上げるために使えるツールで重要でないものはない。なぜなら、世間には誤った情報があふれ、それが一般の人を惑わしているからである。

 誤った情報といっても、大部分は意図的に流されたものではない。人は惑わしてほしいのだ。彼らは見当違いの質問をし、情報の売り手はお望みどおりの答えをすることで、報酬を得ている。例えば、次のような質問である。

 私はアジア各国を回って期待値、トレーダーにとってのビジネスプランニングの重要性、ポジションサイジングなどについて講演を行った。しかし質疑応答の時間になると、聞かれることといえば、「今のマーケット状況はどうか?」とか、「持ち株はすぐに売ったほうがよいか?」とか、「この相場ではどうしたらよいか?」などが大半だった。こうした質問はバイアスに基づくもので、あまり重要性がないとの理由を再三再四説明したにもかかわらず、必ず聞かれるものである。

 「どの銘柄」の株を「どのように」買うかという質問があって、さらに見当はずれの質問が続いた。それは次のようなものだった。

 「相場の流れを読み違えないためには、どのような基準で相場を仕掛けたらよいでしょうか」

 これは答えるのに骨の折れる質問だ。投資のベストセラーには、80%の勝率があるという仕掛けの戦略とか、大きな利益を約束するとか、もっともらしいことがたくさん書かれている。百聞は一見にしかずということで、戦略の説明には相場が上昇し始めたところを示すグラフが掲載されている。そのような「都合の良い」グラフは多くの人を引きつけ、本はよく売れるのである。  1995年にマレーシアで投資相談会が開かれ、先物市場では有名な講演者が高い確率の仕掛けのシグナルについて話した。満員の聴衆のなかで彼は懇切丁寧にシグナルの説明をした。講演の終わりごろにひとりの聴衆が手を挙げて尋ねた。「先生はどのように手仕舞いされるのですか」。彼は冗談ぼく「私の秘密のすべてを知りたいということですか」と答えた。

 1年後にまた別の相談会で600人の聴衆を前に、高い確率の仕掛けの手法について1時間の講演があった。一言も聞き逃すまいと聴衆は耳を傾けた。そこで語られたことは、タイトストップを維持し、マネーマネジメントに注意を払うということだけだった。講演終了後、講演者は約30分間で1万ドル分の本を売った。聴衆は仕掛けの必勝法にわれを忘れていたのである。

 同じ相談会で別の講演者がマネーマネジメントについて話した。マネーマネジメントは利益を確定するカギとなるものだ。このときの聴衆は30人で、講演に関する本を購入したのは4人足らずだった。

 人は役に立たないものに引きつけられる。それが人間の本性である。本書によって、その理由と対処の仕方を知ることができるだろう。  このような話は講演会では珍しいことではない。だれもがよく当たる仕掛けのシグナルの話に群がり、本当に重要なことを学ぶ者は聴衆の1%にも満たない。そして、利益を上げるための最も重要なカギにっいての講演になると、少数の聴衆しか足を運ばないのである。  投資用のソフトウエアも同じような偏った考え方で作られている。ソフトウエアには、一般にマーケットの過去の動きを完全に説明してくれるという指標が組み込まれている。それがなぜ役に立たないのか? これらの指標は過去のデータを使って作られ、それで値動きを予想しているからである。これで本当に将来の値動きを予想できるのであれば、文句のつけようがない。しかし実際には、このような方法で価格を予想することはできない。ところがこのソフトウエアが実によく売れているのである。

 私は15年以上、トレーダーのコーチ役を引き受けてきた。世界のトップトレーダーや投資家と仕事をともにし、またさまざまな性格のトレーダーや投資家の心理分析を数千回も行ってきた。こうした背景と経験のために、本書には、読者がトレーダーや投資家としてパフォーマンスを大幅に改善するのに役立つ多くの情報を載せることができた。

 投資法の研究をしていた期間に、私のマーケットについての考えは大きく変化した。そして読者がトレーディングやマーケット(あるいは自分自身)に対して持つ多くの「神聖」な信念は、本書を読み終えるころにはまったく新たになっていることだろう。その理由は、マーヶットの本当の「秘密」を知るにはマーケットで実際に働く力について知らなければならないからである。ほかのものに気を奪われていると、いかなる秘密も知ることはできないだろう。しかし本書には、相場についての私の信念と意見だけを書いておいた。虚心坦懐に本書を熟読し応用すれば、相場で常に勝つ能力を飛躍的に伸ばすことができるだろう。

 本書は大きく3部で構成されている。第1部では、自己発見の方法とマーケットリサーチを自分自身で行えるように、その能力を改善する方法を説明した。第1部には、成功に導くトレーディングのための最も重要な事項を説明した章と、経験則に基づく判断のための章、そして自分の目標を定めるための章を設けた。この部は意図的に短くしているので、システム開発の「肝心なところ」がなかなか分からなくても、イライラすることはないだろう。しかし第1部は、投資の成功を左右する最重要部分である!

 第2部では、私のシステム開発のモデルを示した。ここではトレーティングやマーケットシステムにかかわる概念を説明し、それらの概念に関する章の執筆を各分野のエキスパートに依頼した。また、第2部では期待値について説明した。これは最も重要な考え方のひとつで、だれもが理解しておくべきものである。マーケットに深くかかわっている者でも、この期待度についてよく知っている者は少ない。ましてや期待度を中心にシステムを構築することの重要性を理解している者はさらに少ない。こうした意味からも、第2部を注意深く学習する重要性が分かるだろう。

 第3部はシステムのさまざまな要素について述べている。例えば、セットアップ、仕掛けやタイミングの手法、ストップロスによる手仕舞い、利益を確定する手仕舞い、そして本書で最も重要な章のひとつであるポジションサイジングである。最終章では、ここまで取り上げていなかった残りの重要事項について説明した。

 最後に本文では触れていないが、システムを構成する重要なある要素について説明しておきたい。それは、そんなシステムが機能する時期を、読者がどのように確認するのかということである。例えば、ブルマーケットで利益を上げることができるようにシステムを構築したとすると、現在、日本が体験してきているような長期のベアマーケットではどうすればよいのか。私はトレーディングの「定期的見直し」を勧める。自分のシステムを理解し、マーケットでどのように機能するか熟知すべきだ。マーケットといってもいろいろあり、緩慢なブルマーケット、値動きの激しいブルマーケット、緩慢な横ばいのマーケット、値動きの激しい横ばいのマーケット、緩慢なベアマーケット、値動きの激しいベアマーケットなどである。読者はマーケットの現状と、そこで投資をすべきか、とどまるべきかを教えてくれる指標を持つべきだ。さらに3カ月ごとにシステムの見直しをして、「マーケット状況はどうか」と自分で確認すべきだ。そして「今回のようなマーケットで自分のシステムはどの程度の成功を収めることができるのか。今までのように好成績を達成できるのか」と確認する。本書に書かれたことに、この手法を加えることで、どのようなマーケットでも好成績を上げることができるのだ。

 2001年11月

バン・K・タープ博士


第1部 成功するために最も重要な要素――それはあなた自身

 本書の目標は2つある。

1.聖杯探しの手助けをすること
2.自分に合った勝てるトレーディングシステム探求の手助けをすること

 ただし、これら2つの目標を達成するためにはひとつのきわめて重要な前提がある――それは、あなたのパフォーマンスを向上させるための最も重要な要素はあなた自身、ということである。ジャック・シュワッガーは2冊の本を書くに当たってトップトレーダーたちにインタビューした。彼らへのインタビューから彼が見い出した事実とは、彼らの最大の成功要因は自分に合ったトレーディングシステムを持っているということだった。この前提を一歩踏み込んで考えるならば、自分自身のことを知らなければ自分に合ったシステムを設計することはできない、ということになるだろう。

 この点を踏まえて、本書の第1部では、自己発見とマーケットリサーチができるレベルにまで自分を引き上げる方法について見ていくことにする。第1部は、トレーディングで成功するための心理(聖杯とは何か)、意思決定ヒューリスティック、目標設定についての3つの章から構成されている。


第2部 システムの概念化

 第2部は、システムを概念化し、その構築に必要な基盤作りの手助けをすることを目的とする。第2部は4つの章から構成されている。まず第4章では、あなたにフィットするシステムを開発するうえで必要となる、きわめて重要な手順を提示する。これは、世界のベストトレーダー、投資家たちのリサーチ方法を調査するために彼らを何年にもわたって研究した結果として得られたものだ。

 第5章では、さまざまな概念のなかからあなたのシステム作りに役立つと思われるものをいくつか選んで説明する。この章は各概念に精通したエキスパートに執筆を依頼した。加えて、私自身によるセクションもいくつか含まれる。提示した概念のなかであなたの興味を引く概念はどの概念だろうか。気に入ったものがあれば、あなたのシステムに採用しても構わない。

 どういったシステムを開発するにしても、世界の全体的な動きを把握し、その変化に柔軟に適応できなければならない、というのが私の基本的な考え方である。第6章は世界の全体像に関する私の考え方を述べたものだ。例えば、あなたが1998年にハイテク株だけを買うトレンドフォロー型システムを持っていたとすると、自分は大金持ちになれる、大成功だ、と思ったことだろう。しかし、2000年にはすべてが逆さまになった。だからそのシステムでは対応できなかったはずだ。

 第7章では期待値について説明する。期待値は、あなたのトレーディングシステムが1ドルの損失に対していくらの利益を上げられるかを示すものだ。期待値を真に理解しているトレーダーや投資家は少ないが、期待値は本書を通じて最も重要なテーマのひとつである。


第3部 システムの重要な要素を理解する

 第3部はいよいよシステム構築の話に入る。第3部に進む前に、第1部と2部を完全に理解しているかどうか確認しよう。第1部と2部はシステムを構築するうえでの基礎となる重要な部分だ。

 それでは各章別に概要を紹介しておこう。第8章はセットアップについての話だ。セットアップとは、何か別のことが発生するのに必要となる条件(状態)のことをいう。仕掛けシステムと手仕舞いシステムのほとんどはセットアップとアクションを促すトリガーとから成る。したがってまずはセットアップの話から始めることにした。第8章では、最もよく使われる仕掛けのセットアップについて学習する。対象とする市場は株式市場と先物市場である。トレードや投資の達人たちも皆このセットアップを使っている。しかし、これらのセットアップはそのままシステムに昇格することも多く、人々はそれをすんなり受け入れる。これは宝くじのバイアスによるものだ。しかし、本当に価値のあるものを作り出すには、セットアップだけでなく、システムのほかの重要な部分にも目を向けることが重要だ。これは本書の内容を十分に理解していれば分かるはずだ。

 第9章は仕掛けのテクニックについて議論する。基本的にはシステムの信頼度(どれくらいの頻度で利益を出すか)は仕掛けのテクニックでコントロールできるが、システムを評価するうえでは信頼度は期待値ほど重要ではないことはこれまでの学習ですでにお分かりのはずだ。なぜなら、信頼度が高くても期待値は負になることもあるからである。第9章では、時間枠が長くなるほど仕掛けは重要ではなくなる理由について見ていく。ほとんどの仕掛けのテクニックはランダムな仕掛けとさほど変わらないが、ランダムな仕掛けよりも高い信頼度を生み出す仕掛けシステムも存在する。これについても見ていく。

 第10章は1ポジション当たりのリスク(つまり、1R)の決め方について説明する。どのシステムも資産を保全するための手仕舞い手法を備えていることが必要である。これは、システムの「ディザスターストップ」要素であり、システムを評価するうえで最も重要な基準のひとつだ。ディザスターストップの目的、および設定幅の広いストップと狭いストップの長所と短所についても議論する。

 第11章は利食いのための手仕舞いについて議論する。利食いのための手仕舞いは、各トレードのリスク・リワード・レシオを最大化し、ひいては期待値を向上させることを目的とするものだ。第11章では、さまざまな手仕舞いの種類と目的、複数手仕舞いの利点、手仕舞いをシンプルにすることの重要性について解説する。期待値を向上させるためにはどういった手仕舞いを使えばよいのかが分かってくるはずだ。

 第3部は機能するテクニックを中心に議論を進めるが、機能しないテクニックについても一般論程度の議論は含まれる。徹底した議論を行わない点については異論のある読者もいるかもしれないが、第3部の目的は完全なシステムを提示することではない。完全なシステムを提示したところで、あなたの信じていることにフィットしなければあなたにとっては無用の長物にすぎない。第3部はあくまで、独自のシステム作りのためのツールを提供し、心理的バイアスに惑わされることなく自分に合ったシステムを開発できるように手助けすることを目的とするものであることをご理解いただきたい。

 また話題のトレーディングシステムの中身を検証し、それぞれのシステムの構成要素についても見ていく。人々はシステムのどの部分を重視しているのか、それを改善するためにはどうすればよいのか。ほとんどの人が無視している部分――そこに改善のための大きなヒントが隠されている。これらのシステムを取り上げたのは批判することが目的ではない。紹介するシステムはよく知られたものばかりで、どのシステムも何かしら優れたものを持っている。これらのシステムで気に入ったものがあれば、オリジナルソースを入手してさらに詳しく調べてみるとよいだろう。これらのシステムを詳しく検証し、その強みと弱みを理解することは独自のシステム作りに大いに役立つはずである。


第4部 学習してきたことをひとつにまとめ上げる

 第4部では、新たなトピックに触れながら、これまでの議論をひとつにまとめ上げていく。ここまでの議論で取り上げなかったトピックとして、構築したシステムの評価方法、偉大なトレーダーのさまざまな市場状態に対する考え方、そして最も重要な、目標を達成するためのポジションサイズの決め方を学習するとともに、システムを完成させトレードを向上させるために必要なそのほかの要素についても議論し、これまで学習したことを縦横に結びつけて全体像を見ていくのが第4部の目的である。

 それでは各章の内容を紹介しよう。第12章は、これまでの議論内容をひとつにまとめ上げるのに役立つはずだ。ここでは市場についてまったく異なる考え方を持つ7人のトレーダーが登場する。彼らが5つの市場状態をどう分析し、6週間にわたるトレードでどういったパフォーマンスを達成するかを見ていく。各市場状態ごとに自分に最も近いトレーダーを特定できれば、自分のおおよそのパフォーマンスも予測できる。

 第13章は、ほかでは議論されることの少ない機会とコストについて議論する。十分なトレード機会さえあれば、パーフェクトである必要などないことが分かってくるだろう。しかしトレード回数が増えれば、コストの問題が発生する。本章ではシステムが生み出すドローダウンの影響についても議論する。そして最後に、いくつかのニュースレターの過去2年にわたる期待値と機会について見ていく。

 ポジションサイジングについて議論する第14章は、本書のなかで最も重要な章のひとつである。ポジションサイジングはあなたのシステムとはまったく別のシステムであり、あなたのシステムに追加されるもうひとつのシステムと考えていただきたい。「どれくらい」トレードすべきかをあなたに教えるのがこのシステムの仕事である。高い期待値を持つ良いシステムが完成したら、ポジションサイジングをシステムのアドオンとして追加することで目標を達成するのである。自分のシステムを聖杯システム(つまり、あなたにとってパーフェクトなシステム)にしたいのなら、ポジションサイジングの完全理解が不可欠だ。つまらない手法と世界一の手法との違いは、ポジションサイジングにあると言っても過言ではない。ポジションサイジングは目標を達成できるかどうかを決める鍵であるにもかかわらず、真剣に考える人がほとんどいないのはまったくもって不幸としか言いようがない。第14章はいわばあなたを正しい方向に導くための章と言い換えてもよいだろう。

 ポジションサイジングをこれほど詳細に議論した本はほかにはないだろう。システム開発書のほとんどはこの題材に触れてさえいない。その理由は第14章を読めば分かるはずだ。ポジションサイジングの概念はまったくとは言わないまでも株式市場で使われることは滅多にないが、適用すれば驚くほどのリターンの向上につながることも第14章を読めば分かってくるだろう。

 最後の第15章は本書のまとめである。本書で述べた以外にもトレードをするうえで重要な要素は多数ある。第15章ではそのいくつかを簡単に紹介する。



本書で取り上げられた書籍


マーケットの魔術師

新マーケットの魔術師

魔術師たちの投資術

魔術師たちの心理学セミナー

魔術師たちの心理学

(旧版)

ジャック・シュワッガーのテクニカル分析
マーケットのテクニカル秘録
オニールの成長株発掘法
魔術師リンダ・ラリーの短期売買入門
バフェットからの手紙
ワイルダーのテクニカル分析入門
売買システム入門
バイ・アンド・ホールド時代の終焉
相場心理を読み解く出来高分析入門



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